虹夏ちゃん誕生日おめでとう!!

いや本当にごめんなさい。遅くなってごめんなさい。でも何とかXで呟いた通り今週中には書き上げたので。それで何とか許してください。
多分過去イチ甘いのが書けたんじゃないかなって思います。甘すぎて正直虹夏ちゃんっぽく無いような気もしますが誕生日だから良いのです(過ぎてる)
これで何とかぼ虹記念日ssと虹夏ちゃん誕生ssは書けたし、しばらく記念日的なのは無いか。後は7日に貰える映画の特別漫画にぼ虹要素があればそれを燃料に書けたらいいんだけどな。

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ずっと貴女と初めてを

夜、虹夏ちゃんの誕生日会の為にプレゼントの準備をしていた。といっても誕生日自体は明日だけど当日は学校だから誕生日会は次の日曜日にやる予定なんだけど。

 

「oh〜♪ 虹夏ちゃん、君はこの世に生まれたAngel〜♪」

 

 虹夏ちゃんに贈るプレゼント。それは私の想いを詰め込んだ歌! 店長さんの時は正直苦し紛れだったから怒らせちゃったけど今回は事前にしっかり練習してクオリティをあげるんだ! 勿論他にちゃんと形に残る物も準備してるけどメインはこっち。……歌詞は生まれたよりも舞い降りたの方がいいかな?

 と、練習に精を出していると

 

『ぼっちちゃん、今大丈夫?』

 

 虹夏ちゃんからロインが入ってきた。何だろう?

 

『明日さ、私の誕生日なんだけど……』

『あ、はい。誕生日会は日曜日でしたよね?』

『そうなんだけど、ちょっとお願い、っていうかプレゼントのリクエストがあるんだ』

 

 え、リクエスト? それは別にいいんだけど虹夏ちゃんがそういうの要求するのって珍しいかも。

 

『それで明日の放課後ちょっとお出かけに付き合ってほしいんだよね』

『お出かけですか? 勿論大丈夫ですけど』

『良かった! じゃあ明日放課後下北沢駅で待ち合わせね!』

『分かりました』

『制服でね!』

 

 ……ん? せいふく? え!?

 

『制服ですか!?』

『うん! ……嫌?』

 

 ぐぅ! それはズルいです虹夏ちゃん……!

 

『大丈夫です』

『ありがとぼっちちゃん! じゃあまた明日ね!』

『はい』

 

 ……はぁ、制服か。高校に入学してすぐ着なくなったから本当に久しぶりだな。制服って青春の象徴みたいであんま着たくないんだけど、虹夏ちゃんとの約束だから着るしかないよね……。

 でも誕生日当日に虹夏ちゃんに会えるのか。う〜ん、それなら……。

 

 

 

 

 

 

 そして翌日、学校が終わると喜多ちゃんと別れて私は虹夏ちゃんとの約束通り下北沢駅まで行くと、そこには先に待ち合わせ場所に着いていた虹夏ちゃんが待っていた。

 

「ご、ごめんなさい! お待たせしました」

「あ、ぼっちちゃん。うぅん、そんなに待ってないから大丈夫だよ。……うん、ちゃんと制服で来てくれたね」

「あ、はい」

 

 流石に約束を破る訳にはいかないもんね。……お陰で喜多ちゃんには写真を撮られまくるし、何故か喜多ちゃんの友達まで集まってきて囲まれるし、挙句の果てには多分罰ゲームにでも負けたのであろう男子にも告白されるし(しかもバスケ部のエースだったらしい。断れなくてアワアワしてたら喜多ちゃんが断ってくれて助かった)今日の学校生活は散々だった……。

 

「やっぱりぼっちちゃん制服すっごい似合うじゃん。ちゃんと毎日着たら良いのに」

「ぜ、全然似合ってないですよ。今日一日珍獣扱いでしたし。それよりも虹夏ちゃんその服……」

「あ、うん。下北高校の制服だよ。まだいけるでしょ?」

「は、はい。似合ってます」

 

 といっても2か月前まで虹夏ちゃんも高校生だったんだから似合ってて当たり前なんだけど。でも何で虹夏ちゃんまで制服を……?

