心のマグマが目覚めたら   作:スターク(元:はぎほぎ)

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決着の刻〜ヴァージョンアップ・ファイト!〜

全てが、分かった。

森羅万象と言う訳じゃない。この力がどうして僕を選んだのかとか、未だ理解できないまま。

それでも、この力を()()使()()()()()かは。

 

『■■■■■───ッッ!!!』

 

ゴジラ。お前が教えてくれたんだ。

 

突進してきた彼を受け止める。最早吹っ飛ばされはしない、その場で完全に運動エネルギーを殺し切る。

 

(疑問だった!)

 

どうしてお前の攻撃が、これ程までに効くのか。想像も及ばない程に重さに、まるで“地球の重さ”を乗せてるみたいだって。

そうだよ。最初から答えはそこにあったんだ。

 

『ジュッ……!!』

『?!』

 

君が僕で地面に叩きまくった、それこそが。

投げとは即ち、大地に敵を打ち付ける事。ただ相手の自重をダメージに変えるんじゃない──“地球をぶつける”つもりでやる。

 

(5.9724×10²⁴ kg の質量衝撃を、その身体に響かせるんだッ!!)

 

それは最早どんな痛撃をも超えた苦痛だ。なにせ惑星を鈍器にするんだから。

その考察は果たして───ドンピシャリだった!

 

『──〜〜〜ッ■■■!!?!』

 

渾身の背負い投げにより、総身を衝撃に震わせられたゴジラ。その顎門から迸った苦悶に確かな手応え!

 

ジュオォオ──ッ!!(まだまだァッ!!)

 

あまりの威力でクレーターへ半ば埋まり込んだ背鰭、それを両手で掴み持ち上げる。高く掲げ、地面にぶつける。

 

立とうと伸ばした手を掴み、振り回し、打ち付ける。

 

噛みつこうとした顎を制し、勢いそのままに、放る。

 

地面に投じる。

地球へ叩き込む。

星“で”、叩く……!

 

『■ッーーー!!』

 

溢れ出る力が全能感となって、僕を押していた。それに増長しそうになりながら、でも必死で耐えて手綱を握りながら、王への叛逆に臨み続けた。愛する人々を守りたい、その一心で。

地球の力は生き抜く力。それで力任せの歪な願いを食い止める、僕が戦う理由は単純にそれだけだから!

昔も今でも、変わるものか!!

 

(喰らえぇぇえええ!!)

 

裂帛の気合いと共に振り下ろした腕が、絶大な振動を伝えた。ゴジラの肉体、その真芯に大ダメージが入った事を今度こそ確信。なおもやめるまいと、足を持ち上げようとして、

 

すっ転んだ。

僕の身体は呆気なく、それまでの優勢が嘘みたいに地に転がった。

原因はすぐさま判明する。

 

(尻尾……!)

 

ゴジラの尾が右足首に絡みついている。踏ん張ろうとしたその瞬間に重心をズラされ、力を空振らされてしまったのだろう。

体勢を立て直そうとしたその瞬間、悪寒と共に冷たい視線が僕を貫く。

 

『■■ッ■■■■■ーー!!!』

 

眼前での咆哮。音波を通り越して衝撃波となったそれをマトモに受け、仰け反った僕を彼は見逃しはしない。

さっき僕がやったように。腕を掴まれ。そして──投げられた。

 

『───ジッ!!』

 

焼き直しだけは勘弁だと、尚も僕を掴んでいた指を強引にこじ開け脱出。後ろへ回った僕へ向き直そうとするゴジラに、その振り向き様へラリアットをかます。

僕の分の体重も受けて倒れるゴジラ、一拍遅れて僕自身も土煙を立てた。その中で立ちあがろうとすれば、煙幕を押し除けて迫り来た手に顔を掴まれ、地面に後頭部を打ち付けられる有様。

ただでは終わらない。追撃しにくるその脚を転がってかわし、即座に掴んで引き抜く。先程された事の意趣返しで、王は背中を強打する事となった。

 

投げ合い、極め合う。その度に震度6相当の地震が発生し、地盤はより深く抉られ沈んでいく。地球の力同士がぶつかり合い、その深淵へ近付いていくかのように……激しさを増す僕達の激突。

 

一撃必殺を一千万回。

ズタボロになっていく身体。しかし着実に、終わりは近付いていた。

 


 

「ガイアの限界が近い。このままだと負けるぞ」

「君には何かわかるのか、藤宮博士」

「ライフゲージ──胸の水晶を見れば一目瞭然だ。このままだと一巻の終わりだぞ」

「っ……、ファイター各機、これより最終フェーズに入る。各員、覚悟を決めろ!!」

 

 


 

 

ライフゲージの点滅が早まる。その事に気付いているのかいないのか、ガイアは攻勢を更に強める。

ゴジラも同様だ。ヒートアップする両者の戦いは大地を抉り、そのクレーターの深さ及び半径はとうとう200mにまで到達しつつあった。激突地点が都市ではなく山間部であったのが辛うじて救いか。

 

しかし、それもとうとう結末が訪れた。ガイアが膝をついた事によって。

 

『……ジュッ、ア……!』

『……ッ、…』

 

明らかなスタミナ切れ。元より枯渇寸前の状態でのスプリーム化によるブースト、こうなるのは必然ですらあった。無論地核からのエネルギー供給こそ途絶えてはいないが──ゴジラに比べれば微々たる物。光を得たばかりの人間、その限界値が今ここに示されている。

一方ゴジラも息を荒げてこそいるが、健在。両の足は、誰がどこの支配者であるかを示すように確と地面を踏み締めている。

 

(く、そっ…!)

