斬魄刀で戦う世界でなぜかハーレムが築かれてく話   作:眞珠

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色んな方の作品を読ませていただいているんですが、平均文字数が4~5000の作品が多くてびっくりしてます
一体どうやったらそんなに文字をかけるのか、羨ましい限りです


16話 貴方の刀

 

 龍牙はゆっくりと目を覚ました。辺りは霧の中。この空間は、以前見た覚えがある。確かあれは、そう。命からがら虚を撃退した、あの時に訪れた場所。

 

 あの時は死後の世界だと勘違いしていたが、彼女(・・)の話によれば、ここは龍牙の精神世界。そうとくれば、近距離で放った”赤火砲(しゃっかほう)”を受けても、まだ生きていることになる。我ながら、なんと強靭な身体で産まれたことか。

 

 己の身体に尊敬の念を抱きつつ、龍牙は周りを見回した。以前訪れた際と、特に変化はない。あれ以来、来ようとしても来れなかった世界だ。龍牙の意思ではなく、彼女の意思で龍牙をここに呼び寄せたのだろう。

 

 ──なら目的は一体何なのだろうか?

 

 龍牙は彼女の正体について、ある一つの結論に辿り着いていた。彼女と初めて会話をした際、このような事を言っていたのだ。

 

『私は貴方の力。でも、龍牙は今、私を必要としていない。故に、名前を知る事ができない』

 

 ──貴方の力。

 ──今は名前を知る事ができない。

 

 もし仮に、彼女が龍牙の斬魄刀(・・・・・・・・・)であるならば、前回は腑に落ちなかった事がようやく納得できる。彼女が龍牙の斬魄刀であると仮定する場合、現在は”対話”ができている事になる。解放する為に必要な事、残すは”同調”。

 

 しかし龍牙はこの事について、少し納得できない事があった。斬魄刀が持ち主の鏡であるとするならば、何故”同調”ができないのか。

 

 龍牙が辿り着いた結論は、自身の写し身である彼女が、龍牙の意に反する思いを抱いていること。もしくは、彼女自身が龍牙を認めていないこと。どちらにせよ、彼女との”対話”は必要不可欠な事だろう。龍牙は姿が見えない彼女に対して、今度はこちらから声をかける事にした。

 

「おい、いるか?」

 

 龍牙は何もない空間へと言葉を投げかける。そういえば、現界で紫に話しかける時もこんな感じだったな、と懐かしい思い出が蘇った。

 

「久しぶり。いるよ」

 

 相変わらず抑揚のない声。龍牙はAIとでも喋っているような気分になる。

 

 龍牙は、自分の写し身が少女の姿をしている可能性があるのか、などと余計な事を考えてしまう。

 

 自分の心の底に”女心”のようなものがあるのではないか──いや、今は考えるべきではない。龍牙は首をぶんぶんと振って邪念をとばした。

 

「久しぶり。元気してるか?」

 

 龍牙は、知り合いの女の子に話しかけるような声色で彼女に訊ねた。姿こそ見えないが、彼女の声は幼子を思わせる。

 

 龍牙が幼子と話す機会など、幻想郷に来るまでは幽霊くらいでしかなく、ここに来てから美古都と話したくらいだ。そのためどのように接していいかが分からず、以前アニメで見たような気のいいお兄さんを思い出し、咄嗟に真似をする。

 

「龍牙が元気じゃないから、私も元気じゃない」

 

 抑揚なさすぎてわかんねーよ、などと無粋なツッコミを控えて、龍牙は「そうか」と返事をする。身体的にか精神的にかは分からないが、辺りを覆い隠す霧のように、彼女自身の気分も、龍牙に作用されてしまうようだ。

 

「……でも、俺はこの通り元気だ」

「それは、ここが精神世界だから。現実の龍牙は立てないくらいボロボロ」

 

 手を広げ元気である事をアピールするが、いとも容易く反論されてしまった。幼い声に似合わず、龍牙より聡明だ。分かってはいた事だが、あくまで精神世界にいる自分と、現実の自分は身体を共有している訳ではないようだ。

 

 ──それにしても参った。

 

 彼女の話が本当なら、目覚めたところで戦線復帰は厳しくなってしまう。いやむしろ、あれだけのダメージを受けておきながらまだ生きている事を誇るべきだろうか。そんな事を龍牙が考えていると、彼女から質問が投げかけられる。

