ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
以前からの夢でした! みなさんありがとうございます!
日間ランキングも一時的に12位に行けました!
本当にありがとうございます!
「こいつ、クッソド外道な作戦とりやがりましたわ──ッ??!!!」
ワタクシは渾身の叫び声を上げながら、急いで自分の乗ってる“ディメンション・ホール”の座標を速やかに下降した。
これで煙が充満している天井付近からは多少離れましたが、それもいつまで持つか……!
あまり下がりすぎると、下からのクロスさんの攻撃を捌き切れなくなってしまう!
『さーて。後はしばらく経って気絶したレイスに対して、ゆっくりドレスを斬りつければ、試験に合格だな。やりぃ』
『嘘でしょ!? なんて事を!?』
『何てやつだ、この腐れど外道ー!!!』
『これ入隊テストでしょ!? ガチで命の危機になってるんだけど!?』
『レイス様、逃げてー!?』
『何考えてんだ新人ー!?』
『クソやろー!? 関心してたのにー!!』
『気絶している女性の服斬りつけるなんてサイテー!』
『俺にその役割やらせろー!!』
『卑怯者ー!!』
『誰か! こいつ確保しろ!』
『な、ナニスルダー!?』
観客席から、非難轟々の嵐が。
さっきまでみんな楽しむ一体感を感じていたなか、ガチで命の危機の状況と分かると皆様手の平を返したように批判が彼に殺到していきました。
そしてそれが聞こえている筈の彼は、まるで涼しいような表情(ヘルムで顔は見えないが)で、マイクを取り出すと会場中に聞こえるように……
『卑怯? オイオイ、心外だなぁ。俺は“新人として、必死に格上の三幹部相手”に戦ってるんだよ? やれるべき手段はやってもおかしく無いじゃあないか』
『バカヤロー!! レイス様を殺す気かー!?』
『後遺症残っちゃうかもしれないでしょー!!』
そんな声に対して、彼はやれやれ、とでも言いたいように。
『その場合、“相手がサレンダーすればいい”だけだろう? “ワタクシじゃ手に負えないので、試験を中断します”って。何も俺も本当に命を奪うつもりは無いし。試験が中断なら中断でそれに従うさ』
『めっちゃ露悪的!?』
『性格悪ーい!!?』
『エンタメ精神どこ言ったー!?』
それらの言葉に対し、彼は待ってました、とでも言いたいように。
両手を広げて、会場中を見渡して。
『おいおい、みんな前提を忘れてるぜ……』
『──これは、“悪の組織の入隊試験”だろう!! だったら、より“露悪的”、“悪辣”、“陰湿”、“外道”な方法で!! “敵を貶め”!! “正義を砕き”、“辱め”、“希望を奪い”、“絶望”を与える!! それこそ“悪の組織の本懐”だろうがぁ──ッ!!』
『『『この、ド外道ぉおおお────ッ!!!!!』』』
ナーッハッハッハッハッハッ!!! と、こってコテの高笑いをあげる彼。
『これこそ悪の本質!! 悪の役割!! 人の道理を外し、大衆のヘイトを買う!! “あー、アイツを倒せたらスッキリするなー”、そうみんなを思わせたら、悪の勝ちなんだよぉ!! アーッハッハッハッハッハッ!!!!』
そう言って、彼はクルクルと周りだす。
ヤロウ……演劇型のメソッドが悪い方向に突っ走ってやがりますわ。
自分の悪役として定義して、その通りに演じてるからこそ、役に入り込みすぎて一直線に爆走してやがりますわ。
アイツ本当に敵(ヒーロー)側の疑いがある新人?
誰が言いましたのそれ。あ、カイザー様でした。
すみませんカイザー様、ワタクシの中で割合6:3:1だったのが、3:5:2くらいになったんですけど。
ちなみにガチの野生の割合も上がりました。演劇要素強スギィ!!
