3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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【NEW】
・本文の修正中に間違ってESCキー押したら、全部消え去りやがった!
・安全のためにメモパッドで修正してから移そうと思ったら折り返し点で強制改行の罠。
・大人しくStoryEditorで全て終わらせてからコピることにしたのでありました。

うん、余り前書きとしては意味が無いですね。すまぬ。


11話 ハトバへむかおう

 

「……一日千秋。と言うには早い再会だったな、相棒」

 

 

 広さの割に利用者が居ないがゆえか、閑散としたイメージすら与えるナイル爺さんのガレージ地下駐車場。

 ぽつねんとただ一台だけそこに佇んでいた相棒に優しく声をかけ、万感の念を抱きつつ一息に跨ると、乱暴とも言える荒々しさで始動キーを挿入。

 するりと抵抗ひとつ見せず、むしろ歓迎するかのように奥の奥まで飲み込みつくした鍵穴が、本来の主が帰ってきた事を喜びIC照合音(嬌声)を上げる。

 ……何だか、えらく勘違いを誘発させそうな言い回しをしてみたが、要するにロック解除して、セルモーターをまわしただけなんだな。これが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間はちょっとだけ巻き戻る──

 

 エルニニョでの大騒動の後……本当に心底から疲れきって、マドの町に帰りついた俺達は、イリットの心暖まる手料理(接待)のお陰で気力を回復させていた。

 軽く落ち着いた事で帰り際の宣言を思い出した俺は、早速ながら多分に揶揄(からかい)を混ぜつつ、テーブルの左隣で食後の気だるさにタレているレナに声をかけることにする。

 

 

「では僭越では御座いますが、ワタクシ……ジン・ザ・ドラムカンが進行を務めさせていただきます」

「……また変な事を」

 

 

 唐突に、何処かの芸能人(アーチスト)かと思わせる調子で道化る俺に、怪訝さと鬱陶しさを綯い交ぜにした表情を向けてくるレナ。

 だが、そんな彼女とは対照的に、イリット()カル()は何が始まるのかと興味津々な顔つきだ。

 

 

「変とは御挨拶な……さてさてェ、お嬢(レナ)さん? エルニニョでは大変にやらかしてくれましたねェ(まあ、俺もやらかしたが……)」

「ギク」

「擬音を口にしても構いませんがァ……俺も口にした事は実行するタイプなんですよォ……という訳で、レナさんに選択肢を用意してみました!」

 

 

 じゃじゃん! と効果音を鳴らさんばかりに、何処からともなくフリップが取り出される。

 因みに、内容は……

 

 1:幼き思ひで再び! 羞恥の限界に挑戦せよ! 公開スパンキング!

 2:戦場は松の間! 理性の限界に挑戦せよ! 夜の戦闘訓練(大人風味)!

 3:理由などない! 肉体の限界に挑戦せよ! ムショ風ドラム缶押し!

 

 何だか、どれもこれも一癖どころか問題ありまくりなネタだが、(俺も含め)羞恥さえ超えられれば最も楽に終了するのが1番。普通は選ばない……というより、選ばれると寧ろ俺の理性が限界突破するであろう2番。地味に最大級の時間と無駄な労力を味合わされる3番……なお、3番のドラムカンは湿らせた砂を詰めて重量増強の上、5本×8セットという初日から精神崩壊モノの地雷仕様にしたいと思う。

 つーか、どう考えても1番と2番を選ぶはずが無いので、この選択肢は無いものと同じ……つまり地雷である3番を選択するしかないのだ。ふふふ、完璧だ。実に完璧な策略ッ! ふははは、思い知るがいいレナよ。君は良い相方だったが、君の面倒事に首を突っ込む性格が悪いのだ!

 

 

「ちょ……何よこれーーーっ!」

「なー、兄ちゃん。スパンキングってなにー?」

「松の間で夜の戦闘訓練だなんて……ちょっと興味深いです」

 

 

 お馴染みの鉄面皮を精一杯ウザそうな笑顔にして「さあ、選ぶがよい」とばかりにニヨニヨと邪笑を浮かべる。案の定大騒ぎに発展したのは実に俺の目論見通りであると言えるのだが……カル君。その知識は、君には早過ぎるよ。

 そして、イリットにレナ……何故に2番に目が釘付けになってますか? そして何故に顔を赤らめながら俺に猛禽の目を向けますか?

