3→2R 紅き牙獅子は転送事故に啼く   作:斬風

9 / 27
ぬう、相変わらず文章量が増えない……ていうか短い(汗

・ジン大暴走
・なんでこーなった!


09話 なんでこうなった!

 

「ハッハァー! そう、これだこれェ!」

 

 

 風を切る感覚と、腰の辺りから伝わってくるエンジンの駆動。メタルマフラーが奏でる重厚な排気音。この地での新たなる相棒となったストレイドッグのハーレーダヴィッドソンにも似た(おもむき)に感動すら覚えつつ、ハイになった気分を隠しもせずに、マドへ向けてフルスロットル。

 文明社会で不自由無く生活し、だが、数え切れないほどの(きまり)に雁字搦めと縛られていた影響だろうか。悲しむべき事に、見渡す限りの荒野と成り果てたこの世界で、だがッしかし! 何に縛られる事も無く愛車を走らせる事ができるという極めつけの開放感。そして爽快感ッ!

 ありとあらゆる意味での強さが無ければ屍と成り果てる、弱肉強食の理に囚われたとしても、この自由(・・)の前にだけは、全てが無価値となる。

 時折、残された前世の残滓が、この無法で暴力的な観念に弱々しい抵抗感を示す……が、殺し殺され喰らい合う修羅か羅刹の世界を体験した(生き抜いた)事が、己の純粋さでも奪ったか、もはや中毒的とも言える自由の悦楽の前には無駄というものだった。

 

 ぶっちゃけ、ドライバーズハイってヤツである。

 

 

「オラァ! 邪魔だ邪魔だァァァ!」

 

 

 相棒の咆哮に刺激されたか、それとも人類の臭いに排除欲求でも刺激されたかは不明だが、行く手を遮るように数体のバイオモンスターが姿を見せる。

 

 だが、知るがいい……今の俺と相棒の目の前に立ち塞がることの愚かさを!

 

 自分以外には誰もいない荒野のド真ん中。獲物と俺だけの空間で、たぶん俺の口元は猛獣が威嚇するかのような笑みが浮かんでいただろう。

 非武装だが、それゆえにこの世界のクルマとしては極め付けに軽い(・・)相棒を、踊らせるかのように跳ねさせる。

 ただそれだけで、全ての雑魚どもの攻撃は悉く外れさる。まるで、中らない事こそが絶対の運命であったかのように。

 そして、より一層の加速を見せる相棒の上で、何時の間にか構えられていたSMGグレネード(F2000タクティカル)が鮮烈なマズルフラッシュを見せた。

 

 グレネード装着時、5kg近い重量を持つソレはごく一般的な兵士には負担であろうが、この世界で鍛えられた存在にとっては片手で振り回そうが、フルオートの反動だろうが電動エアガンの反動と大差は無い。

 そんな馬鹿げた腕力と強靭さに支えられた豪腕に構えられる銃から放たれる死の弾丸が、的確にモンスターの急所に叩き込まれ、一切の例外なく肉片へと変えていく。

 たかだか4g程度の鉛弾が、まるで「俺は滑空砲にも負けねーぜ!」と自慢げな表情をしているのが感じられそうな理不尽(・・・)極まる威力。

 そのような巫山戯た攻撃に、この周辺に出現するような雑魚が一瞬たりとも耐え切れる筈も無く、俺がそいつらの横を通り抜ける頃にはキレイさっぱりと荒野の肥料(こやし)に成り果てていた。

 

 

「ふはははァ……今日も地獄は満員だァァ」

 

 

 後で考えると、何でここまで暴走していたのだろうかと首を傾げんばかりのハイテンションに気付く事も無く……今はただゴール地点(マドの町)を目指して相棒と共に風となる至福に浸り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で? 言い訳ぐらいは聞いてあげるわよ?」

「サ、サーセン」

「あ゛ぁん?」

「誠に申し訳ございませんデシタァァァ!」

 

 

