『ジュァアァッ!!』
取れる選択肢は一つだけ。前の戦いでも使ったバリアー、それでハワイ諸島を庇い津波を跳ね返す!規模が桁違いな分エネルギー消費も凄まじい事になるけど、迷ってる暇なんか無いっ!!
両手から全力で力場を放ち、更には西方向50km範囲で展開。水の質量爆弾を、これで……!
(退けぇぇぇっ!)
衝撃と加圧。高さ100mかつ連続的な波浪に、障壁が軋みを上げた、でも初撃は受け切れた!ここから水流を制し、ベクトルを掌握して、巻き返せ。
「し、新型タイタンにより津波は阻害。いや、押し返していきます!」
「守って……くれたのか?!」
死に物狂いの甲斐あって、津波はなんとか解決。広がっていく波紋はいずれ他の国に押し寄せるかも知れないけれど、各々で対処してもらう他ない。僕はもう目の前のことで精一杯だ。
返ってきた濁流にもゴジラは動じていない。涼しい顔で沖に座し、けれどその眼はしっかりと僕を睨みつけている。
でも、ここまで見境のない破壊行為は初めてだった。MUTOにしろギドラにしろコングにしろメカゴジラにしろスカーにしろ、ゴジラが動く時には明確な攻撃対象がいて、それ以外の事象に対し大々的に巻き込むような真似はしてきていない。ローマから移動する時だって、基本的に河を移動してくれている姿からもそれは明らかだ。
にも関わらず今回、彼は津波という範囲攻撃を用いた。本来敵であるガイアリセッター及びその推進者達だけならまだしも、無関係な市民まで巻き込んで鏖殺しようと……!!
(どうしてなんだ、ゴジラ!?)
先生は、そんな事を望んで貴方に身を捧げた訳じゃない。そう言いたくて、だがそれに何の意味がある?彼の行動のどこに先生の介在する余地があるというのか。
その答えを示すように、ゴジラが動いた。進撃という形で。
「目標、進路こちらに真っ直ぐ!!来ますっ」
「新型タイタン、迎撃の姿勢を取った模様!」
「……攻撃対象変更。新型を援護し、ゴジラを迎撃せよ!」
「仲間と見なすのですか!?」
「状況判断だ!!」
(やるしかッ…!)
高速で湾内に侵入し、上陸するなり地響きと共に駆けてくる巨躯。迎え撃つべく、僕もまた丘を駆け下りた。既に避難が済んでいるとはいえ踏み潰す街並み、でも構ってられない!
『■■■■■───ッ!!!』
『ジャッ…!?』
そして激突の時は来た。襲い来た衝撃、その重さに意識が飛んだ。
何だこれ……
(駄目だ、押し負け…!)
エネルギー消耗とか関係なく、地力で完全敗北している。余裕で押し込まれ、全然阻めない!
そんな僕を援護してくれるかのように、戦闘機が機銃を打ち込んでくれるけど、正直焼け石に水というかッ!?
(うぁあ──っ!!)
肩に噛みつかれ、そのまま投げ上げられた。500mくらい宙を舞い、姿勢を制御出来ない!
どうしようと思う、その瞬間に。
脇腹に痛打。
落下のタイミングに合わせて振られた尻尾が、ウルトラマンの身体を容赦無く吹き飛ばした。
痛い。
苦しい。
(立て、な……!)
悲鳴も上げれずのたうち回る僕を尻目に──ゴジラの背鰭がまた、蒼く輝いた。
熱線が、ロケット発射場に着弾。
大爆発が、そこにいた全ての人々を飲み込んで。
(あぁっ……!)
悲鳴が聞こえる。命の火が消える音がする、僕の目の前で。
何の為の力だ。この光を貰っておいて、なのに僕は…っ。
(く、そ…………)
意識が明滅。ここで気絶したらきっと、人の姿に戻ってしまって2度と立てない。
ゴジラを止めなきゃいけないのに。彼が暴れる理由を解き明かさなきゃいけない、の、に……────
「やめてくれッ!!」
聞き覚えのある声が、僕の鼓膜を叩いた。
何が起きている?
