クロスオーバーと書きましたが、ほぼ自分で進めます。本紀との絡みは時間軸とかくらいです。
分かりやすく言うと、ウルトラマンに類似した個性を手に入れた主人公が、怪獣や宇宙人に似たヴィランからウルトラマンのように街を守る話です。
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事の始まりは中国、軽慶市。
『発光する赤児が産まれた』というニュースだった。
以降各地で「超常」は発見され、いつしか「超常」は「日常」に、「架空(ゆめ)」は「現実」となった。
世界総人口の約8割が何らかの「特異体質」である現在、個性を悪用する敵(ヴィラン)により混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が、脚光を浴びていた。
そう、「ヒーロー」と呼ばれる職業である!
…………………
「ヒーロー」。その名を聞けば万人が歓喜し、敵は恐れる。
今となっては日常生活に溶け込み、国からの公認の職業になっている。その前、「なりたい職業ランキング」では「医者」、「警察」、「消防士」が上位に位置していたが今はもう「ヒーロー」がその最高位に到達している。
それくらい、みんなは憧れていたんだ。
「ヒーロー」という存在に。
時に、「オールマイト」。
平和の象徴であり、希望であり、夢だった。
「私が来た!!!!」
その言葉にどれくらいの人が救われただろうか。
もちろん、僕もその1人だ。
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フルリリリリリリリリ…
「ん……あっ……」
本日3回目の目覚ましとともに朝を迎える。スマホには寝落ちした際オート再生をしていたバンドのジャケット写真が映り込んでいる。
変わりのない四畳半。変わりのない日常。
俺は特に目立たない、ただのモブだ。
ーー【[[rb:流星宇宙 > りゅうせいそら]]】。個性、[発光]
……
そろそろ光が消えそうです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー市立四位土高等学校。
偏差値は…そこそこ。国立の雄英高校には及ばないけど、市立高校ではトップレベルの高校だ。
「宇宙ー!」
「ん、どうした?嵐志?」
「見たかよ、昨日のやつ!!」
「昨日の?」
「見てないのか?昨日の敵退治!マウントレディ初戦!巨大ひったくり犯を葬る!って奴!」
「いや、どういうこと」
【[[rb:岩井 嵐志 > いわい あらし]]】。周りからの人望も厚く、それなりに人気者だ。中学校からの僕の数少ない友人で、特に目立たない僕の、唯一心を開いて話すことのできる存在。彼はいつもの朝、僕が学校で席に着くと真っ先に話しかけに来る。
それが僕の不変のない平和な日々だった。
「やっぱ俺も早くヒーローになんねぇとなぁ!なぁ!流星!」
「え?…あぁいや、僕はいいかな」
「なんだよぉ、その個性があったらヒーローなれるだろ?」
「個性だけじゃ上手くいかないんだってば、現実は」
僕の個性は[発光]。体から少量の光を放つことが出来る。それは手から出すことができるし、体の至る所から出すことができる。
ただ……
なぜか高校に入学してから日に日にその光量は減ってきている。最初は体の不調かと思ったが、次第に、自分が個性を出さなくなると周りがどんどん明るく見え、自分自身がどんどん暗くなっていく気がした。
もう今は[無個性]そのものだった。
「でもよー流星、進路早急に決めねぇと担任にドヤされるぞ」
「だよね…うーん…」
もう高二も終わる。まわりのみんなはすでに進路先を決めている、もうそこでは受験が待っている。
「そういう嵐志はどうすんの?ヒーロー志望?」
「俺?そーだなぁ…やっぱそうなってくるよなあ…」
「実際、僕らみたいな一般生徒よりも雄英みたいなエリートのところの方が就職向いてるんだろうな…」
「だよなぁ…」
[ヒーロー]
みんなの憧れの職業。僕も子供の頃はテレビ番組で悪を倒す正義のヒーローに憧れた。小学生の最後の文集では将来の夢にヒーローと書いた。
雄英に、入りたかった。
いつしか夢は無いものとなり、心の光はどんどん小さくなっていってしまった。
「まぁ…まだいいか……」