それを見た、VIP席にいるティアー様とカイザー様も声を漏らしていた。
ティアー様は口元を両手で押さえて、驚愕しているようだ。
『何て、何て外道精神!? あそこまで外道な作戦を堂々とやるなんて、普通じゃ出来ないわ!? 彼、生粋の悪役よ!? あんな作戦考えても実行するなんて、私でもあそこまでやれないわ!?』*1
『そうだな。ところで、“お前が言うな”って天の声が聞こえた気がするんだが、我の気のせいだろうか』
『カイちゃんだって人の事言えないんじゃないの?』
『我、どちらかと言うと
『アーッハッハッハッハッハッ!! ────……あー、スッキリした。あ、何か質問ある? 今なら答えるけど』
『うわあ、急に落ち着くな!?』
そう言って、さっきまでのハイテンションが嘘のようにスッと姿勢を正した彼。
“役”が抜けて、平常心を取り戻したのでしょう。
マイクを片手に持ったまま、ワタクシの方に視線を向けてきていた。
上等ですわ……ワタクシはマイクを持ち直し、彼に聞きたい事を問いかける。
『この、煙を使った追い込む方法! これ、偶然じゃありませんわよね!? いつから……いつから、この作戦を考えていましたの!?』
『ああ、それはさっき“トイレのカッポンがバリアに張り付いたのを見た時”、この作戦思いついたな』
『カッポン!?』
『ラバーカップ!?』
はあッ?!!
とい、カッポン……!?
あのミクスが間違って入れたあれで!? さっきのあれでッ?!
『あの時はつい叫んじまったけど、あのカッポンがバリアに貼り付くって事は、“空気を通さない”って事だ。つまり、“酸素も通さない可能性が高い”』
『っ!』
『で、このドーム型バリアを貼っているバトル場で、どうやって換気しているのか? って想定に入った。考えられるのは、地上付近の通路の入り口や、壁伝いの換気扇。そこから空気が入ってくると考えると……オヤオヤ、大体の位置が“絶賛大炎上”中だなぁ。炎の壁で見えねえや』
『白々しいッ?!!』
あたかも今知りました、っていう風に!
アイツ、通常プロキシの爆発を使う時、位置を調整してましたのね!?
初回はともかく、2回目の天井まで飛び上がり時、3回目のワタクシへの追撃を放つ時!
てっきり地上でのワタクシの逃げ位置を塞ぐために、広範囲に炎を広げたと思ったら……ッこっちが本当の理由!!
『まあ、“不思議バリアで酸素だけ通す”って場合や、“ドーム状バリアの天井に空気穴が開いてる”可能性も考慮はしていたけど、そこは賭けに勝ったな。2回目の爆発で天井付近に行った時、息苦しかったの確認出来てたし』
っ!? あの時勢いつきすぎてワタクシを通り越した場面……!?
あれはまさか、確認も兼ねて!?
『あとは地上を炎だらけにして逃げ道を塞いで行けば、自然とアンタが空中に逃げ出す事は想定していた。その能力の応用はいくつか思いついていて、空中に実質立てれる事はバトル中想像出来たからな。それやられると俺詰むなー、と思ったから、じゃあ逆にそっち側の詰みにしよう、と準備したわけだ』
結果は、まんまとこの通り、と。彼は手のひらをヒラヒラしていた。
『このために、タイムの時間で通常プロキシを複数要求した。爆発の規模はペーパーテストの時に身をもって体験済みだからな。3つあれば最低限達成出来ると踏んで居た。もし貰えてなかったら、普通に火炎系を要求してたつもりだ』
『じゃあ、先ほどまでの攻防は!?』
『“天井に煙が充満するまでの時間稼ぎ”と、“煙以外での決着のサブプランの実行”。ある程度確信は持っていたとは言え、この煙を使った方法は最終手段だったからな。それ以外で決着付くならそれに越した事は無かった』
まあ、あまりにもそっちの回避率高すぎるせいで、この手段取るしか無かったけど。
と、彼はやれやれ、と言いたいように両腕を広げていた。
『実際、アンタに空中に逃げてもらうには、“地上戦で追い込む必要があった”からな。逃げずに俺を倒した方が早い、なんて判断されたらこの最終手段意味無かったし。今も完全に降りてこないのは、警戒してるからだろう? “フィールド3/4が炎に包まれてる状態で、無傷で俺を相手に勝利する”のが難しいから』
ック!! 悔しいですけど、その通りですわ……!
