3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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こういう展開になると微妙に文章量が増える傾向にある作者です。

・そう簡単にデルタ・リオに行けると思うなよ? by作者



15話 おめざめのじかんです

 

「ハトバから船に乗ってデルタ・リオに着いた~♪」

「あの酔っ払いのヘタクソな歌……そんなに気に入ったの?」

「いや、気に入った訳でも無いが、こう何となく?」

 

 

 海を渡る潮風……と言っても、湖なので厳密には潮風では無さそうだが、ともあれ汚染されているとはいえ、船上で感じる水の気配と風には心踊らされるものがある。

 適当鼻歌の内容の如く、ハトバから定期船に乗った俺とレナは、客室ではなく甲板でのんびりと船旅を楽しんでいた。

 

 

「デルタ・リオまでは、あと30分ぐらい掛かるそうよ」

「航路の3/4は消化したってことか……陸地沿いの移動とはいえ、汽船で2時間とは思ったより広いんだな」

「まー、私らも含めて、この辺の人は海って呼んでるぐらいだしね」

 

 

 俺のコメントに苦笑を浮かべながら答えるレナだったが、次の瞬間に響いてきた艦載機銃の騒音に顔をしかめる。

 

 

「……船旅と言っても普通にモンスターが出るのがウザいわね」

「船のほうで勝手に追い払ってくれるだけマシだろう」

 

 

 銃座の18mmバルカンや電磁放射機銃(イナズマシュート)が、思い出したかのように襲ってくる奇怪なマンボウ(ギョライギョ)や、死んでからもサーフィンに執着しすぎたあまりに、何がどう反転したのか光線銃(レイガン)片手に海賊行為に(いそ)しむようになった活動死体(ゾンビサーファー)を蹴散らす。

 輸送船の防衛網をモンスターの攻勢が突破しそうに無いのを横目で確認し、任せておいても大丈夫そうだという事を確信すると、船旅の雰囲気が台無しとばかりに憤慨するレナを軽く宥める。

 まあ、雰囲気が台無しだという意見には納得できる部分も多々あるが、こんなご時勢(<大破壊>後の世界)に優雅なクルーズなんて夢のまた夢としか言いようが無いのだから仕方あるまいに。

 それに、いずれネメシス号を駆るようになったらモンスターの相手や船舶管理、自動防衛装置の云々も全て自分でやらないといけなくなるのだから、多少の砲火による騒音などスルーしてもらいたい。

 

 

「でもねぇ……自分でヤってるならいいけど、思いもしない所でバリバリやられると、こう心臓に悪いっていうか……ビクッてしない?」

 

 

 ビクッと……などと、大仰なリアクションで表現するレナに、何故だかホンワカとした気分にさせられる。

 そんな俺達の様子など知らぬと奮闘を続ける防衛網の砲声をBGMに、定期船はマイペースに水上を行く──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──んだったら、良かったんだが……

 

 

「うん? あそこに小島なんてあったか?」

「……デルタ・リオの孤島群じゃ?」

 

 

 船長と船員が双眼鏡を手にしながら話す。

 それに妙に嫌な予感を感じたのは俺の気のせいだろうか?

 隣にいるレナと視線を交わすと、レナのほうも妙な勘でも働いたのであろうか、釣り目がちの(まなじり)をよりキツめの角度に跳ね上げながら、件の島とやらの方向へ視線を向ける。

 

 

「なーんかヤな予感が」

「奇遇だな……俺もだ」

 

 

 少しずつ大きくなってくる島影。同時に、俺の中で響き渡る警報(予感)もジリジリと大きなものになっていく。

 ジリジリとジリジリと……その島は航路上に割り込む(・・・・)かのように近づいてくる。

 航路上に? 島が?

 

 

「……島が自ら(・・)近づいているのか?」

「ま、まさかッ!?」

 

 

 俺の呟きに反応したのは髭の立派な船長のほうだった。

 サッと顔を青ざめさせると、船員に素早く指示を出していく。指示の内容はもはや言わずもがなか「Hard starboard(面舵いっぱい)」に「Full ahead(全速前進)」……急激な操舵に大きく船体を軋ませながら定期船の針路が変わる。

 こんな時代でも短く2回の汽笛が鳴り響くのは、この定期船の船乗り達の伝統なのか、それとも海の男としての矜持なのか。

 

 

「間に合うか? くそッ、なんでこんな所にグロウィンが……」

 

 

 呟きながら接近しつつある島を睨み据える船長。グロウィンという名称は初めて聞くが、船長の様子からすると賞金首(WANTED)か何かだろう。

 しかし、トータルタートルやU-シャークなら兎も角、グロウィン? 島が動いて襲ってくるとか、何と言う凶悪ひょ○たん島。

 

 

「……くっ、ギリギリか? おい、あんたハンターなんだろ? 済まないが──」

 

 

 船長が俺に何かを頼もうとしたその時、男の野太い悲鳴とレナの悲鳴(悪態?)が背後から上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわーッ!? た、助けてくれえーー!」

「ちょ、この変態触手! 離しなさいよッ!?」

 

 

 近づいてくる島影に注意が向き過ぎていたのが悪かったのか、それとも単純に運というものが無かったのか……どこまでも巨大で長大な触手が船底を潜るかのように伸びて、背後からの奇襲を仕掛けてきた。