ヒーローになりたい。
もうそれは叶わないと。僕は自分で自分を閉ざしたんだ。[newpage]
ーーーーーーーー2年前の春。
「…………落ち……てる?」
見間違いなんじゃないかと思った。自分の中学校では自分しか雄英を受ける生徒はおらず、周りの応援も並以上だった。
受かると思っていた。
…過信しすぎたのか、舐めていたのか。
僕は部屋から出ることが出来なくなっていた。
もし出てしまったら親が、先生が、みんなが、なんと言ってくるだろうか。考えただけで申し訳なくなった。
母さん…「よく頑張った」じゃないんだよ。
先生…「その努力は絶対無駄にはならない」って言うのは成功した人が言うんですよ。
あの日以降、僕は個性を使うことが出来なくなっていた。落ちた原因は単純明白、「実技試験」。個性、やはり個性の強弱が社会にものを言う。
あの日だ。あの日以降、僕の個性は僕に会わなくなった。
ーーーー7時。白紙の進路希望調査書を眺め、昔のことを思い出してみる。
(…早く決めないとな…)
提出の期限は今日だったが、担任の教師に懇願し、明日までに伸ばしてもらっていた。
紙を空高く掲げ、空に置いてみる。
その紙面には、ヒーローと書かれた跡が異質にも質量を持っているように感じる。
「ん、?」
丁度、流れ星が降ってきた。
昔はよく願いごとをしたもんだな。確か、なんだったかな。
ヒーローになれますように、だっけ。
フリリイイイイィィイィイィイイィイイン
「ぐぁあッ!!??!??」
何だ!???
突如耳鳴りが襲ってきた。いや、耳鳴りじゃない。音だ。
とてつもない高音。
ダメだ。耳が、脳が震える……意識が……
意識が飛ぶ寸前、僅かに開けた視界には光る赤い球が見えていた。
「何だよッ…クソッ…」
視界がぼやけ、やがて意識は遠くなっていった。
…………………………………あっ…
気が付く。
何だったんだ、さっきの…誰かの個性か?敵が現れたのか?
周りを見渡してみるが何ら変わらない風景が広がっている。あんな音がしたのに人も集まらず、なんの反応も示さない。僕だけが異質みたいだ。
「あれは…一体…」
未知なる出来事に思考もままならない。胸がザワザワする。
なんだ…この感覚…
胸の内がとても熱い。分からない。なにも、これは……
とにかく帰ろう。あたりはどんどん暗くなり、自分の荒い息だけしか聞こえないほど、動転していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ハァッ…ハア……」
人気の多い大通りを避け路地裏に入る。
やっぱり。やっぱり何かおかしい。
ーーー(ママー!今日はカレーがいい!!)(しょうがないわね)(明日締切かよ…)(じゃ、また明日なー)(おつかれ〜!)ーー
おかしい…耳が冴えてる。いや、正確には耳が過敏になっているのか?
ファーーーン!!
「ぐっ!?」
車の走る音どすら雑音に聞こえる。
虫の音、踏切、人々の談笑。だめだ、うるさい。
なんでだ。おかしいじゃないか。
耳を抑えながら路地を駆け抜ける。周りが暗くなっていても昼間同然に思えてしまう。これは、五感が鋭くなっている。確実に、そう。
おぼつかない足で必死に帰路に着く。時刻は8時を回っている。
「う…うぁ……」
布団に入り、体を落ち着かせようとする。布団の擦れる音、ましてや大気の流れでさえ億劫に感じる。
どうなっちまったんだ。僕は
その夜、不思議な夢を見た。光の夢だ。遥か彼方、あれは…宇宙か。光、赤く、輝く光がそれを通過して行く。目を閉じているにもかかわらずあまりの眩しさに目を覆いたくなる。
そしてその先は…1人の…1人の…………1……人…の…………
…………………
「っ!!!!!!!」
朝起きて思い出そうとした。でもそれは出てこなかった。でも、思うことがあった。あれは僕、僕の個性何じゃないのかと。
[new page]
(……何だったんだ…昨日の…)
朝、学校に行く道。今日は耳や目は敏感になってはいない。気がおかしかったせいだろうか。特に前と変わっているところは無い。
(にしても、昨日の夢…)
人通りを抜けても今はなんの違和感もない。横断歩道が青に変わり、横断歩道を渡る。
あの流れ星の影響だったのか?だとしたらなんであの周囲には被害がなかったのか?僕を初めから捉えていた?
