「はぁ~・・・。」
カレコレ屋にて、ヒサメがパソコンを操作しながら溜息を吐いた。
「なんだ?どーした?」
「いや、この週全然依頼が入ってないんだよなーって。」
カゲチヨはヒサメの背後に立ちパソコンの画面を覗き込むと、カレンダーが表示され一部の週だけ空白になっていた。
「たまにはそんな週もあってもいいんじゃねぇーか?この際ミキ達とどっか出かけたらどうだ?」
「でも依頼無いと生活に困るし・・・。」
「そんなの俺が払うから気にするなって。」
「むー・・・カゲに負担かけたくないんだよ~。」
頬を膨らませながら答えるヒサメ。
カゲチヨにとってはそこまで負担じゃないとは思ってるが、ヒサメにとっては甘えすぎるのは良くないと思っていたのだ。
そこに、シディが両手に袋を持って帰って来た。
「オーナーに食材を貰ったんだ。今日の夕食はみんなでどうだ?」
「お、いいな。シディの飯は久々な気がする。」
「カゲ、いつも帰っちゃうもんねー。」
「うっ。わ、悪かったって。」
ジト目で見るヒサメに言葉を詰まらせるカゲチヨ。
家には食べ盛りのロットに悟飯が居るためカゲチヨは帰って食事の準備をする事になり、自然にカレコレ屋で食事することが減っているのだ。
今はムツミが居るため、カゲチヨが準備しなくても済む事にはなっているが、何時もの日課で帰ってしまう事があるのだ。
「こんばんは~。夕食頂きに来ました~。」
「あ、ヨーメイちゃん!」
「「頂きに来た」じゃなくて「集りに来た」の間違いだろ。」
「喧しいですよ!仕方がないじゃないですか!!こっちはガチャを課金したせいで金欠なんですよ!!」
「自業自得だろ。」
呆れてるカゲチヨを他所にシディとヒサメは普通に受け入れ、堂々と入って来たヨーメイだが近くに小さな箱状な物が置いてあるのに気付いた。
「何ですかこれ?」
「あぁ、明日まで預かってほしいという依頼人がいてな。」
「でもそれは開けちゃダメって言って・・・?」
「え・・・。」
説明し終わる前に勝手に箱を開けたヨーメイ。
「もう開けちゃいました・・・。」
「え?えぇ~!!」
すると四人は箱の中に吸い込まれてしまった。
「ヨーメイのバカヤロー。」
◇◇◇◇◇
四人がたどり着いた場所は、周りが本棚に包まれている空間に動揺する。
「な、何ここ・・・。」
「どうやら箱の中に入っちまったようだな。」
「このドールハウスに?」
「不正解。」
「ぐふっ!」
四人とは違う声とやらで苦痛の声が近くに聞こえた。
そこに、高級椅子に座った男性と血を流しながら倒れたスーツを着た女性が居た。
「嘘、死んでる・・・!?」
「正解!キャッキャッキャ。」
その女性が死んでることに驚くヒサメ。
そんなヒサメに愉快そうに笑いながら正解と言い渡した。
「だだだ誰ですかあなたは!?」
「これはお前の仕業か?」
「それも正解!イムホテップ。イムホって読んで。ここは僕の頭の中にある知識の全てを百科事典として具現化した部屋なんだ。ってことで早速始まるよー!」
「は、始まるって何をですか?」
「それは~。クイズ「イムホネア」!参加者に皆さまようこそ~!」
イムホが両手を上げ楽しげにした時、カゲチヨ達の首に何かの装置がつけられた、
「どういうこと!?」
「君達には今から命を懸けたクイズをしてもらいまーす!」
「またデスゲーム系かよ。」
毎回毎回デスゲームに参加させられる事に若干憂鬱になるカゲチヨは溜息をこぼしてしながらゲームについて考えた。
恐らくこのクイズで不正解すると死んでしまう事になるのだろう。傍で死んでしまった女性がその証拠だと確証した。
「この首輪がある限りやるしかなさそうだな。」
「そんな~!!」
