3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

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・ボニー&クライド……もとい、レナ&ジン。出撃します!
・さあ! モンハンだ!


07話 さあ、狩りにでかけよう!

「よう!」

「案外早かったわね」

 

 

 出来立てホヤホヤ……というより、全損状態から奇跡的な復活を遂げた、といったほうが正しい元ガルシア号(バギー)に乗っているレナに声をかける。

 そんな俺に対して、どこから入手したか謎の滋養強壮効果を持つ<大破壊>前の栄養ドリンク(ゲンキデルZ)を片手に、あら意外と早かったのねとばかりに返し、「乗んなさい」とゼスチャー。

 俺も、特に考える事も遠慮もなくナビゲーターシート(助手席)に飛び乗ると、レナはエンジンを軽く吹かせてから車を出した。

 

 

「で、どこ行ってたの?」

「……ふふふ、それは秘密だ! と言いたい所だが、何てことはない。ミンチの爺様に挨拶してきただけさ」

「はあ? ミンチって、テントに住んでて、死体を生き返らせるとか胡散臭いこと言ってる、あの爺さんのことよね。知り合いだったの?」

「胡散臭いのは事実だが……レナ、お前も確実に何回かはあのマッドジジイに世話になる(・・・・・)と思うぞ。事実、爺様がクライングママに研究所構えてた頃は、俺も世話になった」

 

 

 うん、グラトノスに身体そのものを魔改造された俺ですら、軽く数回は世話になったんだ。

 それにしても、考えてみればよくもまあ研究所まで瀕死のまま辿り着けたり、野営中に砲撃ぶち込まれて臓物撒き散らしながら、チート極まる大破壊前の薬物で失血死とショック死を引き伸ばしつつ車載用転送装置(ドッグシステム)起動できたり、日本文化を勘違いしているとしか思えない超ヘビー級のサイバネ剣豪に<変身>する間もなく、サイバネ秘剣とやらで(防御力もクソもなく!)首チョンパされて「今度こそオワタ」と思うも、運良くイゴールに回収されてたり。

 今の実力を手に入れる(レベルに到達する)まで、何回死んだんだろう……つか、こんだけ死んでるくせに、我ながらよく正気(SAN値)が持ったもんだ。

 

 

「……よく脳味噌だけ無事で済んだもんだなぁ、俺」

「……とりあえず、あの爺さん(ミンチ)の世話にだけはなりたくないって確信したわ」

 

 

 ドン引きだった……当たり前だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スナザメ狩るわよッ!」

「へいへい」

 

 

 エルニニョ、ハトバ間を結ぶベイブリッジを越える前にと、レナはスナザメ狩りを提案した。

 理由は……まあ、定番の金欠解消と経験値の獲得。そして名声である。

 

 因みに、金欠に関しては、俺のiゴーグルの「ふくろ」(量子格納領域)に入っている幾つかの装備品やネタ(・・)を売り払うなり、そもそもが一体どの程度の重量があるのか考えたくも無いレベルに達している金片(GOLD)から捻出するなりすれば解消は可能だ。

 

 だが、俺はそれをする気は毛頭無い。そも、これからグラップラーを壊滅させうる力を持ったハンターを目指すというのに、最初から金銭的な楽を覚えさせても良いことなど何一つないからだ。

 

 非常識にも、依頼達成や敵の撃破といった経験値(・・・)の恩恵で、地道な鍛錬が馬鹿らしくなるほどに身体性能を向上させるような巫山戯(ふざけ)た世界の住人とはいえ、俺はむしろ地道に積み重ねる小賢しいまでの体験(・・)と苦難によって磨き上げるセンスこそを重視する。

 

 最初から高品質の装備で固めて、機械的に積んだ経験値で早々と強さを手に入れてしまっては、弱者が強者に挑むための小細工や、苦境に屈しない精神力を醸成し損なう。

 それに、即席で強者となってしまったが故に、弱者の持つ狡さ(・・)にアッサリと膝を屈する破目になったり、己を超える強者に対して馬鹿正直に正面から挑むような脳筋思考に陥り易くなってしまう。

 

 そういう訳で、俺はレナに装備を貸したり金を与えたりしないのだ!

