カチャカチャ
「・・・何してるの?」
何やら大きい機械のような物を作っているカゲチヨに、農作業を終えたロットが疑問を持ちかける。
「あぁこれか。ちょいと重力室でも作ろうかと思ってな。」
「重力室?」
「この前、Drウイローって奴との戦いで、まだまだ修行足りねぇーなと思ってな。それに前々から作ろうと思っていたんで丁度良かったんでな。今から作ろうと考えたんだ。」
「それ作ってどーするの?」
「重力を重くして修行するのさ。」
「それで強くなるの?」
「あぁなるなる。」
ふーんっとまじまじと機械を見るロット。
実を言うと、カゲチヨはよくブリーフ博士やブルマと一緒に宇宙船を作ったりとそれなりの機械系の知識があるため、重力室を作るなんて造作もなかった。
なんなら、重力室を作った後、宇宙船でも作ろうかなとも考えている。
カゲチヨが作業してる横で、ロットは目の前のボタンが気になってしまい押そうとした。
「あ!馬鹿!押すな!!」
「え?」
カゲチヨが制するも遅く、ボタンを押してしまったロット。そして機械から光が差し爆発してしまった。
黒い煙が舞い、晴れた先に黒焦げのカゲチヨとロットが棒立ちで居た。
「・・・・・・作ってる途中にボタン押すなよ。」
「・・・・げほっ。」
作業を一時中断し、マンションに帰ってシャワーを浴びることにした2人であった。
カゲチヨside
シャワー浴びた後、壊れた機材を買うために道端を歩いてたらシディと遭遇した。
「あれシディ?何やってんだ?」
「む。カゲチヨか。俺はヒサメと共に出かけていてな。」
「そのヒサは見当たらないが?」
「うむ。何でもこの辺りにある限定メロンパンを買いに行ってな。帰ってくるまで待ってるんだが・・・。」
淡々と話してたシディが何やら考えてる表情になった。
「どーした?」
「いや、あまりにも帰ってくるのが遅いと思ってな。かれこれ一時間は経ってる。」
一時間とは、それは確かに長い。
まさか、また何かに巻き込まれたのか?
「何もなければいいが・・・。」
シディの言う通り、確かに心配だ。
あいつ、どこか抜けてる所あるからな。
油断して誘拐なんてされてるのかもしれない。
俺はヒサの気を探り始めようとしたら・・・・
「来ないで!!やめて!!」
「「!!」」
ヒサの大きな声が聞こえた。
声の出先の方へ向かうと、一派の人に囲まれ、耳をふさいでしゃがんでるヒサの姿が見えた。
「ヒサ!大丈夫か!何かあったのか!」
「・・・誰?」
な!?
俺を分かってない?
俺がヒサの言動に驚いてる横目にシディは眼鏡かけたサラリーマンに事情を聞き出した。
「すまない。何があったのか教えてくれるか?」
「いや~、なんかこの子がいきなり叫び出して、「異宙人とは戦いたくない」だとか「施設に戻るのは嫌だ」とか」
それって、まるで俺達と出会う前に戻ったみたいじゃないか。
とりあえず、今の状況は流石にまずい。
「とりあえず帰ろう。」
「やめて!!」
俺が手を差し伸べるが拒絶し手をはたき落とされた。
「もう実験はやだ!戦いたくない!」
「っ!」
「何でもする!何でもするから!!もう許して・・・お願いします・・・お願いします・・・。」
この怯え方は普通じゃない!
まず、俺達だってことを分からせないと・・・。
「落ち着け。俺だ。カゲチヨだ。」
「いったいどうしたんだヒサメ!」
なるべくこれ以上怯えさせない様に冷静に話し掛けなきゃ。
だがヒサの次の言葉で、俺らは思考を停止してしまった。
「・・・ヒサメって誰?」
「「!!」」
まさか、自分のことも忘れてしまったのかよ。
今のヒサは前の俺とロットと同じく、記憶を一部失っているって言うのかよ!
