3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

16 / 27
・ケダモノさん、美少女を触手から解放する(ぉ
・ケダモノさん、順調に美少女に篭絡される?

【NEW】
・「にじファン」版からサブタイトルが変化しました。


16話 美(少)女と野獣(ケダモノさん)

 

 無事に変身を遂げた俺は、数度ほど身体の状況を確認するように動かす。

 

 あらゆる肉体機能に異常が無い事を確認すると、水を蹴り抜くかのような勢いで足を動かし、水中を魚雷の如く突き進む。

 ブレード・トゥースとなった俺は、完全な生体兵器だ。あのクソ美形(グラトノス)が究極の戦闘生命体なるものを目指していた影響か、筋力・強靭さ・敏捷性を始め、それを維持するスタミナすらも尋常の領域には無く、タフネスと言えば無限に生命力を持っているのではないかと勘違いしそうになるレベルに跳ね上がる。

 おまけにメタモーフ細胞そのものが(何を代価としているかは不明だが)明らかに一個の生物としては過剰極まる猛烈なエネルギーを供給するが故に、普通の生命体が激しい活動を行うのに重要な酸素すらも殆ど必要としないという化物ぶり。

 更には、本来ならメタモーフ細胞と人体細胞の間に発生する拒絶反応によるショック死や、激痛による理性の喪失を抑えるために、自動薬物投与装置(メタモーフ・アクティベータ)が必須とも言える変身者(クラン・ナンバーズ)だが、もはや外付けならぬ、遺伝構造そのものがメタモーフ細胞に適応し、おまけとばかりに拒絶反応による地獄の責め苦にすらある程度の耐性を得てしまうというドMもかくやという領域に達してしまった俺は、怨敵グラトノスと対決する頃には自力で理性を維持したままに<変身>を遂げるような怪物に成り果ててしまっていた。

 

 そして、俺はそんな怪物(ブレード・トゥース)のスペックをフルに生かして、グロウィンに捕獲されたレナを只管(ひたすら)に追いかける。

 

 逃げ続ける触手、追いすがる俺。気付けば浮島(グロウィン)の馬鹿デカイ傘の部分にでも辿り着いたか相対的に水深が浅くなり始め、砂地のようになっている辺りで、爆発させるかのように足元を蹴りつけると、トビウオかと思わせる黒い影となって水上へ。

 慣性のままに、触手へと近づくと五体を上手く捻って、空中で軌道変更を行うという清々しいまでに物理常識をブチ壊す動きで更なる加速。

 すれ違いざまに主力戦車の正面装甲すら切り裂く剛爪の技<ATスラッシュ>で触手を一刀両断すると、グロウィンに散々引き摺られてグッタリとしたレナを両の(かいな)に抱く。

 

 しおしおと力を失った触手を腹立ち紛れに湖へと沈めると、他の触手がいないかを確認しつつ立ち泳ぎで砂浜へと近づいていく。気が付けばいつしか奴の触手はどこにもいなくなっていた……

 

 

「……ジン、なの?」

 

 

 猛獣の化物(ブレード・トゥース)に抱かれるレナが力無く呟く。

 その青い目は、どこか焦点をずらしてしまっているかのように定まらないが、それでも明らかに怪物と判るシルエットの存在を前に、特に脅える事も無く“俺”だと確信してくれている事が何故だか嬉しい。

 

 レナの問いかけに首肯で返すと、メタモーフ細胞の励起を徐々に抑えていく。

 今まで、溢れんばかりに満ち満ちていた力が何処かへと消え去っていき、過剰な力を発揮させた代償とばかりに人間へと戻った肉体が疲労を訴え始めたのを無視しながらレナを砂浜へと降ろし、俺もその隣に座り込む。

 

 

「……怖くないのか?」

 

 

 こんな問いが口から出るあたり、本当に怖がっているのが俺自身であるという事がまる判りなのが、自分でも情けないのだが如何ともしがたいが、それでも俺はこれを聞かずにはいられない。

 

 以前の地(ジャッジメントバレー)でも、俺の<変身>には色々と悶着があった。

 そりゃあそうだろう……獣化した俺は、向こうではテッド・ブロイラー級の賞金首(WANTED)として恐れられていたし、そうでなくとも人間が獣の化物に変化するという光景を見て恐怖しない者がどれだけいるか。

 いっそファンタジーな世界で、人間以外の種族がいるなら良かっただろう。一番最初の俺がいた時代の日本人(オタッキー)なら、逆にスゲースゲーと能天気に持て囃されたかもしれない。

 しかし、ファンタジーではなく人間単一支配の地球……しかも<大破壊>後の世界で、俺のような存在がいるとすれば、それは確実にバイオモンスターの括りに見られてもおかしくない。

 事実として、冷血党(クラン)のナンバーズという改造人間の実例がある地域ですら<変身>を知られた時の反応には少なからず恐怖というスパイスと係わり合いになりたくないという倦厭(けんえん)が少なからず混じっていた。