いや、意思があるはずが…
キイイイイイ!!!!!
トラック。なんで?
ふと視線の縁で青く点滅する歩行者信号が映り込む。
(信号無視か?)
ダメだ。間に合わない!!!
「!!!!!!」
なにか、胸の奥からくるものがあった。
(ッ!!!!!)
誰かが叫んだ。
「危ない!!!!!」
刹那。気付けば僕の体は柔らかい感触に包まれていた。
(これは…肌…)
宙に浮いて…
ドサッ
「ってぇ!?」
途端、衝撃。一体何が起こったんだ?
「大丈夫だった?」
声のする方を見る。というか目の前に声の主はいた。
「怪我、ない?」
同年代くらいの女子が目と鼻の先でこちらを心配している。
「どぅあ?!だ、大丈夫です!」
「そう?ならいいんだけど…」
知らない人、特に女子なんて滅多に話さないから戸惑ってしまう。
しかもこんな至近距離で……
髪が風になびかれ普段とは違う匂いに気を取られる。
そうか。助けられたんだ。僕はこの人に。
「あ、あのっ、ありがとうございます…」
「いやいや、良いって」
体を起こして彼女と向かい合って話す。彼女は手を振り、「大丈夫大丈夫」と言う。その手にはうっすらと血が滲んでいる。まさか…僕を助けた時、
「あのっ!その傷…」
「あっ、私もう行かなきゃ!じゃあね!」
「あっ、ちょっと!……っ!」
彼女は足早に行ってしまう。追いかけようとしたが足に痺れが生じそのまま座り込む。
あの時、彼女がいなければ僕は死んでいただろうな。心の中でお礼を言った。
周りに人だかりができてる。僕も早く退散しよう。後でなんやら言われるのはゴメンだ…
そそくさとその場を後にする。人波に隠れたからそうそう注目されなかっただろう。
(にしても……)
さっきの、胸からきたものって…一体………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「キーンコーンカーンコーン」
放課後。僕の頭の中は朝の出来事でいっぱいだった。
あのときのアレは……
「宇宙、お前朝から思ってたけど今日おかしいぞ」
嵐志が話しかけに来る。
「そ、そうか?」
「なんか、考え事でもあるのか?」
「いや、別に…」
「なんかあったら言えよな」
そう言ってくれるのは君だけだよ、嵐志。
「じゃ、また明日なー!」
「ああ、じゃあな」
軽く手を振り教室を出る嵐志。アイツはよく育ってるよな。人望も厚くて、俺と違っ……
(ダメだな、比べちゃ……)
教室が静かになっていくにつれて、荷物をまとめてる自分が浮いてる。
[newpage]
朝の出来事があった場所まで来ると、落ち着いて状況の整理が出来た。僕を助けてくれた彼女は誰だろうか。
あの時の咄嗟の行動。自分なら出来ていただろうか。下手をすれば自分が怪我を負うかもしれない…あの状況で。
ヒーローでは無いだろうし、並の一般人の判断力じゃない…
だとすれば雄英のヒーロー科か?仮にそうだとしたら確かに納得は行く。
「お礼、ちゃんと言わないとな…」
あの時の傷、まだ血が流れていて僕を助けた時にできたものだということは分かってる。だから…だからこそちゃんとお礼を言わないと。
道路を渡り、大通りに入る。帰宅時間と重なり人通りはそれなりに多い。
しばらく歩いたところだった。
ドオオオオォォォォオン!!!!!
(なんだ!?)
思わず音が鳴った方に振り向く。
離れた場所で黒い煙がたちこめていた。
(なにかが爆発したんだ)
赤い炎も確認できる。
(あれは…火事……?)
