心のマグマが目覚めたら   作:スターク(元:はぎほぎ)

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ガイアよ再び!

「先生の門下生だ。通してくれ」

「えっDr.フジミヤ!?しかし貴方は既に退職されて……」

「ガム研究員から許可は得ている。入らせてもらうぞ」

「ちょまっ」

 

警備員を押し除け、入った研究室はあの日と何も変わってなかった。先生がまだ生きていて、俺達も袂を分かってなかった日々と。

 

「……先生、失礼します」

 

遺品でもある資料達を手当たり次第鞄に詰め込んでいく。目的は尚も進撃を続けるゴジラへの対策、その進路を見定める為だった。

 


 

「タイタンは強く偉大だ。彼らによってこの地球は支配され、平定され……そんなこの星に、我々が叡智を持って生まれた理由とは、何なのだろうな。なぁ、藤宮」

 


 

「……なんでこんな時に思い出すんだっ」

 

たった今、人類の命運はゴジラに左右されている。その脅威を前にして、尚も諦めずに足掻く人々がいる。

それを目の当たりにして、俺ですら立ち上がらなければと。そう思ったんだ!

 

記憶の中の言葉をそうやって振り切り、俺は資料と共に部屋を飛び出す。その折、我が子と共に笑顔を映し込んだ先生の写真が目に入り──それでも、駆けた。

 

 

青は今でも澄んでいる。

先生と、我夢と、(レン)との日々はこの胸に。

 

胸ポケットに仄かに瞬く、アグルの光と同じように。

 

 


 

 

───ヒトが動き始めた。我に抗うべく、何か謀りを。

そしてそれに、選ばれし者も馳せ参じている。

 

『………』

 

残念だ。ここまで来ても足掻く道を選ぶか。

報われぬ地獄と分かっていてなお不屈、その有様に溜息が出る。

 

………絶望を、叩きつけねばなるまい。

希望を目の前で焼き潰す、それ以外に方法は無いのだろう。

 

『■■■■■──!!!』

 

気乗りせぬまま、黒煙の中で我は叫んだ。あの者を呼んだ。

 

出番だ()()()。今一度、忠誠を示してみせよ。

 

 


 

 

破綻は前触れ無く訪れた。

5時間が経ち、着々と進んでいた講義、作戦立案、ブリーフィング。それを邪魔するように、アラートが地下基地を揺らす。

 

「どうした!?」

「ち、地下より高熱源体が接近!マグマが競り上がって来ます!!」

「マグマ!?」

 

シャイアン山は火山なんかじゃない。にも関わらずマグマって、そんなのタイタンの仕業以外には考えられなかった。

それも、タイタンの中では最悪に近い類の……!

 

「ファイターは!!」

 

「麓の飛行場へ移送中!マグマの遡上ルートからはギリギリ逸れていますが、基地本部は直撃コース上ですッ」

「ここは放棄する!総員退避せよ!!」

 

石室さんの指令に従い、僕もまたありったけの資料を掻き集めて走った。緊急エレベーターに乗り込む時には、既に地面が熱を帯びていた。

地上に出ると同時に、大爆発。熱風に押され、倒れながら振り向けば、威容を誇った大山が火を噴いている。

 

その噴煙の中に、影。

 

「ラドン……!」

『▲▲▲▲▲▲───!!!』

 

メキシコの火山に眠っていた筈の火の悪魔。アルファタイタンを除けば最強、含めたとしても暫定3位級の実力を誇る獄炎のタイタンがそこにいる。地脈を溶かし、ここまで潜航してきたというのか?