 

「それで誕生日のリクエストなんだけどさ、今日は制服デートしてほしかったんだ」

「せ、制服デートですか?」

「うん。ほらぼっちちゃんっていつもジャージだったから制服で遊んだことって無かったでしょ? 制服で遊びに行くなんて学生の間しか出来ないからさ、ぼっちちゃんと遊びたかったんだ」

 

 あんまり時間たつと制服着るの恥ずかしくなるしねー。っと少し照れ臭そうに笑う虹夏ちゃん。可愛い。

 

「そういう訳で……」

 

 虹夏ちゃんが制服に結んでいたいつものリボンを外すと、私の首に優しく結んだ。

 

「え、え?」

「ぼっちちゃんには今日一日私のプレゼントになってもらいます!」

 

 え、ええええええええええええええ!? わ、私? 私がプレゼント!? 一円の価値も無いんですけど!? そ、そそそれにこの首に巻かれたリボン、さっきまで虹夏ちゃんが身に付けてたから虹夏ちゃんの体温が伝わってきて何だか、か、顔が熱くなってくるぅ……!

 

「へへ、じゃあ行こうか」

「あ、は、はい。って虹夏ちゃん!? て、手が!?」

「んー? 良いじゃん、デートなんだし!」

 

 に、虹夏ちゃんが私の手を握って、ゆ、指まで絡めて……! 虹夏ちゃんの誕生日なのにさっきから幸せなの私の方な気ががするんだけど!?

 

「仲の良い女子高生同士が手を繋いで歩くなんてそんな珍しくもないよ! ほら行こ行こ!」

「あ、あばばば」

 

 虹夏ちゃんに手を引っ張られて歩き出す。その時チラッと見た虹夏ちゃんの横顔は気のせいか頬が赤くなっていた気がした。

 

 

 

 

 

 そしてそれから

 

「ほらぼっちちゃん、ここ入ろう!」

「こ、ここは……」

 

 陽キャの集うお洒落なカフェ! うぅ、喜多ちゃんみたいに陽の波動を放つ人達がたくさんいる……! カップルも多いし、私みたいな陰の道を究めた人間が入るところじゃないよ……。

 

「最近オープンしたばっかりなんだけど結構人気でさ、ここ来てみたかったんだよね」

「に、虹夏ちゃんもこういうところ来るんですね……」

「む? あのねぼっちちゃん。私だって華の女子高生、ってもう違うか。華の女子大生なんだよ。喜多ちゃん程じゃないけど流行りモノはある程度気にしてるし、甘いものにだって目が無いの」

「あ、へへ、そうですよね。で、でもこういうお店なら私より喜多ちゃんと一緒の方が良かったんじゃ……」

「んー? 喜多ちゃんとも行ったりしてるよ。皆がいる時だと行ってないけどね」

 

 リョウがいると集られるし、ぼっちちゃんがいると溶けちゃうし、まぁ喜多ちゃんは喜多ちゃんで写真撮るのに夢中で待ちぼうけになりがちだけど……、っと遠い目をする虹夏ちゃん。……いつも苦労を掛けてごめんなさい。

 

「で、でもそれなら何で私と……? 私溶けちゃうんじゃ」

「それなんだけどさ、ぼっちちゃんがこういう場所が苦手なのって陽キャっぽい空気が苦手だからでしょ?」

「えーっと、まぁ、そうですね?」

「だからさ」

 

 虹夏ちゃんが私の右腕に抱き着いてきた。……抱き着いてきた!?

 

「え! あ、の!?」

「こうしてるとぼっちちゃんも陰キャには見えないよ。そう考えたら大丈夫そうじゃない?」

「いや、あの……!」

 

 抱き着かれた右腕に虹夏ちゃんの温もりとか、柔らかさとか、良い匂いとか伝わってきて正直陰キャとか陽キャとか考える余裕もありません……! でもそんな事言ったら絶対引かれるから言えない!