首輪を触りながらこのゲームから逃れられないと悟るシディにヨーメイは悲観な声で叫んだ。それを聞いてイムホは愉快に笑い出す。
そして一通り笑った後、ルールを説明しだした。
・クイズは四択問題。
・五問正解で全員の首輪が外れる。不正解だとその人の首輪から刃が飛び出す。
・回答権は四人に順番に回ってくる。
大まかのルールはこんな感じで説明される。
「そしてそして!優しい僕が君達に事典、相談、交代の3枚のお助けカードをプレゼント!」
三つのカードの内容は
事典:イムホテップ事典を30秒間読む事ができる。
相談:3人でクイズの相談ができる。
交代;回答権を変えることができる。
ただし、この三枚のカードは一回しか使えないからよく考えないといけない。
「特にこの事典は僕の頭の中の全知識を具現化したイムホテップ事典の中からクイズの答えが載っている巻を渡され30秒間読め・・・。」
「もういい。とっととやるぞ。」
「えぇ!?ちょっとカゲ!?」
「長々と説明してるが、要は全問正解すればいいんだろ。」
「おっと、自信満々だね~?」
「うるせー。こっちは腹が減ってんだ。こんなくだらんゲーム終わらせてもらうぞ。」
「くだらないねぇ~。そんな態度しちゃってもいいのかな~。君にだけ難しいの出しちゃうかもよ~?」
「好きにしろ。」
「ちょっ!?何煽ってんですかこの筋肉馬鹿!!」
近くの椅子に座るカゲチヨの肩を強く掴み、ゆさゆさよ揺らすヨーメイ。
「正解すればいいんだろ正解すれば。」
「カゲチヨは不死身だからいいですけどね!!私たちは一門でも不正解したら死ぬんですよ!?」
「俺が死なせないから安心しろよ。」
「どこから出るんですかそんな自信!?」
堂々としてるカゲチヨに対して不安があるヨーメイだったが、シディとヒサメに引きずられ下がった。
二人はカゲチヨなら何とかしてくれると信用して任せた。
「回答順は君からみたいだけど、他はどーする?」
「俺、ヒサ、シディ、ヨーメイの順だ。」
「OK~。この空間から帰った人は居ないけどね!キャッキャッキャー!」
「あっそ。」
カゲチヨの向かい側に座ったイムホは、早速問題を出題をした。
「じゃあいくよー第一門!夕暮れ時を意味する「たそがれ」。言葉の元々の意味は?」
1、あれは誰ですか?
2、もう少し遊びたい。
3、夜はもうすぐだ。
4、月が見えますか?
「1だ。」
「ファイナルイムホ?」
「あ?何言ってんだお前?」
「その答えで決定かって意味でしょうか。大体わかるでしょうが!」
「わかるか。」
溜息吐きながファイナルイムホと言葉を返すカゲチヨ。少しの間が流れ正解と言い渡された。
「なんでわかったの?君馬鹿そうなのに。」
「・・・・。」
「いででででで!!」
額に怒りマークを出しながら、イムホの顔面を鷲掴みして力を軽く入れた事で指が顔に食い込み激痛が走り苦痛の叫び散らかす。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
「言葉に気を付ける事だな。」
しばらくしてから解放され、息を荒げながら顔を擦るイムホにカゲチヨはふんっと息を吐いてヒサメと交代して後ろに下がった。
そんなカゲチヨを冷や汗流しながら見ながら次の問題を出題した。
次の回答者はヒサメになった。
「第二問。洋菓子業界では毎月ショートケーキの日を定めて盛り上げているがそれは毎月何日?」
1、一日
2、十一日
3、十五日
4、二十二日
「えっと~・・・。」
《ヒサ。聞こえるか?》
「うぇ!?」
突然脳内に語り掛けたカゲチヨに変な声を出したヒサメ。後ろに居るカゲチヨの方に振り向いて動揺する。
