3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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【NEW】
・お約束なキンクリ回。彼らはこんな事をやりましたよ……と。



25話 いろいろありました

 

 俺達がグロウィンの背に揺られるひょ○たん島ならぬ奇怪ヶ島から脱出して、更に一晩が過ぎる。

 

 グロウィンに定期船が襲撃されたという話は、ハトバでそれなりに騒ぎになっているらしく、定期航路の範囲内からグロウィンが居なくなるまでは定期船の運航が休止されるという事態になっていた。

 そんな騒ぎの中、グロウィンの触手に攫われていったり、自ら水の中へとダイブしていったりした二人組みがひょっこりと定期船乗り場に顔を出して、係留されている船内からクルマを回収していったものだから、さあ大変。船長や船員は幽霊を見たかのように驚愕するわ、有象無象の方々はグロウィンに連れ去られたにも関わらずどうやって逃げ出してきたのかやらでザワザワするわ、話を聞きつけてきたハンターオフィスの者に事情聴取よろしく付き纏われるわで面倒な事この上なかった。

 

 俺もレナも人に囲まれて注目されるといった状況に快感やカタルシスを覚えるような気質では無い為、ハンターオフィスへ逃げ込むように退散すると、適当に(ジャック達に迷惑が掛からない程度に)グロウィンに関してだけ情報を提供してから早々にマドへと引き上げた。この気疲れをイリットちゃんの笑顔(と料理)で癒されたいと考えていたのはゲンナリとした互いの表情で二人ともまる判りだったのは間違いないことだろう。

 

 

 

 

 そして、あの事件(?)から数週間──

 

 こうして過ぎた時間の合間にも目まぐるしい程に色々な事があった。

 

 デルタ・リオへの航路を封じられた俺達は、クルマの装備更新や強化などと言っている場合では無くなってしまった為に、陸路でデルタ・リオを目指す事となった……のだが、その前に強さの再確認といった流れでグロウィン島で磨いた腕がどの程度になったのかを、エルニニョからハトバ近辺の賞金首を狩る事で試すことにした。

 

 まあ、今更言うまでも無いかもしれないが、1日にも満たぬ僅かな時間とは言え、亀・蟻・グロウィン眷属と乱獲しまくった成果は実に恐ろしいものだった。

 考えてみるといい。先日までのヒヨッコが、一夜明ければ歴戦の戦士に化けているとか、現実世界の兵士さん達が見たら発狂ものだと思う。

 その上で、島の探索で発見した悪食の妖刀(はらきりソード)や何故か浜に埋もれていたヴラド・コングロマリット謹製のM29-OICW(SMGグレネード改)を手にした今のレナ相手に、たいした脅威も無いエルニニョ北東を根城にしている殺人機械(デスペロイド)程度では役不足というもの。

 確かに生身の耐久限界というものはあれど、攻防能力に限って言えば、現状のバギーに搭載されている機銃や主砲をも上回り(アメイジング!)、ちょっとした怪我や消耗は妖刀で斬りつけて自己回復。

 馬鹿げた身体能力を発揮し、女性のしなやかさと柔らかさを存分に感じさせる生身ですら意味不明なまでの抗弾性を持ち、弾幕の中を被弾しながら(しかも大した被害も無く!)走り抜けて接敵可能という、この世界の謎人類か生粋のウェイストランド人でも無ければ不可能な所業は、正しくファンタジーとしか言いようが無い。

 傍から見ていればメタル○ックスならぬデ○ル・メイ・クライなスタイリッシュアクションゲームにでも紛れ込んでしまったかのような錯覚を感じる事だろう……まあ、俺やクランの連中みたいな怪人ズはマーヴル枠かも知れないが。

 どちらにしろ、見れば見るほど現実感と言う名の正気度を喪失していきそうな光景だった。

 

 

 なお、当然ながらWANTED狩りがそれだけで終わった訳ではない。ハトバの町で依頼を受けて行方不明のハンターを探すついでに、晴れぬ雨雲が常に垂れ込めているハトバ西の雨林区へと踏み入り、かつての森林監視局跡に接した蟻塚に潜むアダムアントを火と鉛で念入りに消毒浄化する。

 奴は蟻だけに中々に狡賢く、蟻群ならぬ蟻軍で文字通りのゲリラ戦術を展開して梃子摺らせてくれた上に、自身は洗脳音波という極めて厄介な攻撃手段で撹乱するという賞金額以上の難敵だった。

 事前情報から音波耐性装備(ファイバーイヤホン)が大活躍してくれると思い、大した苦戦はしないだろうと考えていたら、なんと洗脳音波を収束して共振作用的に仕掛けてきたのには焦った。

 耳から通せないなら脳や身体に叩き込めばいいじゃない! という心の声が伝わってきそうだったが、うまうまと敵の思惑に乗ってやる筋合いは無いので、同じ属性である音波兵器で只管に相殺に励んで事無きを得た。

 アクティヴノイズキャンセラーの如く完全相殺せずとも、洗脳音波のように繊細な調整と持続的な照射を必要とする代物を相手にするならば、こちらも同じ波を用いて単なる雑音(・・)へと落としてしまえばよいのだ。それだけで音波によるダメージを減らし、少なくとも厄介な洗脳効果を完全遮断できるのだ。

 

 

 ああ、まあ、賞金首巡り以外にも色々とやった。

 例えば、アズサ東の洞窟で「俺のドリルは岩盤(いわ)を貫くドリルだーっ!」とばかりにガリガリやってる漢に協力してバザースカ方面への道を開いたり、意外にも品揃えの良かった当のバザースカでクルマの装備を整えたり、依頼でシグナル弾をブチ込まれた巨大マンタを仕留めたり……そのついでに、ヴラド博物館を探索してみたり。

 博物館で新車同然のRウルフを入手した時には、テンションがおかしな具合に上がりまくって、レナと二人でクルクルと謎のダンスを踊るという新たな黒歴史を刻んでしまった。迂闊!

