有象無象の人達が公園を歩いてる中、カゲチヨは一人で椅子に座って誰かを待ってた。
「おー!アンタがカゲチヨちゃん!ホンマもんやー!」
全身黒統一の服装で髪を縛った緑の長髪。片目には黒の入れ墨。無精髭でギザギザの歯をした男性が歓喜な声でカゲチヨに近寄って来た。
(うさんくせー奴が来たもんだ。)
自分を指定した、待ち人の依頼人に対しての最初の印象だった。
(こいつの気・・・どっかで感じたような・・・。)
そんな疑問に感じたカゲチヨの隣を遠慮なく座って来た依頼人の男。
「会いたかったでぇ~。儂カゲチヨちゃんの大ファンですねん。」
「俺のファンとは、変わってるな。それで?依頼は何だ?わざわざ俺を指名したんだ。訳ありか?」
腕と足を組みながら、依頼人に質問をする。
「あーそれな。嘘や。」
「あ”?」
「まぁ~そう怖い顔しなさんなや。あぁ~ちゃうな。お話したいっちゅう依頼や。」
「話だぁ?」
「儂はサンディ男爵っちゅーもんや。実はな、カゲチヨちゃんに大~事な話があんねん。」
笑顔だった顔が半グレの様に眉を下げて睨めつけるような顔付でカゲチヨの肩に手を回した。
「カゲチヨちゃんとヒサメちゃん。どっちかもう直に命尽きるで。」
「何?」
「ホンマは教えたらあかんねん。せやから出血大サービス。こいつが詳細や。」
そう言って一枚の紙を渡した。
渡されたカゲチヨはそれを受け取り開いて読んだ。
そこにはたくさんの人名が書かれ、最後に自分とヒサメの名前が記載されていた。
「これはお前の殺害予告って事か?」
「まぁそー言う・・・・・こっちゃ!!」
そう言って。ナイフをカゲチヨに突き刺そうとした。
「!!」
だが、そのナイフはカゲチヨの二本の指で防がれた。
「ま、まじかいな。」
「残念だったな。」
「うぉっ!?」
依頼人のサンディ男爵に蹴りを入れたカゲチヨだが、ナイフから手放しギリギリで避け距離を置かれた。
「その身のこなし。ただの一般人じゃねぇーな。」
「儂はこう見えて死神やねん。」
「なるほどな。」
余裕そうに会話するが汗を垂らしながらカゲチヨを警戒するサンディ男爵。
「ははっ。さっきの蹴りくらったら一溜りもないわ。」
「ヒサの命を取られる前に、俺がテメェをぶっ倒してやるぜ。」
「はは!考え方が脳筋やな!だが、そーいうの嫌いやないで!!」
隠し持っていたのか刀を出し、目にも止まらぬスピードでカゲチヨの背後に回ったサンディ男爵は思いっきり刀を振り下ろした。
その音速は並大抵の相手では対応できないだろう。
・・・・・・カゲチヨ以外は。
「なっ!!」
斬ったと思った瞬間、すり抜ける様に空ぶった。
これは亀仙人が天下一武闘会で悟空と戦った時に使った技の一つ
「残像拳」だ。
「なっ、残像!?どこや!?」
「こっちだ。」
サンディ男爵が背後に振り向くと同時に、刀を横に振ったが残像拳によって避けられる。
「ほれほれ。」
「俺はここだ。」
「どこを見ている。」
いつの間にか、サンディ男爵の周りには無数のカゲチヨの残像が存在し、どれが本物か見分けつかなかった。
残像を一体一体斬ってははずし、迫ってくる残像に避けたりと困惑していた。
(な、何て事や!こりゃ計算違いや!このままじゃ儂・・・っ!)