 決して俺がケチな訳ではないぞ! 本当だヨ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂漠……というよりは、酸性雨と<大破壊>により砂礫化してしまった荒地であろうか。所々に、旧時代の電信柱がまるで墓標のように立ち並んでいる。

 日本であったはずなのに、大破壊後の今では乾燥地に成り果ててしまったとでもいうのだろうか。思い出したように疎らに生えているタンブルウィードが寂しそうに風に揺られていた。

 

 

「……来たぞ! クルマに乗ってるとはいえ油断するな! 今のバギー程度じゃ下から突き上げられたらクルマごとムーンサルトをやらかしちまうからな」

「おっけー。副砲ヨロシクねっ! 私は回避と主砲に集中するから」

「了解だ」

 

 

 言葉と同時に、レナが絶妙な加減速とターンでスナザメから程々の距離をキープする。

 近づき過ぎてはダメだ。軽量級のバギーでは、スナザメの体当たりで大きな損害を受けかねない。

 だが、遠すぎてもダメだ。距離を離し過ぎればスナザメの分厚い皮の前に、有効打を与えるのが難しくなる。というより、必要以上に距離をとればスナザメはどこかへ去ってしまうだろう。

 

 

「オーケー、いい子だ。そらっ! こいつでも喰らいなッ!」

 

 

 Cユニットの間接操作ではなく、俺が直接握って7mm機銃(副砲)のトリガーを引く。

 腹に響く重低音。主砲の射線軸に逃げ道を用意してやりながら適度なダメージを与えるように直撃弾は出さない(・・・・・・・・)

 

 Cユニットの制御下でなく俺が直接触れている都合上、この世界の──或いは<大破壊>後の──人類が保有する意味不明極まる特性により、機銃本体や銃弾に腕力(STR)相当分の謎エネルギーが上乗せされる。

 ハンターオフィス基準の脅威度評価(レベルアナライズ)アプリケーションにおいて、俺の現在レベルは119……腕力(STR)は457。このクラスの数値に俺自身の戦闘LVから導き出される精密射撃が加わってしまうと、上物の大砲並の威力になってしまう。

 となると、近辺のトレーダーに恐れられているとはいえ、たかが(・・・)スナザメ程度……実にアッサリと肉片にしてしまうだろうから。

 

 

「ナイスよジン! いまッ!」

 

 

 俺の地味な苦労を知らない(知られてはならない)レナが、俺の演出した隙を見事に突き、スナザメの鼻面に強烈な一撃(37mm砲)をブチ込む。

 たまらず砂中に逃げ込むスナザメ。ゲームでは潜られようが、出てくるまで気にせず戦えた……だが、現実はそう簡単な話ではない。

 

 

「あちゃー! 逃げられたかな?」

「どうかな? クルマから伝わる振動に気を配ってみろ。まだ奴は諦めてないぞ」

 

 

 そう、まだスナザメは37mm砲を一発もらっただけに過ぎない。人間にしてみれば、強烈なストレートを顔面にもらった程度だ。

 無論、奴はその程度で獲物を諦めるような性格はしていない。

 

 

「スナザメは砂に潜られると極めて面倒な相手だ。潜られたらドリル系の兵器で攻撃するのも有効だが……」

 

 

 俺は、そう言って戦闘道具袋から、懇意の芸術家(アーチスト)に用立ててもらった音響手榴弾を取り出す。

 

 

「サメって生き物は実に様々な知覚器官が人間よりも優れている。その中でも特に優れているのが、聴覚……レナ、耳を塞げ!」

 

 

 ピンを抜いて放り投げ、ファイバーイヤホンを装着。

 レナが操縦をCユニットに任せ、慌てて耳を塞ぐ。行き成りだった割りに良い反応だ。

 

 そして、爆音!

 

 

『ギャァァァァァッ』

 

 

 聴覚から脳を破壊しかねない超音波の炸裂に、弾き出されるかのように砂上へと跳ね上がるスナザメ。

 軽く蹴ることでレナに安全を知らせてから言葉を続ける。

 

 

「優れたるが故に、このように単純な音波属性ではない音響兵器で砂から叩きだす事も可能って訳だ。ま、これやったら逃げようとするから一気に仕留める必要があるけどな」

「へー、なるほどね。それじゃ後は……」

「……トドメと行こうかねッ!」

 

 

 連撃、追撃、乱撃、猛撃!

 砂上でもがくスナザメに砲弾と銃弾が、これでもかと撃ち込まれる。

 そして、もはや虐めでしか無くなった賞金首狩りは、その後1分も掛からずに終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スナザメ獲ったどーーーッ!!」

「何ソレ?」

「<大破壊>以前から伝わる決まり文句だ!」

 

 

 




・実際のサメがスタングレネードとかで水中から飛び出すかと言われれば判らんとしか言いようが無いッ!
・まあ、この世界ではモンスターハンター的な繋がりでスナザメは音爆弾に弱い……ってことで。

【NEW】
Q:どーでもいい事かもしれませんが、腕力457ってどのぐらいなモンなの?
A:殴ると90式戦車の主砲ぐらいの威力が出ます。自動車ぐらいなら生身でジャッキアップできます。多分。
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