平行世界に帰ってきたオーナーは、カレコレ屋から戻ってきた孫ことカゲチヨと共に就業時間まで働いていた。
数時間が経って辺りが暗くなり、 カゲチヨとヨーメイは閉店の準備をしていた。
「孫、閉店の準備が終わったら少し残れ。」
「あぁ?」
作業してる中、オーナーにそう言われ疑問の声を上げる。
「大事な話がある。終わったら奥の部屋に来てくれ。」
それだけ伝え、自分は店の奥へと行ってしまった。
「大事な話ってなんですかね?もしかして何かやらかしたんですか?」
「お前と一緒にするんじゃねぇよ。」
「どー言う意味ですか!?私がいつもやらかしてるみたいに言わないでください!!」
「勝手に店の商品持ち出してシディに迷惑かけた奴が何を言うか。」
「うっ!」
図星を突かれ、胸を押さえて苦しむヨーメイに呆れるカゲチヨ。
ヨーメイのやらかしはさて置き、話しとは一体何なのかうーんっと顎に指を置いて考える。
「しかし、大事な話か・・・。もしかしたらあれが直っなのか。」
「あれ?」
「あー何でもない。」
「いやいや今の心当たりある雰囲気じゃないですか?なにか隠し事ですか?もしかして、怪しい物でも・・・。」
「口動かしてないで手を動かせ。帰るのが遅くなるぞ。」
無理矢理会話を終わらせ、作業に戻った二人。閉店準備を終え、帰る準備をした後に店のシャッターを下ろした。
「じゃあお先に上がります。」
「おう、じゃーな。」
「・・・。」
「ん?何だ?」
「いえ、何でもないです。お疲れ様でした。」
帰りの挨拶した後、何かを感じたのかカゲチヨの顔をじっと見たヨーメイ。
何でカゲチヨの顔を見たか、ヨーメイ自身かわからなかったが、無意識の内に同じ職場の人が居なくなるんじゃないかと感じ取ったのかもしれない。
そんなヨーメイの背中を見ながら首を傾げながら、オーナーが居る奥の部屋へと向かった。
ドアを変えると、奥の机の前でこちらに背を向けて立っていたオーナーが居た。
「・・・来たか。」
「大事な話って何だ?もしかして・・・。」
「お前のご想像通りだ。」
カゲチヨの方へと向いて、手に持っている「平行世界の鍵」を見せた。
「やっと直ったのか!いや〜助かった!これで自分の世界に帰れるぜ!サンキューな!」
嬉々とした表情をあらわにし、鍵を受け取ろっとしたら軽く避けられ空をつかんでしまった。
あれ?っと困惑した表情でオーナーを見るカゲチヨに口を開いて質問の言葉を投げた。
「お前に確認したいことがある。」
「確認?」
「お前の「孫」という名前、偽名か?」
その言葉を聞いて、表情を変えず真顔でオーナーを見た。
「そして、お前の本当の名前は・・・・カゲチヨだな?」
「・・・さては平行世界に行ったな?」
自分の正体を言い当てた事に対して、軽く口角を上げながら質問し返した。
「ちゃんと修復出来たかどうか、しっかりと使用しなきゃいけないからな。」
「そいつは御尤もだ。」
バレてしまったのなら無理に隠す必要無くなったカゲチヨは、超吸血鬼を解除して普通の状態に戻った。
逆立った赤髪から普段の黒の赤メッシュに戻った所を目にしたオーナーは普段見せないほどの驚きの表情をあらわにした。
「おま、それ・・・今まで変身、して生活していたのか・・・。」
「まぁな。正体を隠すのにはピッタリだったからな。実際に俺だって分からなかっただろ?」
「分かるわけ無いだろ。」
今の状態でもカゲチヨなのかも怪しいと思っている。何故ならいつも目にしているカゲチヨとは図体が違うからだ。
「何故、正体を隠してまで私の所に来たんだ?」
「そりゃオーナーが頼りになるからな。その壊れた鍵を修復してくれると信じていた。」
