カゲチヨ達カレコレ屋とヨーメイは現在、水着を着て船の上に乗って海を眺めていた。
「カゲ!カゲ!海だよ!!綺麗だね!!」
「おいおい。そんなにはしゃいでたら船酔いするぞ。」
「平気だも~ん。」
「ヒサメさんは元気ですねー。(せっかくシディさんと二人っきりになるチャンスだったのに~・・・。)」
元気なヒサメとは真逆にヨーメイは死んだ目で思い煩っていた。
なぜ船の上にカゲチヨ達が居るのか理由があった。
それはヨーメイが商店街の福引で観光船のチケットを当てたからだ。
本当はシディだけを誘いたかったが、観光船のチケットはペアではなく四人分だったため、シディがカゲチヨとヒサメを誘ってしまったためであったため悔しい表情をして涙を流した。
(なんていうか。運がいいのか悪いのか分からない奴だな。)
そんなヨーメイの心情をなんとなく理解してそう思ったカゲチヨだった。
「ん?」
さっきまではしゃいでいたヒサメが船の周りに生き物の尾ひれがある事に気付いた。
それも一匹ではなく数匹が周りに泳いでいた。
「おい・・・あれってサメじゃね?」
「サメ!?」
周囲の乗客も尾ひれがある事に気付いてサメじゃないかとざわついている。
《皆様、船旅は楽しんで頂いているでしょうか?この海は少し前までサメが大量発生しており観光できませんでした。》
「え?サメでんのかよここ!」
《ですがご安心ください。すでに百匹以上のサメの駆除に成功してます。皆様に目の前に居るのは・・・》
「わぁ!イルカだ!!」
尾ひれの正体がサメでなくイルカだとわかり安心する乗客達。
《ご安心いただけましたでしょうか。まもなくダイビングスポットに到着します。》
放送を聞いて、ヒサメ達は上着を脱いで海に入ろうとした。
「じゃあ私たち潜ってくるね。」
「あー。行ってこい。」
「え!?私もですか!?」
「せっかく来たんだ。ヨーメイも一緒に潜ろう。きっと楽しいぞ!」
「し、仕方がないですね・・・。」
(ちょろいなこいつ。)
ヒサメ達が潜っている間、カゲチヨは静かに海を眺めていた。
「こうして何もせずにゆっくりするのも久しぶりだな。次は悟飯たちと一緒に来るのも悪くないな。」
「邪魔だよガキ!」
「あっ!」
カゲチヨのまで、水筒を持った子供を突き飛ばした青年たちが見えた。
「おい、子供を突き飛ばして謝りもしないとは、礼儀がなってないんじゃないか?」
「あぁ?俺の前に居るこのガキが悪いんだよ。」
「ガキは大人しくプールにでも行ってるんだな!」
そう言って青年たちは海の中に入っていった。
「ったく。どう教育したらあんなふうになるんだか。おい、大丈夫か?」
「あ、はい。ありがとうございます。」
水筒を持って子供に渡そうとしたカゲチヨだったが水筒を持って違和感を持ったがあえて指摘せずに手渡した。
渡された子供はカゲチヨに再度お礼をしてどこかへと言ってしまった。
「・・・・。」
数時間勝ち、ダイビングから帰ってきたヒサメ達はカゲチヨと合流した。
「そろそろ出発の時間だな。」
「あっという間だったな。」
「早く戻って休みたいです・・・。」
するとドシン!っと船が大きく揺れた。
振動に動揺する乗客達。
《乗船中の皆様にお知らせです。現在予期せぬトラブルにより船は停止します。すでに救援の要請は済んでおりますので慌てずそのままでお待ちください。》
「何があったんでしょう?」
「確認してくる。」
カゲチヨは一人で船内の操縦室に向かった所、船員の会話が聞こえた。
どうやら燃料の問題ではなく突然原因不明の船が動かなくなったそうだ。
「ってな訳だ。」
「燃料があるのに動かないなんて普通じゃないな。」
「え、救助来るまでこのままですか!?」
「ま、普通はそうなんだろうね。」
「何とかしてくださいよ!!船を押すくらいできるでしょ!!その無駄な筋肉は何のためにあるんですか!!」
「ちょ、ヨーメイちゃん。そんな無茶な・・・。」