 

「ほーら、いつまでも固まってないで! すみませーん、二人は入れますかー?」

「あ、あ……!」

 

 店員さんに案内されて店内へ通される。案内される際中腕に抱き着いてる虹夏ちゃんが頭を肩に預けて来て、もう、本当に、匂いが! もういっそ思いっきり嗅いで胸いっぱいに虹夏ちゃんの匂いで肺を満たしたいぃ……!

 そして席に辿り着くと流石に虹夏ちゃんが私から離れて席に着く。あぁ、ちょっと残念……。

 

「ぼっちちゃんは何注文する?」

「え、あ、っと。こういう所普段来ないから何を頼んだら良いか……」

「あはは、そっか。じゃあさ、私気になってるパフェが二種類あるんだけどそれ一つずつ頼んでも良いかな? それでぼっちちゃんの少し食べさせてほしいな。私のも食べさせてあげるから」

「あ、はい。じゃあそれで」

「ありがと。じゃあ店員さん、これとこれを一つずつお願いします。後ココアも二つで」

「かしこまりましたー」

 

 そして待つこと10分ほど、虹夏ちゃんが注文してくれた2種類のパフェとココアが到着した。

 

「わー! 美味しそう!」

「あ、そうですね……!」

 

 こういうお店に入れないからパフェなんて久しぶり……! どうやら私の中にもパフェで喜ぶ女子高生の魂があったらしい。

 

「じゃあ早速、いただきまーす! ……うん、美味しい! ぼっちちゃんのはどう?」

「あむっ、んぐ……。はい、私のもすごく美味しいです」

「そっか! じゃあさっき言った通りさ、ぼっちちゃんのも少しちょうだい?」

「あ、はい。どうぞ」

 

 虹夏ちゃんの方へパフェを近づける。けど虹夏ちゃんは中々パフェには手を出さず、どうしたのか気になって虹夏ちゃんの顔を見てみると少しむくれていた。

 

「え? あ、あの?」

「違うでしょぼっちちゃん。さっき私『食べさせてほしい』って言ったんだよ? 分かる?」

「えっ、と……?」

「つまり……」

 

 虹夏ちゃんが小さい口を開ける。え、これってもしかして……!

 

「ほら、早く食べさせてよ。あーん」

 

 ひ、ひええええええ! あーんって、そんな、実際にあるの!? 都市伝説じゃなかったの!?

 あ、うぅ、いつまでも虹夏ちゃんに口を開けっ放しさせる訳にはいかないし、覚悟を決めよう!

 

「あ、あーん……!」

「あーん。……うん、こっちも美味しい!」

「うへへ、良かったです」

「じゃあぼっちちゃんもどうぞ。はい、あーん」

「ヴェッ!?」

「食べさせてあげるって言ったでしょ? ほら早く。スプーンから落ちちゃうよ」

「あ、あああ、あーん……。あむ」

「ふふっ、どう? 美味しい?」

 

 ……緊張のし過ぎで味がしない。でも妙に甘さだけが一際強い気がするのは何故なんだろう。

 

「お、美味しいです」

「うん、良かった。ねぇ、ぼっちちゃんのパフェ本当に美味しかったからもう一口食べたいな」

「あ、はい」

「あーん」

 

 ってまたそれですか!? うぅ、緊張で手が震える……。

 

「あ」

「あむ。ん? どうかしたぼっちちゃん」

「あ、いえその虹夏ちゃんにパフェのクリームが……」

「付いちゃった? あはは、ぼっちちゃん手が凄く震えてるんだもんな。どこに付いてる?」

 

 唇の右端に付いてるけど虹夏ちゃんは逆方向をペタペタ触っている。えっとえっと……。

 

「こ、こっちです」

「ぁえ?」

 

 虹夏ちゃんに付いたクリームを指で掬う。クリームは取れたけどこれどうしよう? まぁクリームなんだし食べればいいか。ぱくっ。

 

「ぼっ!?」

「はい?」

 

 虹夏ちゃんが顔を真っ赤にして驚いてる。どうしたんだろう。

 

