斬魄刀で戦う世界でなぜかハーレムが築かれてく話   作:眞珠

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05話 七番隊

 

 ──幻霊廷。

 郷廷十三隊の中核を成す都市。いわゆる本拠地である。

 白を基調とした建物が多く一見無機質にも見えるが、花や木々があり、春になれば絶好な桜景色が目に映る。

 郷廷十三隊それぞれの隊舎・宿舎があり、それに伴って関連施設が併設されている。例えば、四番隊の〈救護詰所〉、十二番隊の〈技術開発局〉がそれに当たり、幻想郷の守護とは別に、各々が日々活動している。

 また、隊士達の常日頃の疲れを癒す目的で、店や娯楽施設が建ち並ぶ歓楽街も存在している。

 

 ──予定である。

 

 これらはあくまで、総隊長・八雲紫の未来予想図であって、実際には一番隊隊舎しか完成していない。

 その一番隊舎ですらも、全隊長が出席して執り行う〈隊首会〉の為に、隊首会議室が存在する事以外、特に存在理由はなく、最早八雲の屋敷と言っても過言はない。

 

 そんな一番隊隊舎(八雲の屋敷)に、眉間に皺を寄せながら乗り込む少女が一人いた。

 

「ちょっと紫、いるんでしょ?」

 

 少女は入る前に声もかけず、荒々しく戸を開きながら言った。そして、中にいる女性の態度を見て更に腹を立てる。

 部屋の中には、自身の能力で作った裂け目を椅子がわりにして寛いでいる紫の姿。その隣では、九つの尾が生えた金髪ショートボブの女性が、目を閉じて佇んでいた。

 

「博麗隊長、総隊長は現在休憩中だ。話があるというのならば、私が聞こう」

「その女が休憩中じゃない時なんてないじゃない。それに、あんたじゃ話になんないわよ、(らん)。私は紫に話があんの」

 

 霊夢の言葉を聞き、やれやれといった様子で藍と呼ばれた女性は溜息をつく。

 

「ふふっ……大方、肩入れしてるどこぞの男の配属先に不満があるんでしょう?」

 

 扇子で口元を隠し、含みのある声色で紫は言った。

 

「──ええ、そうよ。この際だからハッキリ言わせてもらうわ」

 

 霊夢は顔をやや下に向け、わなわなと震える。

 

「あれはどう考えても十三番隊になる流れでしょ!!」

 

 一番隊隊舎全域に響きそうな大声で霊夢は言った。その声量の大きさに、紫と藍の二人は指で耳を塞ぐ。

 

「まったく、声が大きいわよ……幻想郷に来てから暫く一緒にいたから愛着湧いてるんでしょうけど──」

「違うわよ!」

「はいはい。でもねぇ、これはあくまで龍牙の希望に沿った結果なのよ?」

 

 

 

 

「あら、残ることにしたのね。それに郷廷十三隊の加入も希望なんて、無理しなくてもいいのよ?」

「はっ、思ってもない事言うなよ。どうせあれこれ理由つけて加入させる気だったくせに」

 

 空に浮かんだ月が闇を照らすある日の夜、一番隊舎にて二人の男女の話し声が響き渡っていた。

 雨宮龍牙が、幻想郷に残り、郷廷十三隊へ加入する旨を紫に伝えに来たのだ。

 理由は分からないがともかく、紫にとっては大変喜ばしい事であった。

 

「正解。私の事をよく知っていらっしゃるようで、嬉しいですわ」

「……顔が近い、離れろ」

 

 ズイッと顔を近づけてくる紫に、龍牙はしかめっ面を見せると、しっしっと手で虫を追い払うかの様な動作をし、離れるように窘めた。

 紫は不満そうな表情で顔を離す。

 

「いけず……まぁいいわ」

 

 紫は残念そうな顔を覗かせるも、すぐに表情を戻して話を続ける。

 

「それで、郷廷十三隊に入って龍牙はどうしたいの?」

「ん? そんな事聞いてどうすんだよ」

 

 膝に肘をついて問う紫に、龍牙は尋ねた。

 

「郷廷十三隊にはそれぞれ役割があるのよ。顔見知りの霊夢の隊に入れるのも良いのだけれど、貴方の希望を聞いておかなくちゃね」

「──俺は、あの時助けた女の子、美古都ちゃんみたいに、戦う力のない平和に暮らしてる人達を護れるようになりたい」

 

 紫の問いに、龍牙は力強い眼をして答えた。

 その様子を見て、紫はそっと微笑む。

 

「──よろしい。配属予定の隊の隊長にも連絡しなければいけないから、詳細はまた追って連絡するわ」

「ああ、分かった。宜しく頼む……あ、そうだ紫」

 

 話が一通り終わったところで、龍牙は何か言いたげな表情で紫を見つめる。

 

「──何かしら」 

 

 異性にじっと見つめられる経験のない、ましてや今までずっと一方的に見続けていた男に見つめられている恥ずかしさに、紫は軽く頬を赤く染め、目を若干逸らして返事をした。

 

「ごめん、やっぱもうクールな女には見えないわ」

「黙りなさい」

 

 

 

 