「仕方がねぇーなぁー。」
「へ?」
ヨーメイの八つ当たりめいた発言に呆れて溜息を吐いたカゲチヨは上着を脱いで肌を現した。
上着をヒサメに渡して船の後ろに飛び、両手で船を触れて押し出した。
「う、動いた!?」
「一体なんで!?」
船員は船が動いた事に動揺した。
「もう・・・何でもありですね。」
「カゲチヨは何でもできるからな!」
「何でもの範囲超えてますよ!」
「・・・・。」
「・・・ヒサメさん?何してるんですか?」
「気にしないで。」
シディとヨーメイの漫才をしてる隣で、ヒサメはカゲチヨの上着を抱きしめて顔を埋めていた。
カゲチヨ止まることなくそのまま船を押したが、いくつかの気配がこちらに来ていることを感知した。
一見、救助が来たのかと思ったが、あまりにも気配が多いい事に気付いた。
「動いてるみたいだし、これで心置きなく堪能できるな!」
「でももっと泳ぎたかったなぁ~。」
手すりの近くで会話をしてる男女だったが、その背後に大きなサメが口を大きく開けて男女を食おうとした。
「危ない!!」
ガブっと手すりごとかみ砕いたサメ。気付いた時にはすでに食われて男女は呆気なく死んでいた。
普通だったら。
「あぶねーな。まさかあんなでけーサメが要るとはな。」
男女を両脇に抱えて助けたカゲチヨは二人を船の上に下ろした。
乗客達は大きなサメが出た事で動揺を隠せずに混乱していた。
「ななな・・・なんですかあれは・・・!?」
「あれは多分メガロドンだな。絶滅したと言われてる幻の巨大ザメらしい。」
「何冷静に解説してるんですか!?それに何で絶滅したサメが要るんです!?」
「さぁーな。」
冷静なカゲチヨにツッコむヨーメイを横目に他の乗客がドタドタと動き回り、船が揺れる。
「落ち着いてください!!動き回ったら船が揺れちゃいます!!」
「ったく、仕方がねぇーな。シディ、ヒサ。サメを鎮静化してやってくれ。」
「カゲチヨは?」
「ちょっと用がある。」
そう言ってカゲチヨは影に隠れた子供の前に立った。
「な、なに?」
「んな演技しなくていい。もう分かってる。」
「な、何の事かさっぱりわからないよ。」
「このサメたちを呼び出したの、お前だろ?」
「・・・何を根拠に・・・。」
「そーだな。まず、観光船に親も連れず一人で乗ってる子供なんてはたから見たら違和感しかないぜ。あの時持ってた水筒、微かに血の匂いがした。あれでサメを誘き寄せたんだろ?」
「・・・・随分鼻がいいんだね。」
「まぁな。んで、この大騒ぎの状況だって言うのに泣きも慌てもせずに傍観を決め込んでいた。子供にしてはちと出来過ぎてる。もうちょっと子供の演技をするべきだったな。」
カゲチヨの推測を聞いた子供の目は先ほどの穏やかな瞳とは違い鋭くなった。
「お兄さんもしかして探偵?」
「ただの何でも屋だ。それで?こうなった経緯は何だ?」
「これは復讐だよ・・・。」
「復讐?」
「僕は覚りっていう種族なんだ。」
「覚り・・・確か、心を読める能力があるっていう種族か。」
「よく知ってるね。でも人間の心は読めないよ。だけど僕はサメと話すのが得意なんだ。」
「サメ・・・もしかして、サメの駆除と何か関係があるのか?」
「お兄さんはすごいね。本当は探偵じゃないの?・・・そうさ。僕の百匹の友達はある日、みんな沖に行ったっきり帰ってこなかった。」
「その理由が船長が言っていた百匹以上のサメの駆除に繋がるってな訳か。」
「そうさ!最近人間が縄張りを荒らすからみんな困ってた・・・!でもみんなで生きるために新しい餌場を探して大移動を計画してたんだ!!それなのに・・・それなのに!!」
「それで復讐を決行したって訳か。確かに、人間の身勝手でお前の友達を殺してしまった事は許せないよな。」
「分かったような口を聞くな!!人間は僕の友達を殺した!!百匹殺したんだから百匹殺されても文句は言えないでしょ!!」
