3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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・ようやく脱出実行!


24話 じゃーにーほーむ

「え! 見つかったの!?」

「ああ、この通り……な」

 

 

 二日酔いから復活し、スッキリした所に齎された朗報でレナが表情を明るくする。朗報を伝えた俺の手で存在感を放つのは、この島からの脱出の鍵となる重要アイテムこと<原子力電池>だ。

 メモリー嬢の話ではそこそこ見つかるという事だったが、既に保管されている集落の倉庫から勝手に予備を持っていくのも拙かろうと思ったので、浜に埋まっているのを掘り起こしたものである。

 因みに、これから先でも何があるか判らないので、色々と調べつくして十分に使用可能なものから数個を道具袋(格納領域)に予備として保存している。正にiゴーグル様々……RobCo社のPip-Boyシリーズに勝るとも劣らぬ利便さだ。

 

 

「……信じられないぐらいにラッキーね。でも、昨日の今日であっさり見つかるとか、嬉しいけど何か釈然としないわ」

「定期船の襲撃に遭うのは災難だったけどな。だが、結果だけ見てみれば命も無事でお宝(・・)にもありつけた。賞金首の背の上に住むというのは落ち着かないが、転送装置が使えるならセーフハウスとして使うのも悪くない環境とロケーションだと言う事も知れたし、考えてみればレナの言うとおり信じられんぐらいの幸運と言えるな」

 

 

 まあ、これだけ運を使ってたら後が怖いかもしれないがね、と(おど)けた調子で肩を竦めてみるが、レナは可笑しそうに口元を緩めて「ま、今までの負債を取り返すにはとても足りない幸運だけどね」と返す。

 いやはやごもっとも。思い返してみれば俺やレナに纏めて押し付けられた不運・悪運の数から考えてみても、今回の幸運を受け取って罰が当たる事はあるまい。

 俺達は顔を見合わせて静かに笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? 島から出られるのかい!?」

 

 

 島を出る前に、俺達と同じように脱出を切望していた、集落で唯一の人物であるラトーヤに声をかけた所、彼女は驚きに目を見開きながら縋りつくかのように掴みかかってきた。

 

 

「落ち着きなって。此処に来る前に島を探索してたんだが、洞窟の地下に転送装置があるのを見つけていたのさ。まあ、端末が腹ペコでヘソを曲げていたがね。運良く此処で<原子力電池(エサ)>を見つけられたんで脱出の準備が整ったって訳さ」

「お、おぉぉ……凄いね、あんたら! あたしゃ洞窟に地下があるなんて全然気付かなかったよ!」

「……まあ、本当にぱっと見ても判らないように偽装されてたしね。ウチの優秀なケダモノさんが居なければ見過ごしていたかもってぐらいだったし」

「あっははは。なんだかご馳走様って感じだね。でも、あんたらのお陰であたしも漸く家族に会えそうだよ!」

 

 

 はぁ、旦那と息子は元気にしてるかねぇ……と遠い目をしながら切なげな溜息を洩らすラトーヤに、実家に戻るまでとの条件付で幾つかの護身用装備を貸すと、集落の方々に軽く挨拶と声掛けをしてから(くだん)の洞窟へと向かう。

 相変わらずに無節操極まる植生の森を散策する気分で歩くこと10分と少々。昨日の黒雲は何処にも無く、嘘のように晴れ渡った蒼天の下で、時折襲い掛かってくるモンスターを適当に追い散らす程度に撃退しながら移動していると、洞窟へと続く分岐路の辺りでジャックを見つけたので挨拶と帰還の話をしておく事にする。

 

 

「よう、精が出るな!」

「ああ、ジンか……どうしたんだ?」

 

 

 今晩の食卓にでも乗せる獲物でも狩っていたのか、幾つかの成果を腰元に吊るされた頑丈そうな網籠に収めた姿の彼に声をかけると、集落のほうからラトーヤを伴って現れた事に怪訝な思いでも抱いたか、少しばかり声を(ひそ)めて問いかけてきたので、そんなジャックに事情を説明する。

 

 

「ああ。島から出られそうな手段が見つかったんでな。俺やレナは外の世界で遣り残している事が山程あるし、彼女(ラトーヤ)も外に家族が待っている。ま、そういう事で早速その手段を試してみようという訳さ」

「なに! そうか。そう、か……外に出られるのか。良かったなラトーヤ……あんたが無事に家族と再会できるのを祈ってるぜ」

「ありがとうよジャック。考えてみれば、この数ヶ月……あんたには本当に世話になったね。あんたの事だから出られるとしても島に残るんだろうけど、同じ時間を過ごしたファミリーとしてあたしもあんたの幸運を祈ってるよ!」

 

 

 どこか感慨深そうな表情のジャックと、家族との再会を前に明るい笑顔を見せるラトーヤが軽くハグを交わす。

 その心温まる光景を見守ってから、俺はジャックに洞窟の地下1階……スロープを下った右手側に転送装置が配置されている事と、洞窟内部で遭遇するモンスターの情報を伝え、更に深くにはグロウィンの本体と同化しているらしき部分があるので、迂闊に近づかないほうがいいと忠告しておく。

 地上では危害を加えられない限り、安全と言ってもいいグロウィンの眷属だが、自らの領域内(テリトリー)では容赦と言うものが無くなる。

 これは、俺とレナが身をもって調べたために確定的な情報だと言える。そして、この島で暮らす彼らにとって、俺達が知った幾つかの体験を知る事は自身を守る事に繋がるに違いないのだから、1日とは言え彼らの世話になった俺としては気分良く情報提供を行うことができる。

 とは言え、流石にグロウィンの眷属の詳しい事やレベルメタフィンに関する話だけは何かとヤバい事態を招きそうなので伏せておいたのだが。

 

 

「1日でしかなかったが、同じ飯を食って同じ酒を飲んだ仲間だ。あんたは集落から長く離れられそうにもないし、また機会を見て必要そうな物資を持ち寄らせてもらうよ」

「そうね。その時は、また昨日みたいに騒ぎましょ!」

「お前は……懲りない奴だな。酒的な意味で」

「うっ……まあ、ほら、次は飲みすぎないようにするわっ」

「はははは! そうだな。ジンもレナも既にこの島のファミリーだ。ここの事を思い出したら何時でも立ち寄ってくれ。また昨日みたいに歓迎させてもらうぜ」

 

 

 快活に笑うジャックと俺はガッチリと握手を交わしてから別れた。

 さあ、脱出だ。まずはマドの町へと戻ろう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>ERROR!

>ERROR!

>ERROR!

 

>転送中ニ予期セヌ障害ガ発生シマシタ!

 

 

 

 

 って、またかよ! 事故率おかしくねーかッ!?

 初の事故アナウンスに若干涙目のレナと、事故ナニソレといったラトーヤの3人で飛ばされたノグチケミカルなる秘匿施設から、改めて俺達はマドへと戻ったのであった。

 

 

 なお、後日譚のような話となるが、無事に家族と再会できたラトーヤは、昔と違って(・・・・・)積極的に家族のために料理を振舞ってくれるようになったと彼女の旦那さんが喜んでいたのが印象的だったと残しておく。

 

 

 




・ウチのジャックは善玉ですw
・次回は少しばかりキングクリムゾンッ! 予定!

(2012/07/27)
・眠気で意識がレン平原へと旅立とうとしやがる……zzz
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