自分の世界に帰れなくなったカゲチヨは、地獄のような迷路世界に出た後、平行世界のラプラスの気を辿って追っていった。
「よう。」
「!おやおや。カゲチヨさん・・・・いや、もしかして平行世界のカゲチヨさんですか?」
「予知で知ったか。」
「えぇ。ですがあなたではなく、この世界のカゲチヨさんとあなたの世界の私の予知を見ました。どうやらあなた自身の未来は見えませんでしたからね。」
「そーいや、向こうのお前もそんな事言ってたな。」
「それで?私に何か用ですか?」
「予知は出来なくても予想は出来るだろ。」
そう言ってラプラスに壊れた平行世界の鍵を見せた。
「これと同じ鍵を貰いたい。」
「・・・残念ながら、私はそのような鍵は持っていないのです。」
「なに?」
「向こうの私がその鍵を手にしたのは本当に唐突。コーヒーを飲みながら本を読んでいたら唐突に落ちて来たんです。窓が無い警察署の牢にね。向こうの私は夜中にその鍵を使って、暇してる私によく合いに来てはチェスなどしましたね。同じ存在なので勝負は互角でしたがね。」
「おい。話が逸れてるぞ。」
「おっと失礼。私が言いたいのは、それは唯一無二の物です。壊れた以上、私が出来る事は何もありません。」
「・・・・そうか。邪魔したな。」
「おや、もういいのですか?あなたには私に文句を言える権利はありますよ?」
「依頼を受けたのは俺だ。そんな事するかよ。」
同じものはない。何となくだが想像が出来ていたカゲチヨ。だったら、同じものを探すではなく、直す方で考えた。
「もし、直すのであればリサイクルショップのオーナーさんに会うと良いでしょう。」
「けっ。やっぱ俺の未来見えてんじゃねーのか?」
「ふふ。あなたの予知が出来なくとも、周りの予知は出来ますので。」
「そーかよ。じゃーな。」
そう言ってカゲチヨはラプラスに別れを告げ、リサイクルショップの方へと向かって飛び去った。
「あなたが元の世界に帰れることを遠くから祈ってますよ。」
◇◇◇◇◇
「どうも。」
「いらっしゃい。何かお探しですか?」
リサイクルショップに寄ったカゲチヨは正体を隠すように超吸血鬼に変身した状態でオーナーに話し掛けた。
若干オーナーの俺に対する対応に困惑しつつ壊れた平行世界の鍵を出して要件を伝えた。
「この鍵を直してほしいんだ。」
「うちは商品を売る店であって修理屋じゃない。そう言うのは鍵屋にでも行ってくれ。」
「こいつがただの鍵だったらそうしてたさ。」
「どーいうことだ?」
「あんたを信頼して言うが、俺はこの世界とは別の平行世界から来た人間だ。」
「!!」
その唐突な言葉にオーナーは驚きの表情を見せるが、カゲチヨは構わずに話を続けた。
「そして、この鍵は平行世界を行き来する鍵だ。ちょっとトラブルがあって壊れてしまってな。あんたならこれを直せるんじゃないかと思って知り合いに聞いて頼みに来たんだ。」
「・・・信じられない話だな。」
「まぁ、普通そう言うよなぁ。」
どうしたものかと腕を組んで考えていた。
「強盗だ!この店の商品をすべて貰うぜ!」
カゲチヨの背後から覆面を被った複数人の暴漢達が店にやって来た。
「何でうちなんだ。言って置くが金目の物は無いぞ。」
「普通こういうのは銀行とかだろ。馬鹿な事やってねぇーで働け。」
「うるせー!俺達は知ってるぜ!この店は異宙の道具を販売してるらしいじゃねぇーか!」
この暴漢たちの目的は、店の商品を盗んで色々と悪さをするとの事だった。
「確かにこの店には、犬になったり変な手錠があったり、なんだったら惚れ薬とかもあったな。」
「ほ、惚れ薬~!!」
「それはぜひ欲しい!!」
「そしたら女性にモテまくり・・・げへへ・・・。」
何だか、強盗にしてはアホ丸出しみたいだった。
若干呆れていた二人。
ふとカゲチヨは何かを思いついたかのようにオーナーに提案してきた。
「もしこいつらを倒したら、鍵を直してくれるか?」
「・・・大丈夫なのか?いくら頭悪そうだからって、相手は大人数で拳銃やらナイフやらを持ってるんだぞ?」
「余裕だ。」