「そ、そうか。」
捻くれてないカゲチヨの素直な言葉に少し照れていた。
「正体を隠したのは、アンタ俺の頼み事とか聞かないだろ。」
「心外だぞ。私だって鬼じゃないんだ。頼まれたら・・・。」
「じゃあ俺を店に雇ってくれたか?」
「無いな。」
「だろ?」
カレコレ屋の三人の中ではカゲチヨに対してあたりが強い事はカゲチヨ本人も気付いていたからこそ、わざわざ超吸血鬼になってまで正体を隠したのだ。
だがそれは三つの理由の一つであり、一つは自分の状態を語りたくは無いからだ。
この平行世界のカゲチヨとは身体の状態や経験や実年齢などが全て違い、説明を省きたいからだったからだ。
そしてもう一つは、超吸血鬼を慣れさせる修行に最適だからだ。
正体を隠すため超吸血鬼になって日常生活を送ることで、超吸血鬼が通常状態の様に慣れるようにする。正体も隠せて修行が出来る。一石二鳥だと思ったのだ。
お陰で、2日くらいは超吸血鬼なった状態でも居られるようになった。
「孫・・・いや、カゲチヨ。」
「なんだ?」
「自分の世界に帰りたいか?」
その問いかけに、お互いの目を見つめながらしばしの沈黙が流れた。
「当然だ。この世界に同じ存在は二人もいらねー。それに、俺にも帰る場所がある。やらなきゃいけない事がある。守りてー奴らが居る。だからどーしても帰らなきゃならねーんだ。」
落ち着きがありながらも力強い返答に耐えして、オーナーは一度目を瞑り、再度目の前の別世界のカゲチヨを見た。
これで心は決まった。
いや、平行世界に行ってからすでに決まっていた。
持っていた平行世界の鍵をカゲチヨに差し出した。
「なら、早く帰ってやれ。向こうのヒサメ達がお前を心配しているそうだ。」
「そっか・・・。そうだな。シディはともかくヒサは怒ってそうだな。」
「それほどお前を心配してるんだ。素直に怒られてこい。」
「はは、手厳しいな。」
差し出された鍵を受け取ったことで扉が現れ、ドアノブに手を掛けた。少しだけ扉を開けた後、オーナーの方に振り返る。
「じゃあなオーナー。この半年間、アンタと働くの悪くなかったぜ。」
「ふっ、私もだ。」
「元気でな!」
別れを告げ扉の向こう側へと入っていき、バタンと閉まった事で扉がスゥーっと消えていった。
部屋の中、一人残されたオーナー。
静まり返った空間の中、オーナーの足元に水滴がポツポツと落ちていた。
◇◇◇◇◇
「ふぅ」
扉から出て来たカゲチヨは一度息を吐いて辺りを確認した。
空は暗く、いつも通っている道にシャッターでしまったリサイクルショップ、そしてカレコレ屋の看板。
カレコレ屋には知っている2つの気を感じた。
「帰ってきた・・・・んだよな。」
本当に自分の世界なのか少し不安に感じたが、自分の自宅に居る悟飯の気を感じ、ここは自分の世界なんだと確信した。
「さて、二人いるみたいだし・・・・行くか。」
イヤだな〜っと2人に何言われるか若干憂鬱になりながらカレコレ屋の扉の前に立ち、ドアノブを回して開けた。
「あ、すみません!今日の依頼は・・・・!!」
「ヒサメ、どうしたん・・・・!!」
「よ、よう。ただいま。」
ドアが開いたことに気付いたヒサメは、依頼を引き受ける時間は過ぎたため、今日は断ろうとした時、今まで居なくなっていたカゲチヨが目の前にいる事に驚き、言葉を詰まらせ固まった。
言葉を詰まらせたヒサメを心配して、シディはキッチンから出て確認したらヒサメと同様に驚き固まった。
そんな2人に軽く負い目を感じながらも一言発した。
「本当に・・・・カゲ・・・・なの?」
「あぁ。長らく空けて悪かったな。」
バチン!!