「〜〜〜〜〜〜〜!! ……ぼっちちゃんってホンッッットに驚くようなことするよね」

「え、えっと、そうなんですかね?」

「そうだよ! ……ところでぼっちちゃんもクリームが付いてるね」

「え? 本当ですか?」

 

 どこに付いてるのかな? 顔中をペタペタ触ってみるけど見つからない。

 

「良いよ良いよ、取ってあげるから」

 

 虹夏ちゃんが向かい側から手を伸ばして私の唇の端をなぞるようにクリームを掬い取る。すると私の方を見てちょっとイタズラな笑みを浮かべて、そのまま指を咥えた。私の口に付いていたクリームを。

 

「に、虹夏ちゃん!?」

「ふふーん、どうかした? ぼっちちゃん」

「ど、どうかしたって、汚いですよ私の口に付いてたクリームなんか食べたら!」

「でもさっきぼっちちゃん同じことしてたよ?」

 

 ……え? そういえば、そういう事になるのか! ふたりに似たような事をするから全然気に留めてなかった!

 

「あ、あばば……。私は大罪人……」

「どうしてそうなった!?」

「だ、だって私の様な下賎な者が虹夏ちゃんの唇に触れるなんて、万死に値します……!」

「気にしてないから! ちょっと、いや大分恥ずかしかったけど大丈夫だから!」

「うぅぅぅぅぅ……」

「……あーもう仕方無いな。じゃあこうしたら信じられる?」

「うう……。え?」

 

 虹夏ちゃんが私の座ってるソファの空いてるスペースに座ると私の手を取って、私の指にキスをした。

 

「にじ! かちゃ! あぅえ!?」

「……ん。ほら、大丈夫でしょ?」

「は、はわわ……!」

 

 や、やばい。心臓が爆発しそうなくらいドキドキしてる。そんな私を見ていた虹夏ちゃんがあの独特なネコ目をしてまた私の指にキスをしてきた。

 

「ちゅっ……、んっ……、まだ信じられない?」

「あ、ひゃっ、しょ、しょんなことは……!」

「えへへ。でもぼっちちゃんの指先、やっぱりすごく硬いね。これがぼっちちゃんの努力の証、ギターヒーローの指なんだ」

 

 私やっぱりぼっちちゃんの指すごく好きだな、っと言いながら今度は私の手を頬に押し当てる。すごくスベスベだぁ……! も、もっと触りたいかも。

 虹夏ちゃんの頬に添えられた手で頬を撫でた。

 

「ふふ。ぼっちちゃんくすぐったいよ」

「あ、うへへ。虹夏ちゃんのほっぺスベスベで触り心地が良すぎて」

「もうぼっちちゃんてば。ぼっちちゃんだってスベスベ……だけど、あー……少しはスキンケアした方がいいかな? ちょっと荒れてるかも。今度教えてあげるよ」

 

 そう言えば前にPAさんがお肌の話してた時私といい勝負って言ってたっけ。私なんかが見てくれ良くなっても仕方ないけど虹夏ちゃんも喜多ちゃんもリョウさんも肌綺麗だし、ライブの時に一人だけ肌がボロボロだったら悪目立ちしちゃいそうだしそれは避けたいかも。

 

「お、お願いします」

「うん。大船に乗ったつもりで私に任せておきなさい。……なんてね。じゃあそろそろ出ようか?」

「あ、は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから普段行かないようなアクセサリーやコスメ、それから楽器店でも中々縁が無いドラム専門店なんかを二人で見て回って、気が付けばもう18時になっていた。

 

「あー今日は遊んだ遊んだ、楽しかった。ぼっちちゃんはどうだった? 普段行かなさそうな所ばっかりだったけど……」

「あ、私も楽しかったです」

「本当? 無理してない?」

「ほ、本当です」

 

 確かに普段だったらちょっと、いやかなりしんどかったかもしれないけど。でも虹夏ちゃんずっと手を握って私の傍にいてくれたから、慣れない所でもそこまでストレスにならなかった。

 