 お兄さん、遺伝子レベルでメタモーフ細胞が融合しちゃってるから、デキちゃうような事をヤっちゃうのは些か拙いような気がそこはかとなくするのですヨ。

 正直、バイオテクノロジー系のラボでも見つけて、クソ美形(グラトノス)仕込みの生体分析とクローニングチェック……可能なら培養遺伝子による交配試験ぐらいまではやっておかないとトラウマになりそうな事態が発生しそうで怖い。

 いや、そもそもヤツと同等以上のメタモーフ細胞に対する適合率を持つ、ヒューマン・ビーイングならぬ、メタモーフ・ビーイングな俺の(検閲されました!)様は通常の人類相手にしてデキちゃったりするのか? エルルースでは「謎のゴム風船」が大活躍してたからその点は不明だが……って待て待て! 何故に俺はヤッてデキちゃう展開前提で考えている!? ビジネスな付き合いじゃないからか? カット! その思考はカットだ!

 

 

「はーい、ここで救済タイムです! バイク禁止令解除で、今回はお仕置き執行を無かった事にできますヨー?」

 

 

 思わぬ展開に混乱した思考のせいか、妙にカクカクとした所作と言動で、第4の選択肢を提示する俺。

 フッ……ヘタレと笑うなら笑え。自意識過剰と後ろ指さして失笑するならするがいい。だが俺はその展開(ルート)を断るッ! まあ、今のところは。

 

 

「……………………仕方ないわね」

「……何だか残念なようなホッとしたような複雑な気分です」

 

 

 そして、渋々と……本当に渋々といった感じで禁止令の解除に同意するレナが、ちょっと怖いのですよ。その長い間と「仕方ない」は一体、ナニに対して向けられたものナノデスカ? アナタとワタシ……マダ、ソンナに長イ付キ合イではアリマセンよネ?

 どことなーく、ぞわぞわ(戦々恐々)とさせられながら、俺はナニカを誤魔化すかのようにスキップしつつ地下駐車場へと去っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そして今。

 

 バギーに乗り込んだレナと、ストレイドッグに跨る俺は、ガレージから少し離れた所で今日の行動予定を話し合っている。

 

 

「……不本意だけど、ほんっ……とぉぉーーッに、不本意だけど今日は二両編成でハトバまで足を伸ばすわ」

 

 

 全身で「私、不満です!」と主張せんばかりの不機嫌顔。

 こちらは何時もの鉄面皮だが、心の中は早期のバイク復権に恵比須顔である。

 そんなレナに「ナニに対して不本意なのかが微妙に怖いが……」と呟いてみれば、

 

 

「あんたをバイクに乗せとくと風の向くまま居なくなりそうだからよッ!」

 

 

 と力強い断言が返ってくる。正にやぶへびである。

 しかし、さして長い付き合いでも無いのに、ここまで執着するのはヤンデレならぬキレデレにでも目覚めたか、それとも自らの果たすべき責務に俺という存在(コマ)が不可欠と認識してしまったからか。

 素直に、惚れられているとかだったら男としては嬉しいんだけどなぁ……などという思考が出てくるあたり、俺も復讐という重荷から解放されて腑抜けてしまっているのかも知れん。

 

 

「……で? エルニニョ付近には、まだ賞金首(デスペロイド)がいるようだが、狩らないで行くって事でいいのか?」

「そーね。正直に言えば狩りたいけど、聞いた話じゃ結構しぶといらしいし……今の装備じゃ余計な被害も大きくなりそうだから、ハトバかアズサあたりまで行って資金稼ぎと装備強化を当面の目的にする」

「ん。自分の戦力を確りと把握しているのは良い事だ。俺としても否やは無いし、行ってみるとするか」

 

 

 互いに頷き合う。

 そして、荒野に響けとばかりに二匹の猛獣(クルマ)は高らかに咆哮(エグゾースト)を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……またか」

「本当に台所の天敵みたいな奴らね……」

 

 

 新たな冒険の地へ! な気分で出発してから十数分。ハトバとエルニニョを分ける急峻な川に掛かるベイブリッジ──という割には、横浜のアレと比べても普通としか言いようのない300メートルほどのアーチ橋──に乗り入れると、そこでは最早お馴染みですと言わんばかりの武装集団(グラップラー)が検問を張っていた。

 連中はエルニニョが陥ちた事でピリピリとしているのか、日頃は通過させているであろうトレーダー連中すらも足止めしていうようだった。もう、ここまで来ると、検問というよりは封鎖である。

 

 

「まあ、アイツらが検問張ってるのってどう考えても……」

「俺らを探してるか、エルニニョに対する牽制だろうな」

 

 