っともかく、考えるのは後だ。
今はこの場から離れなきゃならねぇ。
出来るだけ怖がらせないようにしないとな。
「・・・とにかく、ここじゃあ人に迷惑かけてしまう。いったん落ち着けるところに行こう。大丈夫だ。施設には送らない。」
「・・・本当?痛くしない?」
今にも泣き出しそうなヒサに俺は頭を撫でてやった。
「お前を傷つける事は絶対にしない。約束する。」
「・・・・わかった。」
ヒサが落ち着いたところで一先ずこの場から離れて、カレコレ屋へと向かった。
ヒサの事はシディに任せて、俺はオーナーにヒサの現状を説明した。
「十中八九、異宙人関連の仕業だな。」
「何か知ってるのか?」
「悪いが詳しい事は分からない。だが最近記憶を喰う異宙人とやらがこの地域に居ると言う噂を聞いている。」
「記憶を喰う・・・。」
「あぁ。私は出来る限りそいつの情報を集めよう。」
「頼んだ。その間俺らはヒサの様子を見てる。」
オーナーが情報を持って来るまで待たなきゃいけないってのももどかしい話だぜ。
リサイクルショップから出てカレコレ屋に戻ってヒサの様子をシディに聞いたが、さっきよりは落ち着いてくれているようだが、記憶の方が変化なし。
ロットと同じ状態か・・・。どーしたものか。
「あ・・・あの。」
「ん?」
腕を組んで考えていると、ヒサが不安気に俺らに話し掛けて来た。
「どーした?」
「その・・・さっきはごめんなさい!」
急に謝られた。
なんか謝れる事されたっけ?
「わ、私、研究所の人だと勘違いしちゃって・・・。」
「それは気にしなくていい。・・・お前にとって辛い質問するが、研究所にいた記憶はあるのか?」
「うん・・・。でも私は何でここに居るのか、あなたちは誰なのか全然思い出せない。」
やっぱり失ってるのは俺達との出会いや、カレコレ屋での過ごした日常での記憶のようだ。
「あの・・・質問してもいい?どうしても聞きたい事があって。」
「ん、あぁいいぞ。」
ヒサからの質問を淡々に答えた俺達。
質問の答えに、ヒサはびっくりした表情を見せる。
「えぇぇぇ!!研究所無くなったの!?なんで!?」
「そんなの俺らがぶっ壊したからな。」
「ぶっ壊したの!?一体どうやって・・・。」
「前過ぎて忘れた。」
「忘れたって・・・話から考えるに数ヶ月前とかじゃないの?」
「うるせー。俺にとっては昔の事なんだよ。」
数百年も生きてりゃ細かい記憶が曖昧になってしまうんだよ。
「あ、あなたち何者?」
改めて自己紹介するか。
「俺はカゲチヨ。吸血鬼とゾンビのハーフだ。」
後、戦闘民族の細胞を取り込んだサイヤ人だ。
「俺はシディだ。ホルスと狼男の力を持っている。」
「えぇ・・・なんか凄いね。」
「そしてヒサ・・・じゃなくて、お前にはヒサメって名前があるんだ。」
「ヒサメ・・・私の名前・・・。」
手を顎に当て少し考えて俺の方を見た。
「もしかしてカゲチヨって・・・。」
「何か思い出したか?」
「私の恋人・・・とか「違う」く、食い気味に否定された・・・。」
確かに、昔はヒサの事好きだったが、恋人になった記憶はないぞ。
「何でそー言う発想になるんだよ。」
「だって私の名前知ってたし、一緒に暮らしてる感じがあったから・・・。」
「俺達はそー言う関係じゃねぇ。」
「あ、そーなの?じゃぁ一体どういう・・・。」
どーって普通に仲間だとかだろ。
俺がそう言おうとした時、シディが割りこんで来た。
「ヒサメ、俺達は出身も違ければ、血の繋がりもない。だが・・・。」
おいおい、間違っても変な事言うなよシディ。
「家族同然の関係だ!心配するな!」
「話をややこしくするなぁ!!」
余計混乱するだろうが!!
ヒサも混乱してるじゃねぇーか!!