新型タイタンの攻撃を止めるべく、軍の援護に向かおうとしていた。タイタンが人への直接攻撃を躊躇い、交渉の可能性が示唆された。そこまでは良かった。
「何故だ……ゴジラっ」
彼が現れ、全てを覆してしまった。
皆殺しを目的とした津波。無差別破壊を前提とした市街地突破。それを抑えようとしたタイタンを前にし、尚も最優先攻撃対象を人間から変えない様。
「どうしてなんだっ!」
人類の夢が込められた発射場が跡形もなく消し去られ、キノコ雲が立ち上っていた。いつぞや、日本にいた時、歴史の教科書で教わったヒロシマ・ナガサキのような。
人類の罪を、示し、再現したかの如く突き付けてきた。
「……やめろ……」
その下で背鰭が光る。尻尾から胴を遡上するように、確死の光が三度灯されていく。
「フォード大佐待って下さい!今出たら──!」
制止を振り切ってジープを飛び出した。居ても立ってもいられなかったから。あの光が、街を薙ぎ払うその前に。
「やめてくれぇッ!!!」
尻尾が引き摺られて出来た瓦礫の山に躍り出、叫んだ。届くとは思えなくとも、そうせずにいられない。
そして何より驚くべき事に……声は届いたらしい。
『……■■…』
唸り、王が振り向いた。その眼差しに心から震え上がり、硬直して跪く事すら叶わない。
俺の声で彼を止められたのか?──否。
チャージ音。ただでさえ全て光っていた背鰭が、さらに輝度を増す。
「は、は」
もう駄目だ。俺という個人を識別した上で、彼は殺しに来た。
「エル、サム」
最期に呟くのは家族の名前。愛してると、そう言いたくて。
……そんな俺の願いは。
『ジァアァッ!!!』
『!?』
割り込んできた巨人の突進に。
「それは生きて伝えろ」と、そう行動で示され終わった。
フォードさんの叫びで意識が戻る。まだだ、まだ終わりじゃない!終わりにする訳にはいかない!!
(させるかぁぁぁ!!)
飛び起きると同時に駆け込み、慣性を味方に付けたショルダータックル。横合いから捩じ込んだそれに、さしものゴジラもようやくダウンしてくれた。
今しか無い、千載一遇のチャンス!
(喰らってくれ!)
起き上がるその隙に最大チャージ。僕が、ウルトラマンが放てる最大火力でゴジラを撃ち倒す!殺せなくとも、少なくとも追い返すんだ!!
『『ジュオァッ!!』』
頭部から繰り出すフォトンエッジ。最後の力を掻き集め束ねたそれは、以前の数倍の太さでゴジラに迫る。届け、食らえ、聞いてくれ───!
(……そんな)
効かな、かった。
まさかの無傷、いや吸収。浸透した光の刃はすぐさま背鰭に伝達し、その中に大人しく収まってしまったのだ。ゴジラの力は地核の力、同種の力ならコントロールも彼の方が遥かに上という事か。
(勝機は、無いというのか……っ?)
膝を突く僕を、ゴジラは睨む。トドメを刺す気か……嗚呼、口が開かれた。やはりそうなのか。
『───■■■■■■!!』
しかし、出てきたのは熱線ではなく咆哮。大気を震わし、しかしタイタン同士では威嚇や命令以上の意味合いを本来持たないそれをゴジラは選んだ。
理由はすぐさま明らかとなる。ウルトラマンとしての身体に“ノイズ”が奔った事によって。
(まさか……!)
大地の光が小さくなる。僕の中でみるみる内に鎮静化され、眠りに就いていく。
僕が、ウルトラマンで、なくなる。
「ゴジ、ラ……っ」
完全に人に戻ってしまって、そこで僕の命運はとうとう尽きた。体が悲鳴を上げ、その意識を絶ってしまったからだ。
その闇に視界が閉ざされるまで。王者はずっと、じっと、僕を見下ろし見つめていた。