《今、お前の脳内に語り掛けてる。》
「え?え?」
《動揺する気持ちは分からなくもないが落ち着け。今から答えを教える。答えは4だ。》
「・・・・信じてるよ。」
カゲチヨを信じ、4と答えた。
その結果正解し、ホッとしたヒサメが戻りシディと交代した。
「シディさん!頑張ってください!」
「ウム。」
「第三問。次の内、囲碁から生まれた言葉じゃないのはどれ?」
1、一目を置く。
2、高飛車。
3、布石。
4、駄目。
「ウヌ・・・聞きなれない言葉ばかりだ・・・。」
「あれ~?イージー問題にまさかの苦戦かな~?」
「どうしよう・・・あ、カゲ!私みたいにシディに・・・。」
「シディ!」
ヒサメが自分にやったように脳内に語り掛けを使うように提案しようとしたら、言葉を被せる様にシディの名を呼んだ。
「交代のカードを使え。」
「え?」
まさかのお助けカードを使う事に驚くヒサメを他所に、カゲチヨは気にせずにシディに交代を使って自分に変わるように提案する。
申し訳なさそうに交代カードを使ったシディはカゲチヨと交代し後ろに下がった。
シディを役立たずと言いあざ笑うイムホを無視して椅子に座るカゲチヨ。
「改めて第三問・・・。」
「問題が一緒なら言わなくていい。」
「あ、そう?じゃあ答えなよ。」
「その前に事典カードを使わせてもらう。」
「はぁ?」
交代カードを使って早々、事典カードも使うカゲチヨに呆れの声を出すイムホ。
「各カードは一回しか使えないからよく考えろって・・・。」
「聞こえなかったか?事典カードを使う。二度も言わせるな。」
カゲチヨの態度に顔を真っ赤にしながら怒り出すイムホは「イムホテップ事典 イの巻」を出し、カゲチヨに手渡した。
「そこには僕の全知識の内、頭文字イに分類されている項目が載ってる。閲覧時間30秒だよ。」
説明をしてるイムホを無視してパラパラと読み漁るカゲチヨ。
(カゲどうして?この問題なら貴重なカードを使わなくても・・・。)
(カゲチヨ・・・何か考えがあるのか?)
困惑するヒサメにその隣でカゲチヨは何か考えがあるのかもと考える。
カゲチヨ本人は時間制限は残り十秒の所で本を閉じ、事典をイムホに投げ返した。
「もういい。答えは2の高飛車だ。」
「はいはい。正解だよ。ファイナルイムホするほどでもない簡単な問題だもんね。」
「つつつ、次は私ですか・・・。なんで交代カード使うんですか~・・・。」
顔を真っ青にして椅子に座るヨーメイ。
そんなヨーメイに愉快そうに笑うイムホは次の問題を出題した。
「じゃあ次、洗剤などの材料になっている重曹。この重曹の曹は何を示す?」
1、ソフト。
2、ソーダ。
3、ソース。
4、サルファー。
「これはちょっと難しいよ~。」
「(あれ?・・・これどっかで・・・・あ。)2のソーダです。」
「え?」
「え?」
「あ、ふぁ、ファイナルイムホ?」
「ファイナルイムホです!!」
さっきまで不安そうだったのにまさかの即答で驚きの声を上げてしまったイムホの反応に自信満々にファイナルイムホを決めたヨーメイ。
「・・・正解。」
「よっしゃー!!」
正解したことで思いっきりガッツポーズしたヨーメイは軽い足取りで戻って来た。
「こりゃあ驚いた。」
「ヨーメイちゃん凄いよ!」
「よく分かったなヨーメイ!」
「ま、まぁこんなの分かって当然ですよ!(あ、危なかった~。店の作業サボった時に見た「重曹に入れたコーラの炭酸がめちゃくちゃ噴き出す動画」覚えててよかった~!!)」
次の回答者はカゲチヨ。最後の問題に正解すれば元の世界に帰れると希望を持つ三人。
「カゲ!頑張って!」
「あと一問だ!」
「第五問!次の中でタンパク質を固まりにくくするものは?」