そう思った瞬間、首筋に冷たい物を感じた。
目にすると、首に自分がカゲチヨを襲おうとしたナイフがあった。
ゆっくり背後を見ると、ナイフを持ったカゲチヨがこちらを見て立っていた。
「・・・降参や。」
そう言って刀を捨て、諦めた様な表情で両手を上げて降参を示した。
「もうカゲチヨちゃんとヒサメちゃんに手は出さん。」
「最初っから出す気なかったくせによく言うぜ。」
「・・・・お見通しってわけかいな。」
ナイフを引っ込めて、呆れた表情でそう言ったカゲチヨ。
実は、この依頼人のサンディ男爵が自分達の命を狙っていない事は、先ほどの戦闘で分かったのだ。
「俺を殺そうとしてる割には殺気がなかったからな。」
「はは、やっぱカゲチヨちゃんは凄いわぁ~。更に好きになったでぇ!」
「男に好きと言われても嬉しくねぇよ。それで?なんでわざわざこんな事した。」
「いや~本当はカゲチヨちゃん脅して、ヒサメちゃんと恋仲にさせようとしたんや。要は恋のキューピットって訳や。」
「なんだそのくだらない理由は!!俺はそんな事で襲われたのか!?」
明らかにくだらない理由に思わず突っ込んでしまったカゲチヨ。
そんなカゲチヨにまぁまぁと落ち着かせようとする。
「でも、カゲチヨちゃんヒサメちゃんの事好きやろ?儂が手助けしよーってこっちゃ。どうや?試してみーひんか?」
「余計なお背世話だ。」
カゲチヨはサンディ男爵に背を向けてた。
「本当にええんか?ヒサメちゃん、ごっつう可愛いからすぐに誰かに取られてしまうで。」
「・・・あいつを幸せにしてくれるなら誰だろうと構わねぇよ。俺には無理だ。」
その返答にサンディ男爵は目を見開いてカゲチヨの背中を見た。
(カゲチヨちゃん・・・。お前さんが何を思ってそう答えるのかは儂には分からん。けど、自分に素直になるのは大事やで。)
そう思いながらカゲチヨが見えなくなるまで見送った。
◇◇◇◇◇
「おうカゲチヨちゃん!」
「・・・はぁ・・・。」
「ちょいちょい。人の顔見て溜息吐くのは失礼やで!」
誰のせいだと・・・っと思ったカゲチヨ。
昨日と同じ公園で、呼び出された事で若干の憂鬱気味だった。
「んで?今度は何だ?」
「いやー、実はカゲチヨちゃんにもう一つ依頼、というより頼みたい事があるんや。」
そう言って、色紙とペンを出した。
「これにサインしてほしいんや!」
「あぁ~、そー言えば俺のファンって言ってたっけ・・・。」
「ここにゲデって頼むわ!」
「ゲデ?サンディ男爵じゃねーのか?」
「あれは偽名や。いや~あの有名なカゲチヨちゃんにサインしてもらえるなんて感激やわ~!」
「有名なのは俺じゃなくてヒサとシディだ。なんで俺に興味持ったんだか。」
「前々からチャンネル見て気にはなってたんや。やけど「お守りヒーローグレートイチューマン」のスタントマン姿を見てから一気にファンになったんや!あのアクション演技は感無量やったで!」
『お守りヒーローグレートイチューマン』の言葉を聞いたとたん、ペンを受け取ろうとした手を止めた。
「おま・・・何でその事を・・っ!クレジットには分からないように偽名使ったのにっ!」
「実は儂、たまたま散歩してた時に撮影現場を目撃してな、興味本位で見に行ったらイチューマンの恰好したカゲチヨちゃんが居たっちゅう訳や。いや~生身のアドリブアクションや戦車から飛び出る所とか良かったでぇ~。昨日の戦いでその超人的な強さが本物と分かって嬉しかったわ~。」
褒めるサンディ男爵・・・もといゲデは、昨日の出来事を思い出して浸っていた。
脅す事が目的ではあったが、映画を見て本当にあの強さが本物なのか一度戦って試してみたかったという理由もあった。
そんなゲデとは反対にカゲチヨは苦い顔をしていた。
カゲチヨにとってあの撮影の出来事は思い出したくなかったのだ。
通りでゲデに会った時に知っている気配だと思ったら、野次馬の中に居たとは気づかなかった。
「でも決めポーズはちょっとあれは無いわ。ダサいしセンスのかけらもないねん。」
「喧しい!!俺だって好きであんなポーズした訳じゃねーよ!!あれは俺にとって最大の黒歴史だ!!」
「そうかぁ?ポーズは賛否アリやけどそれ以外は大傑作やったで!だからこの色紙にサインを・・・。」
「絶対に書かん!!」
公園内でカゲチヨの声が鳴り響いたとさ。