3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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2000字ちょっとか…幕間的なノリの回ですね。

・ジンさんは地味に面倒見がよかったようです。
・レナさんが何故かヒロインに見えてきます。
・リア充は不発弾の信管を叩け!


12話 おかいものをしよう

 

「あぁ、懐かしき迷彩服……って1000G! うそッ、迷彩服ってこんなに高かった!?」

「いや、割と普通の値段設定だと思うが?」

「え? でも、WANTEDの賞金と大差無い値段よ?」

「そーだな。だが、賞金稼ぎじゃなくとも狩れそうなWANTEDの賞金と比べてもしょうがないぞ。それに1000Gなんて、どこかで金蟻でも狩って砂金でも回収すれば軽く稼げる額だしな」

「……何かハンターの経済感覚って頭がおかしくなりそうだわ」

「俺も向こうにいた頃は、1日の狩りで数万G稼げたからなぁ……」

 

 

 ビッグブリッジ……もとい、ベイブリッジの遭遇から数時間。仇と直に目線を戦わせて殺伐とした空気を発散させていたレナを手八丁、口八丁で宥めながらハトバへと入ると、俺は気分転換とばかりにレナを買い物に連れ回す事にした。

 相手が男なら、こんな時は酒場にでも連れ込んで酔い潰してやるのだが、レナのような若年の少女を酒場に連れ込んで酔い潰すとか、俺の常識(ジャスティス)的に在り得ない選択なのでこうなった。

 強壮極まりない謎人類とは言え、成長期の歳若い(未来ある)女性に酒場特有の無意味に強い(ガツンと効く)酒を浴びるほど飲ませてストレス解消とかマジでありません。良い酒を嗜む程度ならまだしも、美少女がッ! 若い頃からッ! アル中とかッ……ダメ、絶対!!

 

 理由は兎も角、俺のほうから買い物に誘った以上は、今回の買い物費用は俺のポケットマネーから捻出する事にする。

 近辺で入手可能なものであれば、多少の金銭的負担を持っても問題は無いし、俺が買おうが彼女が自腹を切ろうが誤差の範疇でしかないからなのだが……おかしいな? 金銭的支援をなるべくしないと決めていたはずなのに、どうしてレナの装備品には金を出してしまうのか。

 うーむ、まあレナのクルマに関しては一切手を貸してないし、うん、問題ないという事にしておこう。

 

 低く唸りながら、無意識に伸び始めた無精髭を摩りつつ、ここ最近の出費に理由付けをして心と折り合いを付けていると、唐突に目の前で手を振られる。どうやら、レナが新しい装備をお披露目してくれるようだ。

 

 

「ねえ、ジン。似合う?」

 

 

 楽しそうな様子で、見上げるように視線を送ってくるレナに意識を向ける。果たして彼女は、ハトバで扱っている迷彩服一式と迷彩ベレー。そして何故か足元だけがウェスタンブーツといった装いで其処に立っていた。

 まあ、本人の素材が極めて良いために、このような組み合わせだろうと何故かそれなりに決まっているが、個人的には激しくミスマッチなので、店主がイイ笑顔でボッタクリ値札(1980G)を貼ってあるCVCブーツ(掘り出し物)を無言で手に取り、レナに差し出す。

 すると、彼女は驚いたような表情を見せてからパッと明るい笑顔になり、いそいそと取替え始めた。その場で。

 しかし、この少女……というか、この時代とでも言うべきか。ドレッシングルームすら無いのによくもまあ堂々と着替えられるものである。いや、俺も人の事は言えないんだが、店主もカーテンなりでパーテーションぐらい作っておけばいいものを。

 

 

「アンさんのコレですかい? いやぁ、まるで荒野に咲く向日葵のような娘さんで羨ましい限りでんな!」

 

 

 どれだけ世情が変わろうとも、こう言った部分は変化しないのか……眼福とばかりに美少女の生着替えショー──とはいえ、元の服装が服装なので、せいぜい水着ファッションショーといった微妙な健全さだったが──を眺めていた店主のお約束(口上)に、まるでヤクザ者の情婦を婉曲に褒める大阪商人(ナニワもん)みたいなやつだと思いつつ答える。