「キャー!!」「うわぁぁあ!!」「逃げろー!!」
爆発のあった方から人々が逃げて来ている。やはり火事だろうか。
そのとき、爆発の言った場所から上空に向かって一直線の青い線が描かれた。
それはキラキラと輝き、神秘性を秘めているように見える。
でも、1つ、それが「異常」なことであると本能的に認識した。
あれは、「ビーム」だ。
逃げる人々が口々にその名を叫ぶ。
それは、紛れもない「敵(ヴィラン)」だった。
[newpage]
(敵だって!?なんで?急に現れたのか??いやそんな事より、あの爆発……)
初めて生で見る光景に呆気に取られる。
早く逃げないと。
あの爆発に巻き込まれたらひとたまりもない。時間が経過するにつれ、逃げる人達の数も増えていく。大通りが怯える人達で埋め尽くされ、助けを求める声や、悲鳴が飛び交う。
(早く、逃げなきゃ…)
このまま居るといつあの爆発に巻き込まれるか分からない。早く、早く逃げて安全な場所へ……!!!
((助けて!!))
「うぅ!!」
途端、僕の脳に悲痛な叫びが響いた。その声は脳に反響し、強烈な頭痛を引き起こす。
「な、なん…だ、?!」
この声には、聞き覚えがあった。朝僕を助けてくれた、彼女の声。
(まさか…!?)
ーーーー気付けば走っていた。無我夢中で走っていた。理由は分からない。ただ、「助けて」という声に強く応えなければならない気がしていただけだった。
「ハァ…ハァッ……!」
馬鹿か、僕は!!!なんで走ってるんだ!!
危ないんだぞ!!自分の身が!!
葛藤や、理性は走ってから主張を始めた。それは同時に、現場に着いた頃に、恐怖に上書きされた。
ヒーローの姿は無い。途端の出来事でまだ誰一人として到着していなかったようだ。
逃げる人達を掻き分け、声がある方へ向かう。警察が数人倒れ込んでおり、所々から血を流している。パトカーは潰れ、内部から爆発したようだった。
その惨劇がよく分かった。
「!!!!」
開けた場所。背の高い男が立っていた。
身長は180cm、年齢は20歳くらいだろうか、黒のオールバックに黒い瞳、裾が破れている黒のコートを着込んでおり、そこに手を突っ込んでいる。尖った眉を細め、こちらを睨む。
その迫力で圧倒されそうになる。それは絶対的悪意。
「なんだ?まだ逃げてない奴がいたのか」
ニヤリと笑いこちらに話しかける。
「ヒーロー…じゃないな、なんだよ学生か?」
心臓がわめく。なにかも分からない相手がひどく畏怖して見える。足が竦む。膝が笑っている、
「まあ、いいか、逃げないんなら…」
右手をポケットから取り出しこちらを指さした。
「死ね」
バッ
彼の指からは青色の閃光が放たれた。
(動け!!!)
「っ!!!」
足を動かし瞬時に避ける。
「へぇ、やるじゃん」
思考停止で避けたせいか上手く着地できず、地面に倒れ込む。足はまだ震えている。恐怖で、当たれば死ぬということが…
(避けた避けた避けた避けた!!!!考えろ!考えろ!!次の…行動を!!!)
思考をめぐらせろ。ヤツの個性はなんだ?考えろ!そして動け!
「ったく、早く消えろよな…」
2発目。またもや直線。
「っ!!!」
体が地面に触れる。その都度衝撃が体全体に流れる。
かすかに見える青いビームは自分の背後にあった消火栓を破裂させた。勢いよく水が噴き出す。
「あハッ!逃げろ逃げろ!」
ダメだ。体がもたない。足はもう限界を迎えている。頭の中の方程式だけが常時展開する。
(敵の…背後に……)
側面に入った時、よけたビームが後ろにあった飲食店を撃ち抜く。
バァアァァァン!!!