「今のは忘れてくれ。俺らの関係だったな。俺らはカレコレ屋っていう何でも屋を一緒にやっている仲間だ。んでお前もそのメンバーの一人って訳だ。」
「何でも屋?例えばどんなことを?」
「脱走した猫の捜索やら。時には死と隣り合わせの危ない仕事や極秘の依頼まで俺達は協力して乗り越えてきたんだ。」
「死と隣り合わせって、まさか裏社会系の・・・・。」
「違う。ペット探しとかもやってるからな。」
確かにデスゲームとか変な薬とか変な実験とかそんな危ない事ばっかな依頼を引き受ける事は多いがよぉ。
「私が何でも屋。そんな自由に暮らしてたんだ。」
「まぁ、俺らは過去に大変な事があったけど、今は学校に行ったり依頼受けたり好きな物食ったりと、なんだかんだ楽しくやってんだ。」
「そうだぞ。危ない仕事もあるが、毎日が充実している。カゲチヨと、そしてヒサメのおかげだ。」
「・・・・。」
すると、ヒサの目からポロポロと涙が零れ落ちた。
「ヒサ?」
「すまない!何か傷付くようなことを・・・。」
「ううん!違うの!!なんか信じられなくて・・・。私は一生あの研究所で独りぼっちだと思ったから・・・。こんないい人達と毎日自由に過ごせていたなんて思ったら・・・。」
「・・・・。」
「きっとここでの記憶は凄い幸せだったんだろうな。私にとって・・・。」
未だにポロポロと泣いてるヒサの涙をハンカチで拭って頭を撫でてやった。
「お前はこれから先も、自由に過ごせる。もう怯える必要はない。何かがあれば俺達が必ず守って見せるさ。」
「カゲチヨ・・・。」
「カゲでいいよ。」
「カゲ・・・ありがとう。」
涙は少し流してはいるが、ヒサは満面の笑みを俺らに見せてくれた。
「カゲチヨ。」
話をひと段落した所で、オーナーがカレコレ屋にやって来た。
「何か分かったのか?」
「あぁ。ここじゃああれだ。上に来い。そこで話す。」
「わかった。シディ、ヒサを任せるか?」
「あぁ。」
オーナーについて行こうとした時、ヒサが俺のパーカーを引っ張った。
「あの・・・その・・・。」
「大丈夫だ。お前は飯を食いながらでもして待っててくれ。」
「・・・うん。」
俺を心配する表情で見送ってくれた。
ヒサ、お前の記憶は絶対に取り戻すからな。
上のリサイクルショップにてオーナーから情報を聞き出した。
「まず記憶を奪う異宙人のことだが、メモリイーターと呼ばれているらしい。」
ファイルに挟んだ資料を俺に手渡し、話を続けていく。
「鋭い嗅覚と聴覚を持った狼のような異宙人だ。一人でいる人間を狙い、数十人程度の記憶を食べては移動するの繰り返す。」
「率直な事聞くが、ヒサの記憶は戻せるのか?」
「・・・残念だが、記憶が戻ったという記録は見つからなった。一度喰われた記憶はほとんどを食べ、喰われた記憶はもう戻らない。仮に捕まえられたとしても、すでに全ての記憶を喰われている可能性が高い。」
「そっか・・・。」
絶望的状況って奴か・・・。
「幸いこの異宙人は一定期間同じ地域に留まっている。すぐに見つけられると思うが・・・。」
なら、ヒサが限定メロンパンを買った場所をくまなく探せば何かわかるかもしれない。
オーナーの説明の途中で目的の場所へと向かった。
「誰だお前?」
見つけた。
案外早くメモリイーターらしき狼型の異宙人をビルとビルの間で発見した。
この辺で一番気が大きかった奴はこいつしかいなかった。
「テメェ。ヒサの記憶を奪ったな?」
「記憶を奪う?よく分からねぇな。ただ・・・・記憶を喰う奴なら目の前に居るぜ!!」
俺に襲い掛かるメモリイーターのパンチを軽く避ける。
そんな遅いパンチじゃ当たんねぇーぞ。
「やっぱり。テメェだったか。」
「待ってたかいがあったな。」
「何?」
「仲間のために俺を捕まえに来るような馬鹿を!」
馬鹿・・・・ふっ、馬鹿ねぇ。
「そういう奴の記憶ほど最高に旨いんだ!!」
舐めてかかってるのか、「馬鹿正直」に直進で向かってくる。
ドガァァァァン!!
