カゲチヨside
学校が終わり下校中、オーナーから通話が来た。
出たらシディの声がした。
オーナーのスマホを借りたんだろう。
『DNAの解析が終わったぞ。』
「どうだった?」
『カゲチヨと同じゾンビのDNAに似てるモノを持っていた。』
シディではなくオーナーが説明してくれた。
どうやら向こうはスピーカモードにしているみたいだ。
「・・・ゾンビなのか?」
『いや、違う。新種だ、おそらくゾンビをベースに改良を加えた何か・・・。』
「・・・・。」
『その新種のDNAなんだがな、急激に変容していっている。ヒビキに何かおかしなことはなかったか?』
おかしな事・・・おそらく遊園地で見た・・・。
「あいつの身体の一部、赤い痣のようなものが侵食していた。」
『そうか・・・。こちらでももう少し解析を進めてみる。』
「頼みます。」
オーナーが解析に戻るため、通話を切った。
「もうちょっと時間がかかりそうだね。」
「あぁ。」
「・・・ねぇ、カゲ・・・。」
「ん?」
「あー・・・カゲってさ・・・。」
なんだ?今日のヒサはどこかぎこちない。
「・・・やっぱ何でもない。」
「・・・そう、か・・・。」
さて、3人は病院に行ったのだろうか・・・。
気で探って・・・あれ?何でスズキとサトウの気しかないんだ?
それに普段の気より少し弱く・・・。
「カゲ大変!!ヒビキちゃんが攫われたってスズキ君から電話がっ!!」
「何だって!?」
チッ!
ヒビキはいったいどこに・・・・見つけた!!
ヒビキのほかに2つの気を感じる。
誰だか知らねぇが1つは他の気より大きい。
そいつがヒビキを攫ったのか!
「俺は先に行く!!」
「待って!!シディと合流してからにしようよ!!」
「今は急ぎだ!!」
「・・・・。」
ヒサ、俺から目を逸らして黙りこくった。
・・・ヒサの手が震えてる?
スズキから何か聞いたのか?
「・・・・何か俺に隠してるのか?」
「・・・・。」
「話せ、ヒサ。」
「・・・ヒビキちゃんを攫ったのは、前に会った鈴の吸血鬼だって・・・。」
なるほど・・・。
奴ならスズキとサトウを倒してヒビキを連れ去る事は安易に出来る。
じゃあ2つの気の中での1つがあいつか。
「そうか。だが、それで急かさない理由にはならない。」
「待って!!」
ヒサは俺の腕を掴んだ。
「この前3人がかりで負けたんだよ!!せめてシディが居ないと・・・!!」
「昔と今は違う。」
「え・・・。」
「自惚れのつもりはねぇが、俺には昔と違って戦える力がある。ワリーがシディを悠長に持ってるほど、余裕はねぇんだ。」
俺は優しくヒサの手を引き離した。
「お前はシディを待ってろ。俺は先に行く。」
舞空術で飛び、ヒビキの元へと向かった。
例え、存在が違っても、もう2度とヒビキを失うのはごめんだぜ。
◇◇◇◇◇
この廃墟にヒビキと鈴の吸血鬼が居る。
「・・・・・。」
見つけた。
鈴の吸血鬼。
奴は俺の仇。
だが不思議かな・・・奴に怒りすら湧いて来ない。
村の・・・ヒビキやシロウをゾンビ化にした復讐相手なのに・・・。
「久しいな。見ないうちに少し大きくなったか。」
「・・・ヒビキを返せ。」
「悪いが、今は貴様の相手をする暇はない。」
「それはどういう・・・。」
そう言った瞬間。
何者かに蹴られた。
「ぐっ!!」
また気を感じなかった!
帽子を被り、サングラスを被った小柄の紫肌の男が俺の前に立っていた。
「なんだ?こいつは。」
「何?」
こいつの存在を知らない?
まさか無関係なのか?
そんな思考をしていると、不意に襲い掛かり、顔面に攻撃を食らってしまった。
「ぐっ!」
そいつは俺の腹に連打で殴りつけた。
こいつも人造人間・・・。小柄ながらすごいパワーだ。
だが!
ガシ!!
「!?」
「はぁあああああああああああ!!」
バキッ!!