「ぐぁああ!!!」
爆風をもろに受け、背中から強烈な圧力を感じる。体は前方に吹き飛び、その手足は地面に転げ込む。
「あぁ!!あぁあぁああぁあ!!!」
痛い!!!!さっきまではアドレナリンが出ていて痛みをあまり感じなかったのか…?!背中は恐らくやけどを負っているだろう。空気に触れることでその痛みが脳に危険信号を知らせる。爆風の衝撃で頭は逆に冷静になり……だからこそ痛みが襲ってくる。
「あぁ!あぁあぁ!クソっ!!」
「プハハハハ!!!!なんだよ!?もう終わりかよ?!」
敵が近づいてくる。逃げなければ。
体が…!?動かない……
「ヒーローになったつもりか?えぇ!?」
僕が仰向けになっているところに視線を合わせている。今までの距離が嘘のように縮まる。僕が動けないと分かってるだろう。
「俺は、「ベムラー」。俺の個性は「操球」。この青い球を自由自在に操ることが出来る。」
そう言って手から小さな青い球を取り出す。指の間から間へ、手の中で球を動かす。
だからか…!?あのビームも、球を高速移動させて攻撃の威力を強めていた…?!
「どうだ?最高だろ?俺の個性は。だよなぁ?そうだよなあ!?」
その時、ヤツの動機が分かった。
承認欲求だ。その個性を誇示し、皆から名声を得ようと……
(ハッ!!)
ヤツの後ろに大きな青い球があるのに今更ながら気付いた。そしてそれの中には、あの助けを求める声の主が入っていた。
朝、僕を助けてくれた彼女がその青い球に捕らえられていた。気を失っている様子で目を閉じ動かない。
「お前!人質を…!?」
「あ?気づいたか?どうだ?良いだろう?最初はババアを人質にしてたんだがなぁ、この小娘が変わりやがってよぉ、ヒーローヅラして大して力もない、何しろ、雄英のヒーロー科らしいぜェ!!笑えるよなァ!」
雄英…?ヒーロー科?だからあの時、咄嗟の行動ができたのか…
そしてまた、今回も……
自分を犠牲にしてまで……
「逃げてもいいんだぜぇ??なぁ?!ヒーロー!!呼んでもいいんだぜ??」
「クッ……!!」
その黒い瞳には、何も映っていない。恐怖が、ただ、恐怖が…
「初めはヒーローが来たかと思ったが…ただの一般学生じゃねえか、アイツと違って雄英ですらない…」
「助けを…」
「あ?」
頬が焼け、砂が付着した唇を思い切り開いて叫んだ。
「助けを…!助けを求める声がしたんだ!!!!!」
「だから何だよ??」
体の痛みはもう限界に達していた。でも意識は、彼女を、みんなを助けたいという意思は……!!!
「僕は!!ただ、助ける!!!!」
瞬間、胸の内側がざわめき、そのなにかが体全体に溢れてきた。
「うるせえんだよ!!」
右手を構え、即座にビームを放つ。ほぼゼロ距離の、殺人ではなく、破壊の衝動。
ドオオオオオオオオオオオトン!!!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私がもっと強ければ…
後悔ばかりを気にする中、これまでの時系列を振り返る。
少し前、今日は外出して外の空気に触れようと思い、雄英から少し離れたこの街にやってきた。
周りを散策しながら敵がいないかのパトロールしていた時だった。
大通りでなにか騒ぎが起こったようで、人々が逃げていた。
(敵か?)
急いで現場に向かう。
身体を前方に突き出し意識を脚に集中させる。
ブオォ
白い煙を出しながら、少女の体は宙を舞う。ひしめく人達を飛び越え、上空に出る。
私の個性は、「蒸気」。水分を蒸気に変え、その力で飛んだり、早く動くことが出来る。
(あっちか)
爆発があったのか、煙が上がっている。
(被害が大きくなる前に…!)
「おらぁ!!どうした?それでもケーサツかよ!?」
駆けつけた頃には悲惨な光景が広がっていた。
潰れたパトカー、血を流し、倒れている警察。
そして、敵<ヴィラン>。
「大丈夫ですか!?」
優先すべきは人命。警察に声をかけ、意識の有無を確認する。幸い脈はあるようだ。
「おいおい、ヒーローか?!?」
警察の1人を安全な場所に移動させたあと、ソイツが私の存在に気付いた。
「いや、その成り………ヒーロー科か!?!」
嬉しそうにそのとがった眉を上げ、真っ黒の目を見開く。
「アンタがやったの…これ…!!」
「そうだ…!俺がやった!ハッ!未来の卵と会えるなんて光栄だぜ!!」
(そうとう興奮してるな…まずは落ち着かせなきゃ…学校で学んだことを……)
「やろーぜ!!個性バトルってやつを!!」
敵は両手を広げた。
まずい!
