「ほら、もっと声出せー!」
燐の言葉に何人かが返事してそれに答える。
座っている燐は、丁度シャトルを打ち返したなぎさを見た。
シャトルは一直線に勢い良く相手側に飛んでいく。
「チッ!・・・」
その時になぎさが舌打ちしたのも、燐には聞き取れた。
「・・・」
燐はポケットにお菓子を補充すると、椅子から立ち上がって泉の近くへ行った。
「理子」
構えを取っていた理子は一旦止めて、燐の方を向いた。
「?、どうしたの、燐君」
「最近さ、なぎさの調子が何と言うか・・・変じゃないか?」
燐が言うと、理子は人差し指を口元に当てた。
「確かに、最近曇り顔でやってるよね」
「もしかして・・・」
燐はそう言いながら理子に視線を向ける。
「うん・・・。スランプだと思う・・・」
理子は燐と目を合わせた後、練習中のなぎさを見る。
「去年の全日本ジュニアか・・・」
燐の言葉とほぼ同時に理子は俯く。
「まさかなぎさが一つもスコアを取れずに負けるなんてな・・・」
燐と理子、二人の間にはなんとなく重い空気が漂う。
会話が続かず二人で呆然と立っている時、なぎさがこちらに向かって来た。
「燐!理子!今何話してた?」
少し怒り口調で、なぎさは二人に言った。
「なぎさ!い、いやふ、普通の話だよ!?」
「そうそう、世間話」
燐はポケットから飴を一つ取って、なぎさに投げた。
パシッ
片手で飴を掴んだなぎさは、何かスッキリしない顔で自分のポケットに入れた。
「・・・。じゃ、アタシ練習終わったから帰るから」
いつのまにか身支度を整えていたなぎさは早々と返って行った。
「また明日なー」
遠くなっていくなぎさに燐が言うと、手を振って返してくれた。
(そこは一応、返してくれるのか・・・)
なぎさを見送った後、理子がぽそっと呟いた。
「私たち、もっと練習しないといけないよね・・・」
「そうか?十分実力はあるように見えるけど」
「でも・・・私たちとなぎさの間には差が大きいから・・・。それにこのままだったら女子団体にも出れないし・・・」
「問題山積みだな・・・」
「だね・・・」
(左利きが必要なのか・・・)
とりあえず部活を終わらせ、燐は玄関を出て帰る。
正面玄関ではないのでどうしても、グラウンドを通らなくてはならない。
(左利き・・・)
夕焼けに染まった雲を見ながら歩いていると、空にハンカチが舞っていた。
風に揺られて、ハンカチは木に引っ掛かる。
「あーあ」
燐は立ち止まって様子を見ていると、二人の女子生徒がこちらに来た。