奴の両腕を離さず掴み、顎を思いっきり蹴り上げた。
蹴り上げた事で両腕が引きちぎり、吹き飛んだ。
「たぁああああああああ!!」
腕を捨て、奴の顔面に目掛けて思いっきり殴り首を吹き飛ばした。
「ふぅ・・・・。」
まさか2体目の人造人間が出るなんて・・・・。
鈴の吸血鬼の気はない・・・何処かへと行ったのか。
それより、ヒビキだ。
俺はヒビキが居る廃墟に侵入した。
◇◇◇◇◇
「さ、解剖しますか!」
だらしなく白衣を着た眼鏡の男、レイナがヒビキを解剖しようとしていた。
「はぁ!?待ってろって上司っぽい人が言ってたのに!!」
「あ~、アザミさんは優しい人だから絶対に許してくれるっす。だから心配しなくても大丈夫っす。」
「誰もアンタの心配なんか・・・。」
してないと言おうと瞬間、レイナの背後を見て言葉を止め、笑みを浮かべたヒビキ。
「やっぱ、アンタ自分の心配した方が良いわ。」
「へ?」
「動くな。」
レイナの背後に手の平を向けたカゲチヨが立っていた。
「その子に何かしようっと言うなら、殺す。」
カゲチヨの殺気に怯えるレイナだったがヒビキは止める。
「そいつを庇うのか?」
「なわけないでしょ。全然殺していいから。」
「そんなー。」
「でもこの人私の正体について全部知ってるみたい。聞き出してからでも殺すのは遅くないんじゃない?」
「・・・それもそうだな。んで、またテメェーらの仕業か?」
「違う!!違うっす!!彼女を作ったのは僕らじゃない!!」
「・・・どういう事?」
「僕の部下が作った作品なんだ。元々上昇志向の高い子だったんすけど、僕とは研究方針が合わなくてねー。彼女はそれが不満らしく、ゾンビの細胞を盗んでトッププレデターから逃げたんだ。」
「つまり、お前らはそいつらを追って来たって訳か。」
「そうっす。」
「待って。私が特別な個体ってどういう意味?」
ヒビキの素っ頓狂な疑問に、溜息を吐いた。
「お前はゾンビの細胞から作られたことにショックとかないのか?」
「今はそれどころじゃないでしょ?」
淡泊な所は昔のヒビキに似てると思い更に溜息を吐いた。
レイナは続けるように説明を再開した。
「その研究は簡単に言うと、ゾンビから元の人間のクローンを作るってもんっす。」
(なるほど。だからヒビキにそっくりだったのか。合点が一致したぜ。)
「ゾンビからクローン?そんな事して何になるの?」
「もし再生できれば、大切な人を死の直後にゾンビにして生き返らせる事も出来る。」
「胸糞な発想だな。」
「ははっ、僕も同感です。研究自体はトッププレデターに居た時から行われていたっす。でも失敗に終わった。個体が生後12時間で全員死んでしまうんすよ。」
「私、もっと生きてるけど。」
そう、ヒビキはカレコレ屋で一ヶ月間預かっている。もし12時間の命ならとっくに死んでいる。でも今、こうしてカゲチヨ達の前に立って生きている。
「貴方は特別な個体なんすよ。だから、この実験データを求めて奴は必ず此処に現れる。」
「何故そう言い切れる。」
「それは~・・・彼女が僕と同じ人種だからっす。」
「流石僕の元・上司ー。」
そこに現れたのは、白衣を着た小柄な女の子がやって来た。
彼女が近付いて来た事はカゲチヨは気を探って分かっていた。
・・・他にも複数の気を感じながら。
「マズミさーん。お久っすー。」
「ハハッ!久しぶりだねレイナおじさん。」
「・・・ママ」
「こいつがお前のママか・・・(依頼料は見込めなさそうだな。)」
カゲチヨは少しだけ驚いたと同時に、そんな事を考えていた。
「さぁ、帰ろう。」
「・・・・。」
「まさか、行く気か?」
「行くわけないじゃん。あんな気持ち悪い若作りおばさん。絶対娘にキラキラネーム付けるタイプでしょ。」
ヒビキの暴言をスルーしてレイナはマズミに質問を投げかける。
「何でこの個体だけ寿命が延びてるんですか?」
「教えるわけないだろ?」
「いいじゃないっすかー。どーせ僕も殺すつもりなんでしょ?」
「・・・僕の創り出したコレは、元の細胞の持ち主と同じ生き方をする事で寿命が延びる。」
「ほうほう。」
「試しにこの個体の故郷に似た村で実験を行ってみたら、トッププレデターの頃より寿命が延びたんだ。」
「面白いっすね。ゾンビのDNAの中に宿主の生前の記憶が刻まれていると。」
