ゲヘナの鬼方家にて起こった騒動は、便利屋に有利に働いていた。
美食研が爆破を駆使して監視をおびき寄せつつ給食部の車で逃げ回ることで囮役を担い、手薄になったところに便利屋68……新たな社員、伊草ハルカを迎えた3人がハルカを先頭に忍び込む。本人が自覚していないハルカの特技、隠密行動。その力は雷帝の目すらかいくぐり、カヨコのもとへとたどり着く。
誘拐時にはアコ率いる統率が取れた多数の護衛によって追い詰められるピンチに陥ったものの、カヨコがアコを背後から仕留めることに成功。統率が取れなくなった護衛を協力して打ち倒した。
だが、致命的なことに時間をかけすぎてしまった。
出入り口をふさぎ、立つものが一人。
「我の庭で何をしている__カヨコ」
便利屋68は立ち塞がる『雷帝』と相まみえる。
「やっば〜……」
「……」
「やっぱり……姉さんは強い」
突撃を行ったハルカだったが、雷帝の攻撃を耐えきれず気絶。ほか2人の社員はハルカをかばいながら雷帝の攻撃をうけ、防戦一方の状態。
「その程度か……今ならば、見逃してやってもいい」
トドメの一撃を構え、脅すような言葉。それを受けた陸八魔アルは、むしろ奮起して部下達の前に立ちはだかる。
「ふ、ふふふ……この状況で、社長の私が部下を見捨てて逃げる?そんなの……そんなの!」
その時、脳裏に映るのは、とある日に見た憧れの姿。時が経ってなお鮮明に映るその姿は、まさに私の憧れ。
「全っ然アウトローじゃないわ!!!」
「……は?あうとろー?」
謎の単語に、眉を潜める雷帝。そんなのお構い無しに、その場のノリと勢いでアルは続ける。
「ハードボイルドでアウトロー、お金をもらえば何でもする!そんな仕事人が私達、便利屋68よ!覚えていなさい!」
「アル様……」「アルちゃん……」「……」
なお、アルの内心はというと
(い、言っちゃったーーー!!思いっきり挑発しちゃったぁ!でもこっからどうするの私!)
白目を剥いていた。
そんな様子にため息を一つ漏らした雷帝。
「よくわからんが、それが冥土の土産だな」
「えっちょっ、あっ」
驚いて取りこぼしたのは__ハルカから受け取った手榴弾。
派手な爆発により、壁に大穴が空いた。
「危ねぇ!?」
「ふ、ふふ、やってやったわ!」
ここで、驚いたアルがハルカから預かった手榴弾を取りこぼし爆発が起こる。が、なんか雷帝が勘違いしてるのでそういうことにしておく。
「社長、壁に穴が空いた!ここから逃げられる!」
「逃がすか!!」
そうして放たれるは、雷帝の名に恥じない重量武器、超電磁砲。
先ほどまで便利屋を圧倒していたその武器から放たれる光が、便利屋68を飲み込む__
「ふん、他愛もない……ん?」
確かな手応えだったその一撃は、壁に空いた穴から割って入ってきた装甲車でうけとめられてしまっていた。
「皆さん!早く乗り込んで!」
「エンジン全開です!」
そのまま便利屋達を乗せて、去っていく装甲車。
「まて!……くそっ、他にも仲間がいたのか!」
流石の雷帝といえども、生身で車を追いかけるには厳しい。しかし、策はある。網を張ってとらえればいい。
装甲車をそのまま見逃した雷帝はすぐさま電話を取り出し、ゲヘナから出られないように指名手配をかけ境界の行き来を止めた。これで、風紀委員会に捕まるはずだ。
しかし、更に想定外の事態が起こる。
「温泉開発部が境界を爆破!さらに、騒動に乗じて美食研究会が雷帝様お気に入りの寿司屋を爆破しました!」
「なんだと!?指名手配した便利屋はどうした!」
「ブラックマーケットに逃げられました!」
「くそっ!ひっ捕らえろ!」
自治区外に逃げられると、どうにもできない。何とか連邦生徒会に潜り込ませた密偵を通して指名手配登録を行い、主犯の口座を凍結できたが……それが限界であった。
「指名手配犯、混乱に乗じてブラックマーケットへ逃げたとの報告が!」
「そうか。いい。これもすべてトリニティの奴らのせいだ……!」
「陛下……?」
しかし、一つだけ。雷帝はしっかりこの目でみた。装甲車を運転する紙袋の背中に生えた、明確な敵対勢力の証となる、翼を。
「__トリニティにクレームをうつ!事は自国の者の誘拐だ!」
「はっ!」
長い歴史の中、再び雷帝がトリニティと敵対することを明確に打ち出した。更に溝は深まってゆく。
試験のため、12日の投稿はなしで、18日から再開します。
あと、端折ったので改めて書き直すかもです。