 

歯噛みする我夢を、ウルトラマンを、ゴジラはじっと見下ろしていた。その立ち姿はまるで、「よくぞここまで」と讃えてすらいるようだった。

実際よくやった。初めて地球の本質に触れた身で、矮小に過ぎないヒトの身で、全生態系の頂点と互角以上に渡り合ったのだ。こうなるに至った経緯に思う事こそあれど、手放しの賞賛を施されて然るべき偉業であった。

少なくとも、ゴジラはそう認識していた。

 

『………■■■■』

 

諦めろ、と彼は促す。さすれば、その勇気に免じて見逃すと。失望したのは誤りだった、やはり貴様は殺すには惜しいと。

ガイアの返答は否。首を横に振り、辛うじて片腕でファイティングポーズを構える。

ゴジラが勝てば、選ばれし者と地下イーウィス族以外の人類を絶滅させる。ガイアが勝てばそれを阻止する。最早そこに妥協点は無かったが故に。

 

王の目は一瞬で切り替わった。譲歩と敬意から、覚悟と殺意の色へ。ならば望み通りにしてやろうと、いっそそれこそが慈悲だとすら言わんばかりに。

 

彼は思い出した。思い出していたのだ、人類の模造の翼に助けられ、立ち上がったガイアの姿を。

かつてギドラと戦った時、人類の援護を受けていた自分を重ねていたのだ。

だからこそ、彼は──撃つ。その追憶を振り払うように、極熱の光を。

 

さらば、ウルトラマン。恨むが良い、選ばれし者よ。また未来で会おう、地球の光。

目の前の1人、その中の三者それぞれへ告げる別れの思念。それを熱線に乗せて、ゴジラはトドメの顎門を開いた───

 

「 今 ッ だ ァ ァ ァ !!! 」

 

───その刹那だった。

クレーターの淵に身を隠していたファイター6機が再度、戦場に躍り出たのは。その下部から放った電磁ネットで、ゴジラの総身を絡め捕ったのは!

 

『!??!ッッ、■■■■■■■!!!』

「なんてパワーだ!?」

「出力全開!けど無理に抗わない、空中衝突だけ避けて身を任せるのよ!」

「そんな無茶なぁ?!」

「だがやるしか無いっ!!」

 

引っ張り上げられて浮き足立ち、更に口も縛り上げられたゴジラは当然抵抗を選ぶ。凄まじい速度で振り回されるファイター達は飛んでいられるのが奇跡的なぐらいで、だが誰1人逃げようとはしない。

 

『やれぇ、ウルトラマンッ!!』

(梶尾さん……皆……!)

 

本来の作戦は、熱戦を誘発して疲れ切ったゴジラをこのネットで拘束し、氷山地帯に投棄し封印する作戦だった。しかしここで強行したのは、全員が信じているからだ。人間を守ってきたウルトラマンを、今ここで立ちはだかってくれたガイアの力を。

その為に、人として出来る事を、人として最後まで。ギリギリまで頑張って踏ん張ると、そう決められていた。ファイター搭乗員一同を始めとして、彼らに協力したシャイアン地下基地の面々やモナークの所属者一同の共通見解だったのだ。

 

応えねばならない。我夢の心に、最後の火が灯る。

 

(これで、最後……っ)

 

ピンチとピンチと、ピンチの連続を潜ってきた。その度に火種を費やし、これが本当に最後。使えばそれでおしまいだ、がしかし後悔も躊躇も有り得ない。

我夢の心に宿っていたのは“初心”。

 

“ウルトラマンが欲しい”。

 

(ウルトラマンは……僕だッ!!!)

『ジュゥッ……オオオォォォオオオオ!!』

 

東京の街を守る力が欲しいと願った時。ウルトラマンは力を貸してくれたから。

なら、皆が人類の未来を守りたいと願った時、答えるのは誰か。今、ウルトラマンは我夢だったから。ならば、我夢がやらねば誰がやる?

 

その希望に地球が応じた。地面に突き立てた拳、それ目掛けて迫り上がる地熱の滾りにて!

 

「「「「「「うわぁぁあああ!?!!?」」」」」」

 

マグマ。地下水脈の突沸。水蒸気噴火だ。

タイタン同士の投げ合いで踏み固められたクレーターはそのまま強固な岩盤となり、崩壊しながら高空に打ち上げられたのである。その余波に押し除けられ、ファイター達は戦線離脱を余儀なくされた。

これで良い。彼らが稼いだ時間のおかげで、ガイアは今望む全てを為せるのだから。

 

『■■──……ッ!!』

 

急上昇によってかかる絶大なG、その中でゴジラが漸くその思惑に勘付いた。今この岩盤は、噴火という形で地核からの直接供給を受けて強烈な力場を帯びていた。それでいて大地から切り離された此処では、それ以外のエネルギーはゴジラ・ガイア共にアテに出来ない。つまり──

 

(王よ。決着の刻だ)

 

先にこの力場から、多くエネルギーを貰った方が勝つ。そういう早打ち勝負なのだと。

ガイアは既にチャージを開始していた。

 

(──良いだろう、星に選ばれし者!!)

 

受けて立つ。数拍遅れて、背鰭が死の光を宿し始めた。こちらも最高出力、全身を悍ましいまでに鮮やかな紫色に染めて。

 

殺すか。

倒すか。

 

時間にして5秒の後───その刻は来た。

 

 

『 ジ ュ ア ア ア ァ ァ ァ ア ア ア !!! 』

『 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ッ !! 』

 

 

(あか)(あか)

(あお)(あお)

それが合わさった

光の奔流(フォトンストリーム )が荒れ狂う。地球の力を受け継いだ者達が、それぞれ行き着いた同じ境地が、真正面からぶつかり合い。

 

混ざり合い。

 

爆ぜた。

 

 

───空に咲く炎の花。その中で決した勝敗を、知る者はいない。

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