百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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原作第1話で死んだ茜を何としてでも救いたい……と思って、書きました。
これは、原作の世界で死んだ百夜茜がアルカディアに転生し、冒険者になるまでのお話です。


第一部 百夜茜が理想郷に転生した件
第0話 終わりとハジマリ


 ある日突然、世界に未知のウイルスが蔓延し、世界は滅んでしまったという。

 多くの大人はウイルスにより命を落とし、生き残ったのは子供だけだった。

 そして、子供達は、地の底より現れた吸血鬼に「家畜」として支配された……。

 

「まーた優ちゃんここにいた。ちーす」

「んだよ、茜かよ……」

 地下都市サングィネム、そこに優一郎やミカエラなどの子供達はいた。

 百夜茜も吸血鬼に連れてこられた子供の一人だ。

 彼らは吸血鬼に血を差し出しながらも、生かされる形で何とか生きていた。

「はーい、茜ちゃんでーす」

 茜が優ちゃんと呼ぶ人物の名は、百夜優一郎。

 ここの子供達の中では12歳、茜より一つ年上だ。

「んで、何してんの? ミカは一緒じゃないの?」

「一緒じゃねーよ、あんな奴!!」

「あははっ、いいじゃーん。私達みんな、家族なんだから」

「……俺に家族なんていねえよ」

 茜は優一郎を大切な家族だと思っていたが、優一郎本人は、彼女を家族と認めていなかった。

 実の父親に殺されかけ、母親は息子を悪魔の子だと罵り自ら命を絶った事で、

 優一郎は百夜孤児院に預けられた。

 そんな彼が、誰かを家族だと認めるはずがない。

 

 だが子供達は、次々に優一郎に事情を明かした。

 ミカエラは両親に虐待されて車から投げ捨てられ、

 親を見た事のない子供や、両親が自殺した子供、孤児院の前に捨てられた子供もいた。

 彼らは皆、優一郎と同じような境遇だったのだ。

 

「でーもー、僕らは寂しくありません。

 何故ならー、今日から優兄ちゃんが来てくれたからでーす!」

 子供達が一斉に優一郎に群がり、優一郎は驚く。

 孤児院の院長は「仲良くできそうね」と微笑んだ。

 

 だが、ひとときの平和はすぐに終わりを告げる。

 突然、院長が血を吐いて倒れてしまった。

 ビルの近くで爆炎が起こり、車は倒れ、バスが突っ込んで事故を起こす。

「警告します!! 愚かな人間どもの手により、致死性のウイルスが蔓延しました!!

 残念ながら、人類は滅びます!!」

 さらに、幼い姿をした女吸血鬼が人類滅亡を宣言。

 一夜にして衝撃を受けた子供は泣き叫び、パニックになってしまったという。

 

 それから4年が経過し、茜は11歳になった。

 優一郎は地下都市を脱出するために、ミカエラと共にある計画を練った。

 フェリドの館から銃と地図を盗んだミカエラは百夜孤児院の子供達みんなで脱出しようとした。

 茜は子供達を起こしに行き、いよいよ脱出の時が来たと思われた。

 

 しかし、ミカエラの計画はフェリドにバレていた。

 猛スピードでフェリドは子供に迫り、子供の血を吸って殺した。

 優一郎は怒りのあまりフェリドに銃を向けるも、フェリドは難なく優一郎の銃弾をかわした。

 子供達は大急ぎで脱出しようとするが、

 フェリドは子供達よりもはやく、首を飛ばし、胸を貫いた。

 

「あ……」

「茜!!」

 そして、茜にもフェリドの手が迫る。

 茜はフェリドから逃げようとするが間に合わず、そのまま茜の首はフェリドに切り落とされた。

 

 こうして、茜は吸血鬼の手にかかって命を落とした。

 茜は暗い地下から明るい地上に出て、陽の光を浴びたかった。

 家族と一緒に脱出して、もっと家族と一緒にいたかった。

 そして、もっと生きたかった。

 

 しかし、その願いは叶わなかった――はずだった。

 

「やれやれ、こんな子供まで殺しちゃうなんて、吸血鬼は本当に、どうかしているな」

 

「……ここ、どこ……?」

 自分はフェリドに首を切り落とされたはずなのに、

 首は何事もなかったように、自分の身体と繋がっている。

 それどころか、今、茜は「生きている」。

 身体も成長していて、元々は11歳だったのに、今は15歳相当の身体になっている。

 しかも、窓からは陽の光が差し込めていて、周りには知らない人がたくさん寝ている。

 見られなかったはずの地上なのに、そこは日本の地上ではなかった気がした。

 

「……あなたは……」

 自分の傍には、緑の服を着て、腰に剣を携えた青年がいる。

 その青年の肌は浅黒く、耳は長く尖っていて、まるで吸血鬼のようだった。

「ピュール・ドス・ジュガレ?(訳:大丈夫か?)」

「きゅ、吸血鬼!?」

 青年が聞いた事のない言葉で茜に声をかける。

 尖った耳は茜がいた世界の吸血鬼の特徴であり、茜は青年を吸血鬼だと思って身震いする。

 しかし、青年は静かに首を横に振った。

「ウスタン・トラン・ナウト・サングイネ、ウスタン・トラン・イリシーリ

 (訳:私は吸血鬼ではなく、ダークエルフだ)」

「イリ……シーリ……?」

 聞いた事のない言葉だった。

 ラテン語でも、フランス語でもない、元の世界にはなかった言葉だった。

「そんなの、知らないし聞いた事がありません。

 というか、ここはどこですか? あなたは何人(なにじん)ですか?」

「ウスタン・トラン・タウドル(訳:すまない)。つい、ダークエルフ語が出てしまった。

 ここからは共通語で話そう。

 ここはアルカディア、フェーン王国の冒険者の宿『疲れたミツバチ亭』だ」

「共通語……? ぼう……けん、しゃ……?」

 聞いた事がない二つの言葉に、茜は首を傾げる。

 しかも、ここは日本ではないはずなのに、

 自分の日本語が通じている事に、茜はますます混乱した。

「ああ、説明してなかったな。

 冒険者というのは、かつて栄えた文明の遺物を探したり、困った人を助けたりする職業の事だ」

「私、この世界の事はよく分かりません。

 それに、身体がちょっと痛いから、もう少しだけ休ませてくださいね」

「もちろん。お金は私が払っておくよ」

「ありがとうございます」

 茜は青年にお礼を言った後、休息を取った。

 しかし、休息を取る前に、茜は青年に名前を聞かなかったのを後悔する。

 仕方なく、明日に青年の名前を聞く事にして、茜の奇妙な一日目は終わりを告げるのだった。

 

 現世で命を落とすはずだった茜は、異世界でその命を永らえた。

 そこは、あらゆる神秘が当たり前に存在する、世界にとっての理想郷だった。

 そんな理想郷で、茜は冒険者としての第一歩を踏み出す事になる――




ハーメルンの仕様上、プロローグを投稿しましたが、
すばせか長編をハーメルンに投稿し終えるまで、休載です。
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