「ゾンビには再生能力がある。再生能力とは元の状態に戻す能力。おそらくそこに紐づいているんだね。」
「元の状態・・・なるほど!!そういう事か!!だから僕の実験は上手くいかなかったんすね!!」
何のことだ?っとマズミは疑問に思った。
「だから、こいつを俺の所に寄越したって訳か。」
「そう、彼女の知り合いで生きているのは、もう君しかいないからね。でも良かったよ!!その結果、ここまで生きられた!!彼女を解剖すれば君と一緒に暮らさなくても、同等の体験を実験体にさせる事が実験室の中で可能になる!!だから絶対にその個体だけは手に入れたいんだ。」
ヒビキは、行くかどうか思い悩んでいた所をカゲチヨはマズミに渡さない様に手を握った。
「お前の人生はこれから楽しい事がたくさん待ってる。」
「カゲ君のデートとか?」
「それがお望みならな。」
「・・・へへ。優しいね。」
今のカゲチヨに安心感を持ったヒビキ。マズミは笑みを浮かべカゲチヨを見た。
「って事でカレコレ屋さーん。お金は用意したんで、ソレ返してよ。」
「断る。」
「えー、それ僕のでしょ?理不尽だなー。」
「理不尽なのは、貴様のようなサイコパス野郎だ。」
「僕は野郎じゃなくてアマだよ~?返してくれないならさ~、これならど~?」
そう言ってマズミの背後には複数の小さなヒビキが立っていた。
(複数の気はこいつらだったか。どーりで同じ気なはずだ。)
「お金で返してくれないなら実力行使するしか・・・。」
「・・・私が・・・たくさん・・・?」
「改造異宙人は全部アザミさんの方に投入しちゃったからね。君の相手はコレに・・・・」
言葉の途中で、気の波動が複数のヒビキ達に直撃し、全員壁へと直撃させた。
「・・・え?」
「そんなんで俺を止められると思ったか?調査不足もいい所だな。」
複数のヒビキ達は、壁に激突したことで機能停止し、動かなくなった。
(す、すごい・・・一歩も動かずにあんな一瞬で・・・。カゲ君・・・何者なの?)
カゲチヨはマズミを睨みつけるように見た。
見られたマズミは、怯え尻もちをついた。
「俺も貴様に聞きたい事がある。」
「な・・・なに・・・。」
「俺を襲った人造人間・・・あれはお前が作ったのか?」
「ち、違う。あれはツルマイツブリ山にある研究所の奥底で発見したものを持って帰って調べただけで、僕は作ってない!」
「本当だろうな。」
手の平に気を溜め、マズミに向けて脅した。
「ほ、本当だよ!!確かに改良して、僕の駒にしようと考えたけど、目を離した隙に3つとも消えていたんだ!!」
「3つ・・・だと?」
「その女の言う通りだ。」
カゲチヨ達の前に現れたのは、帽子を被り髪は肩よりも少し長い白髪な男。
しかも帽子にはレッドリボン軍のマークがついていた。
「貴様とこうして会うのは初めましてだな。腐血のカゲチヨ。」
「その帽子と服のマーク。お前、Dr.ゲロが作った人造人間だな!」
「ふっ。違うな。」
「何?」
「確かに、設計図を作成したのはDr.ゲロという者だったが、作ったのはDr.ウイロー様だ。」
「また奴か・・・。」
「Dr.ウイロー様が亡くなってもなお、コンピューターによって研究は続けられた。そして、Dr.ウイロー様は死ぬ間際、コンピューターに貴様を殺す様、我々の電子機能にインプットされた。」
「そうか・・・それであの2体は俺を狙ったのか・・・。それで、次はお前って訳か。」
「その通りだ。」
不敵な笑みを浮かべる人造人間。
そこにマズミが近付く。
「ぼ、僕を助けてよ!!僕は君たちを拾って保護してやったんだぞ!!」
「・・・・・。」
「お、お願いします・・・。」
マズミはあざとく涙目で人造人間に助けを元も。
人造人間は笑みを浮かべ、マズミの頭に手を置いた。
その行動にマズミは上手くいったと内心思った。
「貴様が我々を研究所から移動させなければ、もっと早く目覚めていた。」
「えっ・・・・。」
その瞬間、マズミの頭に置いた手で赤い気功波を放ち、消滅させた。
「貴様に感謝する事はない。」
「同情はしねーが。ヒデー事するんだな。」
「ふ、俺の目的は貴様を殺す事。それ以外はどうでもいい。邪魔すれば殺すだけだ。」
「そーかよ。」
異宙から生まれた人造人間と、サイヤ人の細胞を持った吸血鬼との激しい戦いが始まろうとしていた。