3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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【NEW】
・本人達と周りの認識は往々にして異なるものなのですよ。
・サブクエストなど、地道に回収してますよ……な短い回。


13話 うわさはこわい…

 

 買い物と寸劇?で心機一転した俺達は、資金と経験を稼ぐためにハトバ近郊でモンスター狩りをしたり、ハンターオフィスに届けられる小規模な依頼をこなしたりしながら日々を過ごしていた。

 とはいえ、実際にハトバを拠点としようにも整備された宿泊施設のようなものは無く、寝るにも野営するかクルマで休むか、或いは定期船乗り場の屋内駐車場で寝袋生活するか程度にしかならないので、日が落ちるたびにマドへ戻り、イリットやカル……時にはナイル爺さんも交えて軽い団欒を楽しませてもらったり、確りした屋根とベッドを使わせてもらったりと流れ者にしては行幸極まりない生活を続けさせてもらっている。

 旧時代からの負の遺産である温暖化や酸性雨に加え、<大破壊>によって撒き散らされた様々な汚染物質や生物兵器の脅威がある荒野で、水や食事に苦労しながら野営をせずに済むあたり、本当にイリットさん御一家には頭が上がらない。

 さて、これはそんな或る日の出来事である。

 

 

「アズサまで隊商を護衛して欲しいという依頼が来ていたが?」

「うーん、まあ良いんじゃないの? そろそろアズサまで行こうと思っていたんだし、ついでのようなものよね」

 

 

 朝、既に恒例となっているオフィスの依頼チェックで、新規依頼が張り出されていた事をレナに教える。内容は、現在ハトバにいるトレーダーの隊商をアズサまで護衛するという、ありきたりなものだったが、ハトバから足を伸ばせる範囲での狩りでは、既に満足な成長も望めなくなっていた事もあり、アズサ以北に進出する序でに依頼を引き受ける事に決めたようだった。

 

 

「アズサに行くのは構わんが、新しい狩場の選定や装備拡充を考えるんだったら定期船でデルタ・リオに渡るのも良いんじゃないか? 少し待てばイスラポルト行きの船も来るだろうし」

「ん~、それも考えたんだけど……まだここいらの賞金首(WANTED)も残しちゃってるし、一度マリアの故郷に顔を出しておきたいから」

「……そうか」

 

 

 凄腕と評判だったレナの育ての親……主人公(レナ)を庇ってテッド・ブロイラーに黒コゲにされてしまった女戦士(マリア)の故郷……それならば、アズサに寄るというのは至極当然の選択だろう。

 

 納得して一つ頷き、出立の前に相棒の腹も満たすべく、満たんサービスのガソリンスタンドへ。

 以前の相棒のように、ディ○・レヴの劣化品かと突っ込まんばかりの永久機関(フェノミナン)を搭載している訳でもなし、かといって車載用サイズのくせにモノポールか太陽炉の亜種なのかと首を傾げざるを得ない超機関(メテオドライブ)であるはずもなし……所詮は、店売り(ハトバ原産)チヨノフ(ガソリンエンジン)が現在の相棒の心臓である以上、燃料を食わせてやらなければ荒野のド真ん中で餓死(エンスト)しかねないのだから。

 

 ああ、金が飛ぶ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、まさかあの有名な“荒野の夫婦(めおと)ハンター”はんがたに護衛を受けてもらえるとは、ほんに光栄ですわぁ」

「は?」

「へ?」

 

 

 依頼人である、リコと名乗る妙齢の女性トレーダーの言葉に、思わず間抜けな声を洩らす。

 あれから、ハトバの酒場横で三人組の女性トレーダー達と合流したのはいいのだが、依頼を受けたハンターとして名乗った所、この妙な通称が沸いて出た訳だから当然のことだろう。

 

 

「……な、なんだ? その微妙な通称は?」

「そ、そうよ! だいたい私とジンは、まだ(・・)そーいう関係じゃ……」

「はあ、存じまへんか? 近頃、ウチらのようなトレーダーでも結構有名になってん。滅法強くて別嬪はんな女ハンター(エルニニョの救世主)とグラップラーに血の華咲かせまくった炎みたいな赤髪の男ハンター(赤い死神)が二人旅で世直ししてはるって……あんさんら見てはっても、違和感おまへんかったさかい、ウチもてっきりそないに思ってたんよ」

 

 

 今更気にした事も無かったが改めて聞くと、中二病を極めきった通称だ。“エルニニョの救世主”に“赤い死神”って……特に俺、凄く死亡フラグ臭のする通称なんですが……

 いや、それよりも誰だ! よりにもよって“荒野の夫婦ハンター”なんて異名を吹聴しやがった馬鹿は!?

 

 ……そのせいかは知りませんが、何故か背中に突き立つ視線でゾクゾクとさせられてしまうんですが!

 

 

「ほほー、まだ……どすかぁ」

「へぇ……まだ、いいやはったねぇ」

「…………」

「レナはん、意外に奥ゆかしい人どすなぁ」

「だーーッ! ちがっ、違うの! これは、そのぉ、そう! 言葉の綾ッ!?」

 

 

 言葉の綾と言える程の洒落た言い回しなどしていなかったと思うが、メグ、ミサ、リコの女トレーダー三人衆にキャイキャイと囲まれている所に「オレ、外道・クウキヨマナイ……コンゴトモヨロシク」と救出に行くのもアレなのだが、ここは敢えて(・・・)空気読まない(KY行為)を実行してみようと思う。

 

 

「おーい。そろそろ出るから、ガールズトークはその辺で切り上げてくれ!」

「(チッ……)ま、仕方ありまへんなぁ……ほな、アズサまで宜しゅう頼んますえ?」

「了解だ。まあ、大船に乗った気分でいてくれ。レナ、先導は任せる」

「はいはい。じゃ、後方警戒は任せるからお願いね。ジン(た、助かったわ……)」

 

 

 軽くタッチを交わして、それぞれのポジションへ。

 道中で、当たり前のように襲撃をかけてくるモンスターたちを軽く蹴散らしながら、俺達は全くの損害すらなくアズサへと到着したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに、俺が“空気読まない行為”だと思っていた行動が、周りからはさり気なく相方を護っているように見られ、勘違い(夫婦ハンター説)が益々酷くなってしまったのは完全に誤算だったりする。

 ……この、何処へぶつければ良いのか判らない感情は、とりあえず此の先の賞金首どもに叩きつける事にしよう。うん、そうしよう。

 

 

 




・レナとジンが実際にそういう関係になったのを想像して「美女と野獣」を思い出した作者は脳がダメかもしれません。
・またもや短くて済まぬ。

(2012/07/22 22:38)
・本日はここまでで。ふぃ……けっこう大変です。少しずつの再掲載ですが、気長にお待ち頂けると助かります。
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