貴方の事が好きすぎるスタレ女子だなんてそんな。 作:究極進化さむらい(2歳)
きっかけは些細な事だった。
虐められている女の子がいたから、何となく助けた。
ただ、それだけだった。
理由なんて単純で、泣いていて、痛そうで、悲しそうな目をしていたから。
だから、こんな事になるなんて思ってもいなかった。
◆◆◆
「おはようございます、〇〇さん。」
早朝、いるはずのない人物によって貴方は目を覚ました。
制服を着て、どこか寂しげな表情を浮かべながら貴方の顔を覗いている。
彼女はキャストリス。
貴方が小学校に通い始めてから四年の時、転校して来た少女だ。
そして、貴方が助けた少女である。
キャストリスには他校からのよくない噂があり、それが貴方の通う学校でも直ぐに広まった。
そのせいで虐められていたのだが、ヒーローものが好きだった幼い貴方の浅い正義感により、助けてもらえたのだ。
「もう朝食が出来てますよ……貴方の好きな卵のお味噌汁がありますから」
キャストリスはそう言って、ぐちゃぐちゃになった貴方の布団を片付け始める。
いったい何故、こいつは自分に奉仕の様な真似をしてくるのだろう。
そう、貴方にとって彼女は単なるいじめられっ子であり、特別な感情など微塵も抱いていない。
あの日、キャストリスを助けた貴方はいじめの対象になってしまった。
そのせいで、自分が思い描いていた青春を送る事はできなかった。
「………?…どうかしましたか…?」
貴方の表情を見てか、キャストリスは心配そうな表情を浮かべながら聞いてくる。
別に何も、と貴方はぶっきらぼうに言葉を返し、着替えるから退出してくれた伝えると彼女は少し悲しげな表情になって部屋を出て行った。
彼女が何をしたいのかさっぱり分からない。
自分に対してどう思ってるのか、何を企んでいるのか。
何もかもが理解できない。
小学校で彼女を助け出してから、こんな生活がずっと続いている。
朝目が覚めれば、彼女はそこにいて。
貴方と一緒に登校する。
勿論、下校の時も一緒だ。
学校にいればキャストリスと一緒にいない時間など無く、普段の生活でもだ。
貴方の人生は、いつも彼女が側にいる。
中学校になると関わる事もないだろうと思っていたが、彼女は貴方と同じ学校へ入学してきたのだ。
成長につれて次第に、貴方の身の回りの世話などをし始めた。
何故そんな事をするのかと貴方は彼女に聞いたが、ただ一言「私がしたいだけです」としか言わない。
そんな訳の分からない彼女との生活は苦痛でしかない。
"早く飽きてくれないかな" そう思いながらも、今日もまた彼女の作った朝食を食べる為足を運ぶのだった。
◆◆◆
夕暮れ時。
貴方の通う学校は終わりの時間を迎えていた。
多くの生徒は部活などに勤しんでいたり、帰宅して友人と遊んだりと青春の1ページを刻んでいる。
そんなかつて友達だった生徒達を尻目に、貴方は自宅へと足を進めていた。
キャストリスも当然の如くと言った様子で、貴方の隣に並んでいる。
その足取りは軽く、少し頬を赤らめ笑みを浮かべながら。
「今日のご飯は何がよろしいでしょうか…?」
"何でも良い"
「……でしたら、貴方の好きなグラタンを作ります…!」
貴方の素っ気ない態度など気にせず、キャストリスは気合い十分、と意気込んでいる。
胃袋でも掴むつもりなのだろうか。
そんな事をしても意味なんてないと言うのに。
ふと、貴方の視界には公園が映っていた。
あの日、ヒーローアニメを見て身につけたあっさい正義感で彼女を助け、理不尽など何も知らないこと子供のくせに英雄を気取っていた。
その時の公園だ。
公園の中では、5人の男女が遊んでいる。
その様子はとても楽しそうで、あの輪の中に笑顔を浮かべていない子はいなかった。仲が悪いとはとてもじゃないが思えない。
自分が送るはずだった青春を、子供らを見ながら思い浮かべる。
「あの公園、懐かしいですね。」
「あの日、貴方が私を救ってくれた場所……」
「私の、とっても素敵な思い出の場所です」
キャストリスは、貴方の目線を追って公園を見つめながら話しかけてきた。
貴方の気も知らず。
そして、思い出に浸る様に言葉を続ける。
「〇〇さんは、私の人生を救ってくれたんです」
「ですから、一生をかけてお返しを」
"ふざけるな"
「………え」
貴方の中で、何かが切れた。
素敵な思い出の場所、そんな訳ない。
悪夢の様な、地獄を思い出す場所だ。
私を救ってくれた、そんなつもりは無い。
英雄気取りの自分に酔ってただけだ。
◆◆◆
"お前のせいで、俺の人生は無茶苦茶だ"
突然、私は最愛の人に、決して貰いたくない言葉を貰った。
私のせいで、〇〇さんが……?
「あの、私」
"お前のせいで友達は居なくなったし"
"お前のせいで友達は出来ない"
"いつもいつも俺に引っ付いて来やがる"
"俺の事を陥れたいのか"
「そんなつもりは」
そんなつもりはない。
ただ、貴方の側に居たかっただけ。
貴方が、大好きで、愛しているから。
私に初めて温もりをくれた人だから。
ずっとずっと一緒にいたいから
"お前といるとろくな事が起きない"
「……!」
"もう金輪際俺に関わろうとするのは辞めてくれ"
やだ。
そんな事言わないで。
嫌わないで。
突き放そうとしないで。
また私を抱きしめて。
いやだいやだいやだ
"本当に噂通りだな、お前といると不幸が訪れるって"
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて
"それじゃあな、もう二度と会う事は無いと思うけど"
ずっといっしょにいたいです
◆◆◆
きっかけは些細な事だった。
虐められている女の子がいたから、何となく助けた。
ただ、それだけだった。
理由なんて単純で、泣いていて、痛そうで、悲しそうな目をしていたから。
だから、こんな事になるなんて思ってもいなかった。
「〇〇さん、今日はハンバーグですよ」
ここから出してくれ、と貴方にフォークを向けてくるキャストリスに伝える。
制限がかけられ動かせない手足を、必死にジタバタさせながら。
「ダメですよ。貴方と私はずっと一緒です……♡」
甘い表情を浮かべながら、キャストリスは貴方を抱きしめた。
体温は暖かいはずなのに、何故か形容し難い冷たさを感じる。
「ほら、早く食べないと冷めてしまいますよ?……あっ」
「こうした方が好きなんですね♡」
キャストリスは自身でハンバーグを口に含み、形をほぐした後貴方に無理やり口付けをした。
暖かく、ぐちゃぐちゃになった肉が貴方の口内に流し込まれる。
貴方は、嫌がる事も出来ずにただその味を味わうしかなかった。
「沢山食べてくださいね……♡」
"もうやめてくれ"
貴方は涙を流しながら、キャストリスに向かって懇願する。
「……私が辞めてと言った時、〇〇さんも辞めてくれなかったはずです」
「だから、おあいこですよ♡」
そう言って、キャストリスは貴方に向かってハンバーグを差し向けてくる。
あぁ、どこで間違ったのかな。
自分の思い描いていた人生を浮かべながら、貴方は涙を流すのだった。
「これからも、ずぅぅっと一緒ですからね♡」