ウマ娘御用達(になる予定の)喫茶店   作:今日和

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なんと…無色ランキング5位!!!!
嘘だろ信じられねーぜ…みなさま本当にありがとうございます!!!


コーヒー好きと研究好き  その③

 

「は?」

 

 タキオンの爆弾発言にカフェは聞いたこともない程ドスの低い声をあげる。

 

 タキオンの奴…なんてこと言いやがるんだ…

 

「おい…適当なことを言うなタキオン」

「ん?何を言っているんだいお兄さん君?私の言葉のどこに間違いがあったと言うんだい?」

 

 肩肘を付き頬杖をしながらニマニマと話続けるタキオン。

 

 こいつ絶対に今の状況を楽しんでやがる…!

 

 タキオンが言っているのは恐らくインスタントコーヒーを出したのはタキオンが初めてだったことを言っているのだろう。確かにその点に関しては間違いではないが…言葉選びに問題がありすぎだ。

 

「……本当ですか兄さん?タキオンさんが初めての相手だって」

 

 カフェの瞳孔の開いた黄金の瞳がギロリと俺に向けられる。尻尾はまるで猫が威嚇しているように真っ直ぐに上へと伸び、黒い耳は頭と平行になるように横たわっっている。明らかに不機嫌な証拠だ。普段の彼女からは想像できない程の迫力に俺は一歩引きながらも言葉を返した。

 

「落ち着けカフェ。お前は今おそらくだがとんでもなく勘違いをしている」

 

 こういった場面で重要なのは主観のすり合わせだ。大体の悶着が起こる原因の一つとして双方の感じ方や捉え方の相違が挙げられる。だから話を理解させいかに主観のズレを解消するかが問題を解決する鍵になる。

 

「いいかカフェ?タキオンがさっき言った初めてって奴は別にいかがわしい内容じゃなくて─「いやあ…それにしてもお兄さん君のモノは凄かったとも。ナニカから絞り出した癖のある臭いと程よいトロミのあるモノを飲まされてしまった私はもう以前の私には戻れないだろうねぇ」

 

 タキオンの発言から三秒後、喫茶店『へーベン』では椅子とテーブルが飛び交った。

 

 

 

 

 

 

「すみません兄さん…」

 

 カフェは俺達が座っていたテーブルの席に座りながら逆立っている白い髪を凹ませ謝罪した。

 

 タキオンの要らぬ発言によりカフェは荒れに荒れ狂った。その結果うちの店も大荒れ状態になってしまった。かけていた鳩時計は床に落下、飾っていた植木鉢や花瓶にはヒビが入り椅子も何脚か脚がダメになってしまっている。

 これが漫画やアニメだった場合次のカットにはすぐに修復されているんだろうが生憎ここは現実世界。そのような甘い処置を行ってくれる神様など存在しない。

 

 流石にこれは買い替えないとダメだな…あんまり余裕があるわけじゃないが致し方なしか。カフェもかなり反省しているみたいだし…これ以上言うのも気が引ける。

 

「そこまで気にする必要はないさカフェ。僅かながらとはいえ元は私が原因なのだから」

 

 カフェの隣から飄々としたタキオンの声が通り抜ける。

 

 お前は気にしろよ。僅かどころか今回の元凶丸々お前だからな?

 

 カフェは謝罪する前にタキオンがこの店に来た経緯を話してくれた。なんでもカフェが俺のコーヒーにどハマりし、自身で入れるコーヒーに満足できなくなったこと、毎週末にうちの店に来ているため趣味の登山に行かなくなったこと、そしてお友達と話している場面を見かけなくなったことという要素をタキオンに不思議がられたらしい。

 その結果、カフェはこの店のことを話しタキオンは興味を持ってしまったと…

 カフェは俺に迷惑がかかるのを恐れタキオンに絶対に行かないと約束したがタキオンはそれを完全に無視し、カフェの目を盗んでこの店にきてしまったらしい。

 

 うむ…どう考えてもタキオンがいけないだろこれ。

 

 俺は苛立たしげにタキオンを見つめるが彼女はどこ吹く風と言った様子だ。

 

 本当に肝が据わっていると言うかなんと言うか…

 

「……では改めて話をしようじゃないか」

 

 タキオンはそう言うとカフェに向けていた視線を俺に向けてくる。

 

 そういやタキオンと話をするんだったな…カフェの乱入で完全に抜けていたわ。

 

「お兄さん君。君には私の研究の目的についてまず話そうじゃないか」

 

 研究の目的?