カゲチヨの頬をヒサメは強く引っ叩いた。
「「悪かったな」・・・・じゃないよ!!」
「・・・・」
涙を流しながら溜まりに溜まった感情をカゲチヨにぶつける。
本当なら避けられたはずだろうビンタをあえて避けず素直に食らった。
事故とはいえ2人に不安にさせたのは本当な事。
だからこそ、カゲチヨは甘んじて受け入れた。
「なんでいつもいつも無茶な事ばかりするの!?どうして私達を頼ってくれないの!?」
「・・・・。」
「ヒサメの言う通りだ。確かに今のカゲチヨからしてみれば、俺達は頼りにならないかもしれない。だが、一言俺達に話して欲しかった。」
「・・・・。」
「俺達は信頼出来ないのか?」
「いいや、お前らの事はちゃんと信頼してる。それは間違いない。」
「だったら!!何で何も言わずに一人で行っちゃうの!?」
「そうだな。ごめん。」
「ごめんじゃないよ・・・・。お願いだから・・・・これ以上、心配させないで・・・・。」
カゲチヨの服を握りながらカゲチヨの胸に顔を埋め、涙を流し続ける。
そんなヒサメの背中をあやす様に擦り、安心させる。
「心配させて済まなかった。」
「もうこれ以上、一人で無茶しないって約束して。」
「ん~それはちょっと無理かな〜。」
「何で!!」
カゲチヨの返答に少し怒気を強めるヒサメに対して、平然と理由を話した。
「今回みたいに、また突拍子なく居なくなっちまう事があるかもしれねー。それに、俺の無茶は昔っからの癖みたいなもんさ。直せって言われても簡単に直せたら苦労はしねぇ。」
「・・・・。」
「だけど、これだけは約束する。俺は死なねぇ。今日みたいに生きてお前らの所に帰って来る。なにせ俺は、不死身だからな。」
その言葉をを聞いたヒサメは服を離し涙を拭いて儚くも笑顔を見せた。
「はは、無茶しないって約束もしてほしかったな。」
「悪いな。」
「・・・でも、今はそれだけで十分だよ。」
「シディも悪かったな。」
「次からは一言言ってくれ。いくら大丈夫だからって心配しなくていい事に、俺はなれない。」
「そーだな。出来る限りはそーする。」
「だが、無事に帰ってきて良かった。」
安堵したかのように笑顔を見せる。
やっと仲間が帰ってきた事に、心配や怒りはあったがそれでも嬉しかった。
カゲチヨも二人を見て帰ってきて良かったと思い、口角を上げた。
「カゲ。」
「カゲチヨ。」
「「おかえり。」」
「あぁ。ただいま。」
また、いつものカレコレ屋の日常が戻って来た瞬間だった。
◇◇◇◇◇
カゲチヨが自分の世界に帰った次の日。
平行世界のリサイクルショップ。ヨーメイはいつもの様に出勤してきたが、いつも早く居るはずの孫ことカゲチヨが居ない事に気付いた。
「あれ?孫さんは?まさか遅刻ですか?はぁ〜、後輩のくせに先輩より遅れるとはいい御身分ですね~。」
「孫なら来ないぞ。」
「え?風邪でもひいたんですか?」
「あいつはやめたよ。元々、短期で働く契約だっからな。」
「ええ!?急すぎません!?だって昨日そんな事・・・まさか昨日の用事って解雇を言い渡す為だったんですか!?」
「まぁそんな所だ。」
「そんな所って、いいんですか?生意気な所ありましたけど、よく働いてくれてたじゃないですか。」
「あいつが決めた事だ。私がとやかく言うつもりはないさ。」
「はぁ~・・・。辞めるなら一言言えばいいのに。礼儀がなってませんよ。」
「寂しいか?」
「は、はぁぁぁ!?そそ、そんなわけ無いじゃないですか!!あ〜あ、生意気な筋肉馬鹿が居なくて清々しますね!!」
そういってヨーメイはバタバタと荷物作業に入っていった。
口では平然を装っていても心の奥底は、一緒に働いていた仲間が居なくなって寂しさを感じていた。それを誤魔化すように、珍しく作業に集中していた。
普段からこれくらいのペースで作業してくれればなっと内心思ったが口にしなかった。
自分も仕事しようかと思ったとき、ふと近くに孫ことカゲチヨが初めて来た時のボロボロの道着があり、オーナーは擦るように軽く触れた。
「写真くらいは・・・残して置けばよかったかな。」
悲しそうな表情しながらも、すぐに気持ちを切り替えて仕事に取り掛かった。