 

 

「……いや、コレ(・・)というより連れ(・・)だな。賞金稼ぎ(ハンター)的な意味で」

 

 

 今の関係性を見れば、正しく旅仲間。或いは主人公(英雄)介添え人(偏屈魔術師)といった関係が近かろう。

 店主もその辺りを察しでもしたか、「ほほぅ……連れ(・・)ですか……なるほど」などと、この荒れた世界で良いモノを見せてもらいましたといった表情で頻りに頷いていた。

 ……後に、俺の言葉足らずで妙な通称が広まってしまう事になるのだが、当然ながら今の俺がそんな事を知っている筈も無く、正しく後の祭りを味合わされる事になるのだが、それは次の話で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その、ありがと……ひょっとしなくても気を使わせたよね?」

 

 

 ハトバの人間装備屋を出て、すっかりお色気(コスプレ)戦車兵風味に装いを改めたレナが、日頃の強気さが抜けた様子で隣に並んできた。

 意外と豊かな胸元が邪魔になるのか苦しいのかは不明だが、上衣のファスナーを鳩尾の辺りまで下ろすというレナの着こなしに防具の意味あんのか……と流れと全く関係無いことを思いつつも、そっちの方面から思考を離して、珍しくもしおらしさを見せる少女に集中する。

 

 

「……何の事だか判らんが、レナがそう思うのならそうかもしれないな」

「いーのッ! 素直にお礼言ってるんだから、あんたも素直に受け取りなさいよね!」

 

 

 ちょっとばかりトボけて見ると、直ぐに何時もの反応が返ってくるあたり、しおらしいのが素では無い事が判る。

 まあ、軽く「しおらしさ」という味付けをなされたレナも嫌いじゃないが、いつも活発で気力に溢れている彼女のほうが俺としちゃあレナらしいと思うので、からかいを入れる合図とばかりに片目を瞑り、若干皮肉気に口元を歪めながら処置無しとばかりに片手を振った。

 

 

「判った判った。まったく……妙にしおらしくするから、どこの御令嬢と入れ替わったのかと思ったぜ」

「つーん! 似合わなくて悪かったわね!」

「自分で「つーん」とか言うな……でもまあ、今のほうがレナらしくて良いと思うぞ」

 

 

 しおらしさでグラップラーなんぞと戦えるか! ガオーーン! てな感じでな。

 (おど)けた調子で、ベイブリッジでの雄姿(レナ)を再現するかのように振舞うと、レナも顔を真っ赤にしながら拳を振り上げる。

 

 

「ちょっと! そこまでじゃ無かったわよ! 勝手に私を捏造するな!」

「いや、むしろ抑え気味にしてコレですが何か? あの時のレナ様は誰よりも雄々しく、そして男らしかった!」

「……レナ様いうな! って、ちょっと! 男らしいってナニよ!?」

 

 

 俺の軽口に「私は十分に女らしいですぅ!」と、またも何処からか取り出したハリセンを手に追いかけてくるレナを尻目に、「この世紀の大悪党ブレード・トゥース様も世紀末覇王レナ様には敵うめェ!」と演劇風にオーバーリアクションしながらハトバの中を逃げまわる。

 怒ったフリをしながら追いかけてくるレナが、声にならないほどの小ささで再び「ありがと……」と呟いたのを、ケダモノ因子(ブレード・トゥース)の補正で無駄に高性能な俺の耳が拾ったが、当然のように俺は聞こえなかった事にした。

 

 やはりこれぐらいの軽い関係が俺達らしいと笑いつつ俺達はハトバの町を騒がせる。

 この日は、こうして何もせぬままに暮れていくのであった。

 

 

 

 




【NEW】
・微妙に加筆してみた。
・金蟻という砂金製造バイオモンスターが存在するのに何故かGOLDの価値は暴落しない(笑)
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