 

「もうダメだ…おしまいだァ……」

「しっかりして下さい!!」

 

隣で落石を受けた学者を介助しながら、それでもラドンから目を離すわけにはいかない。彼はすぐには飛び立たず、何かを探すように眼下を見繕っていた。

 

「我夢!」

 

ここで駆け付けてくれたのは藤宮。本部ゴジラの資料を持って来てくれた所だっただろうに、こんな事になってしまうなんて……っ。

 

「藤宮、奴をここから離さなきゃ。多分ファイターを狙って、ここに差し向けられたんだ」

「ゴジラにか……だが恐らく、もう時間の問題だろうな」

「くぅっ…!」

 

飛行場へと固定されたラドンの視線を見て、悔しさに地面を叩いた。後ちょっとだったのに、こんな所で……!

 

「終わってたまるか…ッ!!」

 

出来る事を探せ。無くとも探すんだ!

 

「大切な物を、守るんだ……!!!」

 

何が大切なのか?地球だけ?環境だけ??人類だけ?……どれでもない。全部守る、その為に僕はここに来た。ウルトラマンの光に選ばれたのが理由なんかじゃない!!

そう駆け出そうとした拍子に、掴まれた肩。

 

「んん見ろ」

「何!?」

「これを見ろ」

「だから!何…を……」

 

二の句を告げない。藤宮が見せた掌にあったのは、僕を黙らせて余りある物で

 

それは、かつて僕が、地球の光を宿した容れ物───光電子管だったから。何よりその中に、僕の赫い光に似た、蒼色の光が眠っていたからだ。

 

「……それは」

“アグル”。俺はこの海色の光を、そう名付けた」

「君も僕も同じ研究に挑んでいたのか?」

「ああ、そして先に掴もうとして……だが.俺には勇気が無かった。海を割る巨人の力に怯え、それを人類が我が儘に振るった先の未来を幻視して、中途半端に掴み損ねた。その結果がこれだ、幾ら起動しても“アグル”は応えてくれない」

 

何度かスイッチを押すけれど、光はほのかに明滅するのみ。けれどその度、僕の中の鼓動が強く脈打つ……赫い光は、ゴジラに没収された筈なのに。

 

「奪われてなんか無いぞ。地脈に優先的に干渉する力で、封じ込められただけだ。お前が気絶してる間に調べさせてもらった」

「つまり地球の光は、まだ僕の中に?」

「それをアグルと共鳴させ、活性化を促す。前よりはマシに戦えるだろう」

 

差し出された管を、僕は手に取った。熱く、激しく、より輝く鼓動。青の光もまた強く。

 

「光を獲れ、高山我夢!」

 

託された言の葉と力。瞬間、直感に任せ、僕の持っていた分とフジミヤから渡された分、計2本の光電子管を接続。瞬間、溢れた光が包み、管を分解。最適な形へとその有様を変える。

金の外殻に透き通るような水晶を嵌め込んだ……ウルトラマンの胸に輝く結晶と、似た形へ。

 

『▲▲▲……〜〜〜ッ!』

 

そうしてる内にとうとうラドンが羽ばたいた、目指す先には飛行場、そこに姿を現した人類の希望が詰まったコンテナだ。壊される訳には、いかない。

 

「うっ…ぉぉおおおぉおお!!!」

 

追い駆け、跳び、叫んだ。渾身の力で、僕の中の光を爆裂させるように。

その名を呼ぶ。光よ、今一度!

 

「 ガ イ ア ァ ァ ァ ア ア ア ア !!! 』

 

 

海の蒼に触発された赫い大地が、その咆哮で目を覚ました。

 

 

『ジュオオアァッ!!』

『▲▼っ?!』

 

出現した巨腕が、飛び立ったばかりの鳥を下から殴り上げる。かくしてここに巨人再誕。

肩のアーマーを赤から黒に染め、より重く厚くなった肉体。名付けるなら“Version”、と言った所だろうか。

 

「……光の巨人。生きていたのか」

 

押し寄せる絶望を打ち払う希望の化身。退避に成功した石室を始めとする人間達の視線を受けて、大地の光はここに輝く。

 

 

ガイアよ再び。今ここに、紅の巨人は地球を揺るがしたのだった。

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