轟音と共に地面がえぐれる。寸前のところで、回避。
敵の個性か!?速すぎて見えなかった!
手を挙げた瞬間なにかが発射された…!
距離を……
「いいねぇその個性……飛べるんだ」
左足に蒸気を集中…!!
左足から蒸気を発射。重力と蒸気で一気に距離を詰める。
「!!!!!」
旋回。
無理な軌道変換に不時着する。身体が地面に投げ出される。
「ぐっ!?……」
アイツ……
「あれ?気付いちゃった?」
敵の背後に青い球が……中にはおばあちゃんが入っている。
「アンタ!人質を!!」
「敵なんだからこれくらいはしねーとなぁ、ヒーロー志望ならそれくらいのハンデは必要だろ?俺たち敵は一般人だからなぁ」
「くっ…!!」
無理に動けば人質が危ない…
再び足に意識を集中させる。今ある私の神経を。
今の状況、とても戦える状況じゃない。ならばここでプロヒーローの応援を待ち、私は今救える命を救うことに専念する。負傷者は人質含め5人、
(絶対、助ける!!!)
「うぉっ!?」
狙うは青い球、敵に近づいたところで、右手に意識を集中。水蒸気の威力で球に穴を開ける。敵はまだこの状況を理解でしていない…
(今!!)
中から人質を救出。なるべく衝撃がないように保護…!!
そして再び足に集中!警察官を1人の腕を掴む!
「舐めるなぁ!!」
ドオオオオォォォォオ!!
「ぐっ!!?」
地面に向かって放たれた個性によって体勢を崩してしまう。
(ダメだ…!!個性を使いすぎた!!)
身体が限界を迎えてくる。
もう、足が……
3人諸共地面にたたきつけられる。
「ハハッ…口程にもねぇな…」
敵が近づく。駄目…
(なんとか……彼らだけでも…助け…)
視界が青くなったのはそれからだ。
恐らく、あの敵の個性。私は人質になってしまった。
情けないよ、私。
ヒーロー科にいるのに…ヒーローを、目指してるのに……
ダメだ……怖くなってきた……
このまま死ぬのかな…
今日の朝、私と同い年くらいの人を助けた時も、怖かったな……あの時私が早く行ったのは、本当は……
怖かったんだよ…私。あの時足、震えちゃってたし、私、向いてないのかな…
怖い…怖いよ……
誰か……………
(助けて)
意識が消えてから戻ってきたのは、強い日差しだった。夕陽のあの空。眩しいから目を開けたんだ。
でもそれは太陽じゃなかった。
輝くそれは、ひとつの光だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ハァッ…流石に…死んだろ」
あの距離からの攻撃だ。おそらく、一般人なら骨も残らないだろう。
今までの胸のざわめき。アレは、そう。
「光」だ。
光なんだ。アレは。僕が追っていたあの…
爆発で散った破片や起きた煙が舞う。その中で、僕は立っていた。
(もう、迷わない…)
「!?なんだ??てめえ!」
銀色の髪、黄色い目。その姿はまさに、今までの彼とは想像を遥かに越した、光に満ち溢れた1人のヒーローだった。
「なんだ、ただの学生じゃないのか?」
「あぁ、僕はただの学生だよ。ただ……今はお前を倒す、ヒーローだ!!」
前かがみになり、両手を突き出しファイティングポーズを構える。戦い方は分からない。だけど、ここで勝たなくちゃ、そして、彼女を助けないと。今度は、僕が助ける番だ。
「死ねぇ!!」
ベムラーが左手を突き出すと同時に高速でビームが流れる。
すかさず跳躍でかわす。
スッ
「えっ?!」
避ける直前、足に異様なまでの力が加わり、ビルを越すほど高く飛んでしまった。
(この力は…?!)
