現在、ヒサとシディはセー横キッズになった依頼人の娘さんを連れ戻すために潜入調査しに行った。
本当は俺も参加するはずだったが戦力外だったようなため、テレビを見ながら留守番することになった。
『今朝、カプセルに入ったスライム型の異宙人が脱走した模様です。その異宙人は、人の体内に入り自分の身体のように寄生し狂暴化させる危険性があるため、警察と研究員は現在探索してるとの事です。』
寄生型異宙人か・・・ヒサ達は大丈夫だろうか。
「あの~。ここってカレコレ屋さんで合ってますか?」
「あ、はい。」
入ってきたのは黒いジャケットに帽子とサングラスを着けた男性だった。
「依頼よろしいでしょうか?」
「いいですよ。詳しい内容聞きますので座ってください。」
依頼人に茶を出して対面する状態で依頼人の話を聞いた。
「実は私、ヒーロー映画の監督をやってるのですだが、カレコレ屋さんにスタントマンをしてほしいんです。」
「スタントマンですか。」
「はい。実は今撮影してるドラマのスタントマンが横暴でして、ヒーロースーツが気に入らないだとか、女用意しろとか酷くて。」
「スタントマン代えればよいのでは?」
そんな横暴なスタントマンすぐにやめさせれば解決するだろ。
「いや、それが皮肉な事にそのスタントマンはキレのある動きで華麗に演技するので文句言えないんですよ。なのでその代役が欲しくてここに来たんです。」
「ん~・・・シディが居れば即引き受けられるが、今居ないしなぁ・・・。」
「いえ、私はあなたにお願いしたいんです!」
俺に?
「それはまた何で・・・。」
「あなたがたまたま、引ったくり犯を俊敏な動きで退治したのを見てこの人ならって思ったんです!!今回だけでいいです!!お願いします!!」
勢いよく立ち上がりズイっと俺の顔まで近付いた。
依頼人の圧がすごいっ!
「わ、分かった!分かりました!その以来引き受けますので離れてください!」
「本当ですか!ありがとうございます。」
俺は簡単に依頼を引き受けたが、まさかあんな事になるとは、その時は思いもしなかった。
撮影現場にやってきた。あたりを見渡せば忙しそうなスタッフの方たちや台本読み込みながら打ち合わせする役者達。化粧したりと色々と忙しそうだった。
「忙しそうですね。」
「まぁ現場なんてこんなもんですよ。」
俺らが移動していると男性の怒号が聞こえた。
「おい!水はまだか!!」
「は、はい!ただいま!!」
「あと弁当持ってこい!今日は鰻の気分だ!!」
「い、今から買いに行きます!!」
椅子にふんぞり返って、撮影スタッフに怒号を浴びせて命令する男性が居た。
「あの人が?」
「はい、彼が主役ヒーローのスタントマンのイバリさんです。あの、イバリさん。」
依頼人はイバリという男に呼びかけた。
「あ?何だよ?」
「これ以上横暴な態度はやめていただけませんか?スタッフの方達が困ってます。」
「はぁ?俺に逆らったらどーなるか分かってんの?この撮影のスタント降りるぞ?俺が下りたら映画のクアリティが下がって困るんじゃないのか?」
「やめて頂いて結構です。あなたの代役が見つかりましたので。」
「はぁ?もしかしてそこに居る陰キャ野郎か?」
俺を見て嘲笑うイバリ。
「こんな奴に俺の代役がつとまるかよ。冗談は止めてくれよ。」
「冗談じゃない!私は真剣だ!彼ならきっと君以上の演技をしてくれる!」
ちょっ、ハードル上げすぎないか!?
「それじゃあどれほど凄いか、お手並み拝見としようか。俺以上の演技だったらやめてやるよ。」
そう啖呵切ったイバリ。表情からして俺を見下してるだろう。
スタントマンの演技は初めてだが、まぁやるだけの事はしてみるさ。
衣装室に案内された俺は依頼人からヒーロースーツを渡された。
お、おいおい。これって・・・・!
「こ、この衣装を着なきゃいけないのか!?」
「はい!これが主役ヒーローの衣装なんです。何かご不満でも・・・。」
「い、いや・・・不満っていうか・・・。」
完っ全にこれ『グレートサイヤマン』の衣装じゃねぇーか!
