ゲェェエティアァアア! 作:ならば来い! カルデアァァア!
第1節 冬木大火災
「先……! 先輩……! 起きて下さい先輩!」
「フォウ! フォーウ!」
誰かが呼びかける声によって意識が浮上する。
そして僕はすぐに、何か柔らかいものが当たっている事に気づく。
「んっ……」
起きようとして少し体を動かすと、艷やかな声が聞こえ、思わず動きを止めてしまった。
「んぁっ……」
再び艷やかな声が聞こえ、寝ぼけていた意識が鮮明になる。
僕はうまく働かない頭を懸命に働かせ状況を理解しようと努めた。
確か……僕はカルデアに拉致られて……。
そうか……レイシフトしたのか。
そこまで考えると同時に、状況を理解することが出来た。
僕はぐだ子と抱き合っていたのだ。
2回目なんだけど!?*1
「うーん?」
「ぐだ子! 起きて!」
「ふにゅ!?」
僕は耳元でそう叫びながら胸を揉みしだく。
柔らかっ!?
何だこれ天国かな?
「な、なんだぐだ男か……エッチ」
「僕がエッチなのは事実だけど、それは置いといて早く起きて」
「むぅ」
むぅじゃないよ。
こんなやり取りしてる場合じゃないんだけど?
「それで……何がどうなってるの?」
「落ち着きたい所ですが、今は周りをご覧ください」
言われた通り周囲を見渡すと、そこは焦土と化した町だった。
炎が燃え盛り、生存者はいないだろうと思えるような、そんな光景だった。
そんな光景の中に異物が紛れている。
大量の骸骨が僕達を囲んでいたのだ。
骸骨はボロボロの布切れを首に巻き、槍を構えている。
「言語による意思の疎通は不可能、敵性生物と判断します。マスター、指示を!」
「マスター?」
「ぐだ子のことだよ」
僕には令呪ないし。
「え? えー、どうすればいいの?」
「応援でもしてあげたら? チア衣装着る?」
マシュだったらそれで喜ぶと思うよ。
「着ないよ? 後どっから出したのそれ」
「フォーウ……」
「まあまあ」
投影しただけだよ。*2
後フォウは残念がらないの。
僕だって残念だとは思ってるけどさ。
「えっと、マシュ頑張って!」
「はい!」
ぐだ子の応援を聞いたマシュは気合を入れ、ラウンドシールドを振り回した。
重量のある盾で攻撃された骸骨達は、一瞬で粉砕される。
それを繰り返す内にあれ程いた死者の軍勢は、最早跡形もなく消え去った。
「戦闘、終了です。なんとかなりましたね」
知ってはいたけど……。
流石はサーヴァント、僕なんかとは次元が違う。
思ったより戦闘慣れしてる感じだったから驚いたよ。
幾らデミ・サーヴァントになって超人的な力を得たとは言え、初戦闘なんだからもっとグダるかと思っていた。
やっぱりもっと死ぬ気で訓練するべきだったな……。
そこらの幻想種ならともかく、今の僕じゃサーヴァント相手には時間稼ぎぐらいしか出来ないや。
そんなことを考えていた時だった。
『ああ、やっと繋がった! もしもし、こちらはカルデア管制室だ! こちらの声が聞こえるかい!? 聞こえたら返事をしてくれ!』
ロマニの声が聞こえると共に、空中に映像が浮かび上がり姿が映し出される。
「こちらAチームメンバー、マシュ・キリエライトです。現在、特異点Fにシフトを完了。同伴者は藤丸立香の2名です。3名ともに心身に異常ありません。私以外の両名ともにレイシフト適応は良好。更に藤丸立香はマスター適応も良好。正式な調査員としての登録を管制室に求めます」
『……やっぱりキミたちもレイシフトに巻き込まれたのか……コフィンなしでよく意味消失に耐えてくれた。それは素直に嬉しい。けれどマシュ、その格好は一体どういうコトなんだい!? ハレンチすぎる! いつの間にそんな趣味を! ボクはそんな子に育てた覚えはないぞう!』
そう喚き立てるロマニ。
もっと際どい服装のサーヴァントが沢山いるせいで麻痺してたけど、おへそが出てる鎧は確かにハレンチか。
……うん、確かにエッチだ。
フリーレンのアウラもそうだけどおへそだけ出てるのは何なんだ。
「これは必要に応じて変身したのです。カルデアの制服では先輩達を守れなかったので」
『変身って、なに言ってるんだマシュ? 頭でも打ったのかい?』
「──ドクター・ロマン。ちょっと黙って。そちらで私の状態をチェックしてください」
そう言えば初期のマシュってこんな感じだったっけ。
まあ今でもランスロット辺りには辛辣な気がするけど。
この棘のあるマシュもこれはこれで……。
『キミの身体状況を? お……おぉ!? 身体能力、魔力回路、すべてが向上している! これはもはや人間というより──』
「はい。経緯は覚えていませんが、私はサーヴァントと融合したことで一命を取り留めました」
『英霊と人間の融合……デミ・サーヴァント。そうか、ようやく成功したのか。では、キミの中に英霊の意識があるのかい?』
「……いいえ、彼は私に真名を告げずに戦闘能力のみを託して消滅してしまいました。ですので、自分がどのような英霊なのか、この武器がどのような宝具なのか、現時点ではまるで判りません」
ギャラハッド……。
いつか召喚される日が来るのだろうか。
『……そうなのか。でもそれは不幸中の幸いだ。召喚したサーヴァントが必ずしも協力的とはかぎらないからね。けれどマシュがサーヴァント化したのなら話は早い。全面的に信頼できる』
そう言ってロマニは話を区切る。
そして今度は僕達の方を見た。
『無事シフトできたのはキミ達だけのようだ。すまない、何も事情を説明しないままこんな事になってしまった。でもどうか安心してほしい。キミたちには既にマシュという、人類最強の兵器がある』
「……最強というのは、どうかと。たぶん言い過ぎです。後で責められるのは私です」
大丈夫だよ。
僕達の後輩は最強なんだ。
『まあまあ、サーヴァントはそういうものなんだって2人に理解してもらえばいいってことさ。ただ、サーヴァントはマスターが死ぬと消えてしまう。だから気をつけるんだよ、藤丸君。ああ、それと──』
「ドクター、通信が乱れています。通信途絶まで、あと10秒」
『むっ、これは……予備電源に替えたばかりでシバの出力が安定していないのか。仕方ないな。そこから2キロほど移動した先に霊脈の強いポイントがある。そこまで辿り着いて、ベースキャンプを設営してくれ。戦闘もなるべく避けた方がいい。こっちもできるかぎり早く電力を──』
ロマニは最後まで言い終えることが出来ず、通信がプツリと切れた。
「切れちゃった……」
「仕方ありません。あっ、フォウさんの事を報告し忘れていました」
フォウはぐだ子の肩に乗り、首に尻尾を巻きつけていた。
いいな……。
モフモフしてそう。
「いいでしょ。スゴイモフモフ」
「むぅ」
そんな風にくだらない会話をしていた時の事だ。
「──きゃあぁあぁあ!」
甲高い悲鳴が遠くから響いてきた。
「今のはっ!」
「急ぎましょう、先輩!」