カゲチヨはおもむろに前に出て強盗達に近付いた。
「近付くんじゃねぇー!この銃が見えねぇーのか!」
「これ以上近付くと撃っちまうぞ!!」
「撃てるもんなら撃ってみろよ。」
カゲチヨの余裕顔の挑発を真に受けて、拳銃を持った強盗の一人がカゲチヨに目掛けて発砲。避ける事もなく、パシッっと平然と掴んだ。
「へっ?」
「返すぜ。」
掴んだ銃弾を指で弾いて強盗達の横を目にも止まらぬ速さで通って電柱に当たった。
茫然とした強盗達を一瞬で移動し、首を手刀で叩き全員気絶させた。
「ま、こんなもんか。」
「・・・・・。」
一瞬の事でポカンとした表情をしたオーナーに向き直った。
「これで俺の頼み聞いてくれるか?」
「・・・・。」
「俺の事、信用できないとは思うけどあんた達には悪いようにはしねぇーさ。」
「・・・分かった。口約束とはいえ、約束は約束だ。一応助けてもらったしな。」
「助かる・・・・あぁ~図々しい承知で言うけど、財布を家に置いてきて金がねぇーんだ。だからしばらく鍵が直るまでここで働かせてくれねぇーかな?」
「本当に図々しいぞ。それにうちはバイトは間に合ってる。」
「そのバイトが時々サボるのにか?」
何でわかるんだ。っという目線でカゲチヨを見るオーナだったが、確かにヨーメイだけじゃあ不安があるのは本当なため内心納得してしまった。
「出来れば8時間労働の日払いで。その代わりに頼まれた事はしっかりやるさ。給料の7割8割は鍵の修理費に回してほしいんだ。」
「ふむ・・・まぁ住所が無い金が無い平行世界から来た人間が余所で働くのは無理か・・・わかった。こき使いまくるから覚悟するんだな。」
「望むところだ。」
お互い不敵の笑みを浮かべ、交渉の話し合いが解決した。
「ところで、お前のその服装。ボロボロじゃないか。」
「あぁ・・・。」
そう、さっきからカゲチヨはターレスとの戦いで道着の上半身がほぼ半分が無くなり、焦げ付きやら埃、布のほつれに穴だらけ。
「服を準備してやるからシャワー浴びてこい。」
「悪い。そーさせてもらうわ。」
オーナーに言われた通り、服を脱ぎ捨てシャワーを浴びたカゲチヨだった。
シャワー浴びながらカゲチヨは思った。
この店にシャワー室なんてあったんだな・・・っと。
◇◇◇◇◇
洗濯籠に入ってる服に着替えたカゲチヨ。上は袖の短いシャツに半袖の上着。下はデカめのジーパンを穿いていた。
若干着心地悪そうな表情をするカゲチヨ。
それもそうだ。
カゲチヨはこういうおしゃれに疎く、普段はパーカーか長袖か道着でしか着ないからこんなおしゃれは慣れていなかったのだ。
「なかなか似合ってるじゃないか。」
「そうかぁ?服に着られてる感じな気がするが・・・。」
「そう言えば名前聞いてなかったな。」
そういえば、名乗って無かった。
だが馬鹿正直にカゲチヨって名乗るのも面倒だ。
だからカゲチヨはとっさに思いついた偽名を名乗った。
「孫だ。」
自分を拾ってくれた悟飯師匠。そして義弟の悟空の苗字の「孫」を名乗った。
「変わった名前だな。」
「余計なお世話だ。」
「それじゃあ孫。早速だが仕事してもらうからな。」
「おう。」
オーナーの指示で荷物を運んだり整理をしていた。
あまりの手際の良さに早く終わり、オーナーは感心しながらやる事が無いって事でしばらく休憩する事になった。
「ただいま戻りました~・・・ってお客様ですか?」
そこに、シディと配達に行ってきたヨーメイが帰って来た。
「帰ったか。こいつは新しく入った孫だ。」
「どうも。」
「え、って言う事は私の後輩って事ですか?」
「まぁそうなるな。」
グフフっと変な笑い方をするヨーメイを見て、また碌でもないこと考えてやがるなこいつっと二人は思った。
「言って置くけど、任せ仕事は人に押し付けるなよ。」
「後輩と言ってもお前とは対等だからな。変に先輩風吹かすなよ。」
「何で私の考えが分かったんですか!?」
本当に考えていたのかよっと呆れた二人であった。
ちょっと不安があれど、カゲチヨは平行世界のリサイクルショップに働く事になった。