「──ってことで、龍牙の配属先は七番隊に決定したわ」

「……まぁ、龍牙がそう言ったなら納得だわ。最後のくだりは絶対に余計だったけど」

 

 (ホロウ)相手に怪我を負うと分かっていても、美古都を助けるために立ち向かってしまう頭のネジの外れようと、人の為に頑張れる自分で居続けたいという発言を知っている霊夢は、諦めた様子でそう言った。

 

「七番隊ねぇ、龍牙の希望ピッタリじゃない」

「そうね、七番隊の役目は人里の守護。これ以上ない程ピッタリだわ……彼女も喜んでたし」

「彼女って……ああ、そういえば七番隊隊長は慧音(けいね)だっけ」

 

 思い出したかの様に霊夢は言う。

 

 ──七番隊。

 上白沢慧音(かみしらさわけいね)という女性が隊長を務め、仁義を重んじる隊である。

 人里の守護を主な生業としており、見回りは勿論の事、人里内のトラブルの解決、清掃活動や寺子屋で教鞭を執る等、守護以外にも活発に活動している。

 

 ──その他の雑用はともかく、人里の守護は龍牙が最も取り組みたい事であろう。

 

「ええ、『確固たる理念を持った隊士が加入してくれるのは非常に嬉しい、若い男と来れば子供達も喜ぶだろう』って」

「教師をさせる気満々じゃない……大丈夫かしら」

 

 美古都と会話をした際、初手から地雷を踏み抜いていった龍牙を思い出し、霊夢は不安に思った。

 

「それにしても、七番隊所属じゃ博麗神社(ウチ)から通うのも大変ねぇ」

 

 霊夢はやれやれといった様子を見せる。

 

「あら、何を寝惚けたことを言ってるのかしら。所属が七番隊なら、人里で暮らすに決まってるじゃない」

「……へ、へ〜。居候がいなくなって清々するわね……」

 

 紫の言葉に少しの間固まってしまうも、すぐに平静を取り戻した素振りを見せ、霊夢は言い放った。

 そんな霊夢を、紫は面白いものを見たと言わんばかりのニヤニヤ顔で見ている。

 

「──な、何よ?」

 

 ニヤニヤ顔の紫の視線に気付いたのか、霊夢は訝しんで尋ねる。

 

「別にぃ〜?」

 

 紫の心情を察し、霊夢は徐々に赤面する。

 

「……ふん。もう用事も済んだし、私行くわ」

「あら、どこに行くの?」

 

 二人に背を向け、その場を後にしようとする霊夢に紫は尋ねた。

 

「どこって……神社に帰るに決まってるじゃない」

「──人里ではなくて?」

 

 振り返らずとも、紫が人を小馬鹿にする様な顔で此方を見ている事を霊夢は感じ取っていた。

 だが言い返すだけ無駄だと分かっていた彼女は、次会ったら問答無用で斬る、と心に近いその場を後にした。

 

「ふふ、面白いわねぇ」

 

 一生楽しめそうな玩具を見つけ、嬉しそうに紫は言った。

 

「紫様は、行かなくてよろしいのですか?」

「──嫌よ、他の女と話している所なんて見たくないもの」

 

 紫は扇子で口元を覆い隠す。

 藍は「貴女も大概ですよ」と口には出さずに心に秘め、自分の主を微笑みながら見つめていた。

 

 

 

 

 舞台は移り、ここは人里。

 相も変わらず賑やかいこの場所に、ある目的の為龍牙は訪れていた。

 

 紫と話をした次の日、龍牙が境内を掃除してるところにひょっこりと彼女は現れ、七番隊に配属が決まった事を伝えられた。

 どうやら住まいを提供してくれるらしく、内見も兼ねて龍牙は隊長に挨拶をしに行く事にした。

 紫の話によると寺子屋の上にあるという事だが、地図を見ても全く分からない為、あちらこちらとフラフラ歩くも中々見つからない様子だ。

 

「……困ったな」

 

 龍牙は立ち止まって頭を搔く。

 そもそも現界の暮らしに慣れ親しんでいた龍牙には、木造平野が建ち並ぶ光景自体が珍しく、ほとんど同じ建物に見えている。

 

「──見ない顔だな」

 

 龍牙が暫く立ちすくんでいると、不意に背後から声をかけられる。

 

死覇装(しはくしょう)を着てるってことはどこかの隊士なんだろうけど、どこの所属だ?」

 

 龍牙が振り返ると、地面まで届いてしまいそうな長い白髪の髪に、燃えるような赤い瞳をした少女がそこに立っていた。

 左腕に〈七〉と書かれた、見慣れない木の板の様な物を巻いているが、黒い袴を着ている為、隊士であると龍牙は判断した。

 

「新たに七番隊に所属する事になったので、隊長へご挨拶をしに──」

「ああ、例の新人(・・・・)か」

 

 少女は何やら含みのある言い方をする。

 

「着いてきなよ、案内してやる」

「いいんですか? ありがとうございます……あ、自己紹介が遅れました。雨宮龍牙です」

「──私は妹紅。七番隊副隊長・藤原妹紅(ふじわらのもこう)だ」

 

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