 

 俺はタキオンの言葉に首を傾げる。

 

 カフェの話によるとタキオンは早く走るための研究を行っていたはずだ。その研究のためなら三日三晩風呂にも入らずに研究室に籠るほど熱心に取り組んでいると聞いたことがある。

 

 俺はその内容を伝えるとタキオンは「それは目的の過程にすぎない」と返してきた。

 

「私の目的…それはウマ娘の未知なる可能性を知ることさ!」

「……つまり?」

「端的に言うと私達ウマ娘という種族が出せる限界を超えた速度を知りたいのだよ私は!ウマ娘がウマ娘という名の枷を引きちぎる速度を化学的にね!」

 

 彼女はまるで舞台役者のように大袈裟に両腕を広げる。

 

「なら俺と話す理由がないと思うが?」

 

 科学的に脚を早くしたいのなら今彼女はこの場にいるのではなくいつも通り研究室にこもるべきだ。誰かと話してリラックスをしたいのならまだわかるが彼女はぱっと見ではあるがそんなタイプではないだろう。どちらかといえば一人で何事も行えてしまう万能タイプに思える。

 

「さっきも言っただろう?私は時間を無駄にするのは嫌いだ。れっきとした理由が存在するとも」

 

 タキオンは視線を俺ではなくその隣の席、タキオンから見てちょうど真正面の空いている席へと向けた。

 

「見えているんだろう?そこにいるだろうお友達が」

「……」

 

 俺はタキオンの問いには答えず正面に座っているカフェに目を向ける。

 

「ああお兄さん君。カフェを責めてはいけないよ?彼女はただ私の質問に答えてくれただけだからね」

「……すみません兄さん。タキオンさんがあまりにもしつこかったので」

「いや…まあ別にいいけどさ」

 

 俺もお友達が見えることを特別隠していたわけじゃない。それによくよく考えタキオンが俺がお友達のような霊的な何かを知るための手がかりはあった。

 例えばお友達が座っていた椅子。本来椅子は誰も座っていない場合テーブルの下に戻すのが一般的だがお友達が座っていた椅子は出っ放しのまま。他二つの椅子が出てないのを見ると違和感を感じるだろう。それにカフェが暴れた際もお友達が座っていた椅子だけには手をつけなかった。カフェという存在が身近にいるタキオンにとっては気づきやすい環境が整っていたかもしれない。

 

 俺はゆっくりとため息を吐きながら会話を続けた。

 

「確かに俺にはお友達が見える。今なんか一人で割り箸ゲームをやっているぞ」

「後半はどうでもいい情報だね」

 

 ちなみにカフェが暴れていた時は一人チッチーをやっていた。

 

「んで?それがどうしたんだ?」

 

 俺がそう声をかけるとタキオンは一度目を閉じる。そしてゆっくりと開きこう言った。

 

 

 

「単刀直入に言わせてもらう。お兄さん君。私をこの店で働かせてくれないかい?」

 

 

 

「え?」

「はい?」

 

 おかしい。同じ日本語のはずなのに言っている意味がわからない。

 

「…すまん。ちょっとわからないんだが?」

「おや?聞こえなかったのかい?私をこの店で働かせて欲しいと言っているんだ」

 

 違う。そうじゃない。そう言う意味じゃない。聞いているのはwhatじゃなくてwhyの方だ。

 

「あのタキオンさん…どういうことですか?何故兄さんのお店で…」

 

 そうそれ。俺が聞きたかったのそっちの方。

 

「聞くがお兄さん君。カフェとお兄さん君は確か義理の兄妹だったね?」

「ああ」

 

 確かに俺とカフェは義理の兄妹だ。諸々あって俺が小さい頃にカフェの実家に拾われたという経緯がある。

 

「では重ねて聞くがお兄さん君はカフェの家に来た時からお友達が見えていたかい?」

「いや?見えるようになったのは暮らし始めてから数ヶ月後くらい─お前まさか…」

 

 俺が言った直後タキオンはニンマリと口角をあげた。

 

「…どう言うことですか兄さん?」

 

