カゲチヨside
「カゲ兄ちゃん。ネット記事見た?」
今日も吸血鬼化になりながらの農作業中、ロットからこんな事言われた。
「?どんな記事だ?」
「最近飛び降り多発っていう記事。」
「あぁ、なんか最近増えてるよな。この前も学校行くとき、近くのマンションで飛び降り自殺した人が居たらしい。」
「なんかストレスとかで溜め込み過ぎたのかな?」
「かもな。小さなストレスも溜めれば溜めるほど大きくなる。それを発散させなきゃ命を絶つ人が出てくるな。」
「僕もいつかそうなっちゃうのかな・・・。」
「なぁに。俺が居るんだ。辛いときはいつでも愚痴ればいい。お前は1人じゃないんだ。気楽に生きようぜ。」
ロットの頭を撫でてやると照れくさそうに笑いだした。
「まったく、貴様らは呑気じゃの。」
背後から、人間体のボティスが椅子に座ってくつろいでた。
「っというか、何でお前人間体でここに居んの?」
「貴様が馬鹿みたいに吸血鬼化になるからじゃろうが!!」
・・・あ、そうか。
俺が吸血鬼化になると自動的に人間体になるだっけ。
すっかり忘れてた。
「ったく、バラさないって言うから条件をのんだが、シディ達にバレたら本末転倒じゃろうが。」
「わ、わりぃ・・・。なら契約終了って事は出来ないのか?」
「出来んな。一度その条件にしたら最後、死ぬまでそのままじゃ。」
「つまり永久って事か。」
「そーなるな。」
あぁー、過去の俺よ。
なぜ吸血鬼になれるまでという条件を付けなかったんだ。
詰めが甘いぞ・・・。
って自分自身に言っても仕方がないか・・・。
「あ、そーだ。暇そうなら修行に付き合ってくれよ。一度、お前と本気で戦いたかったんだ。」
「誰がするか面倒くさい。」
「頼むよ。心臓やるからさ。」
「貴様の腐った心臓など要らんわ!(それに・・・ワシではこやつに勝てるヴィジョンが、悔しいが浮かばん・・・。いったいどこでそんな力を手に入れたのやら・・・。)」
ちぇ、やっぱダメか。
仕方がねぇ、また重力室でイメージトレーニングでもしてくるか。
全盛期に戻るのはまだまだ先だな・・・・。
◇◇◇◇◇
「ねーカゲチヨー。」
学校にて、ミキとノリコが俺の机の前にやって来た。
「ヒーちゃん最近変じゃない?」
「ボランティア活動とかかなり忙しそうなんだよ。」
「お昼も食べずにゴミ拾いしてるの。ここ最近ずっとだよ・・・。」
確かに、最近のヒサはどこか生気がない。
ボランティア活動するのはいい事だが、ご飯を食べないのは異常だ。
それにヒサがご飯を食べないのも変だ。
何かあったのか?
ミキたちから相談されてから数時間後、ヒサと一緒に下校していた。
やはりどこか生気はない。
「ヒサ、あそこの肉まん食べないか?よく売り切れるけど、今日は残ってそうだし俺が奢るぞ。」
「え、あ・・・うん・・・。」
なんだ?普段だったら喜ぶはずが、今の反応はどこかぎこちない。
肉まんを買ってヒサに手渡したが、肉まんをじっと見て固まっていた。
「どうした?お前の好きな牛豚がずっしり入ってるぞ。」
「牛豚・・・肉・・・命・・・。」
するとヒサが涙を流した。
「ごめんカゲ!今こういうの食べられない!」
「おい!!」
ヒサはそのまま走り去っていった。
本当にどうしちまったんだ?
◇◇◇◇◇
次の日の朝。
シディと共にヒサの部屋までやって来た。
呼びかけても返事はない。
・・・だがヒサの気は感じる。
まだ中に居る様だ。
仕方がない、あまりこんな事したくなかったが・・・・。
俺は血の能力でドアのカギ穴に差し込み、鍵を開けた。
「そんな事も出来るのか。」
「あぁ。普段はやらねぇが、今回は特別だ。」
ドアを開けると、ベッドの上で窓の方を向いてヒサが座っていた。
背中に大きな翼を生やして。
「あぁ・・・カゲ・・・シディ。」
「なんだ!その翼は!」
「それにそのやつれよう・・・。いったい何があったんだ?」
「私ね、今凄い気持ちがいいの。こんなの初めて。うっ・・・あああ!!」
急に苦しみの声を上げ始めた。
どうしたと言うんだ!!
