ゲームの自機が現実世界にやってきた   作:屍モドキ

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 のんびり書きます。




二話 決裂な朝

「ラヴィナ……?」

「はい、あなたのラヴィナです!」

 

 己をキャラクターだと自称する不法侵入ているおかしな女の子を目の前に、理解出来ないと思いつつ納得しようとする自分を何とか取り押さえる。

 

 妙なことを考えてはいけない。

 コイツは謎の電波を受信しているような危ない女だ。

 

 なにがハンターだ、コスプレして人の家に勝手に上がり込んで挙げ句寝床に入ってくるなぞ有り得るか?

 

 しかし、目の前の女の子が着ている衣装は自分のデータのキャラしか着ていない、自分が考え作り上げた衣装なのは確か。

 

 それを着ているとなると、天文学的な確率でたまたま趣味が被ったのかそれとも重度のストーカーなのか、もしくは本当に……。

 

「あの、マスター?」

「ちかっ……!?」

 

 俯きながら掠れるような声でぶつぶつと独り言を呟いていたら、目の前の少女が心配そうに前髪の向こうから間近に此方を覗いてきたので思わず驚いてしまい、可愛いなんてバカな事を思った自分を悔やみながら頭を振って立ち上がる。

 

「ともかく、俺は君のことなんて知らない! 金目のものが欲しいのなら父さんの部屋にでも行け!」

 

 そんな事を吐き捨てて、俺は制服と鞄を引っ掴んって早足に部屋を飛び出す。

 一階に降り、時計を見ればそろそろ登校しなければ危ない時間に差し迫っていた。俺は一杯の牛乳を飲み干して制服に袖を通し、逃げるように家を出る。

 

「待って……!」

「……俺が帰るまでには出てけ」

 

 玄関先で縋るような目で此方を見てくる白い少女を一瞥し、俺は早足に学校へと向かった。

 

 取り残された少女、ラヴィナはスカートの裾を掴みながら目に涙を為、遠ざかっていく背中をじっと見つめることしかできずに家の中へ引っ込んだ。

 

 

 ◇

 

 

「よう村崎! お前がこんな時間に登校とは珍しいな」

「……加藤。いやまぁ、なんか色々あったんだよ」

 

 ギリギリの登校に数少ない親友が茶化してくるが、それに返す元気も湧かない程に疲れていた。

 席に着くなり机に突っ伏す俺を眺めながら加藤はどうからかってやろうかとあからさまな悪巧みをするが、ていたらくな俺の様子を鑑みて考えをあらたようだ。

 

「何があったんだよ」

「なんか……不審者がいた……」

 

 突拍子のない答えにどう反応していいかわからなくなったらしい加藤は要領を得ない生返事を返す。

 

「ちなみにどんな奴だった?」

「……コスプレした女の子が、俺のベッドで一緒に寝てた……」

「寝坊すんなよ」

「待て、本当なんだよ!」

 

 女と聞いた瞬間に加藤は急に手のひらを返してしょっぱい対応に変えてくる。

 

 薄情な奴め……。

 怨めしく思っても口で説明すれば確かに夢と見間違えたのかと言いたくなる内容なのは間違いない。これ以上の言い訳は余計な誤解を生みかねないと思い、俺は鞄から荷物を取り出す。

 

 そこである事に気がついた。

 

「……弁当忘れた」

 

 昨日の晩に作り置きしていた弁当を、朝のうちに鞄に入れるのを忘れていたらしい。

 なんと平凡なミスを犯してしまった。

 購買は目当てのパンなどを求めて人がごった返すし食堂を使うのは個人的に人目が気になって使いたくない。なのでいつもは弁当を持参しているのだが、それを忘れてしまってはもう諦めるしかない。

 

「クソ、今日は厄日だ……」

 

 一人小さく毒づいて机に突っ伏す。

 今日はなるべくエネルギーを消費しないようにしよう……。

 

 

 ◆

 

 

 

「うぅ〜〜……ひとりぼっちー……」

 

 家主が出ていった家で一人、ラヴィナは膝を抱えて蹲っていた。

 しばらく泣きべそかきながらグズっていたのだが、やがてそれも虚しくなり、せめて何かしようと起き上がる。

 

 せめてお世話になるんだし(希望)お部屋のお掃除をしましょう!

 

 正直この家の構造だったり外の景色などを見るに自分では理解が及ぼないものがこの世界に溢れていりため、大した事は出来ないだろう。しかしとてそれを言い訳にして何もしないのは居候(ほぼ確定)の身でやっていい行いではない。

 

「まずはお掃除!」

 

 水場を探す。

 しかし見つからない!

 

「お料理!」

 

 焜炉の使い方がわからない!

 

「お洗濯!」

 

 以下同文。

 

 

「私は、出来損ないですッ……!!」

 

 ラヴィナはまた膝を抱えて壁に向きながら叫ぶ。

 切ない慟哭が部屋に響いた。

 

 いや、まだそうと決まったわけではないはず。分からないなりにも試せば使えるものはある。はず!

 

 飛び起きたラヴィナは血眼になって家中探索して回っていると、台所に一つの包がある事に気がついた。

 

「これは、お弁当?」

 

 持った感じの重さと、軽く揺すった時の中から伝わる質感を考えるにこれが携行できる食べ物だと断定する。封を少し解けて匂いを嗅いでみても毒の類いではなさそうだ。いい匂い。

 

 でも何故それがこんなところに?

 

「もしかしてマスター忘れていったのでは!?」

 

 これは一大事です!

 空腹は全てにおいて大敵、エネルギー摂取は外出時の重要項目です!

 

 届けに行かなくては!

 

「名誉挽回です!」

 

 意気揚々と弁当を片手に外へ飛び出したラヴィナ。そんな彼女の目の前に広がるのは木々など見当たらない、人工物で溢れかえるコンクリートジャングルだった。空を見上げれば電線を張り巡らせる電柱が並び、当たり前に階数のある建物が建ち並び、人の声とも分からない発動機の音がそこかしこから聞こえてくる。

 

「が、頑張るぞ!」

 

 知らぬ土地で我が身一つ。少女は頼りない拳を掲げ、主の元へと歩き出した。





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