「ぐぼぁ!!」
だからこそ、簡単に倒す事が出来る。
「どーやら、馬鹿はお前だったようだな。」
「う、あぁぁ・・・。」
メモリイーターの首元をを掴んでカレコレ屋へと向かった。
テメェにはまだやってもらわなきゃいけねぇー事があるんだよ。
簡単には逃がさねぇからな。
警察を呼び、メモリイーターの背後に立って警戒してもらい、ヒサの記憶を戻すように野郎を脅した。
「ヒサに馬鹿な真似をしてみろ。俺が作った猛毒をお前の体内にぶち込むからな。」
「ちっ、わかったよ!」
手の平をヒサに向けると、ヒサは気絶したかのように倒れ込み、瞬時に支えた。
「ヒサ!」
「くそっ!お前の記憶幸せ過ぎなんだよ!おかげで動きが鈍った!!」
そう言い捨てながら、警察に連行されていった。
例え動きが鈍くなくても、お前の結果は変わらねぇーよ。刑務所で空腹に悶えるんだな。
「・・・カゲ?」
「俺の事、誰だかわかるか?」
「何言ってるの?普通にカゲでしょ?」
「じゃあこいつは?」
「シディだけど・・・何なの?」
「じゃあ、一週間前にあった依頼は?」
「えっ、依頼人のペット探し?」
「昨日の晩御飯は?」
「昨日の晩御飯は・・・あれ?何だっけ?一昨日はシディのカレーだった気がするけど。」
どうやら思い出しはしたが、昨日の事は憶えてないらしい。
一応、報告ついでにオーナーに話しておくか・・・。
再度、オーナーがいるリサイクルショップに足を運んだ俺は、ヒサの記憶が戻ったと報告した所、どうやらあのメモリイーターは幸せの記憶のみを食べるらしい。
「質や量によって腹を満たす様だ。だから昔の辛い記憶は残っていたんだろう。」
なるほどな。だから研究所に居た頃の記憶しか残ってなかったのか・・・・。
ん、待てよ?
「一つ気になる事があるんだが、ヒサの奴、昨日の記憶だけ無くなってたんだ。つまり喰われたって事だよな。でもオーナーは記憶を喰われた場合、ほとんどなくなると言ってたじゃねぇーか。」
「なるほどな。」
「何かわかったのか?」
「逆に分からないのか?」
?どー言う事なんだ?
さっぱり分からん。
「はぁ・・・。これだから女にモテないんだ。」
「モテなくて悪かったな。分かったんなら教えてくれ。」
「つまりあの異宙人は昨日の記憶だけでお腹いっぱいになったって事だろ。昨日の記憶。つまりお前らと過ごしていた、ただの何気ない日常があの子にとってはそれくらい幸せなものだって事じゃないのか?」
「な、なるほど。」
そっか。ずっと研究所で実験やらで過酷な日々を過ごしてたもんな。
今のヒサにとっては、俺達や学校の奴らと過ごす何気ない日常が一番幸せって事か。
そー思うと、何か照れるな。
「分かってスッキリしたぜ。サンキューな。」
「お前はもう少し、女心を分かってやれ。」
「やかましい!!」
一言余計だっつーの。
俺はそういうスキルは数百年たっても身に付けなかったんだよ!
少なくとも、悟空よりかはマシだ!
「カゲー!なんかわからないけどシディがお祝いに料理作ってくれるって!一緒に食べよ!」
「ア”ァ”わかったー。」
ヒサ。
覚えてないと思うが、お前の何気ない幸せな日常は、俺達が絶対に守ってやるからな。