3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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・主人公(笑)揃い踏み


02話 ここはどこですか?

「……ん? ここは、どこだ? ワラに戻った……訳では無さそうだな」

 

 

 眠りから覚める前のような浮上感と共に、転送後の見当識喪失から復帰した俺は、自分でも判るであろう程に怪訝な表情だったに違いない。

 沈み逝くジャガンナートから転送装置で無事に脱出できたはよいものの、周囲を見てみれば何時ものガレージ地下のコンクリ部屋では無く、床にはハイ・セラミクス製と思われるタイルが敷かれており、壁も鉄板による補強。送電パイプもワラのそれと比べると劣化が薄いように思える。

 近くに置かれている管理端末も見慣れた神話公司製のものではなくヴラド製の高級品。何よりも、その端末の前には俺のほうを見て、驚きの表情を浮かべている金髪青眼の少女がいた。

 

 

「あ、あんた誰!?」

「オーケー、落ち着け金髪少女。ひょっとして転送は初めてかい?」

 

 

 まだ慌てる時間じゃない……とばかりにニヤニヤしつつ言ってみる。

 

 黒いレザービキニと、隠す気があるのかと疑問を感じるレベルのこれまた黒いレザースカート。トドメとばかりに絶対領域を演出する膝上までの黒いサイハイソックス。

 無法の荒野を往くような女性としては明らかに問題であろう、露出過剰な服装を、臙脂(えんじ)色をしたハンター御用達の外套(コート)で隠している。

 年季の入ったそれは随分と長らく愛用しているのだろう。所々が破れ、あるいは焦げ付き、片袖なぞ肩口から無くなってしまっているのに、みすぼらしい印象は無く、むしろ歴戦の風格すらあった。

 

 肉体的には、スレンダーながらも出るべき所は程よく出ており、出て欲しくない部分は薄らとついた筋肉によって余分無く引き締めているという、妙齢の女性が見たら嫉妬に駆られそうな若さに溢れる肢体。

 腕は細身ながらも弱さを感じさせず、すらりと伸びた脚はまるでカモシカの如くという比喩表現がよく似合う。

 

 まるで太陽のような生命力に満ちた勝気そうな美少女(←重要)が、あんな衣装を着こなしている……そうなると、つまり、まあ、何だ。若さ溢れる肉体を持つがゆえに、視姦(ニヤニヤ)してしまいたくなる気分も判って貰えると思う。

 

 

「……何だろう。凄く目付きが気に入らないんだけど?」

「そいつは失礼。だが生憎これは生まれつきでね。それは兎も角、俺はジン。恐らく転送事故でここに来た。悪いがここはどこの町なのか教えてくれないか?」

「そういう意味じゃないんだけど……まあいいわ。私はレナ。それで、ここはエルニニョの地下よ。あんたは私が転送装置の電源を入れた途端に出てきたの」

 

 

 なるほど。そりゃあ驚きもするわな。

 電源を入れたと思ったら急に作動して、顔に刺青(?)した男が出現などしたら普通は驚く。むしろ悲鳴を上げなかっただけ凄いかも……

 

 

「……って、エルニニョ!?」

「そう。エルニニョ」

 

 

 エルニニョって……俺の記憶が確かなら、いわゆる二作目で出てきた場所だよな? つまり<大破壊>後な地名では、アシッドキャニオン。

 過去、地球救済プロジェクトのために日本に移住したバイアス・ヴラドが日本のとある山間地を買い上げ、計画研究都市化やら別荘建築やら自然エネルギー開発やら石油生成(・・)プラントやら、しまいにゃとても表沙汰には出来ないような要塞じみた研究所(通称:バイアスシティ)の設立とか当時でも騒ぎになるようなレベルの事業をアレコレやらかした場所、とクソ美形(グラトノス)に洗脳されていた頃に聞いた記憶がある。

 一応、文明が維持されていた時代からの転生者である俺は、そこそこにインテリだったせいで、アレに気に入られ、冷血党(コールド・ブラッド)時代に、吐き気がする事極まりない研究の助手として扱われたり<大破壊>前の科学技術や歴史を学ぶ機会に恵まれた訳だが、それでもアレに感謝の念など抱きたくも無い。

 

 まあ、俺の過去など、この際どうでもいい。

 

 そして、諸君も今の話で気がついたと思うのだが……そう、ここって日本なんだよネ。んでもって、今まで俺が生きてきた今生の故国はユナイテッド・ステイツ……うん、日本人的に判り易く言えばアメリカなんだ。

 わお、大陸を跨いで転送事故とかありえなーい!

