斬魄刀で戦う世界でなぜかハーレムが築かれてく話   作:眞珠

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ルビ振るのがめんどくさくて、途中から虚のルビ振ってないです。ごめんなさい


09話 巨大な虚

 

 龍牙が『瞬歩』を習得し、一ヶ月の時が流れた。

 現在龍牙は人里周辺の見回りする職務を与えられ、(ホロウ)が出ては退治する日々を過ごしている。

 グランドフィッシャーとの戦い、そして妹紅との修行を経て、殆ど無傷で(ホロウ)を退治できるようになった龍牙は、己の成長を実感していた。時折、慧音や妹紅に稽古をつけてもらい、剣術も鍛錬中である。

 初めて(ホロウ)と戦った時より幾分か余裕が生まれていて、七番帯の席こそ与えられていないが、同隊隊士からの注目の的となっている。

 慢心はしていない、しかし龍牙はとある事で悩みを抱えていた。それは、龍牙が初めて妹紅に稽古をつけてもらった日に説明された、斬魄刀との〈対話〉と〈同調〉である。

 妹紅の話によると、自身の精神世界に存在する斬魄刀の本体と対話し、同調することによって名を知ることができるとの事。精神世界のくだりから理解できなかった龍牙は、未だに同調はおろか対話すらできていない。妹紅に何度か訊ねた事はあったが──

 

『こればっかりは一朝一夕で何とかなるものじゃないからな……気長に待つしかない』

 

 このような事を言われてしまったため、どうにかする事はできず、龍牙は妹紅の言う通り気長に待つ事にした。

 

「急いては事を仕損じるって言うしなぁ」

 

 龍牙は現在調査の為、人里外れた森の中にいる。

 ここ最近、森の中での(ホロウ)の出現頻度が格段に上昇しており、原因究明の為、調査依頼が発生した為である。

 出現頻度が上がったとはいえ、グランドフィッシャー級の大物が出現する事はなく、言葉も話せない下級の(ホロウ)が大量発生しているようだ。

 一体一体を相手取るなら訳はないが、束になってかかってきた場合は非常に厄介だ。早めに原因を突き止め、問題を解決するに越したことはないだろう。

 物思いに耽る龍牙の隣から、突如(ホロウ)が飛び出す。身体はとても小さく、猫より少し小さい。

 

「──バレバレなんだ、よッ!」

 

 飛び出してきた(ホロウ)を右手で掴み、そのまま地面に叩きつける。斬魄刀を抜くと、バウンドして宙に舞った(ホロウ)を斬り裂く。

 (ホロウ)が消えていくのを確認すると、斬魄刀を振り、刀身に付いた血を飛ばして鞘にしまう。

 

「まだ一時間も経ってねぇのにこれで十体目だぞ……どうなってやがる」

 

 通常、(ホロウ)は多くても一日に二体。運が良ければ全く出ない日もある。いくら小型の(ホロウ)ばかりとはいえ、こう何度も襲われてしまうと、調査に支障が出てしまう。かと言って(ホロウ)の出現を封じる手段を持ち合わせていない。

 やれやれ、と溜息をつき、龍牙は歩を進める。

 

「しっかし、緊急を要する調査って言ったって、駆り出されたのが俺一人ってのは釈然としねぇな」

 

 そう、今回の調査は雨宮龍牙を調査に向かわせろ、という名指しでの依頼であった。慧音も怪訝な顔をし、調査人数を増やすよう進言していたが、紫によって却下され、結局龍牙一人で調査を行う事になった。

 (ホロウ)と初めて邂逅した日、格好つけて登場したかった、という謎の理由でギリギリまで助けに来なかった時の事が頭によぎる。

 もうさすがに幻想郷のトップとして、阿呆な事はしないで欲しいと龍牙は心から願っていた。

 少し歩みを進めると、目の前に一匹の(ホロウ)が立ち塞がった。先程の小型より大きいが、龍牙より少し小さい。

 龍牙は立ち止まって刀を抜く。

 

「待ち構えてたのか? 狡賢い奴だな」

 

 片手で刀を持ち、一歩二歩と(ホロウ)に近付く。

 三歩目を踏み出した時、龍牙は異変に気付く。目の前の(ホロウ)以外にも、此処に沢山の(ホロウ)が集まっている事、そして、既に取り囲まれてしまっている事に、龍牙は気付いた。

 

(五、十、十五……いや、それ以上か……)

 

 龍牙が感知したのは、両手両足を使っても数え切れない数の虚の霊圧。大物の霊圧は感じないものの、相当な戦力。やはり数に勝る有利はない。

 間もなく、そいつらは攻撃行動に移った。

 飛び出してきたのは、動物の頭部に似た仮面を付けた虚達。鳥や魚、実在する動物達によく似ている。

 飛び出してきた虚の内、一匹を蹴り飛ばした。膝丈程もなさそうな小型の虚は、ゴムまりのように吹っ飛んでいく。そのまま、背後から迫っていた虚を、振り向きざまに斬り裂いた。