何でこの世界にこの衣装が!?
「あ、あのこの衣装の発案者って誰でしょうか・・・?」
「ん?私だよ。私の希望通りのカッコイイ衣装だと思わないか?これぞヒーローって感じするよね!なのにイバリの奴、この衣装をダサいって言うんですよ!!酷くないですか!?」
「あ~・・・はははは・・・・。」
こ、これに関してはイバリっていう人に同意する。
この依頼人のカッコイイの感性は悟飯と一緒のようだ。正直、この衣装着るのは嫌だ。悟飯と一緒に登校するとき何度他人の振りしたことか。
結局、依頼人に逆らえずにヒーロー衣装に着替えた。依頼人からこのドラマの簡単な説明をされた。
この映画のタイトルは『お守りヒーロー グレートイチューマン』。困ってる人を助け、世界を我が物とする悪と戦う子供向けのヒーロー映画との事だ。
ヒーロー物にしちゃあ定番な設定だな。
このドラマの見所は見応えある戦闘シーンだそうだ。俺はそれをやらなきゃいけないのか・・・。
「あの代役の人、筋肉すごくない?」
「やだ、ちょっと触ってみたい。」
スタッフの方達からそう影で言われる。
「ま、まぁ陰キャにしては意外に鍛えてるようだね。お、俺ほどじゃないけど。」
引き攣った顔でそう言うイバリ。陰キャが鍛えて悪かったな。
「それじゃあ早速撮影を開始します!今撮影するシーンは主役が敵に囲まれながらも次々と倒していくって所ね。」
「監督、動きの手順は・・・。」
「アドリブでやってみてはどうかな?」
悪役のスタントマンが依頼人に動きの流れを聞こうとした所をイバリが割って入ってきた。
「俺より演技できるならそれくらいしてもらわないと。」
この人、俺に恥かかせたいっていう魂胆が見え見えだぞ。
「カゲチヨ君。すまないがアドリブでお願いできる?」
「あー・・・まぁいいですけど、他の方は大丈夫なら思いっきり襲い掛かってきてもいいですよ。」
「え、それじゃあ君が怪我してしまうんじゃ・・・。」
「大丈夫っす。頑丈なのが取り柄何で気にしないでください。」
「そ、そう?」
イバリの提案でアドリブ戦闘の演技をすることになった。
「ヨーイアクション!!」
依頼人の声と共に悪役の人達が一斉に襲い掛かるが、その場から動かず、身体だけ回避する。
(んー・・・。見ごたえのある演技って何だろう?派手に動けばいいのかな?)
ジャンプして一人に悪役の背後に着地して足払い、地面に殴る演技をして怪我しないように叩きつける。
殴り掛かってくる一人の悪役の拳を指一本で止めて顎に当てないようにアッパー。流石スタントマン。俺の行動を瞬時に理解して顎に当たったフリをして後転。
背後から襲い掛かる悪役の拳を避け腕を滑らすように回転し首辺りを軽く当てるフリ。
蹴りを入れる悪役の攻撃をバク転で回避して、そのまま真っ直ぐに突撃した。俺が突撃したことで驚いた悪役の目の前でジャンプし背後に蹴りを掠る程度とどめた。
なるべく当てないように手加減するのは、天下一武道会のパンチングマシーンと同じくらい難しいな。
演技をやり終えて一息ついたところ、依頼人達を見るとみんなポカーンっとした顔をしていた。
あ、あれ?俺なんか不味い事してしまったか?
「す、すごい!!すごいよカゲチヨ君!!」
「は、はい?」
「いや~私の眼には狂いはなかった!!やっぱり君を選んで正解だったよ!!」
「は・・・はぁ・・・。」
よ、喜んでくれてるみたいでよかった・・・。
「他の撮影も引き続きよろしく頼むよ!!」
「あ、はい・・・。」
この先もこの格好で演技しなきゃいけないのか・・・。悟空達やヒサ達が居なくて本当によかった。
「ぐぬぬぬぬ・・・!」
背後のイバリに睨まれていた。嫉妬するくらいなら態度を改めればいいのに。
こんな感じで撮影が続くのかな?
なんとも大変で面倒な依頼を引き受けたもんだ。
この撮影・・・大丈夫だろうか・・・不安だ。