 カフェはいまいち理解できていなかったのかアホ毛のような髪と首をくるりと曲げる。

 

「つまりタキオンはお友達が見えるようになった俺と一緒に過ごしてお友達を見るための秘密を探りたいんだとよ」

「その通りさお兄さん君。君も中々私をわかっているじゃないか」

「はいはい」

 

 冗談めかしに言うタキオンを適当に遇らう。

 

 何が悲しくてあって間も無くクレイジーウマ娘のことを知らなきゃなならんのだ…

 

「それでどうだい?私をアルバイトとして雇ってみる気はないかい?」

 

 …正直な話、今は人手があるに越したことはない状況だ。この店はまだ開店してから一ヶ月ほどでまだまだ手探り状態。お友達の手も借りているが今は俺がお友達に無理を言って手伝ってもらっている。そろそろお友達もカフェの元に戻りたい頃合いだろう。タキオンは頭も良いし飲み込みも早く要領も良さそうだ。断る理由はこれといってないだろう。変な薬を飲ませてくる可能性があるにはあるが……

 

「まあ…別に問題ないぞ」

「なら決まりだ。履歴書は明日持ってくるとしよう」

 

 そう言いながらタキオンはガタリと席を立ち上がる。おそらく彼女の用が済んだことでここに居座る意味がなくなったと判断したのだろう。

 

「私は反対です」

 

 だがタキオンにカフェが待ったをかける。

 

「ん?なんだいカフェ?」

「兄さん。タキオンさんは危険です。料理は飲料に薬物を混ぜて提供する可能性があります。雇用するのは避けるべきです」

 

 カフェはタキオンの言葉を無視し俺に忠告をする。

 

「お言葉だがカフェ。これは私とお兄さん君の話だ。君が入る余地はないと思うのは私だけかい?」

「私は兄さんの妹です。兄さんに危害が加えられる可能性がある以上家族として見過ごせません」

「私をそこいらの犯罪者と同類にしてもらっては困る。確かに私にはマッドサイエンティストの気はあるが行うタイミングは見計らっているとも」

「だいたいタキオンさんはお友達が見えるようになったとしても何も意味がないじゃないですか」

「そうとは限らない。君の言うお友達は恐ろしい程速く走れるようだからね。そしてそんなお友達を目指し君は速くなった。なら私が見えるようになり並走でもすればウマ娘の可能性に近づけると思ってね。実例がある以上試さずにいられないのは研究者としての性さ」

「料理に興味のない人が務まるとは思えませんが?」

「その発想はいかがなものかと思うがねぇ。料理に興味がなければ料理関連の仕事に就く権利もないのかい?それに喫茶店の仕事は料理関連だけではないよ。接客に予算の計算、私にやれることは数多にあるさ」

 

 カフェとタキオン。二人の視線は飛び交い火花が飛び散る今日この頃。

なんかもう止めるの面倒になってきたな。あとは流れに身を任せるだけの現実逃避でもしましょうかね。

 

 

 

 

 

 

「では失礼するよ。お兄さん君。詳しい話はまた後日」

 

 そう言うとタキオンは店の鈴を鳴らしながらこの場を後にした。

タキオンがカフェになにやら耳打ちで話をするとカフェも落ち着きを取り戻し、最終的にタキオンはお友達と入れ替わる形でうちの店で働くことになった。

 

「嵐のような奴だったな…」

「全く…」

 

 盛大にため息を吐くカフェ。どうやら普段タキオンの相手をしているであろう妹でも今日は流石に疲れたらしい。これだけ感情を表に出したカフェを見るのは本当に久しぶりだ。

 

「…兄さん?何故笑っているんですか?」

「ん?」

 

 カフェに指摘され無意識に人差し指で頬を擦る。

 

「俺笑ってたか?」

「え?まあ……」

 

 ふむ…特に表情に出そうとは思っていなかったんだが……まあわざわざ言葉にして伝えるのもなんとなしにこそばゆい。

 

「そんなことよりカフェ。折角来たついでだ。何か飲んで行くか?」

「……はい。喜んで」

 

 俺の言葉に曇りのない表情を浮かべるカフェ。

 

 俺は好物で簡単に釣られたことに気付かないカフェに苦笑を浮かべながら、嬉しさを隠すように足早にキッチンへと向かった。

 

 

 





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