1、砂糖
2、酢
3、熱湯
4、にがり
「1の砂糖だ。」
「ファイナルイムホ?」
「ファイナルイムホだ。」
しばらくの沈黙の後、イムホは溜息を吐いた。
「正解だよ。」
「やったー!」
「これで帰れます!」
喜ぶ三人にイムホはニヤリと口角を上げて口を開いた。
「いや~すごいね~。五問間違わずに正解しちゃうなんて。」
「いいからとっとと首輪を外せ。」
「はいはい。」
そう言って四人の首輪が外れ解放された。
「早く私達を戻して!」
「はい~?五問正解したら首輪を外すとは言ったけど元の世界に戻すなんて言ってませんけど~。」
「ななな、ずるいですよそんなの!?」
・・・が、首輪を外すだけで出す気がなかったイムホに驚愕するヨーメイ達。その横でカゲチヨはやっぱりかと思っていた。
「この世界から出るのにはあと五問正解しなきゃ出られないよ?ど~する?チャレンジする?」
「じゃあ今度は私たちが・・・。」
「やめておけ。こいつは俺達を返す気はないんだ。時間の無駄だ。」
「どーいう事だ?」
「「帰った奴はいない」とか言ってた割に、これまで俺達でもギリギリ答えられる問題ばかりだ。遊ぶだけ遊んで、ここから先は超難問でも吹っ掛ける気なんだろうぜ。それがお前のいつもの手なんだろ?」
「・・・君、鋭いね~。」
「卑怯な・・・。」
このまま自分たちは死んでしまうのかと一同は思っていた。
・・・カゲチヨ以外は。
「そこでだ。俺から貴様にクイズを出題してやるよ。」
「カゲ!?」
「なっ!?」
得意げな笑みでイムホを見るカゲチヨ。唐突なカゲチヨの言葉にヒサメ。そして、ヒサメに以上に驚くイムホ。
「イムホテップに問題。今日俺たち四人がカレコレ屋に戻って食べる夕食は何?」
「ん?今日食べる夕食はまだ決まってないぞ?」
「それでいいのさ。」
あいつを見ろと言わんばかりに顎でイムホを指した。
そこには大量に汗を流して悔しそうに叫びだした。
「クソクソクソクソ!!」
「え?ど、どういうこと?」
「こいつはどんなクイズでも出題されたら二十四時間以内に回答がないと死ぬのさ。」
「え?」
「そういう呪いにかかっているらしい。事典に書いてあった。」
「な!?」
「お前最初に言ったよな?「ここは僕の頭の中にある知識の全てを百科事典として具現化した部屋」ってな。知識の全てなら元の世界に戻るヒントやお前の弱点、不利な情報も全部載ってるはずだと思ってな。それを見る方法が模索したら、運がいい事に三問目の囲碁問題が出た事で「イ」の頭文字の貴様について調べていたのさ。」
「だからあの時すぐに答えないでカード使ったんだ。」
「そしたら、「どんなクイズでも出題されたら二十四時間以内に回答を突き止めなければ死んでしまう」という貴様の弱点を見つけたって訳さ。」
「クソ!」
「どうする?このクイズの答えは俺達が元の世界に戻らねぇと分かんねーぞ?」
死ぬか、カゲチヨ達をもとの世界に戻すか。選択を迫られたイムホは震えながらも弱音になりながら帰す事を選んだ。今まで人の命を奪って来たイムホでも、やはり自分の命が惜しかった。なんとも自分勝手な男だった。
そして、イムホの力でカゲチヨ達は傷一つなく元の場所に帰る事が出来た。
◇◇◇◇◇
「お肉柔らか~い!」
「砂糖で肉を柔らかくしてるからな。」
現在、シディが作った料理を堪能してるカゲチヨ達。
「おかわりまだある?」
「あぁ!」
「どんだけ食べるんですか!?お代わり三杯目ですよ!?」
「だってめっちゃ美味しいんだもん。」
何時もの騒がしいカレコレ屋の食卓に笑みを浮かべながら、目の前にあるシディの作った「豚の生姜焼き」を頬張るのであった。