人気の居ない夜道。
スーツを着た男性が怯えた表情で尻もちをつき一人の女性に視線を向けた。
「まさか・・・お前か・・・?最近噂の通り魔って・・・っ。」
男性の視線の先には、血の付いたナイフを片手に持った
ヒサメだった。
カレコレ屋にて
現在、カゲチヨの前にはたくさんの玩具がテーブルの上に置いてあった。
「おい、何でこんなに玩具ばっか置いてあるんだ?」
刃が引っ込む玩具を持ちながらシディに質問をぶつける。
「公園の子供たちに配ろうと思ってな。オーナーから貰ったんだ。」
「お前の子供好きは度が過ぎるな。まぁいいけんどよ。」
「カゲチヨは何か欲しいのあるか?」
「いらん。」
「そうか・・・。ヒサメはどうだ?」
「う、ううん。私もいいや。」
苦笑いで片手を上げて断ったヒサメ。
その上げた手には包帯が巻かれていたことにカゲチヨとシディは気付く。
「・・・ん?その手・・・。」
「・・・っ。」
シディに指摘されたことで、まずいっという表情したヒサメ。
「怪我でもしたのか?」
「ううん!大丈夫!ちょっと切っただけだから!・・・ごめん。私用事思い出したから帰るね・・・っ。」
逃げる様に部屋から出た。
「・・・む。」
「構いすぎる男は嫌われるぞ。」
呆れた物言いをしてくるボティス。
(何だ?ヒサの様子が変・・・。しかもヒサとは違う別の気が微弱だが感じる。どーなってるんだ?)
カゲチヨはヒサメの不審な行動に違和感を持ち、夜中にヒサメの住むマンションの前まで上空で待機。
「・・・もう少しで12時か・・・。流石にこんな夜中では何もしないか。」
帰ろうとした時、部屋のドアが開き、ヒサメが出てきた。
(ヒサ!?こんな夜中にどこ行く気だ?・・・・待て。こいつ本当にヒサか?)
上空からバレない様にヒサの後をついたら、廃墟ビルに入っていた。
「ひぃぃぃ!!」
「!?」
男性の悲鳴が聞こえた。
気を探ると、この廃墟ビルの中には、自分を除いて2人。
さっきの悲鳴が2人のうち1人が男性のものだったら、もう1つはヒサメだって事になるとカゲチヨは考え、急いでヒサメの元に向かう。
カゲチヨが見た光景は、尻もちついた男性と、血が付いたナイフを持ったヒサメだった。
「・・・何だよぉ・・・何なんだよお前は・・・っ!!」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「ヒサ・・・何やってんだよお前。」
「え・・・カゲ?」
声に反応しカゲチヨの方へ視線を向けるヒサメ。
ヒサメを見つつ、尻もちついてる男に語りだす。
「おい、そこのアンタ。」
「は、はい!」
「立てるなら早く逃げろ。こいつは俺が止めとく。」
「わ、わかった!」
男は立ち上がり、急いで逃げて行った。
今、部屋の中にはカゲチヨとヒササメだけになった。
「ヒサ。」
「違うのカゲ。話を聞いて。これはね・・・。」
そう言ってカゲチヨにナイフを突き刺そうとするヒサメだったが、反対の手でそれを静止。
「・・・せない・・・っ!それだけは・・・絶対に・・・!」
『チッ・・・しぶてぇなぁ・・・。まだ意識保ってられてんのかよ。』
「やっぱり。ヒサの中に何か言るな。誰だ。」
『えぇー?何言ってんのカゲ。私はヒサ・・・。』
「もう一度言う。テメェーは誰だ!」
誤魔化そうとしたヒサメの中に居る奴にカゲチヨは怒気を強めてもう一度聞き出す。
カゲチヨの怒気に怯むどころか口角を上げて怪しい笑みを見せた。
『キヒヒッ。頭が高ぇぞ下等生物。いいぜ。そこまで言うなら教えてやるよ!俺はこのメスの脳に巣食ってる寄生生命体様だぁ!』
「寄生生命体だと?」
『数日前だったかなぁ?ついつい遊び過ぎちまって、前の身体駄目にしちまったんだわ!動かねぇし・・・もう最悪だったぜ。くたばるのも時間の問題だった。だが俺はツイてた!現れたこのメスにすぐさま俺は乗り移ったね。こいつは当然抵抗してきたが。無駄な努力ご苦労なこったぁ。すでに俺には宿主の脳と接続してる。体の支配権を奪うなんざ時間の問題なんだよぉ!』
「・・・・。」
『他種族の身体奪って1番楽しい事って何だと思う?油断させた同族をいたぶる事だよ。サイコーに気持ちいいんだぜぃ!幸いこのメスは当たりでオスを誘き寄せるには苦労しなかった。・・・けどな。このメスの往生際の悪さにはもうウンザリしてんだわぁ。楽しもうとするといつも水差しやがる。』