 まずは二体。

 龍牙は油断なく、戦場を見渡した。

 既に取り囲まれており、逃げ出す事は不可能。例えこの包囲網を抜け出したとしてもこれだけの数、里に危険が及ぶ可能性は拭い切れない。

 ここで全員斬る、と、龍牙は覚悟を決めた。

 敵は総計二十体以上。既に体裁は軍団だ。

 一匹の虚が飛び出し、龍牙を襲いにかかる。

 龍牙は軽々とかわしたが、今度は横から別の虚が攻撃してきた。際どくかわし、お返しと言わんばかりに虚を斬り裂く。

 

「──ちっ。夏の虚大感謝祭かよ」

 

 龍牙は軽口を叩く。

 息つく暇もなく、次々と虚が襲いかかる。

 次は上空からの攻撃。嘴の様に鋭利な仮面をつけた虚が、上空から降下し、龍牙の身体を貫かんとする。

 軽く身を引き、左手で嘴を掴むと、身動きが取れなくなった虚を両断する。

 そこへ更に新手。

 ゴブリンと似た体格の虚が突進してくる。愚直に真っ直ぐ突っ込んできたため、横一閃に真っ二つにする。

 単純な動き、統率のとれていない烏合の衆を、龍牙は次々と蹴散らした。

 少しずつ、龍牙の息が荒くなる。

 長期戦になることを覚悟したそのとき、とある違和感に気付く。

 虚共が動きを止め、まるで何かを祈っている(・・・・・・・・)かのように天を仰ぎはじめたのだ。つられて龍牙も天を仰ぐ。

 ──ぴしっ。

 目の前で起こっている現象に、龍牙は自身の正気を疑い、目を擦ってもう一度空を見上げる。

 否、錯覚などではない。空に亀裂が入っている(・・・・・・・・・・)のだ。骨が軋むような音をあげながら、亀裂はどんどん大きくなる。まるで紫が操る隙間のように亀裂は徐々に開き、やがて中から超巨大な虚が姿を覗かせた。

 

「な……何だよ、あれ……!?」

 

 全身の毛穴が開き、脳が警鐘を鳴らす。奴は危険である、と。

 刹那、不意をついた虚共の一匹が龍牙に襲いかかる。はっと我に戻り、とっさに身を投げ出して、横っ飛びでかわす。

 大勢の虚に、突然現れた巨大な虚……自身の死を強くイメージしてしまった。

 虚の大群がジリジリと距離を詰める。

 自身が圧倒的に不利であることを悟り、思わず苦笑いが浮かんでしまう。

 まさにその時だった。

 

「──破道の三十一、赤火砲(しゃっかほう)

 

 呪文のような言葉を唱える声が聞こえてきた後、目の前が一瞬で猛火に包まれた。後方から火の玉が飛んできて、虚に直撃したのだ。

 

「しばらく見ないうちに、随分と虚にモテるようになったのね、龍牙」

 

 聞き覚えのある声に思わず振り向くと、そこには博麗霊夢の姿があった。

 霊夢が呪文のようなものを唱えたのだろう。恐らく、以前妹紅が語っていた『鬼道』の一つだ。特筆すべきはその威力。相手が小型の虚とはいえ、一瞬で焼き尽くしてしまった。

 思いもよらない助太刀に、龍牙は笑みを浮かべて霊夢に近づく。

 

「悪い。助かったよ、れい──ぐほォッ!?」

 

 真下から突き上げるような、強烈な蹴りをあごに見舞う。

 木々と同じ位の高さまで打ち上げられ、勢いよく倒れ込んだ。

 

「──ってぇ! 何すんだよ!」

 

 すぐに身体を起こし霊夢に抗議する。

 霊夢は龍牙の襟首を掴んで引き寄せ、噛み付くような剣幕で話し始める。

 

「アンタ、なんで一言も言わずに出てったわけ?」

「は? 手紙を残してたぞ俺は! 気付かなかったのか?」

「そんなの分かってるわよ! なんで直接言ってこなかったのか聞いてんのよ! その日はたまたま出かけてていなかったから仕方ないけど、一ヶ月の間に顔見せる暇くらいあったでしょ!?」

「う……そ、それはだな……」

 

 言えない。鍛錬に明け暮れて、霊夢に会いに行くことを忘れていたなどと、口が裂けても言えない。

 

「どうなのよ?」

 

 冷ややかな声で霊夢が問う。

 

「──俺は誓ったんだ。世話になった霊夢に、いつか立派になったら会いに行こうって……遠く離れても、お前の事を忘れたことは一度だってないよ」

 

 芝居がかった台詞を吐き、機嫌を治してもらおうと試みる。

 

「里から神社まで、二十分もかかんないですケド」

「……すんませんした」

 

 だったらお前が来いよ、と言いたいところをぐっと堪え龍牙は謝罪する。

 浮気がバレてしまった彼氏の如く平謝りする様子を見て、霊夢は深い溜息をついた。

 

「まぁ、いいわ。悪気はなさそうだし。それに──」

 

 霊夢は刀を抜き、背後に迫っていた虚を両断する。

 

「──話をしている暇なんてないわね」

「……ああ」

 

 高層ビルを凌駕する大きさの虚を睨み言い放つ霊夢に、龍牙は力強く返事をした

 

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