「鬱陶しいんだよ!」
ビームの連射。空中で全て避け、ベムラーとの距離を詰める。慣れない動作でキックの構えをする。
「!!!」
不発。着地と同時にかわされ、左足が地面にめり込む。その衝撃でベムラーが少し体制を崩す。
足を地面にめり込ませたまま腰を回転。手に意識を集め左腕を右に避けたヤツに押し込む。ヤツの腹にに当たる寸前、腹と拳の間に青い球が加わる。
「ぐっ!!!?」
強烈な反動で拳が押し戻される。手が焼けるほど痛い。本来ならば既に蒸発してもおかしくない威力なはず…
それに…この体は…
「両手あること忘れるんじゃねえよ!」
右手で顔面を掴まれる。
BOM!!
「!!!!!」
手の中に青球を…!!!?
クソっ!!
衝撃で混乱したが、大した威力では無い。
「今度は、こっちの…番だ!」
埋まった足を持ち上げ、えぐるようにして蹴り上げる。
一旦距離をとる。構えは怠らず。冷静に…
「へっ!面白ぇじゃねえか…ヒーロー…ねぇ」
「ハァッ…ハァッ…」
「へっ」
「!!!!」
瞬間、ベムラーのボディブローがみぞおちにめり込んだ。
「ぐ!?」
続いて予め手の中に仕込んでおいた青球を発射。
ガシャンッ!!!
空きになった店舗に勢いよく飛ばされる。
店内の棚にぶち当たりその場へへたり込む。
「あぁ……!!」
クッ……
2発目。今度は避けたものの爆風で店舗の窓を突きぬけ、向こう側に弾き出される。
体には無数のガラス片が刺さっており、顔面からは血が流れている。
「やっぱりな…」
ヤツの足音が大きくなる。こちらに迫っている…
「お前、個性制御出来てないだろ」
「!!!!!」
「その反応!図星か?」
「だったら、何だって言うんだ!」
煙立ちこめる中から出てくるヤツは悪魔そのものだ。
「体が追いついてねえんだよ、その個性に」
「なっ!?」
「個性が発現したてのガキみてえに、制御出来てないんだな、その個性に合わないカラダしてんだよ、お前は」
確かに…この力が発現した時、全身の筋肉が悲鳴をあげてた。肉離れを起こしたような痛み……
「それで…ヒーローか?自分を律せないヤツに、ヒーローが務まるかよ??」
「言わせて……おけば…!!!」
自分でもそれは感じていた。皆のように強くなれない個性。だから……だから…!!!
伏せた状態から、足に集中。右足に体重をかける。そしてインパクト。衝撃で地面のアスファルトが砕ける。
ヤツの目の前に来た瞬間左手を構える。
「懲りねぇな!!」
腹めがけて殴る。しかし既のところで青球によって阻止される。
(クッ……!?)
「ん?コイツ……」
掛かった!!!!
「お前、まさ…」
左手はデコイだ。左手が焼き切れる前に、右手に意識を集中。今の僕の、全力を…!
ゴオオオオン
瓦礫や、煙が散漫とし辺り一帯が災害でも起こったかのように荒れている。
煙をかき分け、ベムラーの様子を探る。
手応えはあった。僅かに肌を感じ、殴った。
「うっ………!」
なんだ!?体が熱い……!?もう体力が……!?
不意の痛みに膝で立つ。
(これは…!?)
身体の内側で神経が焼け切れていく。光が点滅を始め、危険を知らせる。このまま戦いを続けると…もう身体が持たない事が瞬時にわかる。そして、さっきの攻撃で左手をダメにした。火傷でまともに動かない。
ガラッ……
瓦礫をおしのけ、何かがそこに立った。煙の中、シルエットだけでもその恐怖が伝わる。
(アイツ…まだ…!)
煙が晴れ、その凄惨な状況が明らかになる。そして倒すべき相手を再度認識する。
顔の半分を青い球で覆っており、顔面にへばりついている。顔からは血を流しているものの、まだその目からは衝動を感じさせる。
「あっ…ぶねぇ…なぁ…」
殴られる寸前、青い球でガードしたんだ……!
「ぶっ殺してやる……!!」
クソっ!!もうこっちは限界なのに…!!足が…動かない……!!胸が焦げる…!
(言ったじゃないか…!!僕は…!助けるって…!)
