心のマグマが目覚めたら   作:スターク(元:はぎほぎ)

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47億年の王者~ファイター飛び立つ~

【ゴジラ、爆散!】。

その報は事の次第を見計らっていた各人へ映像と共に伝わり、少なくない──否、多大にも程がある衝撃を齎した。

なにせ世界を統べる王の崩御だ。昨今の情勢を鑑みれば、ユーラシア大陸の全地盤がひっくり返る方がまだ現実的に思える。

 

「それは本当ですか?」

「大マジだよォッ!!」

「ゴジラのバイタル低下!ムートー2体から電磁パルスを受けた時の25%を下回っていますっ」

「彼が倒れたら世界はどうなる、破壊者系タイタン共が暴れ出すぞ!?」

「でも目前に迫った滅亡は回避されるんです!!」

 

モナーク本部もまたてんやわんやの大騒ぎ。最も起こり得ない可能性を引き当てた新種のタイタンを眼に写し、錯綜する状況の中で最適解を見出そうと足掻く各々。アイリーン博士もまたその1人であり───同時に、ある種の違和感を覚えた1人でもあった。

彼女は、ゴジラとコングの戦いを見てきた当事者である。

 

(あのゴジラが、ここで終わる?)

 

信じられない。あれほど頼もしかったコングを一方的に蹂躙した王が、これで?──いや、新たなタイタンの力は実際驚異的だった。ゴジラと同じく地核の力を直接用いているなら、条件としてはアックスを持ったコング以上に五分。理解は出来る──筈なのに、納得だけがいかない。

こんなに呆気なく、彼が終わる訳が無い。

。         ・

その疑問に対する答え達は、同時に齎された。

 

「ゴッ……ゴジラの体温、急上昇!!」

「バルバドスポータル、突如開通!これは…海の()()()()だと?!」

 

ゴジラが怒る。世界が、終わる。

コングが動く。運命が、変わる。

 

気付けば叫んでいた。

 

「ジア……!」

 

地底にいる娘は、今。

 

 


 

 

微睡む意識で思い返したのは、女王の事だった。

 

『お待ちなさい、我が王よ!』

 

彼女はそう告げて我を止めた。ヒトの世を滅ぼさんとする我の進撃を、身を挺してまで。

 

『ヒトは未熟、しかしそれは種としての若さゆえの事。彼らから未来を奪ってはなりません!』

 

全ての生命には“運命を選ぶ権利”がある、と。それを取り上げてはならないのだと、彼女は。

それを我は、どう押し除けたのだったか。確か、そうだ、『ヒトの権利如きで地球の行末を決めてはならぬ』と、そう言ったのだったか。

 

………なぁ、女王よ。今なら分かるぞ。“選ばれし者”は其方が導いたのだろう?

見込みある者を見初め、光へと誘ったのだ。差し詰め、ヒトがヒト自身の未来を──我らに踏み潰されるだけの運命、それ以外の道を選ぶ機だけでも与えたかったのだろう?

 

やはり甘い。どこまでいっても慈愛の化身だ、其方という存在は。それはこの世に不可欠なものであり、しかしそれだけでは立ち行かぬからこそ我が居る。慈悲無き、容赦を捨てた王が必要なのだと、我を育てたのは他ならぬ其方なのだから。

 

『───■■──』

 

………しかし、効いた。よもやこれ程とは思わなんだ。舐めていたと認めざるを得まい、我の予見が手ぬるかった。

そうだった。貴様も我と同様、星の力を手繰る者であったと。存分に再認識させてもらった。

 

ああ、認めよう。女王の助力こそあれど、星が何故貴様を選んだのかは未だ分からぬが。

嗚呼、認めようとも。既に貴様は我と同じ、あの忌々しい猿公と等しい土俵にあると。

 

ここからは“王”としてではない。

 

一個の“ゴジラ”として貴様を───

 

 

『───■■■(ツブス)

 

 


 

 

ジェッ………?!(カッ───は……!?)