 とはいえ、Rウルフのお陰で、サイゴン氏をすんなり撃破できたのだから結果オーライとしておくべきだろう。俺の精神衛生的な意味でも。

 

 それから、アシッドキャニオン西では結構有名らしい酒場<サースティ>にも足を運んだ。アズサで情報を得ていた事もあるが、この酒場がレジスタンスの中継点であり武装供給元でもあると聞いていたからだ。

 双子の美人踊り子──ウェンディとリサを相手にアズサでお馴染みのアレをやって繋ぎを取る。合言葉の正答に嬌声を上げて抱きつくのは演技の一環なのだろうが、麗しき美女に抱きつかれるのは此方としても役得だ。ただし、相方の天候不良(ごきげんななめ)を別にするならば。

 ……いや、それは兎も角。双子に紹介されて酒場の二階でレジスタンスと顔合わせ。何事も無く“アブない客”として()を利用できるようになった。

 

 うん、なったのは良いのだが、俺としては納得のいかない物まで()いてきた。

 その名も<潜在能力ヘッドホン>。どこぞの未来産青狸ロボがポケットの中から取り出しそうな名称のそれは、実に洒落にならない機能を持っていた。

 頭に被ってヘッドホンから流れてくるガイダンスを聞くだけで(何故か瞬時に)脳開発が成され、しかも付属データカードから基本的な職能(クラス)の技術と知識が脳味噌にインストールされるとか何と言うチートアイテムか。

 経験を積む必要があることは変わらずとも、ハンターとして腕を磨きつつ同時にメカニックの整備技術を修得したり、ナースの医療技術を学んだり、戦闘力に不安があればソルジャーやレスラーの戦闘技術を体得する事ができる……まあ、メインの生き方(クラス)によって、ある程度まで決定付けられる基礎身体能力にまでは然したる影響を与えないものの、他職の技術を平易に得られるだけでも脅威としか言いようが無い。

 信じられない事に、このトンデモアイテムをプレゼントしてくれた爺様の言う事には、初心者でも二つのマルチタスク(つまりダブルクラス)が可能だが、継続して能力開発に励めば、努力次第で三つ。才覚があれば四つぐらいまではマルチタスクを使いこなせるようになれるとか……ミ・ディオス(おのれ神ッ)

 ぶっちゃけこれ、グラトノス謹製の馬鹿でかい学習装置より性能いいんじゃねーの? こんな訳わからん装置、遠い銀河産のカニ哲学士でもなければ作れそうにないよーに思えるんだが。むう、考えるほど不穏な気配が漂ってきそうなので、この件に関しては流す事にしよう。

 

 

 

 

 んで、現在。

 

 

「あれがグラップルタワーみたいね……」

「サルと愉快な仲間達の住処だな」

 

 

 高台を別けるようにして流れる川に掛かった橋の手前。俺とレナは遠目に見える建造物(グラップルタワー)を眺めながら言葉を交わす。

 

 

「東側の橋は格納されているようだな……面倒な」

「素直に猿を殺りなさいって事ね。反撃の狼煙(のろし)……まずは奴の首級を取る事で上げさせてもらうわ!」

「はっはっは。首おいてけ~ってか!」

 

 

 色んな意味で物騒なネタで笑いながら、Rウルフとストレイドッグが荒野を駆ける。グラップラーとの本格的な戦いが遂に始まろうとしていた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ひゅうぅぅぅぅ……ドグチャッ!

 

 

「えええ!? 何で上から人が……って、ブチ撒けトマトに!?」

「(ああ……そう言えば、そんなイベントがあったな)」

 

 

 いざ鎌倉! ならぬ、グラップルタワーを前に、天から降ってきた女にモザイクの掛かりそうなショッキング映像を見せ付けられる俺ら。

 銃創と火傷により、ただでさえ凄惨な有様なのに、それが高所から地面へと叩きつけられ……てる割にはパーンってなってないな。この世界の重力加速度は仕事をしていないのか、それとも人体が無駄に頑丈なのか。

 

 

「まあ落ち着け。この程度(・・・・)なら手遅れじゃない」

「ちょ、手遅れよ! どう見ても手遅れの死体じゃないの!?」

「ああ、実に新鮮な死体だな」

「新鮮な……って、まさか?」

 

 

 微妙に引き攣った表情のレナに、ニヤリと笑んで見せる。そう──

 

 

「そのまさか(・・・)だよ、セニョリータ」

 

 

 ──ドクター・ミンチの出番である。

 

 

 




・……ところで、キンクリってこんな感じでええのん?

【NEW】
・ケダモノさんと少女は、活きの良い死体を手に入れた(笑)
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