 (まなじり)を上げながら連中の様子を見ていたレナが、形の良い唇を人差し指で擦りながら独白する。俺は、それに追従するように答えながら、手元の様子見スコープ(双眼鏡)で戦力配置を分析する。

 ……何というか、分析する必要も無いぐらいの悲しむべき下っ端構成員でしかなかったが。

 どのくらいのものかと言えば、現在のレナと無改造バギーだけで軽く蹴散らせる程度としか言いようが無い。

 もしも連中が橋を爆破解体するとか、数の暴力で山ほど対戦車擲弾(RPG-7)を叩き込むなどといった手段にでるなら兎も角、爆破にしては橋桁や構造部に爆発物らしきモノは存在しないし、装備にしてもお馴染みの軽機関銃に山刀。

 鬼札とも言える大破壊前の産物こと<iゴーグル>や<BSコントローラー>を保有しているようなツワモノも無し。

 

 

「貧弱貧弱ゥゥゥ……としか言いようが無いな」

「エルニニョの時のほうがよっぽどヤバかったわよねぇ」

 

 

 顔を見合わせて苦笑。

 流石に急所へと会心の一発(痛撃)を貰えば、笑えるほど簡単に死んでしまうという中途半端にリアル染みた実情もあれど、まぐれ当たりでピンポイントに痛撃を喰らうようなら、それはもはや運命と諦めるしかない。

 ただでさえ、謎エネルギーの加護で体力(VIT)相当分の防護フィールドが外部衝撃を弱め、更にはレベルに応じて追加生命力(HP)すら得られるようなマー○ルヒーローズも吃驚(びっくり)な世界の存在(ナマモノ)だ。

 今まで単純極まる暴力の論理だけで弱者に対し、与えられた装備と数で戦ってきただけの経験しかないであろう下っ端構成員(グラップラー)が、たかだか数台の装甲車両を用意した程度(・・)で、実力差……というより存在力(レベル)の差を埋められようはずもない。

 

 

「お前だけで軽く蹴散らせるが……どうする?」

「それじゃ、少しばかりストレス解消をさせてもらおうかしら。主演は私。連中にはサンドバッグの役でもやってもらうとするわ」

「あいよー。助演と黒子(バックアップ)はしてやるから、好きに殺りなー」

 

 

 輝く笑顔がとってもお似合い(怖い)ですよ!

 などと馬鹿な事を空気に溶かすかのように呟きつつ、俺は狙撃銃(SR9T)を片手にストレイドッグを進ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、後はご想像の通りといった光景が展開された。

 かる~く、敵車両をバギーの機銃と大砲で蹴散らしたと思ったら、ゆらりと幽鬼もかくやという様子で降車。

 リアルワールドの方々が見れば、ショットガンの限界って何処にあるんだろうと現実逃避に走りそうな火力で人数の振るい落としを果たすと、世紀末覇王でも憑依したか、重圧すら感じる鉄拳と、隠す気ナッシングなハイキックで次々と連中を川に叩き込んでいった。

 鉄拳制裁で星となった連中は、奇妙な悲鳴を上げながらノーロープバンジーを楽しみ、跳ね上げるように鋼鉄のヒールを叩き込まれた連中は何故か幸せそうに水底へ消えていったのが印象的だった。

 俺がやった事は、レナの手がどうしてもまわりそうにない連中が飽和攻撃を仕掛けないように何人かの脳天に鉛弾をプレゼントして、風通しを良くしてやったぐらいである。

 

 今日の俺は次元大介(スナイパー)だと、本職のソルジャーが聞けば失笑するであろうネタを脳内で楽しみながら銃を仕舞っていると、あ……という詰まった喘ぎのような声が聞こえてくる。

 

 

「テッド、ブロイラー…………ッ!」

 

 

 口から洩れた奴の名は、まるで火を吐くかのような熱気すら帯び、感情を抑えつけるかのように強く、強く握られた橋の手摺が軋みを上げる。

 刺し穿つかのような視線は、光線でも放たんばかりの苛烈さで、それでいて全ての温度を忘れ去ったかのように冷え切っていた。

 

 

「…………」

 

 

 橋の下をバイアス・グラップラーの輸送船が通過してゆく。

 輸送船の甲板で仁王立ちした、大人二人分はあろうかという青い巨人(テッド・ブロイラー)とレナは、橋で互いの姿が見えなくなるまで視線を交錯させ続けていたのだった……

 

 

 




・エロい事したいのに、ここではイマイチ踏み込めないジンさん。
・シリアスは苦手です…
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