 

油断したつもりなんか無かった。そもそも倒れ込む音も聞こえなかったんだ、すぐさま反撃が来ると思ってバリアさえ張って……それさえ、無意味だった。

 

熱線ではなく、波紋のように広がる範囲攻撃。それはバリアを透過し、僕を飲み込むやいなや……その身体に激しいノイズを奔らせたのだ。

 

(電磁パルス!MUTOの物を模倣したのか、にしたって出力が段違いだ!!)

 

地核の力が乱され、また僕の手から離れそうになるのを必死で留めるしか無い。でも無茶苦茶だ、他ならない爆心地のゴジラ自身だってタダじゃ済まないだろうに!

 

(何が目的……ッ)

 

瞬間、怖気。ウルトラマンの肉体が人間のそれと完全に合致していたなら、きっと全身を鳥肌が包んでいただろう。

 

ゴジラは健在だった。黒煙を波動で振り払い、現した姿は四足歩行。両手両足で地面を掴み、大地を我がものとするかのように。

地核エネルギーの加護を失おうとも。その生命力だけで、彼は頂点に座したのだと示していた。

 

衝撃は一瞬の後に訪れる。反応が間に合わない、全身をバネとして弾け跳んできたゴジラの前では。

なんとか立ち上がった瞬間、張り手が頬を打つ。抗う術などなく、もんどり打って卒倒。ここまで2秒経っただろうか。

 

『■■■■!!』

(なッ───ああぁ゛っ!?)

 

束の間の失神、その間に足首に噛みつかれ振り回された。叩き付けられるは大地、まるで地球をぶつけられたかのような衝撃が僕を襲う。痛みで呼吸が止まり、のたうち回りたくなって──それすら、ゴジラは許しちゃくれなかった。

 

一打。

二打。

三打、四打。

五打六打七打八打九打────!

 

(死………ぬ…………!!)

 

激痛で意識が朦朧とし、激痛で覚醒させられ、激痛で朦朧とし、また激痛で覚醒させられ。まるで素人がヌンチャクを振り回した時みたいに、子供がボロ雑巾で遊ぶみたいに、繰り返される投撃が僕を苛んでいた。抵抗さえ出来ないまま、辛うじて受け身を取るので精一杯。そしてそれすらも出来なくなったその時、漸く解放されて宙を舞う。

……いや、解放などではない。落下する僕を待ち受けていたのは、いつぞやと同じく尻尾での殴打だったから。

 

『ァァ……!』

 

急激に蓄積させられたダメージで、か細い声を上げる事しか出来ない。そんな僕の首を、ゴジラは容赦無く掴む──握撃だ。首の骨をへし折りに、僕の命を明確に断ちに来た。

 

(ダメ、だ)

 

敵わない。チカチカと視界が明滅する。胸の水晶だって、防御と意識レベル維持にエネルギーを回し過ぎて点滅し始めたのに、その音すら遠い。勝てない。

 

(僕には、無理だったのか)

 

ゴジラと、タイタンと同じ視点に立てたと思っていた。止められるんじゃないかと思ってしまった。その結果がこれだ。最初の目論見通り、ファイター達に全てを託すしか無いのか。所詮人類は、タイタンと同じ土俵には立てない。対等にはなれない、というのか。

 

(……ダメ、だ……ッ!!)

 

嫌だ。まだ諦められない、諦めたくない。まだ僕は、この光を与えられた“意味”に辿り着けてない!!

 

 

その瞬間。僕の心を折らんと、一際強く力を込めてきた王の巨躯が揺らいだ。殺到する光弾。アレは……ファイナース砲?

 

「チームライトニング、これより攻撃を開始する!」

「チームクロウ、行くよ!!反核バクテリア弾をたらふく食わせてやりなさいっ」

「チームファルコン、退けば老いるぞ。突貫せよ…!」

 

鋼の翼が風を切る音がした。

 

「「「「「「了解ッ!!!!」」」」」」

 

ファイターSS3機。SG6機。人類の叡智が今、巨神達の戦場へ!

