時刻は夜、リサイクルショップにて。
店の中一人で棚作業をしていたヨーメイ。
「はぁ~、労働つらい・・・。」
一人愚痴ってると、棚に置いてあった紙袋に目をやった。
「なんですか?この気持ち悪い人形・・・。」
中には人形と一枚の説明書が入っていた。
それは所謂「呪いの人形」だった。
「どんな相手でも身体の一部さえあれば復讐、制裁思うがまま!これは・・・役に立ちそうですね。」
誰かに悪戯してやろうと言う笑みで碌な事を考えないヨーメイ。
カレコレ屋の部屋に入り、ソファで寝てる平行世界のカゲチヨを見てチャンスとばかりに更に笑みを浮かべる。
「買い取り希望の商品はまず検品しないとですよね~!」
「い”っっ!?!?てぇえええええ!!」
無遠慮で平行世界のカゲチヨの髪を引っこ抜いた。抜かれた時の痛みで目が覚めたカゲチヨ。
「お邪魔しましたー。」
「てめっ、待てこらヨーメイ!!」
そそくさと逃げるヨーメイを追いかけるカゲチヨ。
「うへへへ!」
「待ちやがれこらぁ!!」
配達終わりで店に戻った孫ことカゲチヨの前に、変な笑い声をあげながら逃げ出すヨーメイと平行世界のカゲチヨが素通りしていった。
「なんだあいつら?こんな夜中に騒がしいなぁ。」
ヨーメイの手に、人形な物が持っていたような気がしたが気にしない様にして店締めの準備を始めたカゲチヨだった。
近くの公園にて、木に人形を付けて今にも釘で打ち付けようとしていた。
「ぐひっ。ぐひひひ。いきますよぉ~・・・。うぉりゃああああああ!!」
勢いよく釘をトンカチで打ち付け、人形に刺した。
「ヴッ!?」
打ち付けた瞬間、急にヨーメイの胸が痛く感じ、苦しげな声を上げそのまま倒れてしまった。
「カァー。カァー。」
(んんっ・・・うるさいですね鳥の分際・・・ででででっ!)
カラスの鳴き声が聞こえ、憎まれ口を心の中で叩くとカラスに突かれてしまった。
(痛い痛い!やめてください~!!・・・あれ?)
そこでヨーメイはある事に気付いてしまった。
それは、自分の声が出せない事に。しかも手も足も動かない。
今のヨーメイはまさしく人形の様だった。
◇◇◇◇◇
ヨーメイが人形の様に動かなくなってから数日
数日店に来なくなった事でオーナーは心配しだした。
「あれから数日たったが、未だにヨーメイが来ないな。」
「またサボりじゃないのか?連絡は?」
「いくらしても一向に出ない。」
「部屋は?」
「一度行ってみたが留守のようだ。」
何かに巻き込まれたのか?
っとカゲチヨは顎に手を乗せて考えていた。
「そーいえば、数日前。何か人形を持って変な笑い声出してカレコレ屋から出てカゲチヨから逃げた様な気がするな。」
「人形?」
その言葉を聞いてオーナーは一つ思い浮かべたものがあり、店の棚を見渡し始めた。
「やっぱり。買い取り依頼のあった呪いの人形が無くなってる。」
「呪いの人形?」
「あぁ。憎い相手の髪や爪なんかを人形に埋め込んで呪いの儀式を行う。すると、その相手に呪いが降りかかり人形と同じ苦痛を与えられる。よくある迷信みたいな話だが信頼できる筋からの買い取りだから効果は間違いない。」
「つまり、ヨーメイさんはその人形を持ってカゲチヨの髪か何かを取ってどっかに行ってしまった。って事になるのか?」
「多分だがな。」
「だがこの数日、たまにカゲチヨを見かけるが特に変わった様子は無いぞ?」
「・・・「呪い返し」かもしれん。」
オーナーが言う「呪い返し」とは、正しい手順や必要な条件が満たされなかった場合、呪いはかけようとした本人に返ってしまう事があるのだ。
ヨーメイは碌に説明を見ずに、儀式をやってしまって呪い返しにあったんだろう。
呪い返しを受けた場合、体の自由が奪われ徐々に五感を失っていき、最後には本物の人形になって次の形代、つまり呪いの人形になってしまうのだ。
「あいつは本当に碌な事しないなぁ・・・。」
「一応カレコレ屋に寄って行こう。ヨーメイの事で何か知ってるかもしれない。」
「その必要はねぇーよ。」
カレコレ屋に向かおうとしたオーナーを止め、少しだけ目を閉じて集中した。
「おい、何をやって・・・。」
「・・・居た。」
「なに!居たってどういうことだ!」
ヨーメイの気を探って見つけ出したカゲチヨ。何が何だか分からず困惑するオーナーに落ち着けっと宥める。
「詳しくは言えねぇーが俺は人の気配を感じ取る事が出来るんだ。」
「・・・もしかして前回私の居場所を分かったのは・・・。」
「そー言う事だ。・・・・む!」
「今度はなんだ。」
「誰かがヨーメイに近づいてくる。」
「それって・・・。」
「ちょっくら確かめて来るわ。」
「あ、おい!」
カゲチヨはオーナーを残してヨーメイの気配を頼りに飛んで向かって行った。
◇◇◇◇◇
ずっと公園で倒れた状態で放置されたヨーメイはマイナスな気持ちになっていた。
(ハァ・・・この放置プレイいつまで続くんでしょうか・・・。幸いお腹は空かないし寒くはないですけど・・・もしかしたらずっとこのままかも・・・。だって、私なんて居なくなっても誰も気づかないだろうし・・・。)
『この涙は、私なんてを否定したくて流れてるんじゃないのか?』
その時、リサイクルショップで面接する時にシディに言われた事を思い出した。
(・・・あー駄目ですね。また私なんてって言っちゃいました。)
シディの事を考えていたら、こちらにやってくる足音が聞こえた。
目の前にはスーツを着た茶髪で整った顔をした男性がヨーメイの前に立った。
「可哀想に・・・こんなに汚れて。もう大丈夫だよ。僕の家おいで・・・?」
(ちょちょちょなんですか!?へ、変なところ触らないでください!!)
