・ケダモノさん、順調に美少女に篭絡される?
【NEW】
・「にじファン」版からサブタイトルが変化しました。
無事に変身を遂げた俺は、数度ほど身体の状況を確認するように動かす。
あらゆる肉体機能に異常が無い事を確認すると、水を蹴り抜くかのような勢いで足を動かし、水中を魚雷の如く突き進む。
ブレード・トゥースとなった俺は、完全な生体兵器だ。あの
おまけにメタモーフ細胞そのものが(何を代価としているかは不明だが)明らかに一個の生物としては過剰極まる猛烈なエネルギーを供給するが故に、普通の生命体が激しい活動を行うのに重要な酸素すらも殆ど必要としないという化物ぶり。
更には、本来ならメタモーフ細胞と人体細胞の間に発生する拒絶反応によるショック死や、激痛による理性の喪失を抑えるために、
そして、俺は
逃げ続ける触手、追いすがる俺。気付けば
慣性のままに、触手へと近づくと五体を上手く捻って、空中で軌道変更を行うという清々しいまでに物理常識をブチ壊す動きで更なる加速。
すれ違いざまに主力戦車の正面装甲すら切り裂く剛爪の技<ATスラッシュ>で触手を一刀両断すると、グロウィンに散々引き摺られてグッタリとしたレナを両の
しおしおと力を失った触手を腹立ち紛れに湖へと沈めると、他の触手がいないかを確認しつつ立ち泳ぎで砂浜へと近づいていく。気が付けばいつしか奴の触手はどこにもいなくなっていた……
「……ジン、なの?」
その青い目は、どこか焦点をずらしてしまっているかのように定まらないが、それでも明らかに怪物と判るシルエットの存在を前に、特に脅える事も無く“俺”だと確信してくれている事が何故だか嬉しい。
レナの問いかけに首肯で返すと、メタモーフ細胞の励起を徐々に抑えていく。
今まで、溢れんばかりに満ち満ちていた力が何処かへと消え去っていき、過剰な力を発揮させた代償とばかりに人間へと戻った肉体が疲労を訴え始めたのを無視しながらレナを砂浜へと降ろし、俺もその隣に座り込む。
「……怖くないのか?」
こんな問いが口から出るあたり、本当に怖がっているのが俺自身であるという事がまる判りなのが、自分でも情けないのだが如何ともしがたいが、それでも俺はこれを聞かずにはいられない。
そりゃあそうだろう……獣化した俺は、向こうではテッド・ブロイラー級の
いっそファンタジーな世界で、人間以外の種族がいるなら良かっただろう。一番最初の俺がいた時代の
しかし、ファンタジーではなく人間単一支配の地球……しかも<大破壊>後の世界で、俺のような存在がいるとすれば、それは確実にバイオモンスターの括りに見られてもおかしくない。
事実として、
とある事情から、プエルト・モリの酒場で<変身>してしまった時など、
それでも俺がジャッジメントバレーで普通に行動できていたのは、元凶への復讐のためにハンターとして多大な成果を挙げたからであり、他者の目が向く所での<変身>を出来る限り避けてきたからだろう。
次々とクラン・ナンバーズを屠り続け、
そういった意味では、ジャガンナートからの転送事故で俺がジャッジメントバレーから姿を消したという事実は、向こうの住人達にとって「嵐は過ぎ去ったのだ」と実感させる
それなりに名を上げたハンターが3年間も足取りすら掴めぬ音信不通となったのだ。当然ながらオフィスによって死亡認定されるし、確実に俺がこの世にいないものと踏んだからこそ、荒神を祭るかの如くに英雄扱いしたのだろう。
ぶっちゃければ「死んだ英雄だけが良い英雄」というやつだ。
こう考えれば、オフィスの連中は
むう……何となく釈然としないというか腹が立つが、何れ向こうに渡れるようになったら、せめてアシッドキャニオンで入手できそうにない
──
レナの返答を待つ間に、つい長々と向こうの記憶に浸ってしまったが、彼女が静かに口を開いたので意識をこちらに戻す。
「怖くない、か……まあ驚きはあったけど、怖さは無かったわね。何ていうか……目というか気配というか、説明しにくいけど直ぐにジンだって判ったし」
「いや、俺としては
「ん~、私は別に気にならないかな。それにグラップラーの怪人とかと比べれば、格好良いぐらいじゃない? ま、まあ、あんたの事を知らなければ恐怖感とか嫌悪感とか少しはあったかもしれないけど」
ニヘヘ、と
「……まさかそう来るとは」
いや本当に、そう来るとは……としか言いようが無い。
短い付き合いだが、レナは面と向かって嘘を吐けないタイプだ。こういっちゃ何だが、真顔で嘘や冗句を垂れ流す事のできる俺や、ブラックユーモアに人生を賭けるイギリス紳士のような腹黒とは違う。
その彼女が、真正面から受け入れてくれるどころか、むしろ「格好良いぐらい」だと? ははは。向こうでは恐怖の代名詞たるブレード・トゥースも形無しだ。
ククッと抑えるかのように笑いの衝動と戦っていると、グロウィンによる強制ジェットスキーに疲れも限界に達したか、レナが肩の辺りにコテンと重みを預けてくる。
そんな彼女を支えながら、俺も<変身>による疲労を癒すために暫しの休息を取ることにする。
どうも此方に来てから一人では無くなったせいか、妙な部分で油断の多くなった精神を引き締めなおしつつ、孤独に荒野で夜を過ごした時のように
周辺の危険反応や敵意を放つ存在が近くに居ないことを一通り確認すると、静かに寝息を立てるレナを起こさないように心掛けつつ、ゆっくりと瞼を落とした。
そして、二人はグロウィン島で慎ましくも幸せな一生を送ったという……
──未完(打ち切りEND)
……嘘です(笑)
それにしても不思議だ……恋愛展開っぽい予定は無かったのに。いやまて、この程度、まだフラグじゃないよね? よね?
(2012/01/09)
・前半部、変身中に理性を保っている理由が抜けていたので追記。
(2012/07/23)
・本日の更新はここまで。時間が空かない限りは、やはり1日3話ぐらいの作業が限界です。
・長時間のPC作業は眼にクル……(==;