 

「どうして、そこまでボロボロになってまで戦う?」

 

 何故、こんな質問を投げかけてくるのだろうか、と龍牙は疑問に思った。写し身であるのならば、そんなこと一番分かっているだろうに。恐らく、龍牙を知るものがこの質問を問われれば、満場一致で答えが出るだろう。

 

 ──護るためと。 

 

「……そんなこと、お前が一番分かってるんじゃないのか?」

「分からない。敵が強いなら逃げればいい。龍牙が逃げたところで、誰もそれを咎めはしない」

 

 どうやら彼女の考えは龍牙と相反するようだ。もしかしたら、写し身であるとは限らないのかもしれない。相反する考えを持った斬魄刀がいても、それはそれでおかしくないのではないか。そもそも、龍牙は決めつけるように言ったが、斬魄刀ではない、龍牙の心に宿った別の力なのかもしれない。

 

 幽霊が見えるという非現実を生きてきた龍牙だが、幻想郷に来てから、それ以上の非現実さを目の当たりにしてきた。今更他の誰かと違っても、きっとその内当たり前になるのだろう。様々な思案を巡らせつつ、龍牙は彼女の問いに答える。

 

「敵が強いからって逃げるんじゃあ、いつまで経っても誰も護れない……。誰も俺を咎めなくても、俺が俺を咎める」

「──理解不能。龍牙が傷付く理由にはならない」

 

 抑揚のない声だが、言葉の端々から「貴方を認めない」という思いが感じられる。彼女の思いを知ってか知らずか、頑なに認めない彼女に対して龍牙は少々苛立つ。 

 

「……解せないな。斬魄刀ってのは、持ち主の写し身だって聞いたが?」

 

 お前がそうなら俺の気持ちを理解できないのはおかしいだろ、そんな気持ちを込めて龍牙は言い放った。

 

 今頃霊夢は文を倒し、敵の本拠地へと一人で向かっているはずだ。早く戦線に復帰して、彼女の元へ向かわなければ。龍牙は、はやる気持ちを抑えられないでいた。

 

「何もおかしくはない。人を護りたいという思いを持った、龍牙の写し身が私なら、(あるじ)である龍牙を護りたいと思うのは道理」

 

 そこまで言われて、龍牙はようやく理解した。彼女の思いは、龍牙が抱いている思いと変わらない。彼女もただ、龍牙を護りたいだけなのだと。誰かを護りたいという思い、そして、龍牙の持つ防衛本能が形になった存在が、彼女なのだ。

 

「以前、私は龍牙に言った。私を必要としていないから、名前を知ることができないと」

 

 龍牙が前に精神世界へ訪れた際の言葉を、彼女は繰り返して言った。あの時は名前を聞くことができず、そのまま現実へと帰されたのだ。

 

「今一度、龍牙に問う。どうして、ボロボロになってまで戦う?」

 

 そして先の質問をもう一度龍牙に投げかけた。

 

「──勝ちたいからだ! 勝って強さを証明しないと、誰も護ることはできない!」

 

 胸に込み上げてくる思いを全て吐き出すかの如く、龍牙は声を荒らげた。

 

「強さの証明? ──でも現に、三度は死にかけている。龍牙も分かってるはず、貴方はまだ弱い」

 

 龍牙が、心の底では思っていたこと。表には出さず、自分の中で悩んでいたことを赤裸々にされ、血が出てしまいそうなほど下唇を噛む。

 

「ならどうしろって言うんだよ! 俺はっ、俺は……っ!」

 

 その場に倒れ込み、嗚咽を漏らしながら、赤子のように泣きじゃくる。

 

「──私がいる」

 

 その言葉に抑揚はない。だが、今までにない力強さを龍牙は感じた。

 

「私は龍牙の盾であり、刀。貴方が必要とするなら、私は力を貸す」

 

 少しづつ霧が晴れ、眩いほどの光が龍牙を包み込む。暖かい光に包まれ、龍牙は安心感を覚えた。

 

「さあ、名前を呼んで。龍牙の力の名前を──」

 

 龍牙を包む光がふっと消えた。代わりに、龍牙の周辺を青白い光が奔り、雷の様な轟音が鳴り響いた。

 

「──俺にっ、力を貸してくれ……っ」

 

 

「──”珠螺(しゅら)”っ!!」

 

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