 御機嫌極まる新たな相棒(ストレイドッグ)を僅かに1000Gで譲ってくれた、スキンヘッドの大男に感謝の念すら抱きつつ、意気揚々とナイル爺さんのガレージへと乗り入れた俺を待っていたのは、金色の夜叉(レナ)による制裁だった……

 

 トリップしてしまっていたとは言え、知らぬ間に問答無用の放置プレイ(おいてけぼり)を味合わされた事が、よほど腹に据えかねたらしい。

 そんな時に、俺が如何にも御満悦といった様相で戻ってきたものだから、その瞬間にナニカのゲージが振り切れてしまったのだろう。人外の域に達して久しい俺の剛体が、無拍子かと感嘆せんばかりの見事さで繰り出された、レナ(ひよっこ?)必殺の一撃(パンチラキック)でリアル犬神家させられてしまったのだから本当に恐ろしい。

 

 荒ぶる鬼神(親しい女性)赫怒(かくど)には、男がどれだけ強かろうが、男という生き物である限り無駄なのだと思い知らされる有様に、俺は無条件でゴッド土下座を披露せざるをなかったのである。

 

 

「いや……な? クルマ入手の機会を見逃すのはハンターとして問題がある訳でしてね?」

「ウルサイ……少し黙りなさイ、ネ?」

 

 

 ちょっと理由付けをして頑張ってみたが、やはり怒った女(レナ)が言葉だけで機嫌を直すはずも無く、大人しく貢物を献上する事にする。

 ダメンズウォーカーなM女じゃあるまいし、一度ヘソを曲げた女性が男の小賢しい言い訳だけでくるりと(180°)態度を変えた(ためし)は無い。

 こういう時、男のやれる事は悲しいまでに少なかったりするが、それでも謝罪(ごめんなさい)貢物(けんじょうぶつ)意思表示(うめあわせ)は確りとやっておくことをお勧めする。

 ……って、おかしいな? 俺はレナと男女的な意味で交際(おつきあい)している訳じゃないのに、何でこうなった! 何でこうなった!?

 

 いよいよ混乱の極致に至ろうかという内面に対して、あくまでも真面目な顔(鉄面皮)を崩そうとしないマイフェイス。

 そんな顔でスッと差し出された献上物を怪訝な目で見ているレナに、そっと手渡す。

 

 

「……何よこれ?」

「ファイバーイヤホンだ。音波耐性が得られると同時に、コードをiゴーグルに接続すれば登録した周波帯(バンド)同士でクリアな遠隔通話が可能になる……まあ、謝罪の気持ちって事で、ここはひとつ」

「こんなので誤魔化されないわよ! と言いたい所だけど……ま、今回はこれで許しといてあげるわっ」

 

 

 意外な程にあっさりと態度を変え、嬉しそうにファイバーイヤホンを装着するレナ。貢物をスンナリ受け取ってくれたのはありがたいが……なんで嬉しそうにしてるんだ?

 ひょっとして……担がれたか?

 いや、だが、あの怒りっぷりは本物だった。

 前の世界に横行していた【見せられないよ!】どもなら、確実に過剰なレベルの謝罪御遍路と高級埋め合わせコースがセットで要求されかねない。

 まあ、そんなヤツは此方としても願い下げだが……うぅむ。これは大破壊後の女性がカラリとした性格なのか、レナ個人が後に引き摺らない性格なのか。やはり女性の事は良く分からんな……

 

 それにしても、レナに対して資金や装備的な協力はなるべくしない予定だったが、いきなり例外が出てしまったか。

 ま、これに関して(ファイバーイヤホン)はどのみち必要になる物でもあったし、特に過剰な支援という訳でもない……うむ。ここは仕方が無かったとしておこう。そう……仕方が無かったんだッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、でもアンタ一週間はバイク禁止(・・・・・)だからね!」

「ぎゃぼーーーーーっ!?」

 

 

 




・ジンは既に調教され始めているようです(ぇ
・オアズケ! ケダモノには相応しい言葉だよね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。