 

 内心で激しくテンパっているが、微妙に鉄面皮を維持する我が面貌。とりあえず少女……いや、レナに礼を言いつつ端末を調べる。

 

 

「で、何してんの?」

「……転送履歴を調べてるんだよ。普通は(・・・)転送事故が起こっても履歴を辿ったり改めて目標場所のアドレスを入力する事で戻れるからな」

「へぇー。そーなんだ」

「そーなのだ。残念な事に俺らが使うような転送装置では、キャパシタ性能の都合もあって行ける距離が制限されているけどね……ちなみに<大破壊>前の首都近郊には国際転送ターミナルって馬鹿デカイ転送施設があったらしくて、そこの転送装置なら海を越えて別の大陸とかにも一瞬で行けたらしいよ。まあ、使うためには厳しい審査とアホみたいな高額料金を取られたそうだけどな」

「ふーん」

「ぶっちゃけ、信じられんイレギュラーで大陸を越えたようだ……この転送装置では出力不足で帰れないという衝撃の事実が判明した!」

「その割には余裕そうね……ま、ご愁傷様と言っておくわ」

 

 

 ご愁傷様の割には、慰める気など無いと言わんばかりの態度のレナ。正直、俺としても慰められるとマジなレベルで落ち込みそうだから助かる。

 今回の原因は、要するに自爆間近のジャガンナートが内部電装系や転送装置のキャパシタに過剰な電力を流し込んだせいだろうと考えている。

 どちらにしても、対ノア兵器の出力を以ってして正に地球の裏側といった距離を越えさせられてしまったのだから、どうしようもない。

 帰るためには、(くだん)の国際転送ターミナルが生きている事を期待しつつ<大破壊>後の荒野を流離(さすら)い探す必要があるだろう。飛行機や巡洋艦的なものを探すのも手だが、正直な所、メイド・イン・ノアの巨大生物兵器とか浮遊要塞とか訳の分からないキワモノに狙われるような気がしてならない。

 

 どうやら、どのような選択肢を選ぶにしろ、俺はこの地でハンターとして活動しないとならないようだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つか、俺の戦車コレクション……無事なんだろうか」

 

 

 猛烈に不安だが、向こうには無線ポストも無い以上、手の出しようが無い。衛星システム(BS-NET)経由ならハンターオフィスに連絡ぐらいは取れる……か? まあ、取れたとしても、帰るまでに長い時間が掛かるようならオフィスのほうでレンタル連合あたりに運用させるんだろうなぁ。

 ハンターオフィス預かりになってしまえば、幾らエンジンロックに起動キー、Cユニットによるセキュリティが施されてても、改造屋にヤッてもらうんだろうし……あああ、くそっ、気になってたまらん!

 

 何? コーラやシセちゃんに連絡を入れないのかって? 期待させて済まないが、あの頃はグラトノス対策に集中し過ぎたせいで、コーラとの熱いラブロマンス……なんてネチョい要素など入り込む余地が無かったんだよ!

 シセちゃんにしても、相棒(チョッパー)がミンチの所のイゴールに俺ごと回収されたせいで、バイク引き上げの事故から身を挺して助けるなんてヒロイックな展開も無かったし、むしろ関係性そのものが薄いわ!

 

 ああ、なんかもー、言ってるだけで悲しくなってきた……

 へん! いいさいいさ! こうなったら、こっちでも人が羨むような戦車コレクションを集めてやるんだからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに……あのレナという少女が「原作」の主人公(ハンター)に当たる存在だという事を知って愕然とするまで、あと少し──

 

 

 

 




・そう簡単に帰ってもらっちゃ困るので転送装置の設定を捏造(爆)
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