男性はヨーメイを抱えて、自宅に持ち帰ろうとした。
「あ、おい!ちょっと待った!!」
「え!?」
ヨーメイの気を探知して、店から舞空術で飛んできた来るカゲチヨ。
空から唐突に下りてきたカゲチヨを見て驚く男性は若干後退りした。
「なな、何ですかあなたは!」
(そ、孫さん!?)
「すまないがそいつを返してくれねぇーか?」
「こ、これは僕が拾ったものだ!数日間放置されてたんだ!この人形は僕の物だ!」
「頼む。そいつが居ないと心配する奴が居るんだ。それにこいつは人形じゃなくて人間なんだ。」
「に、人間だなんて・・・そんなの信じるわけ・・・。」
「ん~・・・。」
どー言ったら信じてくれるかなぁっと頭を悩ますカゲチヨ。
目の前の男は、勘ではあるが悪い奴じゃないと思っているためむやみに手を出すわけにはいかなかった。
「・・・そうだ。だったら一緒にそいつを知ってる奴の所に連れてったやるよ。」
「は?」
変な提案に困惑する男を余所に二人を抱え、ついでに落ちてた呪いの人形を拾ってリサイクルショップの方へと飛んで戻っていった。
飛んで行った際に、男は空を飛んだことで驚き叫び、ヨーメイは口に出さず内心で叫びまくっていた。
そして、二人を連れて店に戻ったカゲチヨにオーナーは驚いた表情で出迎えた。
「ヨーメイ!・・・っと誰だ?」
「ヨーメイを人形と思って持って帰ろうとした人だ。この人にヨーメイが人間だと証明させるために連れてきた。」
「その連れてきた人、完全に放心状態なんだが・・・。」
「あ。」
カゲチヨにとっては何ともない普通、というより少し遅いくらいの飛行だったが一般の人間にとってはきつかった様だった。
「そんで、このヨーメイはどうやって元に戻すんだ?」
「呪いに使った人形を完全に破壊すれば元に戻る。」
「人形を破壊すればいいんだな?」
そう言って外に出て上空に人形を投げ、気功波で消滅させた。
カゲチヨのとんでも行動に、オーナーは無表情で固まり、男は目ん玉飛び出るくらい驚いていた。
「これでよしっと。」
「・・・・・。」
「・・・な、なんだよ。人の顔をじっと見て。」
「いや・・・。」
カゲチヨから目線を外したオーナー。
こいつはそういう奴だと無理矢理思い込ませるのであった。
その後、元に戻ったヨーメイが人間だと分かり納得してくれた男性。実はその男性は、女の子の可愛い服や小物が好きでヨーメイに着させたかったらしく、連れて帰ろうと思っていた。
ヨーメイが迷惑かけた事で、オーナーは知り合いの人形師を男性に紹介し、半額にしてもらう様に交渉するとの事で手を打った。
「はぁ~。元に戻ってよかったですよ。リア充どもに見られるわ男性に連れて行かれそうになるわで災難でしたよ。」
「自業自得だろ。」
「そうだぞヨーメイ。無断欠勤のペナルティと買い取り商品の弁償代。当分ただ働きだからな。」
「ひっ!!」
首根っこ掴まれたヨーメイは、オーナーによって厳しい指導のもと仕事をする事になった。
「どの世界でもしょうがない奴だな。」
そんなヨーメイに呆れながらも、カゲチヨは配達作業に入るのであった。
ちなみに、呪いに必要な条件は「相手の体の一部」と、もう一つ「その相手を憎む強い気持ち」だったとさ。