3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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18話 みちとのそうぐう。そしてどうくつへ…

 

 森を探索し始めてから四半刻(30分)程度。未だ雨足は弱まる気配を見せず、薄白く煙る視界のままに俺とレナは林道を歩いていた。

 スコールのような叩きつける雨でなく、少し目の粗い霧吹きから撒かれるような雨であるため、直接的に探索に支障をきたすような状況ではないが、充満した湿気による不快感は例えようのないものがある。

 外套(コート)のフード部分が狙ったかのように焼失している俺とレナは、森に入る前からCVCヘルメットとiゴーグルで髪の毛が濡れて重さを増したり、雨粒が目に入ったりしないようにしているが、この環境のせいか目の前(グラス)が曇る曇る……

 

 

「ウザい。iゴーグルだけでも外そうかしら……」

「そうだな……フッ素コーティング剤でも用意してればよかったんだが」

 

 

 (かえ)(がえ)すも大破壊前の科学技術が浸透しきっていた時代が懐かしく、そして羨ましい。

 無論、探せばどこかにこの手のものも埋もれているんだろうが、どちらにしろ今現在使用できないのならば意味はなく、愚痴以外の何者でもないのだが。

 

 

「ん……あれは洞穴か?」

 

 

 互いに不快な気分を苦笑として洩らしながら歩いていると、林道の外れに地下へと緩やかに傾斜している洞窟の入口が見えてくる。

 一応、この道の前にも分岐路はあったが、さて……どうするか?

 

 

「ハンディ・サーチライトがあったな。先に調べてみるか?」

「そーね。雨避けのついでに調べたほうがいいかも。それに、もしかしたら屋根付きの拠点にできるかもしれないし」

「宿代わりにって訳か。だがその前に……またも無粋なお客さんのようだぞ」

 

 

 何故か害意や殺意は無いが、じっとりと()めつける透明な視線の数々に警戒しつつ銃を構える。この手の感覚といえば、ビデオバットや監視モニター系のそれに近いが、それらの偵察体と比べると妙に生々しい気配だ。

 

 

「……やるの?」

「判らん……向こうから手出しするような気配は無いんだが……」

 

 

 奇妙な感覚の発信源を探すため、天を覆う黒雲と生い茂った木々により日中にも関わらず薄暗い様相を見せるグロウィン島の森林に視線を走らせる。すると、程無く何処からか蝙蝠が羽ばたくかのような羽音が近づいてきた。

 

 

「えぇぇ、何あれ?」

 

 

 珍妙なものを見たとばかりに何と感想を言えばいいのやらといった表情を浮かべるレナ。だが、その気持ちも納得できよう近づいてきた存在は、実に奇形染みた姿をしていた。

 オタマジャクシと奇形魚と蝙蝠を足して2で割ったかのような外見に、腹部から顔?にあたる部分までは真っ白で、本体から生えている翼や鶏冠の部分は目に痛いほどの青。何より、そいつには生物として必要な部分であろう器官が根本的に欠如しているように見えたが、それを補うかのように巨大な一つ目だけがギョロギョロと動いて俺達をジッと見つめていた。

 

 

「……偵察? いや、観察しているのか?」

 

 

 バサバサと周囲を飛び回りながらも、何もしてくる様子の無いそいつらと暫らく睨めっこのように対峙していると、飽きたのか害が無いと判断したのか、奇妙な監視者は一斉に何処かへと飛び去っていった。

 

 

「何だったんだ?」

「さあ。害が無いなら今の所は考えなくてもいいんじゃない?」

 

 

 互いに狐に抓まれたかのような顔を見合わせ、同時に溜息を吐く。

 気を取り直すかのように武器を収めながら、俺とレナは目の前の洞穴を調査する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこりゃ」

「明るい……」

 

 

 洞穴の中に踏み込んで異口同音に同じ事を言ってしまったのも仕方の無いことだろう。暗くジメジメとしているであろう天然洞に入ったと思ったがどっこい。洞穴の天井に光ファイバーか発光プレートでも埋め込んであるのか、煌々と人工の明かりに照らされた内部が見えてきたのだから、俺達の気持ちも理解してもらえると思う。

 

 

「天然洞窟かと思ったら、こりゃかなり人の手が入っているな……もしや大破壊前の遺物か何かがグロウィンにでもなったのか……」

「それよりも……感じる? 拠点に使おうにも、ここも巣窟のようね。しかも外の奴らより強いのがウロウロしてるわ」

「参ったね。まさか、どこかにモンスターの繁殖地なり供給装置なりでもあるのかねぇ……ま、どちらにしろ邪魔者は片付けるしかない訳だが」

 

 