 

 

一方で、ゴジラの対応は迅速だ。接近してきた蝿へ、その進行方向に合わせて尻尾を振るう。人類が模した翼など、これまでそれだけで容易く地に墜としてきた──しかし、手応えが無い。

 

『?』

 

疑問に思っている間に、背鰭に着弾。ジワジワとエネルギーを蝕まれる感触に小細工を感じ、振り向きざまに噛み砕こうと顎門を開いた。だがそれも空振り、蝿は確かにそこを通っていたというのに。

やむを得ない。付近一帯の地核エネルギーを自ら抑制している今、無闇な砲撃は避けたかったが……これ以上のさぼられる前に撃ち落とす。威力を絞り、その分速度を増した熱線でもって、ゴジラは蝿を狙い撃った。

そして、事の絡繰を理解した。

 

「当たるかよッ!!」

 

3次元機動。慣性を度外視した飛翔でもって、蝿あらためファイターSGは熱戦を回避したのだ。ゴジラがこの数億年で嫌というほど見てきた空力学的特性、それに真っ向から喧嘩を売るかの如き挙動で!

 

「次、体内放射来るわよ!」

「電磁パルスじゃありませんかアレ?」

「良いから退避だッ」

『ッ……!!』

 

範囲攻撃を放つも、即座に範囲から離脱され不発。ファイター達はゴジラの脅威のことごとくを無力化する。

無闇に近付かず。熱線はZ軸の動きを以て回避し、体内放射の影響範囲からは即離脱。鮮やかな回避行動に、ゴジラのフラストレーションが溜まっていった。

 

「お前は最強だ!最強だからこそ……対お前を想定して、俺達はここまで来たんだ!」

「それが蚊みたいに落とされてちゃ世話ないのよ!!」

 

全方位からのHEATミサイルが着弾し、ゴジラを爆煙で包んだ。微々たるダメージ、趨勢を覆す事が叶わずとも、それでも。

 

「光の巨人!聞こえるか!!」

『……!』

 

放つ。叡智を、希望を、放ち続ける。

 

「お前が何者なのかなんて、俺達には分からない!だが……お前が人類に希望を見てくれたのは分かる!!」

「だから私達も、貴方に希望を託します!」

 

叫ぶ。生きる意志を、祈りを、勇気を───

 

「立て!」

「立ってくれっ」

「立ち上がって!!」

 

………心のマグマに、灯す。

 

「「「ウルトラマンッッッ!!!」」」

『 ジ ュ ァ ア ア ア !! 』

 

───

 

「ガイアが、変わる……!」

 

ファイターのコクピットか、中継映像を見ていたモナーク本部か、シャイアン基地の人々か、その内の誰かが言った。

誰なのかは、最早重要なことではない。

 

我夢には確かに聞こえた。あぁ、聞こえていたのだ。生き抜く力をくれた、熱い声が彼の心に。

目覚めた光達が、に、白熱して白銀に。直結しスパークした二つの光が目覚める、たった今。

 

極彩色の最高出力(スプリーム)へと───!!

 

( 光 よ ぉ ぉ ぉ !!! )

 

 

瞬間、爆裂する奔流。その中に立つ姿はまさしく光の化身。大地の祈りと大海の慈悲を併せ持つ巨神の誕生である。

 

変身の余波が、ゴジラが支配していた力場を吹き飛ばした。取り戻される地核エネルギーとの接続、またそれはいよいよ墜とされかけていたファイターの危機をも救う。

 

何度でも言おう。

 

それは人の姿をしていた。

 

けれど、人間と呼ぶにはあまりにも大き過ぎた。

 

大きく、重く、力強く。

 

何よりそれは、()()()()()

 

ゴジラの目をも晦ませる程に輝いていた。

 

 

その姿は、正に───“光の巨神”だった。

 

 

「ウルトラマン…っ」

「……ガイア!!」

『 ジ ュ ワ ッ !!! 』

 

ゴジラが目覚め、世界の終わりが始まった。

コングが動いた事で、運命が変わり始めた。

ならばガイアが立ち上がった時、一体何が起こるというのか。タイタンという名の新時代に見舞われた人類はどこへ向かうのか?

 

問うまでも無い。それを知る為にこそ、この戦いはあるのだから。

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