「それなら良かった。私も今年の誕生日は最高の誕生日になったよ。ありがとね、ぼっちちゃん」

「い、いえそんな。私も虹夏ちゃんの誕生日に遊びに誘って貰えてうれしかったです」

「そう言って貰えて嬉しいよ。私も誕生日はぼっちちゃんと一緒に過ごしたかったからさ」

「わ、私とですか?」

「うん。……ねぇぼっちちゃん。本当に、本当に急なお願い事なんだけどさ、今日泊まってって貰えないかな……?」

 

 え、今日? 本当に急だな。お泊りの準備とか何もないんだけどな。

 

「本当に急なこと言ってるのは分かってるんだけど、やっぱり今日一日最後までぼっちちゃんといたくてさ。駄目、かな……?」

「虹夏ちゃん……」

 

 普段の気遣い屋さんの虹夏ちゃんなら絶対言わない様な急なお誘い。正直私としても誰かのお家にお泊りなんてかなりハードルが高いから急に言われても困る。けど……。

 

「あ、あの、虹夏ちゃん。虹夏ちゃんも言いましたけど、今日私は一日虹夏ちゃんの誕生日プレゼントなので、えっと、虹夏ちゃんが望んでくれるなら最後まで虹夏ちゃんと一緒にいます」

「ぼっちちゃん……。うん、ありがとう」

 

 虹夏ちゃんが私の手を両手で握って笑顔を浮かべる。

 こんなプレゼントとしても無価値な私で虹夏ちゃんが笑顔になってくれるなら、プレゼント冥利に尽きるってもんだよね。それに私としても虹夏ちゃんの誕生日に最後までいさせてくれるのは嬉しいし。

 

「じゃあその辺でお泊りセット買って私の家に行こうか。今日はSTARRY休みだからお姉ちゃんがピザとか買ってくれてるんだ。いっぱい食べてってね」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 それに虹夏ちゃんにも渡したいものがあるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹夏side

 

「お姉ちゃんただいまー。……あれ?」

 

 ぼっちちゃんを連れて家に帰ると明かりも点いてなくて誰もいない。おかしいなと思いながら台所まで行くと『ピザを受け取りに行ってきます』という書置きがあった。

 宅配じゃなくて直接買いに行ったのか。まぁ直接お店で買うともう一枚無料みたいなサービスがあるもんね。ぼっちちゃんもいるしちょうどいいか。

 

「今お姉ちゃんピザ買いに行ってるからそれまで私の部屋にいようか?」

「あ、はい」

 

 部屋に通されると座布団の上に少し緊張しながらちょこんと正座をするぼっちちゃん。そういえば初めて私の部屋に案内した時は馴染めなくて廊下に座ってたっけ。その頃から考えるとまだ少し硬さを感じるけど大分馴染んでくれたのかな?

 

「ぼっちちゃん、今日は本当にありがとうね。急に家に来てほしいなんて我儘まで聞いてもらっちゃって」

「い、いえ。虹夏ちゃんは普段本当に頑張ってますから、偶には我儘くらい言ってほしいくらいなので。そ、それにその我儘を私にいって貰えたことがすごく嬉しいんです」

 

 へら、っといつもの不器用な笑顔を浮かべるぼっちちゃん。……本当に優しいなぼっちちゃん。

 

「私さ、次の日曜には誕生日会を開いてくれるのは分かってるんだけど、今日どうしてもぼっちちゃんと誕生日を過ごしたかったんだ」

 

 だってぼっちちゃんは私の大切な人だから、という言葉は呑み込んだ。そこまで言ってしまうと流石のぼっちちゃんも私の気持ちに気付いてしまいそうだったから。

 ……ぼっちちゃんが自覚出来てるのか出来てないのかは分からないけど、私に特別な感情を抱いてくれてる事は分かってる。でもバンドの事を考えると安易に告白してしまっていいのかと躊躇ってしまう。恋愛沙汰は本当にデリケートだから。

 

「……あの、虹夏ちゃん。私も出来れば虹夏ちゃんと誕生日当日に会いたいなって思ってたんです。渡したい物があったので」

 