 言うや否や、物陰から姿を見せる巨象の如きサイズの砲亀……スローウォーカーが2匹に、1匹1匹が30cmほどの大きさをもった鉄蟻(メタルイーター)、金蟻(ゴールドアント)、宝飾蟻(プラチナアント)の群れ……おまけに、ここに来てからお馴染みの面子となったDNAブロブが数匹に、口の変わりにレーザーライフルを装着した全長数メートルはありそうなサイバネ蚯蚓(レーザーミミズ)まで居やがる。

 ミミズやブロブは兎も角、何と言う経験値と金の塊どもか。これは狩るしかあるまい。

 

 

「やれやれ。この様子じゃ安心して洞窟生活なんて無理そうだな」

 

 

 レナにとってはキツい戦闘だろうが、こいつらを片付ければ実戦経験としても経験値(EXP)としても中々のものが得られるだろう。

 俺はレナに攻撃が集中しないように軽く敵を牽制しながら、まずは砲撃と逃げ足が厄介なスローウォーカーから狩ることにした。

 こいつは確かに反応速度は鈍い。だが、生半可な大砲やミサイルなどでは凹みすらしない甲羅と、柔軟性と靭性に優れた皮膚は中途半端なハンターの攻撃など物ともしない。

 そのくせ、スローウォーカーの名を否定するかのように直線移動(逃げ足)の速い厄介者だ。モンスターにしては臆病な性格をしているのか、敵と見るや口の中に仕込まれた極めて貫徹力の高い大砲をブッ放すと、一目散に逃走していく。その速度といえば、直線に限定するのならレーシングマシンに匹敵するもので、その上逃げ切れぬと感じれば、正に亀よろしく甲羅に退避してしまう。

 しかも、引っ込んだ後にはどのような原理か甲羅の強度が馬鹿げたレベルに到達し、核シェルターどころじゃない防御力を発揮するため、実質的に打倒不能となってしまう。

 はなはだゲーム的な表現を赦してもらえるのならば、物理属性を含めた全ての耐性相性が「×」となり、しかも防御力自体が通常の4倍になる……と言えば、その耐久力の理不尽さを理解してもらえると思う。

 こいつばかりは小細工や罠が通用しない。倒すには、奴が身の危険を感じるよりも早く、奴の皮膚装甲や甲羅を貫くような砲撃を叩き込むか──

 

 

「……その首、貰った!」

 

 

 ──奴の死角から、比較的に弱い首を断つか、高い破壊力を持った銃器で眼球を通し脳天を撃ち砕くかだ。

 

 すり抜けざまに、主力戦車の前面装甲すらも切り裂く斬車刀で一閃。

 鈍い脳味噌が自らの首を落とされた事すら気付かぬうちに、先程の言葉を実践するかのように、もう一匹の眼部にワンハンドガリルを向けて撃発!撃発!(ダブルタップ)

 極めて高い必殺率を誇るガリルの徹甲炸裂弾(.50AE-FMJ/EX)に<力>が注ぎ込まれたことで、奴に比べれば蚊のような質量しか持たないはずの鉛弾は見事に強靭な頭蓋ごと奴の脳味噌をこの世の果てまでオサラバさせた。

 

 

「二匹撃破」

 

 

 サメのように獰猛に笑いながら次の獲物を探すその刹那……俺の背後では既に二回の冷気放射により、DNAブロブとレーザーミミズの入り混じった群れをレナが汚れたカキ氷へと転職させているのを察知し、次なる獲物を蟻の群れと定める。

 殺傷力は低いながらも、その顎と蟻酸は中々に侮れない連中だ。酸は対策を忘れれば大変な事になってしまうし、頑丈というレベルを超えている顎牙は戦車の装甲だろうが人間の肉だろうが均等に咀嚼し、噛み砕いてしまう。この蟻どもが10倍ぐらいのサイズに進化していようものなら、マジで戦車級BETAといったトンデモ生物だ。

 そんな連中が無数に襲ってくるような事態になれば、生身で戦車級BETAにたかられる戦術機の気分を味あわされてしまうであろうが、幸いにも今の数は数匹に満たない。

 

 

「ならば、一掃するのみ!」

 

 

 グロウィン島に遭難という事態に陥り、自重という名の枷を半分ほど捨て去った俺は、こうして次々とモンスターを狩り倒していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに「どっちがモンスターだか判りやしない……」というレナの煤けた呟きに少しだけケダモノハートが傷ついたのは秘密だ。

 

 

 




・牙獅子も広義で含めればモンスターだよねw
・レナさん、順調にレベルアップ中。

(2012/07/24)
 ちと所用で出かけるので、ここまで。
 帰ってきて時間と気力が残っていれば、また投稿します。
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