建物の中で、白いタクシードを着た男性とウェディングドレスを着た女性が並んで写真撮影していた。
「御新郎様~。もうちょっと自然に笑って~。」
「もう~なに~。緊張してるの~?」
「いや、するだろ、こんな格好・・・。」
そんな和やかな雰囲気だった会場が、突如現れた男によって台無しにされた。
「ブファッ!!」
カメラマンの男性がその男に思いっきり蹴られ、吹き飛ばされた。
「えっ?えっ?えっ?」
「な、なんですか?」
動揺する男女に近付くその男は、下駄を履き、赤の蛇柄のシャツを着て、オールバックの三つ編みの頭をしていた。
一目見て、ヤクザのような男だった。
「俺がやられて嫌な事は俺にやるな。親から習わなかったのか?」
「は?」
「お前らみたいなクソカップルが幸せそうにしてるの見たらさぁ・・・。」
「こ、こないでください・・・・。」
「イライラするだろうがぁ!!」
「ガハッ!!」
周囲の前で新郎の男性の顔面をボコボコにしだした。
そんな光景に新婦の女性は悲鳴を上げる。
「誰か!!警察呼んでぇえええええええ!!」
そんな女性の声も空しく、男は新郎の顔面を殴り続け、胸ぐらを掴んだ。
「ったく。人の迷惑を考えろよな。これに懲りたらこれからは相手の立場に立って物事を考えろよ。」
「アニキ。警察が来ます。」
下っ端らしき男がその男性に報告をしてきた。
「あいよー。」
男は、警察の前だろうと、堂々と前を歩いて、上機嫌で片手を上げる。
「やーやー!ご苦労さん。この国の警察官は優しくて真面目だな。」
警察は汗をかきながらも、その男には手を出せなかった。
っと言うのも、この男は、府露斗会の若頭・蝮谷キワミチという男だった。
「動くな!現行犯逮捕だ!!」
「ところでよぉ。家族の絆ってのは何物にも代えがたいよなぁ。」
「は?」
何を言ってるのか訳が分からない警察。
「その男には手を出すな。すぐに所に戻るんだ。」
「はぁ!?どうしてですか!?」
「どうみても奴は犯罪者です!!」
急な撤退命令に納得のいかない他の警察達。
「いいから戻れ!」
「・・・なんで?」
警察は相手がキワミチと知って撤退する事になった。
◇◇◇◇◇
カゲチヨside
今、俺の目の前に目つきが荒んだ女性がカレコレ屋へと依頼しにやって来た。
「夫は今も集中治療室に入っています。良くても後遺症が残るだろうってお医者様は言ってました。私達には幸せな結婚生活が待っていたはずなのに・・・。警察も奴の言いなりなんです・・・。」
「その旦那さんを重症に追い込んだ奴の名は?」
「蝮谷キワミチ・・・奴に復讐を・・・どうか復讐をお願いします!!」
昔の俺だったら、こっちに火の粉が降りかかるから依頼を断っていただろう・・・。
だが、この依頼人の覚悟とそいつの理不尽さを聞いて黙ってられるほど、俺にはできない。
「依頼を受けてもいいが、条件がある。」
「条件・・・?」
「復讐が成功する失敗するに関わらず、この依頼は俺だけに留めろ。」
「・・・・。」
「他の奴をこれ以上巻き込むな。いいな?」
「・・・わかりました。」
これでヒサとシディの耳に入る事はないだろう。
こんな胸糞案件、あの2人に関わらせちゃダメだ。
「あの・・・依頼しておいてなんですが・・・。キワミチは何か不思議な力を持っているらしいんです。大丈夫でしょうか・・・?」
「さぁーな。その辺は調べてみないと何とも言えんな。」
まぁ。何して来ようが、負ける気しないけどな。
◇◇◇◇◇
今、俺の前には府露斗組の事務所前に来ていた。
一応、素性を隠すためにパーカーの下に仮面を被っておくか。
さて、殴り込みと行こうか。
手に気を溜め、そのまま気功波で建物を破壊。
慌てだして出てきたヤクザどもを、ウイルスで気絶させた。
「な、なんだテメッ!!」
「さぁ?なんだろうな?」
下っ端の頭を踏み潰し地面に減り込ませた。
建物の奥に入り、キワミチと対面していた。
「お前がキワミチとかいう自己中野郎か。今まで暴れていた付けを返しに来たぜ。」
「あぁ?俺の気持ちを考えずに不快にする人間を懲らしめてるだけだ。」
「じゃあ次は、お前が懲らしめられる番だな。」
「いきなり他人様の事務所に入ってくるなんて悪い奴だ。」
奴は近くにあった刀を抜き、構えだす。
「自分の家に勝手に知らない奴が入ってきたら嫌だろ?」
その刀を俺の方に振りかぶって切りかかる。
「相手の気持ち考えろっ!!」
俺はそいつの斬撃を
ガキン!!