 そう言うとぼっちちゃんは学生カバンからラッピングされた小さな箱を取り出して私に差し出した。これは、まぁ見るからに誕生日プレゼントだ。

 

「今貰っていいの? これ渡すと誕生日会の時渡すもの無くて困るんじゃ……」

「あ、誕生日会用にもプレゼントを用意してるので大丈夫です。……あの、開けて貰ってもいいですか?」

「う、うん」

 

 ぼっちちゃんに促されてプレゼントの包装紙をなるべく丁寧に開ける。中には有名な腕時計ブランドの箱が入っていた。このブランド、安いのでも学生からしたら結構な値段がする筈だけど……。

 

「ぼ、ぼっちちゃん!? こんな良いもの……」

「えと、友達へのプレゼントにしては高すぎるのは分かってはいるんです。で、でもその腕時計は私なりの覚悟なので」

「覚悟?」

「は、はい。あの、私本当に虹夏ちゃんと出会うまでずっと独りぼっちで、ギター以外何も持ち合わせてなくて、私の居場所は家の押し入れの中だけでした。でもそこから引っ張り出してくれたのは虹夏ちゃんでした。虹夏ちゃんのお陰で私、今ではバンドにも入れて、友達が出来て、あれだけ辞めたいと思ってた学校も後一年で卒業って所まで来ました」

「それはぼっちちゃんが頑張ったからだよ」

「いえ、あの日虹夏ちゃんに出会わなかったら私絶対全部諦めてました。本当に感謝してるんです」

 

 ぼっちちゃんが私の手から箱を取って開けると、中には可愛らしいピンク色の腕時計が入っていた。

 

「腕時計のプレゼントって、『あなたと同じ時間を過ごしたい』『同じ刻を刻んでいきたい』って意味があるらしいんです」

「え、あ……」

「私は絶対ギタリストとして結束バンドを最高のバンドにして、虹夏ちゃんの夢を叶えてみせます。その時までずっと傍にいます。だから、その……、私の覚悟の証として受け取ってもらえませんか?」

「ぼっちちゃん……」

 

 プレゼントの意味を言われた時告白かと思って焦った。でも、そうか。そういう事なら私の答えは勿論決まっている。

 

「やだ」

 

 絶対嫌。お断り。

 

「あ、が、ぅえあ……」

 

 輪郭を失って溶け始めていくぼっちちゃん。まぁこうなるとは思ったけどそんな理由なら嫌だよ。だって。

 

「だって私の夢が叶うまで、なんでしょ。そんな理由なら嫌だ」

「……え?」

「私の夢が叶った後もずっと傍にいてくれなきゃ嫌だ、って事だよ。それなら受け取るけど、どう?」

「えっと、その、それだとこの時計だとちょっと安い……」

「値段とかの問題じゃないから! ぼっちちゃんはどうなの? いたいの? いたくないの?」

「い、いたいです!」

「じゃあいいじゃん。……ねぇ、その腕時計ぼっちちゃんが私に着けてくれる?」

「あ、はい」

 

 左手を伸ばすと、ぼっちちゃんは私の手首に腕時計を着けてくれた。私とこれから先もずっとずっと傍にいる証として、腕時計を。……こんなのもう婚約指輪みたいなもんじゃん。

 

「この腕時計、一生大事にするね」

「あ、はい。……うへへ」

「ふふ、プレゼント貰ったのは私なのに何だかぼっちちゃんの方が嬉しそうだね」

「へ、へへ、そうなのかもしれないです」

「え?」

「だ、だってその、虹夏ちゃんとずっといられるって思ったら、嬉しくて」

「ぼっちちゃん……」

「に、虹夏ちゃんは出会った時から私にたくさんの『初めて』をくれました。初めての友達、初めてのバンド仲間、初めてのライブ、初めての友達のお家でのお泊り、そして今日は初めての制服デート。きっとこれからも虹夏ちゃんとたくさんの『初めて』が作れるんだって思ったら、嬉しくて堪らないんです。だって」

 