(なるほど。その包帯は人を刺さない様に反対の手で刃の部分を握って止めた時に付けた怪我だったって事か。まったく・・・無茶をする。)
『だから俺は方針を変えた。お前ら普通じゃないんだろ?脳から記憶を見たぜ。』
寄生生命体は、ヒサメからカゲチヨかシディに乗り移ろうかと言い出し、ヒサメはそんな事させないと意思を固めるが寄生生命体はそんなヒサメを嘲笑う。
ヒサメは、自分でどうにかしないとと考えても思い浮かばずに、誰にも相談できなかった。
「・・・っ。」
カゲチヨはその話を聞いて怒りを覚えた。
そんな事もいざ知らず、寄生生命体は語り出す。
『こいつのしぶとさには心底ウンザリさせられたが、お前らをだしに使ったら簡単に弱ってったぜ?見ろぉ!洗脳が深まった今!こんな事も出来んだよぉ!』
ヒサメの氷能力を使ってカゲチヨの居た場所を氷漬けにした。
カゲチヨはバックステップで回避。
『キヒヒヒ!手間かけただけあるぜ。こいつは最高の身体だ!』
「ムカつくぜ。」
『ハハ!そうだろぉ!仲間の身体じゃ手は出せ・・・。』
「俺がムカついてるのはテメェじゃねぇ!!ヒサ!!お前だ!!」
(・・・・っ。)
今にも意識が消えかかりそうな時に、ヒサメのはカゲチヨの言葉に耳を傾けた。
「散々偉そうに俺に「1人で抱え込んでカッコつけな」って言って置きながら、一番お前が1人で抱え込んでるんじゃねーかよ!シディ含め、3人でカレコレ屋なんだろ!」
(カゲ・・・っ。)
「・・・お前が口先だけの女だって事がよくわかった・・・。今までも、俺の事あんま信用とかしてなかったもんな。・・・もういいよ。」
カゲチヨはヒサメに向けて手の平をかざした。
「意識が無くなってそいつに支配されて殺人犯にされるくらいなら、ヒサのまま死なせてやるよ。俺の手でな。」
『お、お前なにを・・・!!』
そう言うとカゲチヨは気の衝撃波を放ち、食らったヒサメはビルの外へと飛び出してしまい、落下していく。
(ごめんねカゲ・・・。カゲの言う通りだよ。カゲに散々無茶するなって言って置きながら自分も人の事言えなかっな。口先だけって言われても仕方がないよね・・・。)
カゲチヨに落とされながらも、ヒサメは瞳を閉じて笑顔を浮かべた。
これで2人を巻き込まなくて済むと思ったからだ。
(でも・・・死ぬ前に・・・カゲに・・・好きって言いたかったな・・・。)
閉じた瞳から涙が流れた。
『あ、あいつ狂ってやがる!!仲間を落としやがった!!道連れなんて御免だぞ!!早く逃げねぇと!!』
耳の穴から寄生生命体が飛び出し逃れようとした。
「出てくれて助かったぜ。」
『!?』
待っていたかのようにカゲチヨは片手に気を溜め込み、寄生生命体へと向けた。
「あばよ。」
『ぎゃああああああ!!!!』
気功波を撃ち込み、寄生生命体は消滅していった。
放った瞬時に、急いでヒサメを抱えて助けた。
「カゲ・・・。」
「さっきは悪かったな。あぁーでもしないと出てこないと思ったんだ。」
「・・・~~バカバカバカバカ!!仲間をビルから落とすとか最低!!」
「わわ!こら叩くな!悪かったって!」
大泣きながらヒサメはカゲチヨの胸をボカボカ殴りつける。
「本当に・・・死ぬかと思った・・・。」
「だから悪かったって。でもよ、相談せずにずっと1人で抱え込んでたんだ。お相子だろ?」
「うっ・・・。」
カゲチヨの指摘に言葉を詰まらせるヒサメ。
それ言われては何も言えなくなる。
「今度なんかあった時はちゃんと話せよ。お前の起きた問題は俺たち全員の問題だからな。お前が拒絶しようが俺やシディは手を伸ばすぜ。」
「・・・うん。シディ含めて頼りにしてるよ。」
寄生された時とは違い、今度は可愛い笑みを浮かべたヒサメを見たカゲチヨはフッと少しだけ笑った。
「さっ、部屋まで送ってやるからしっかり捕まってろよ。」
「はーい!」
笑顔でカゲチヨの首に手を回した。
好きな人の温もりを1秒でも長く感じていたいとヒサメは思った。
「何かあった時はちゃんと話せってカゲ言うけど、だったら夏休み中何かあったか話してよ。」
「それとこれとは話は別だ。」
「えー!それズルくない!?」
「別に隠しても死にやしないんだから別にいいだろ。」
「良くない!!」