「なっ!!」
指一本で防いだ。
「どーした?それで全力か?」
「ぐっ、このぉ!!」
乱れ斬撃が来るも、指一本で全て防ぎ、俺に傷一つも付けれなかった。
「くそっ!!なんで切れねぇー!!数ミリでも切れさえすればヒュドラの毒でテメェーなんかすぐに終わらせてやるのに!!」
なるほど、依頼人が言っていた不思議な力っていうのはこういう事か。
「そいつは残念だったな。お前じゃあ俺に傷一つすらつけらんねぇーよ。」
まぁ、例えつけられたとしても、俺にそんな
「んで?俺の気持ちも考えず不快にする人間を懲らしめる・・・だったっけ?」
「ひっ!」
「なら、お前の考えにのっとって、俺を不愉快にさせた貴様を懲らしめてやるよ。」
ボガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
奴の身体全体に拳を叩きつけた。
「ぐぼがぁああああ!!」
キワミチは思った。
「何で俺がこんな目に」・・・っと。
自分も理不尽な事しておいて、何とも自分勝手な男だ。
這いずりながら逃げようとするも、突然苦しみだした。
(がっ!!何だ!?身体が思う様に・・・っ。)
「俺のウイルスをお前に注入した。」
「ば・・・馬鹿なっ!俺はただの毒じゃあ効か・・・ない・・・ハズっ!」
「効いたんだからそれが全てだろ。安心しろ。お前を殺すつもりはない。だが、一週間はその永遠の苦痛と共に生きるんだな。」
キワミチは指を動かすだけで、全身に激痛が走る。
それも、失神するするほどの大激痛だ。
キワミチは体中汗を垂れ流し、一瞬にして顔色が悪く痩せこくってしまった。
「お前らにこんな大層な建物は要らないな。」
そう言って、気功波で事務所を破壊し、警察に連絡して飛び去って行った。
(あんな奴を生かすなんて、俺も甘くなったもんだな。)
ヒサメやシディ、そして悟空の影響だなと思ったカゲチヨだった。
◇◇◇◇◇
カゲチヨside
「府露斗組の若頭、キワミチが憔悴した状態で逮捕だって。」
「フロとグミの綿菓子?」
「府露斗組の若頭!つまり暴力団の人って事!」
「む!そーなのか!暴力は良くないな。」
今日も暇を持て余した俺らは、各々と過ごしていたら、ヒサがテレビを見てそう語った。
やはり一週間では奴の精神は持たなかったか。
あれってフリーザとかで使ったウイルスなんだけど、全然効いてなかったと言うか、膝を折れさせた程度しか効果なかったからな。
あんま役に立たなかったが、こういう時に便利だな。
「なんでも結婚式に乗り込んでは理不尽に暴力とか振るっていたらしいよ。」
「それは許せんな。警察は動かなかったのか?」
「なんか弱みとか握られてたみたいで逮捕できなかったらしいよ。」
「うむ・・・だが、なぜ急に憔悴したいたのだ?」
「さぁ?罰が当たったんじゃないかな?」
「きっと手痛いしっぺ返しにあったんだな。」
俺がやりました・・・なんて、口が裂けても言えんな。
「こんな話辞めて、飯にしようぜ。」
「そーだね!シディ!今日の晩御飯何ー?」
「今日は豚の生姜焼きだ。」
「やったー!!」
やっぱこいつらには、こういう明るい会話の方が性に合ってるよ。
どんな理不尽な事が起きても、俺がお前らを守るさ。
さて、俺も生姜焼きを食おうかね。
ヒサに取られる前にな。