ヒーローに……!!なりたかったものに…!!
スッ……………………
ヤツを殴ったあの時、少し気付いてしまった。僕の、今の個性。この力は身体を強化するという単純なものじゃない。僕の【発光】という個性に共鳴して、光を【エネルギー】に変える。僕の光を発する個性に力を加え、様々な身体の機能を向上させる。
ただ、今は僕が…僕の身体がそれに釣り合ってない。エネルギーはあっても、元の器が非力であれば器が壊れる。小さな風船に空気を入れればある程度のところで風船は割れてしまう。大きな風船であれば…それを超えれるように。
だから、今は…壊れて……僕の「心」で……!!!
全力を……!出す!!!!!!!!!
ヒーローというものを認知する前、子供の頃、お母さんに見せられたある番組。それは、大怪獣を前に銀色と赤色の巨人が立ち向かう話。彼は大きく、優しく、そして何より、強かった。街を守るその姿に僕はヒーローという印象を強く残された。
見様見真似でやって見る。彼が得意とした、あの技を……
今なら…できる!!!!!!
「【スペシウム光線】!!!!!!!!!!!!!!!!!」
焼けただれた左手を横に立て、前に、右手を縦にして後ろに両手首を交差させ、手に十字を作る。
今ある自分の全神経を手に集中させる。
発光したと同時に、青白い光の光線が、直線方向向け、敵に向かう。
「なんだっ!?」
急いで青球を纏う。全身を包み込むと同じく、光が直撃する。
「ぐ……!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」
青球にヒビが入る。まずい。ダメだ。
クソっ…!!ここまでか…!!
光が吹き抜ける。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
轟音と共に、その光は空まで突き抜け、やがて辺りを輝かせながら消えていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
渾身の1発…。今の僕の全力。
「!!!!!」
髪は元の黒色に戻り、目からは血の涙が流れている。口から大量の血が……内蔵が……痛い……
「もうダメだ……」
意識が朦朧とする中、1人の少女がこちらを見ているのを見つける。あの人は…朝の…
重たい足を引きずりながら彼女の所へと向かう。
四肢に…力が入らない。
事切れそうになった瞬間、彼女が駆けつける。
地面にへたり込むと彼女は慌てた顔をして僕の体を支えてくれた。
「あ…あの…」
「黙ってて!!今、傷の手当を!!」
「ご、めん……」
叱責されてしまった。彼女が常備していたであろう包帯を身体に巻かれる。
「………」
包帯をまく彼女を見る。その目には涙が浮かんでいる。
「……ありがとう、ございました……」
「えっ?」
「私、何も出来なくて……あなたがいなかったら私今頃…」
「いや…感謝したいのは…っ…こっちだよ」
彼女の手が止まる。
今度はちゃんと、目を見て言える。
「朝、君が居なかったら僕は死んでたよ……ありがとう」
「え!?」ギュッ
包帯で縛る手が自然と強くなる。
「イタッ!!」
「ご、ご、ごめん!!!」
慌てて包帯を緩める。
「でも、気付かなかったよ…あんな髪じゃなかったし……」
「だ、だよね……」
近くでは消防車のサイレンなど、応援が来たようだった。プロのヒーローも駆けつけ、騒がしくなる。
その音が「助けが来た」という安心感をもたらせてくれた。
「そろそろ、帰らないと…」
「え?どうして?」
この場にいたところで、後でこの始末を咎められるだけだ。それにヒーローでもない人間が無闇に個性を使ったから敵同士の対立と思われても仕方ない。
「僕は……ヒーローじゃないから、」
「そんな事ないよ!」
「え?」
ちりじりに破けた僕の袖を引っ張る彼女の姿に、圧倒される。その言葉は、偽りでもなく、本気で、僕に対して言った。
「君は紛れもなく【ヒーロー】だよ」
「私を助けてくれた…ね…」
その笑顔が夕焼けに照らされ、心の中がなにかで包まれるような感触がした。
その日、僕はヒーローになった。
ばきしむです。
書きたいだけ書いたので執筆が遅くなるかもしれないです。誤字あったら教えてください。応援よろしくお願いします。