俺らが近付こうとするとヒサが必死に静止する。
「来ないで!!これは私の罪なの!!」
罪だと?
「人は生きてるだけで罪なの。私はそれを痛みで償ってる。この翼はそれを教えてくれたの。」
流石に今のヒサは異常だ。
「とにかく何にか食べよう。台所を借りるぞ。」
「待てシディ。それは逆効果だ。」
「何故だ?ヒサメはこんなに憔悴しきってるぞ!」
「今のヒサは、肉類を拒んでる。昨日買った肉まんを拒絶したんだ。きっと命があった食材全て駄目だろう。」
「なら野菜なら・・・。」
「やめて!!食べる事は命を奪う事!!肉も野菜もダメ!!私は水だけでいい!!」
ピッコロのようなナメック星人ならともかく、人間の俺達はそれだけでは生きてはいけねぇぞ!
「とにかく、今はヒサを病院に連れていこう。」
「触らないで穢らわしい!!罪滅ぼしの邪魔しないで!!」
ヒサに触れようと瞬間、俺らに向かって電撃を放った。
こいつは相当やばいな。
ヒサの精神も体力的にも。
悪いが、お前に何があったのか、記憶を少し読ませてもらうぞ!!
『ネット記事見た?最近飛び降り多発だって。』
この記憶は・・・ミキたちと下校してるときか。
この時はまだ平常みたいだ。
『ほら、あそこもそうらしいよ。』
『こんな所で!?』
『思いつめるくらいなら腹いっぱい食べるべきだな。』
『わかる。満腹だと大抵の悩みは解決するよね。』
『胃袋に脳があると思ってる?』
ここまではいつもの3人の会話だ。
『あ、2人ともあそこを見て!』
ミキがビルとビルの間に小さな子供に絡んでる輩を見つけた。
『子供!?』
『背中に羽根があるな?』
『天使・・・天使だよアレ!!』
天使の子の羽根・・・まるでヒサが生えてる羽根と同じ・・・。
ヒサは輩を追い払い、子供を助けた。
すると子供はヒサの頬にキスをして消えていった。
そこからヒサがおかしくなっていった。
なるほど・・・ヒサがこうなった原因はこいつかもしれない。
「カゲチヨ!!とりあえず今は引くぞ!!」
「・・・あぁ。」
今は情報が足りない。
オーナーに頼み込むか。
◇◇◇◇◇
「天使の翼、それにヒサメが助けた天使の子供、か。ハーピーならまだしもそんなの聞いた事も無いぞ。」
「オーナーでも情報は持ってないか・・・・。おそらくヒサはそいつと会ってからは変になったのは間違いない。」
「・・・カゲ男。他にヒサ子はどのような反応をしていた。」
「ん?あぁ、飯の拒絶、あと俺が触れようとした瞬間穢らわしいと言われたな。それに、生きてる事は罪だとも言っていた。」
「なるほどのぉ。」
「ボティス?何か知ってるのか?」
「ワシは実に気分がいい。だから助言をやろう。ヒサ子を助けるには、カゲ男。お前の出番じゃ。」
?俺の出番?
