KAREKORE Z~Z戦士のカゲチヨ~   作:yakyo

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さらば平行世界 前編

 

孫ことカゲチヨは日課の如くオーナーの店でバイトの作業をしていた。

 

 

「孫。すまないがこれをカレコレ屋に持っていってやってくれ。」

 

「それは?」

 

 

オーナーが大きな段ボール二個を指さしてカゲチヨに指示した。

 

 

「お得意様からいただいたものだ。」

 

 

中身を確認した所、野菜やフルーツ。冷凍した肉が入ってあった。

 

 

「こりゃまた沢山詰めてるな。」

 

「なにかとご贔屓してくれる人だからな。お礼としていつも贈ってくれるんだ。」

 

「いいお得意様だな。」

 

「そうだな。私じゃこんな量食いきれんからあいつらにやって欲しいんだ。持っていったらそのまま休憩に入って良いからな。」

 

「ん。了解だ。」

 

 

よっと!と声を出して軽々しく二つまとめて段ボールを持ち、カレコレ屋へと向かって行った。

 

 

「・・・・・・・。」

 

 

店から出ていくカゲチヨをオーナーは何処か寂しそうに見ていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

カレコレ屋に段ボールを持ってきたカゲチヨは、ヒサメとシディの案で一緒に飯を食う事になり、持ってきた食材を使って料理を振舞ってくれた。

 

 

「沢山あるからいっぱい食べてくれ。」

 

「やったー!いただきまーす!」

 

 

ヒサメはご飯を頬張りながら幸せそうに食べていた。

 

 

「しかし、オーナーの人脈は凄いな。」

 

「謎だらけだよな〜。名前も知らねーし。」

 

「孫さんはオーナーの事、何か知りませんか?」

 

「俺が店に働いてから1年も経ってないんだぞ。お前らと同じくらい何も知らないぜ。」

 

「1番の謎はアンタだけどな。」

 

「ひでーな。」

 

 

オーナーの謎は深まるが、考えても仕方ない為この話は忘れて食事を再開することにした。

 

 

「ん?何じゃこやつは。」

 

 

壺から出て来たボティスが孫ことカゲチヨを見て質問してきた。

 

ボティスにとってこれが別世界のカゲチヨとの初対面なのであった。

 

 

「ボティスか。おはよう。一緒にご飯食べるか?」

 

「いらん。それよりわしの質問に答えないか。」

 

「彼は孫って言って、オーナーの所で働いてるんだ。」

 

「孫さんは強いんですよ。私達が危険だった所を助けてもらったんだですよ。」

 

 

シディとヒサメの返答に、ボティスはふーんっと興味なさげにしながらカゲチヨを見た。

 

 

「・・・・貴様、何者じゃ?」

 

「あ?何言ってんだお前。」

 

「カゲ男は黙っとれ。その辺の犬にでも食われていろ。」

 

「んだとコラァ!!」

 

 

ボティスに罵倒された平行世界のカゲチヨは怒りをあらわにしてツッコむも、それを無視して目の前のカゲチヨを見て話を続ける。

 

 

「今まで生きてきた中で、貴様のような壮大な力を持った存在は初めてじゃ。」

 

「ボティスがそこまで褒めるとは。孫は相当強いんだな。」

 

「誰も褒めとらんわ!!」

 

「そーいえば、何でオーナーの所で働いてるんだ?その体格と力強さならもっと他に儲かる仕事があるんじゃねーの?」

 

「確かオーナーに家の鍵を直してもらうためのお金を稼ぐために働いてるんだっけ?」

 

「家の鍵ぃ?」

 

「わざわざ直さなくても、ドアを壊せば簡単に入れるだろ。」

 

「いや、壊しちゃダメでしょ。」

 

「むしろ、鍵より修理費の方が金掛るだろ。」

 

 

話題の中心である本人を外に話し出す三人と一匹。

 

当の本人は黙々と無言でご飯を食べる。

 

 

「それにこやつは、異宙人ではない。人間でもない。」

 

「異宙人でも人間でもない・・・ってどー言う事だ?」

 

「言葉の通りじゃ。こやつはどの種族にも属さん。得体が知れぬ存在じゃ。」

 

「ちょっとボティスさん!孫さんに失礼ですよ!とっても優しい人なんですから!」

 

「なんじゃヒサ子?もしや、そやつに惚れでもしたか?」

 

「何ぃ!?」

 

「そうなのかヒサメ?」

 

「ちちちち違いますって!ただ勉強見て貰ったりだとか、買い物の手伝いとかしてくれて優しい人だなって思っただけで、別に他意はないですよ!!」

 

 

ボティスの発言に平行世界のカゲチヨとシデシは驚き、平行世界のカゲチヨに至っては若干ショックを受ける顔になり、ヒサメは慌てて否定しだす。

 

 

「さぁ答えろ。貴様の正体を。」

 

「正体って言ってもなぁ~。見た目通りっとしか言いようが無いぞ。」

 

「見て分からないから言っておるじゃろーが!!」

 

「オメーが俺と同じ立場だったら、素直に答えるか?」

 

「答えん。」

 