 とある事情から、プエルト・モリの酒場で<変身>してしまった時など、冷血党(クラン)の人間のみならず、酒場の誰しもが悲鳴をあげながら脱兎の如く逃げ去ってしまったほどだ。

 それでも俺がジャッジメントバレーで普通に行動できていたのは、元凶への復讐のためにハンターとして多大な成果を挙げたからであり、他者の目が向く所での<変身>を出来る限り避けてきたからだろう。

 次々とクラン・ナンバーズを屠り続け、冷血党(クラン)の天敵としての異名が広まってきてからは、オフィス関連の人間やトレーダーなどの行商人、流れ者(同業者)などに受け入れられていたものの、そうでなければ何れは異端者として排斥されていたか、悪ければ再び賞金首として追われる羽目になっていたかもしれない。

 そういった意味では、ジャガンナートからの転送事故で俺がジャッジメントバレーから姿を消したという事実は、向こうの住人達にとって「嵐は過ぎ去ったのだ」と実感させる明るい(・・・)ニュースだったに違いない。

 それなりに名を上げたハンターが3年間も足取りすら掴めぬ音信不通となったのだ。当然ながらオフィスによって死亡認定されるし、確実に俺がこの世にいないものと踏んだからこそ、荒神を祭るかの如くに英雄扱いしたのだろう。

 ぶっちゃければ「死んだ英雄だけが良い英雄」というやつだ。

 こう考えれば、オフィスの連中は悪魔の組織(クラン・コールドブラッド)厄介者(ブレード・トゥース)が見事に潰しあってくれて蝶☆サイコーな気分だったんだろうな。

 

 むう……何となく釈然としないというか腹が立つが、何れ向こうに渡れるようになったら、せめてアシッドキャニオンで入手できそうにない戦車(クルマ)だけは回収させてもらおう。素直に返してくれるんだったら、俺も死んだものとしてジャッジメントバレーに近づかないとオフィスで契約してもいいぐらいだ。今生の生まれ故郷ではあるものの、別に大した執着も無いしな。

 

 

 ──閑話休題(それはさておき)

 

 

 レナの返答を待つ間に、つい長々と向こうの記憶に浸ってしまったが、彼女が静かに口を開いたので意識をこちらに戻す。

 

 

「怖くない、か……まあ驚きはあったけど、怖さは無かったわね。何ていうか……目というか気配というか、説明しにくいけど直ぐにジンだって判ったし」

「いや、俺としてはああいった(・・・・・)姿に変わるような人間に忌避感は無いのかと聞きたかったんだが……」

「ん~、私は別に気にならないかな。それにグラップラーの怪人とかと比べれば、格好良いぐらいじゃない? ま、まあ、あんたの事を知らなければ恐怖感とか嫌悪感とか少しはあったかもしれないけど」

 

 

 ニヘヘ、と面映(おもはゆ)そうにするレナに、想定外の回答をする奴だという理性と「あんたの事を知らなければ」という逆説的に言えば、俺を知っているからこそだという台詞に熱いものを込み上げさせる感情が妙な化学反応でも起こしたか、可笑しさすら感じてきて自然と笑みが洩れる。

 

 

「……まさかそう来るとは」

 

 

 いや本当に、そう来るとは……としか言いようが無い。

 短い付き合いだが、レナは面と向かって嘘を吐けないタイプだ。こういっちゃ何だが、真顔で嘘や冗句を垂れ流す事のできる俺や、ブラックユーモアに人生を賭けるイギリス紳士のような腹黒とは違う。

 その彼女が、真正面から受け入れてくれるどころか、むしろ「格好良いぐらい」だと? ははは。向こうでは恐怖の代名詞たるブレード・トゥースも形無しだ。

 

 ククッと抑えるかのように笑いの衝動と戦っていると、グロウィンによる強制ジェットスキーに疲れも限界に達したか、レナが肩の辺りにコテンと重みを預けてくる。

 そんな彼女を支えながら、俺も<変身>による疲労を癒すために暫しの休息を取ることにする。

 どうも此方に来てから一人では無くなったせいか、妙な部分で油断の多くなった精神を引き締めなおしつつ、孤独に荒野で夜を過ごした時のように超感覚による(ブレード・トゥースの)警戒領域(感知結界)を四方に広げる。

 

 周辺の危険反応や敵意を放つ存在が近くに居ないことを一通り確認すると、静かに寝息を立てるレナを起こさないように心掛けつつ、ゆっくりと瞼を落とした。

 

 

 




そして、二人はグロウィン島で慎ましくも幸せな一生を送ったという……
                        ──未完(打ち切りEND)


……嘘です(笑)

それにしても不思議だ……恋愛展開っぽい予定は無かったのに。いやまて、この程度、まだフラグじゃないよね? よね?

(2012/01/09)
・前半部、変身中に理性を保っている理由が抜けていたので追記。

(2012/07/23)
・本日の更新はここまで。時間が空かない限りは、やはり1日3話ぐらいの作業が限界です。
・長時間のPC作業は眼にクル……(==;
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。