 その触手は、決して尋常のものではなく、透明感とゼリーのような質感を持ったもので、つまり触手の主はクラゲか何かのバイオモンスターだという事がハッキリと理解できた。まあその長大さと巨大さといったら、バイオモンスターだという事実を抜きにしても呆れ返るばかりのものであったが。

 

 

Bullshit(くそったれ)!」

 

 

 吐き捨てて、日頃から愛用するSMGグレネードを手に取るが、巨大であるとは言え、自重知らずにぶんぶか振り回される触手相手に精密狙撃で被害無く救出なんて芸当は極めて困難。

 ただでさえ高い火力を持つ武器に、俺の能力補正まで加わっては救助対象もろともに抹殺してしまいかねない。

 ならば、近接武器で根元から触手を切り裂くかと、遥か昔のステイツの若者達が憧れてやまないジェ○イじみた光剣(ライトソード)を準備。いざ、参ると駆け出そうとするや否や、生意気にも触手が海上へと引き上げていくではないか!

 まずい! このまま、遠くまで引き上げられてはレナも船員も、この触手の主に美味しく晩御飯にされてしまうのは間違いない。マユラーの惨劇再びだ。

 

 

「ちぃッ!」

 

 

 舌打ちと共に光剣を投げ捨て(もったいない!)、最速で電磁イレイザー(光学兵器)を格納領域から取り出す(コール)。焦点設定を最小値に絞るとトリガーを引いたままエネルギーパックの消費を度外視して剣のように振るう。

 斬(ザン)、という音すらなく超熱量で焼き斬られた触手が力無く水面に落ちていくのを尻目に、船縁に設置されている救援用の浮輪をレナと船員に向けて放り投げると、他の触手を牽制するために狙撃、狙撃、狙撃!

 きゃあ、と存外に女らしい悲鳴を上げながら水面に叩きつけられたレナが、その隙に投げ込まれた浮輪にしがみついた。

 船員のほうは、流石に水夫とでも言うべきか、見事な泳ぎで輸送船の梯子にたどり着き、そこから船上へと駆け上がるように昇っていくと、上からレナに向かって浮き(・・)が括り付けられた縄を放り投げる。

 

 

「ぷあっ! じ、地獄に仏ェェェ!?」

 

 

 浮輪に助けられ、縄を手繰りながら船に戻ろうとしたのも束の間、旋回と回頭で速力が低下した瞬間を狙い、新たに伸びてきた触手が船を叩き始め、同時にまたもやレナが水中から現れた触手に吊り上げられる。

 よく見ると、それらの触手は浮島の下部から出ているらしく、これらの触手はグロウィンのものだということになる。

 このように無数に触手が伸びてくるとなると、ここで触手だけを叩いてもグロウィンとやらにとっては然したる被害でも無いということか。

 やっかいな奴めと歯噛みしながら、再びレナを拘束する触手を攻撃……しようと思ったら、今度は触手がレナを掴んだままに縮んでゆくではないか! しかも島のほうへ向かって!

 

 

「な、何よそれーーーーー!」

 

 

 ゆっくりと、だが、それなりの速度で島へと引き摺られていく触手の動きに理不尽を全力で嘆くかのような悲鳴を上げるレナが遠ざかっていく。

 

 

「畜生! 使う(・・)しかないかッ!」

 

 

 外套(コート)格納領域(装備袋)へと手早く仕舞いこみ(量子化させ)ながら、勢いをつけて跳躍! 人外の膂力による飛び込みで一気に距離を稼ぐと、身を丸めつつ水中へ。

 船上で無謀極まる俺の行動に船長が「早まるな!」と叫びを上げる。しかし、水中へと姿を消した俺に関わるよりも冷徹に船を守り生き残る事を選んだか、グロウィンから離れようとしていたが、こちらとしては有り難いぐらいだ。

 むしろ定期船が逃げ延びれば、後でクルマをサルベージする必要も無くなる。

 

 暫時、無駄な事を考えながら、俺だけにしか理解できないであろう無形の引き金(トリガー)を水中で引き絞る。

 

 

(……ぐッ、お、おっ、おオオオオオオォォォォッ!)

 

 

 瞬間、まるで炎で焼き焦がされるかのような苦痛に肉体が悲鳴を上げる。遺伝子と同化した悪魔の因子(メタモーフ細胞)が唸りをあげて覚醒し、異音を響かせながら俺の身体を強靭に……凶悪なソレに作り変えていく(生まれ変わらせる)

 猛火の痛苦で飛びそうになる意識を、自分でも馬鹿げていると思うほどの意志力で保つと、死ぬよりも辛いであろう過剰な痛みに耐え切った褒美だとでも言わんばかりに、悪魔の身体が不自然極まりない生体麻薬(メタモルフィン)を分泌し始め、苦痛が快楽へと反転する。

 

 そして僅かに数瞬、燃え立つかのような赤い鬣を持った牙獅子(ブレード・トゥース)が久方ぶりの自由に、歓喜の雄叫びを上げた。

 

 

 




・ジンさん、思わぬ所で初変身。
・レナさん、触手プレイ初体験。

【NEW】
 飯食ってたら、思ってた以上に時間が過ぎ去っていた……
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