「つまりそー言う事だ。」

 

 

平然と目の前のご飯を食べながら、ボティスを軽くあしらった。

孫ことカゲチヨの態度に、ぐぬぬっと恨めし目で見る。

 

 

「ま、お前らに危害を加えるような真似は絶対にしねぇーから安心しろ。」

 

「大丈夫だ。孫はそんな事する奴じゃないのは知っているぞ。」

 

「何回も助けてくれましたからね。悪い人じゃない事は分かってます。」

 

「ア”ァ”ー。なんつーか、お人好しっぽいしな。」

 

 

三人の言葉に食べる動作を止め、きょとんとした表情で三人を見た。

固まって数秒、軽く吹き出す様に笑った。

 

 

「・・・ふっ。はは、そーかよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、孫ことカゲチヨがカレコレ屋でお昼休憩している道中のリサイクルショップでは、店番をヨーメイに任せてオーナーは奥の部屋で難しい表情で突っ立っていた。

 

 

「・・・・・。」

 

 

彼女の手には修復が完了した「平行世界の鍵」を持って見つめていた。

 

この鍵をカゲチヨに渡せば依頼完了。料金は既に働いて返してもらった。

 

 

だが彼女は躊躇っていた。

 

 

鍵を渡せば、カゲチヨは平行世界へと帰ってしまい、もう二度と会えなくなると思ったからだ。

 

この数ヶ月間、一緒に働いてから情が沸いてしまったの事実だ。

 

心の中では、まだ居てほしいと思っている。

 

 

「・・・・!!」

 

 

ふと横を向いたら、そこには無い筈の扉が目の前に現れた。

 

 

「な、なぜこんな所に扉が・・・。」

 

 

そう言った瞬間、ハッ!っと思い、鍵を見た。

 

 

「もしかして、この鍵を握ったからなのか?」

 

 

確証は無い。あくまでも憶測だ。だけど見たこともない扉が目の前に現れたという事は事実。カゲチヨの依頼を受けて半信半疑ではあったが、手元にある鍵は本当に平行世界に行ける鍵なのかもしれないと思った。

 

唾を飲み込み、恐る恐るドアノブに手をかけ、扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

孫ことカゲチヨの世界では、いつもの平和な日常が続いてた。

 

 

「あ、あの、買い物に付き合ってくれてありがとうございます。」

 

「いいよいいよ。依頼とかないから暇だったし。」

 

 

ヨーメイの買い物に付き合ったヒサメは笑顔で返事をしてリサイクルショップに戻ろうとしていた。

 

 

「こんな暑い中買い物とか、オーナーも人使い荒いですよねー。自分で行けばいいのに。」

 

「たまには外に出ないと駄目だよ。じゃないと身体が訛っちゃうよ?」

 

「私はエアコンの効いた部屋で過ごしたいんですよ。」

 

「はは・・・昔のカゲみたいな事言うね。」

 

 

カゲチヨの名を口にしたとき、少しだけヒサメの表情は曇った事をヨーメイは見逃さなかった。

 

 

「・・・・あの・・・・。ヒサメさんは、カゲチヨが居なくて辛くないんですか?」

 

「え・・・。」

 

「あ、いや!すすすすみません!何でもないです!さっきのは忘れて・・・!」

 

 

無意識の質問に驚いたヒサメに慌てて謝罪し、無かったことにしようとしたヨーメイを見て、しばらく黙ってから口を開いた。

 

 

「・・・・辛くはないよ。だって、カゲが帰ってくるって言うんだからきっと帰ってくるよ。何だかんだ、約束は守るから。」

 

 

笑顔でそう返答するヒサメ。一見いつも通りかと思われる表情だが、どこか悲しそうにヨーメイは見えた。

 

しばらくしてリサイクルショップに戻り、ヒサメはカレコレ屋に戻る事となり、別れる事になった。

 

 

(ヒサメさん。笑ってたけど悲しそうだったなぁ。カゲチヨが居なくなってから「数日」経ったけど、まだ立ち直れてないのかも。シディさんも同じ。明るく見せても、姿を見る度に辛そうだった。・・・ずっとこのままなんでしょうか・・・。)

 

 

ヒサメの背中を見てそう考えながらオーナーに報告しようと振り返ったら、目の前に扉がありぶつかってしまった。

 

 

「いったぁ~!!なな、なんでこんな所に扉が置いてあるんですか!?」

 

「ヨーメイ。帰ってたのか。」

 

 

ヨーメイのデカい悲鳴を聞きつけて、顔を出したオーナー。

 

 

「オーナー!!何ですかこの扉!?店の商品ですか!?」

 

「扉?何を言って・・・・何だこの扉は?」

 

「店の物じゃないんですか?」

 

「こんなものウチの商品には無いぞ。」

 

「え、じゃあ何でこんなものが・・・。」

 

「誰かの悪戯じゃないのか?」

 

 

ぽつんと店の前に置かれた扉を怪しむ二人を余所に、ドアノブが周り扉が開き始めた。

 

 

「ととと扉が勝手に!?」

 

「いや待て!誰か出て来る!」

 