「これから先も、自分の大事な『初めて』は、虹夏ちゃんであってほしいから」

 

「……ぼっちちゃん!」

「わっ!」

 

 ぼっちちゃんの言葉を聞いて、私は衝動的にぼっちちゃんを押し倒してしまった。

 何やってるんだ私は。でも、私だってそうだ。私も、私の大事な『初めて』の相手はぼっちちゃんが良い。ぼっちちゃんじゃなきゃ嫌だ。

 押し倒したぼっちちゃんを見下ろす。押し倒されたぼっちちゃんのスカートは捲れてしまって少しだけピンクのショーツが見えてしまって、私を見え上げるぼっちちゃんの瞳は突然の事に白黒していたけど現状を理解したのか、少しだけ不安な、だけど期待の色を覗かせた。

 ど、どうしよう。いやどうするも何もこんなの駄目に決まってる。気持ちだって伝えてないのにこんな事――。

 

「虹夏ちゃん」

 

 グルグルと頭を悩ませながらも身を引こうとすると、ぼっちちゃんが腕を伸ばして離れようとする私の首へと回した。

 

「虹夏ちゃんが望むことがあるなら、私、全部してほしいです」

「ぼっち、ちゃん」

「今日私は、虹夏ちゃんの、だから」

 

 唾を呑み込んだ喉がゴクリと鳴る。私を見上げていた潤んだ青い瞳はそっと閉じられて、私を待っていた。

 もう何も迷う理由なんかない。ぼっちちゃんが望んでいる。まだ気持ちは伝えてないけど、これから私の全部でぼっちちゃんに伝えよう。

 

「やさしく、するから」

「……はい」

 

 苦しくない程度に少しずつぼっちちゃんに身体を預け、数回ぼっちちゃんの頬へキスをして、そしてぼっちちゃんの唇へーー。

 

「わりー虹夏、遅くなった。腹減ったから早く食べよう、ぜ……」

 

 重ねようとした瞬間、ピザが入った袋を下げたお姉ちゃんが部屋へ入ってきた。……ああそうだ、そう言えばお姉ちゃんピザを買いに行ってるだけですぐ帰ってくるんだった。

 

「…………………………すまん」

 

 全てを察した、察してしまったお姉ちゃんは静かに部屋を出ていった。

 

「あ、あ……」

 

 顔が崩壊してどんどん体が膨れ上がっていくぼっちちゃん。いいな、ぼっちちゃんは。

 

「あびゃああああああああああああああああああ!!」

 

 爆発して消し飛べるなんて。私も爆発してしまいたいよ。ああ、でもかなり難しいけどお姉ちゃんに言い訳しまくって誤解という事にしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 それから部屋どころか家を3時間くらい出ようとしていたお姉ちゃんを引き留めて必死に言い訳をして何とか誤魔化して(多分信じてないけど)、爆発四散したぼっちちゃんの破片を何とかつなぎ合わせて復元して、三人で誕生日パーティーをした。ぼっちちゃんは私とシようとした事をお姉ちゃんに見られたせいかずっとガタガタ震えてたけど、当のお姉ちゃんは普段見ないような笑顔でニコニコと私とぼっちちゃんを見ていた。死にたい。

 その後は私とぼっちちゃんはかなり気まずい空気が流れてたけど、そのまま寝てまた変な雰囲気になってしまうのを恐れて夜中中ゲームをして何とか気を逸らし続け、朝になる頃にはゲームに熱中した甲斐もあってお互いいつも通りに戻った。

 

 そして日曜日。

 

「oh〜♪ 虹夏ちゃん、君はこの世に舞い降りたAngel〜♪」

 

 私は誕生日会でぼっちちゃんのもう一つのプレゼントであるぼっちちゃんのバースデーソングを聴いていた。

 恐ろしくヤバい歌。私でも引いちゃうね。リョウと喜多ちゃんもドン引きしてる。お姉ちゃんは泣いてるけど。

 本当に私じゃなきゃ百年の恋も冷めてるところだよ。そう思いながら、私は左手の腕時計を眺めていた。

 

 


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