ワタクシの能力は、ある程度互いの距離があってこそ戦闘で本領発揮する、ミッドレンジ型……!!
実質フィールド狭められて、インファイトに持ち込まれたら捌き切るのに限度があります!
ましてや、“セレクト・エッジ”で条件反射に制限掛けられるこの状態では……!
ですが……ッ!!
『ほうら、こうして会話している間にも、どんどん煙が上がっていく。だんだん上の逃げ場所も狭くなっていくな。安全に呼吸出来る場所が、どんどん無くなっていくぞー』
『ですが、“あなたも例外じゃ無いでしょう!!” 天井付近にいなくたって、そんな“炎に囲まれた場所!!” 墓穴を掘りましたわね! 換気になる場所を全て炎で囲った事! ワタクシほどじゃなくても、あなただって呼吸が苦しくなる筈────』
『ふぇ? ナンファっふぇ? (え? 何だって?)』←スーハー
ヤロウ……“浮き輪で呼吸”してやがりますわ。
多分浮き輪に穴を開けて、そこに口を当てて新鮮な空気を吸ってやがりますわ。
『ファっふぃふぁいりょうにフィっファフォひ、フォクにフェンなフィフウファファフはファンフィファレふぁファファっファファらファ。ふふうのふうひフィファふぁいっふぇファファフォウファフォあフォフォっふぇフィファ。ふぁいフェイふぁいファっふぁフォ(さっき大量に切った時、特に変な異臭やガスは感じられなかったからな。普通の空気しか入ってなさそうだとは思っていた。大正解だったよ)』
『せめて普通に喋ってくださいましぃッ!! 何言ってるか全然分かん無いのですけどっ!??』
『ぷはっ。大体この浮き輪ガジェット。さっきも言った通りこれだけ毛色が違いすぎる。浮き輪を大量生産出来るって言うと大した事無いように見えるけど、“酸素を無限供給し放題”って捉えれば、かなりとんでも無い能力だ。【ダーク・ガジェット】の感情エネルギーがどうやって作用してるのか知らねーけど、やってる事だけ見ると“質量保存の法則に喧嘩売ってる”ぞこれ』
そう言って、浮き輪の一つをヒラヒラと見せびらかす彼。
その言葉を聞いて、会場中の観客席からおお……っと感嘆の声が漏れている。
ック、これで向こうの呼吸の方はクリアされた訳ですか……
ですが、時間を稼ぎすぎましたわね! 見なさい! “炎がだんだん小さくなっていますわ!!”
流石に炎上し続けて、最初に爆発した方は自然鎮火に入ってる! 貴方の位置からだと見えづらいでしょう!
このペースなら、まだ十分逃げるスペースは確保したまま、炎は消える────
『もえろよ、照らせーよー。明るく あつーくー♪』←ポイッポイ*2
ヤロウ……“浮き輪を大量に炎の中に投げ入れて”やがりますわ。
新鮮な追加の空気を得て、炎が燃え広がっておりますわ。
『これ材質よく分かんないんだけどさー。仮に塩化ビニルだった場合、“火はつきづらいけど、有毒ガスが出る”んだよねー。いい子は真似しちゃダメだよー。“俺は今悪い子だけど”』
『役抜けきれてねえですわよ腐れ新人ぃ!!』
アイツ、浮き輪ガジェットを隅々までしゃぶり尽くしてやがりますわ!?
どこまで想定してあのガジェット選んだんですの!?
おい、携帯端末で音楽流すな!?
ワザワザマイクに近づけて、会場中に聞こえるように歌うんじゃねーですわよぉー!!!
「ゲホッ! ゴホッ!! ック、この位置ももうダメですわ……」
ワタクシは、さらに空中の“穴”の位置を下げる。
これ以上は、本当に限界。それ以上下げたら、彼に近づき過ぎる。
いいえ、いいえ! まだ諦めませんわ!