◇◇◇◇◇
ヒサメはビルの屋上で柵の前に立ち、上を見上げていた。
すると空から天使の子供がヒサの方へと降りて行った。
「貴方は・・・。」
「助けていただいた天使ですよ。ずっと貴方を見ていました。清く正しいその姿、神様がお認めになりましたよ。」
「あぁ・・・私、赦されたんだ。」
「さぁヒサメさん。一緒に天へまいりましょう。」
「やっと終わる・・・。長くて苦しかった。」
「そうでしょう。すぐに楽になりますよ。」
天使はヒサメの横に並び、背中をさする様に手を置いた。
しかし、天使が持つのに相応しくない鎌を持っていた。
「すぐ楽に、ねぇ!」
天使がヒサを突き落とそうと瞬間、天使の傍からヒサが消えた。
「ど、どこだ!?どこ行った!?」
「こっちだ。」
カゲチヨが、目にも止まらぬ速さでヒサメを抱きかかえ救出した。
「何だ貴様は!穢れなき魂から手を離しないさ!!」
「穢れなき・・・ねぇ。ならこれでどうだ?」
カゲチヨはヒサメにウイルスを注入させ、羽根をウイルスで汚染させた。
「何をした!」
「普段なら教えるつもりはないが、今回は特別に教えてやるよ。感染力の強いウイルスを打ち込んだ。もうすぐヒサは歩く細菌兵器だ。これで一気に穢れたな。」
「やめろ!!そんな事したら・・・!!」
すると汚染されたヒサメの羽根が崩れ去っていった。
「ああ!!穢れなき魂が!!」
「翼が消えて残念だったな。っというか、何で天使が鎌を持ってるんだ?まさか、今まで飛び降りしてきた人たちにもヒサと同じ手口で翼を収穫して死に追いやったのか?」
「くっそぉ・・・お、覚えてろ!!」
「逃がすと思ってるのか?」
逃げようとする天使の腕を掴んだ。
「は、離せ穢わらしい!!」
天使とは思えないほどの醜態をさらしながらもがくが、カゲチヨから逃れる事は出来なかった。
そんな天使にボティスが嘲笑いながらやって来た。
「クーックックックック!無様、まさに無様じゃの!」
「この邪気は・・・あ、悪魔か!!」
「ほぉ、見る目だけはあるのう。ハーヴェスター・・・。」
「ハーヴェスター?」
「こやつは天使病を操る異宙の化け物じゃな。天使病は人の清らかな魂を翼へ。身体には強い罪の意識を宿らせる。翼が成長したら天使を騙り現れて、天に上る最中に翼を収穫する。人間はそのまま転落、証拠隠滅じゃ。」
(強い罪の意識・・・だから飯もまともに食えなかったのか。)
「弱点はクズ人間やダメ人間、そして穢れた人間に近付くと弱体化、そうじゃな?」
「テメェ近寄んじゃねぇ!!」
「キャハハハ!本性を現したか。悔しかろう悔しかろう!己の拙い策に溺れた詐欺師のしたり顔がゆがむその瞬間・・・大好物じゃ!!キャーハッハッハ!!」
ボティスは天使の怒り狂った顔を見ながら壮大に笑い出した。
流石悪魔である。
「あー笑った笑った。カゲ男、あとは好きにせよ。」
「あぁ。そうさせてもらうぜ。」
カゲチヨは天使の腕をさらに強く握る。
「いだだだだだだ!!な、何しやがるんだテメェ!!離しやが・・・・ぐふっ!!」
痛み出しながらカゲチヨを罵倒をしようと瞬間、カゲチヨによって腹を殴られた。
「がはっ!げほっ!」
「俺はクズだからな。仲間に手を出したお前を許すつもりはねぇ。」
ベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシベシ!!
カゲチヨの往復ビンタによって、頬が紫色になって可愛い顔が崩れるほど腫れ上がり涙を流していた。
「もぉ・・・ゆうひへふははい・・・。」
「いいか、次またどっかで同じ事してみろ。今度は殺す。」
「ひゃひゃい・・・ほ、ほうひはへん・・・・。」
カゲチヨの殺気により怯え始め、ションベンをちびり出した天使は大人しく帰っていった。
「しかし、クズ人間か・・・・。これでもちゃんとしてきたつもりだが・・・。」
「・・・今の貴様はクズ差が足りん。本来なら奴は吐き気を模様していたはずじゃ。こんな事ならヨメ子を連れて来るんだったわ。」
カゲチヨの呟きに、ボティスがそう吐き捨てた。
そんなボティスの言葉にカゲチヨは目を丸くして見た。
「・・・・慰めてるつもりか?」
「誰が貴様になんか慰めるか!!」
そんな1人とい1匹のやり取りをしてる中、ヒサメが目を覚ました。
「うぅ・・・お腹空いた。」
「・・・はぁ~・・・ったく。」
スマホを取り出しシディに飯の準備をするように頼んだカゲチヨは、ヒサメを抱えてカレコレ屋に戻るのだった。
「まったく。世話のかかる奴だぜ。」
そう言いつつ、ヒサメの無事に安堵して笑みを浮かべたカゲチヨだったとさ。