大声で憎しみを吐き出すように語りだす子供に静かに聞いていたカゲチヨ。
「・・・確かに、文句なねぇーな。」
「は?」
「お前が人間に復讐したいなら好きにすればいい。だが、それは殺した相手にする事だな。周りの無関係な奴を巻き込むな。」
「何それ?僕に説教?悪いけど、僕は止める気はないよ。」
「だろーな。」
「君がどうしようと大きな友達も来る頃だ。」
「みたいだな。今までのサメとは違った大きな気配が近付いて来るのはわかった。」
「分かってるならもう君たちは終わりだよ。みんな僕の友達に食われて死ぬんだ。君の友達も・・・。」
「そいつは残念だったな。お前の復讐は今回は諦めてもらうぜ。」
「な、なにを言って・・・。」
言い終わる前にカゲチヨは大きな気配をたどって飛んで行った。
海ではシディが横向けになってるサメの上に乗っていた。
「すまないな。食われるわけにはいかないんだ・・・。」
「シディ後ろ!!」
後方から大きい尾ひれが船に向かっていた。
その大きさは先ほどのメガロンドより、一回りも二回りにも大きかった。
「くく、喰われるぅ・・・っ!!」
船より大きなサメが姿を現し、船事喰おうとした。
「ぎゃぁああああああ!!」
「助けてぇええ!!」
船をかみ砕こうと大口を開いて接近したが、寸前で止まった。
「な、止まった!?何で!?」
子供は動揺したが、サメの背後に誰かが居る事に気付いた。
「運がなかったな。俺がいる以上誰も殺させやしねぇーよ。」
そこには巨大サメの尻尾を掴んだカゲチヨが動きを止めたからだ。
そのまま巨大サメを上空へと飛んで持ち運び、横回転で思いっきり振り回した。
「そぉーれっと!!」
そして遠くへと投げ飛ばした。
「なな、う、嘘だ!!船よりでかい友達をあんなに・・・。」
「シディ!ヒサ!船に乗れ!船ごと持って運ぶ!」
「え!?船ごと!?」
「わかった!」
「シディもなんで簡単に了承しちゃうの!?あれ!?私がおかしいの!?」
二人が船に戻った後、カゲチヨは海に潜り、下から船を持ち上げて上空へと浮かせ安全地帯まで移動した。
「な、何なんだ・・・あのお兄さんは・・・無茶苦茶すぎるよ・・・。」
そんな規格外なカゲチヨに呆けてしまった子供だった。
◇◇◇◇◇
カゲチヨのおかげで船は一部破損しているが乗客全員無事に陸についた。
「はぁ~・・・サメに襲われるとか、今日は厄日ですよ。」
「まぁでも、みんな無事でよかった。」
「それより、あの筋肉馬鹿はどこ行ったんですか?」
「筋肉馬鹿ってカゲの事?なんかすぐに戻るって言ってどっか行っちゃった。」
「じゃあカゲチヨが帰ってくるまで俺たちは宿に戻ろう。」
「そーしましょ。今日は疲れました・・・。」
ヒサメ達とは別行動したカゲチヨは子供の横に立った。
「なに?僕を警察にでも連れて行くつもり?」
「・・・すまなかったな。」
「え?」
「お前の友達を傷つけたり投げ飛ばした事さ。」
「・・・・。」
「だが、俺にも大事なものがあるんだ。抵抗はさせてもらった。今度は俺らが居ない時にでもするんだな。」
「僕を止めないの?」
「止めたって、お前は辞めないだろ?復讐したいなら好きにしろ。だけど、無差別に人を殺せばまた復讐されても文句は言えないからな。」
「なんだよそれ・・・。悪いのは・・・先にやったのは人間なのに!!何で復讐されなきゃいけないんだよ!!」
「お前が殺そうとした人にも家族や友達がいるからだ。お前が友達を思う気持ちと一緒にな。復讐するならされる覚悟を持って行動しろって事だな。」
カゲチヨは子供に背を向けて去って行こうとした。
子供は歯を食いしばってカゲチヨを睨みつけた。
「じゃあどうすればよかったんだよ!!」
涙目になりながら大声でカゲチヨに怒鳴った子供に対してカゲチヨは振り向いて口を開いた。
「知らん。そんなのお前が考えて決めろ。」
突き放すような一言だった。
それだけ言ってカゲチヨは再度歩き始め子供の前から去って行った。