まだ方法はあります!
「“ディメンション・ロッド”、最小展開……!」
ワタクシは、空中に立っている方とは別に“穴”を展開。そのサイズを極小、2,3cmほどの大きさにしました。
とっても小さくて……“口に含んでも問題ないほど”の大きさです。
それをマイクに声が入らないように、慎重に発動しました。
そして、つなげる“穴”の先は……“彼の浮き輪の中”。
「新鮮な空気を手に入れる方法なんて、こんなのもありますのよ」
本来なら、ドーム状バリア外に繋げられれば、いくらでも新鮮な空気は手に入りますが……流石にそこまで行くと“ルール違反”。
こちらの試験官としての縛りを超えてしまいますわ。
だからこっそり、ルールの範囲内で呼吸を確保しようと、その“小さな穴”を口元に近づけ──
“穴から、刀が飛び出した”
「……────ッッッ??!!!」
もし口元に入れるのが数秒早かったら。私の口内がズタズタになってました。
『言った筈だ。その能力の応用方法はいくつか思いついているって』
下の方から、彼が咎めるような口調で、ワタクシの方を見てそう言ってきた。
『次口の中に入れようとしたら、今度こそ突き刺す。浮き輪以外の場所でも、見つけて突き刺す。どこに現れても突き刺す。そっちの勝ち筋は全て潰す』
淡々と。しかし堂々と。
お前の勝ち目はないぞ、と。言外に伝えて来る。
『〜〜〜〜〜〜ッ!!!!』
ワタクシは歯を食いしばり、何か方法は無いか、本当に何も手段は無いのか、必死に思考を巡らして……
『もういい、レイス』
『っ、カイザー様……』
『十分良くやった。回復ポッドがあるとは言え、わざわざ状態異常になる攻撃を受ける必要は無いだろう。あくまで試験だしな。試験官として、評価してやれ』
『────っ』
その言葉に、ワタクシは歯を食いしばり、……しばらくして、ようやく力を抜いて。
ふうっとため息を吐き。
マイクを、口元に近づけた。
『……ワンヒットテストの終了を宣言致します。試験官の詰みの状況に陥った為、ワタクシのサレンダーと致します』
『──おめでとうございます。あなたの勝利ですわ』
こうして、短くも長い、彼との直接対決の試験は。
ようやく終了したのでした。
★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
サンタクロース改め、サタン・クロス。
戦闘中の観察性能が高すぎる人。
開き直ってから最終手段を考案し、サブプランをずっと今まで試していた。
“セレクト・エッジ”は、必殺技であり、見せ札であり、捨て札でもある。
勝つ為なら、切り札すらフェイクに使える。
ノリッノリで悪役ロールを演じた。
めっちゃ楽しかったらしい。スッキリした。
それでも、心まで悪に染まる事は無い! ……本当か?
多分演劇部所属したらエース取れる人。
★
22歳
168cm
青髪
混沌・善
【ジャスティス戦隊】のブルー。
兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。
自分が“悪役”をやっている自覚のあるタイプ。
演劇型メソッドは彼女も持ってる。
ただし、性格面までは演じてるつもりが無いため、立場としてのロールはするが、性格と口調は基本的にいつでもフラット。
★カイザー
22歳
172cm
紫髪
混沌・悪
【カオス・ワールド】のボス。
ティアーの幼馴染み。
ど外道な悪の精神をしてはいないが、“悪の組織のボス”としての役割は理解してるので、そのロールはノリノリでやるタイプ。
つまり聖夜と似たタイプ。エンジョイ型。
★レイス
20歳
162cm
紅髪
秩序・善
三幹部の一人。お嬢様口調。
通称、【次元のレイス】。
性格が真面目で真っ直ぐ過ぎて、演劇型みたいに何かになり切る、と言うのが苦手な人。
常に本質真っ直ぐ、真正面なタイプ。
だからこそ、自他共に偏った評価はしない、出来ないタイプ。
ルールの範囲内で、クロスに負けてしまった。
──ルールが無かったら?
感想、評価があると作者はとても嬉しいです!