 

開いた事に驚き、動揺するヨーメイを諭す様にオーナーは扉を見る。

 

 

 

 

 

 

そこには、平行世界のオーナーが扉を開けてやって来た。

 

 

 

 

「ぎょえぇえええ!!オーナーがふふ二人!?」

 

「わ、私だと・・・。」

 

「・・・・ヨーメイに・・・もう一人の私・・・。」

 

「ももももしかして、どどどドッペルゲンガーって奴ですか!?」

 

 

壮大に驚くヨーメイと同じ人間が目の前にいる事により固まってしまった二人のオーナー。

 

だが平行世界のオーナーはすぐに思考を動かし、なぜ同じ存在が居るのかを理解した。

 

 

「そうか・・・・ここは平行世界、なのか・・・。」

 

「へ、平行世界?」

 

「なに?平行世界だと?」

 

 

まさか、同じ人間から平行世界という言葉が出てくるとは思わなかった二人に平行世界のオーナーは詳細の説明をし始めた。

 

 

「実は、私の所にこの「平行世界の鍵」を直してほしいと依頼されてな。修理が完了して少し考えていたらこの扉が現れて開けてみたら・・・。」

 

「私達の前に現れたという訳か・・・。」

 

「なんか、信じられない話ですね。」

 

「私も半信半疑だったが、現に今こうして同じ私と会っているんだ。信じるしかないだろ。」

 

「そ、それはそうですけど・・・。」

 

 

いまだに動揺してるヨーメイの横で顎に手を置いて何かを考えているオーナーはある事を平行世界の自分に質問を投げかけた。

 

 

「その鍵の修復依頼は誰からされたんだ?」

 

「孫という男だ。」

 

「孫・・・。」

 

「孫って孫悟飯さんの事ですか?」

 

「いや、そいつは孫としか言っていなかったが。」

 

 

珍しい名前なのに同じ人がいたもんだなぁと他人事みたいに思っていたヨーメイの隣で難しい表情をするオーナー。

 

確信はないが、もしかしてと思い質問を投げかけた。

 

 

「もしかしたら、そいつはカゲチヨなんじゃないのか?」

 

「え!?」

 

「カゲチヨだと?なんでカゲチヨが出てくるんだ?」

 

それに、カゲチヨとそいつとは見た目も違う。と付け加えて言うが、オーナーは理由を語りだす。

 

 

「数日前から、カゲチヨは姿を消しているんだ。」

 

「待て、孫と会ったのは半年くらい前だ。時間が合わない。」

 

「私の憶測だが平行世界とこちらとの時間軸が違うんだろう。」

 

「・・・・話を続けてくれ。」

 

「カゲチヨは刑務所にいる予知魔ラプラスの依頼で平行世界のカゲチヨ達を助けに行ったきり帰ってないとヒサメ達から聞いた。」

 

「助けに行ったそっちのカゲチヨは不幸にも鍵を壊してしまって帰れなくなり私の所に来た・・・てなわけか。」

 

「でも、何で孫なんて名乗ったのでしょうか?普通に自分の名前使えばいいのに。」

 

「あいつの事だ。私があいつの頼みを聞くつもりは無い人間だと思ったんだろう。」

 

「まったく。偏見もいいところだ。だからモテないんだ。」

 

 

多分、いつもカゲチヨに厳しいからそんなふうに思われてるんじゃ・・・っと内心思うが口にはしなかったヨーメイだったが、少し真顔で考え平行世界のオーナーに声をかけた。

 

 

 

 

「あ、あの〜そっちのオーナー。」

 

「なんだ?」

 

「もし、もし本当にその孫という人がカゲチヨだったら、早く帰ってくるように言っておいてください。」

 

 

辿々しくも、言葉を投げるヨーメイに平行世界オーナーは黙った。

そんな沈黙に慌てて話を続ける。

 

「あ、いや、あの、何ていうか!?ストレスのはけ口相手が居ないと困りますし!?アホチヨは嫌いですけど多少は役に立つって言うか!?」

 

「・・・。」

 

「・・・それに、シディさん達が寂しそうにしてます。」

 

 

先程の慌てる言動とは違い、少し間をおいてから落ち着いて一番の理由を語った。

 

ヨーメイはカゲチヨの事、嫌いではあるのは本当だが消えてほしいとは思っていなかった。何だかんだ、助けてもらったりして多少なりと感謝はしていた。

 

そして、自分の好きな人が悲しんでる表情は見たくなかった。

 

 

ヨーメイの話を聞いて、平行世界のオーナーは一度目を閉じて少しの間沈黙してから、ヨーメイを見て口を開いた。

 

 

「わかった。もし孫がカゲチヨだったら・・・必ずこの世界に帰す。」

 

 

この言葉に、ヨーメイはちょっとだけ安心したとばかりにホッとした。

そんな隣のヨーメイを見たオーナーは笑みを浮かべる。

 

 

 

そして、平行世界のオーナーは扉を使って自分の世界へと帰って行った。

 

孫ことカゲチヨとは最後の別れになるであろうと覚悟を決めて・・・。

 

 

 

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