百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

デリサルは腐敗教団の四神官と長の冬城吹雪に対抗するため、ガルバ帝国の雷鳴城に向かう。
雷鳴城の仕掛けや魔物に苦戦しながらも、デリサルは城を攻略し、白虎と一騎打ちを行う。
狡猾な罠を使って白虎を倒したデリサルは、白虎から秋雷の結晶を授かりる。
デリサルは腐敗教団との決戦に向けて一歩前進するのだった。


第24話 冬のチエクラベ

 その頃、ハリネース王国に来ていたレイは、玄武の迷宮に足を踏み入れていた。

 水を司る四神・玄武が住むだけあって、水流や氷の仕掛けが多数存在した。

 そのため、ここに足を踏み入れると、流されたり滑ったりと思うように動けない。

 

「まったく……水の流れが激しいのは、魔導師としてはキツいねぇ」

 レイが愚痴を吐きながら、玄武の迷宮を探索する。

 魔物の数はそれほど多くなかったのでレイでも何とか倒せたが、

 ダンジョンそのものの探索が難しいようだ。

 レイは魔導師なので、身体能力を必要とする仕掛けは苦手だ。

 何とかそれなりに進んではいるものの、疲労は少しずつ蓄積していた。

「ちょっと休もうかね」

 そう言ってレイは、安全地帯で休息を取る。

 だが、警戒している間にも、レイは周りに魔物がいないかを確認した。

 もし休息中に襲われたら自己防衛できないからだ。

 

 魔物が襲わないのを確認すると、レイは体力が回復するまで休息した。

 その後、レイは氷の床で滑らないように棒を上手く使って先に進み、水流も避けた。

「デ・テラ・マ・ギ・ド・トニト!」

 その道中で、レイは魔法で魔物を倒していく。

 刺激すると一斉に噛みついてくるピラニア、歌声で混乱させるローレライなど、

 水の魔物が多数存在した。

 それらには炎の攻撃が効かなかったので、雷の魔法を使って魔物と応戦した。

 

「さて、何が待っているんだろうね?」

 レイがワクワクしながら迷宮の奥へ進むと、三つの階段と石板がレイの目の前にあった。

 石板には、このような文章が書かれてあった。

 

 次の「モーニング娘。」の元メンバーのうち、最後に卒業したのは?

 左:矢口真里 中:辻希美 右:加護亜依

 

 これは正しいと思う階段を上る仕掛けだろう。

 聞いた事がない文章だったが、レイは迷いなく、正解の階段を上った。

「ま、これくらいなら楽勝だわね」

 

 「魔法騎士レイアース」の鳳凰寺風の部活動は?

 左:剣道部 中:柔道部 右:弓道部

 

 次のうち、一等星ではないのは?

 左:ハダル 中:カノープス 右:ミザール

 

 その後もレイはこれらの問題を順調に解いていき、楽に進んでいったが、

 四問目に辿り着いたところで止まった。

 

 真田幸村の兄・真田信之の妻となった本多忠勝の娘・小松姫の幼名は?

 左:菊姫 中:稲姫 右:亀姫

 

「誰……だろうねぇ? 聞いた事がないよ、こいつらの名前とやらは」

 頭が良いレイにしては珍しく、上手く頭が回らなかったようだ。

 しかし、間違えたらペナルティを受けるため、レイはじっくりと問題の答えを考えた。

 10分、20分、30分……魔物に警戒しながら、答えを頭の中で絞っていく。

 

「答えは……これだ!」

 そしてレイは、正解となる階段を上り、ついに玄武の迷宮の最奥に辿り着いた。

 玄武の迷宮の最奥では、たくさんの水がある。

 そこには、黒い甲羅を持ち、蛇が生えた巨大な亀がどっしりと佇んでいた。

 レイの数倍ほどの大きさの巨大な亀を、彼女は物珍しそうに見上げている。

「へえ、随分なデカブツじゃないか。……で、あんたは誰だい?」

「儂は四神の一柱、冬の玄武じゃ。もしや、お主は儂の力を求めに来たのか?」

「ああ、そうさ。世界中が大変な事になってるのは神様のあんたなら知ってるだろう?」

 唸り声を上げる玄武は、レイに肯定している証だ。

「だから、あんたの力を貸してほしいんだ。頼む……玄武様、力を貸してくれ」

 レイは玄武に力を貸してもらうように言う。

 頭が良いレイはこの後の出来事が分かっていたが、当然、玄武は鋭い目でレイを睨みつけた。

「力を欲するならば、儂と戦い、その力を示せ」

「ああ、分かったよ!」

 レイは杖を構え、玄武との一騎打ちに臨んだ。

 

「冬の氷雪……受けてみよ!」

「うぅっ……寒い!」

 玄武が震えると、彼の全身から猛吹雪が放たれ、レイの体力を奪っていった。

「けど、あたいもやられっぱなしじゃないよ! ラ・カリ・ド・シー!」

 レイは鞄から豚の皮脂少々を取り出し、それを玄武の足元に投げつけると、

 玄武の足元は滑りやすい脂に覆われた。

 歩こうとした玄武は滑って横に倒れ込んだ。

「ふむ……! やるな、小娘……。ねむれよいこよ」

 玄武が横になりながら呪文を唱えると、煙と共にレイを魔法の眠りへと誘おうとする。

 だが、レイはモントゥ族なので、魔法に抵抗し、眠らないまま杖を構え呪文を唱えた。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイが杖から氷の矢を放ち、倒れ込んでいる玄武に攻撃する。

 氷の矢が命中した玄武は凍り付き、元々遅い動きがさらに鈍くなった。

「あめあめふれふれ」

 玄武は冷静に呪文を唱え、迷宮内に雨を降らせる。

 すると玄武の足元にあった脂と、玄武を凍らせていた氷が溶けてしまった。

 

「小娘よ、魔法というのはこのように使うのじゃ」

「流石だね……賢者。でも、勝つのはあたいだよ!」

 

 玄武とレイは互いに睨み合い、互いを読み合う。

 どちらが先に魔法を撃つか、魔法を打ち消すか、二人は睨み合いながら考えを読んでいく。

 

「ド・ゲイト・デ・テラ・マ・ギ!」

 最初に動いたのはレイだった。

 レイは杖の先から3本の魔法の矢を放ち、それを全て玄武にぶつけようとする。

 玄武の動きは鈍いため、全て命中するはずだった。

「みをまもれ」

 玄武が呪文を詠唱すると、目の前に盾が現れ、レイが放った魔法の矢を弾き返した。

「マジックミサイルを弾くシールドか……」

「単純な戦い方では、儂には勝てぬぞ」

「そうだね!」

 レイが宣言すると同時に、最後の魔法の矢が玄武に直撃した。

「……ぐっ!?」

「時間差で魔法を放ったのさ」

 魔法が弾かれるのは分かっていたため、2本はフェイント、1本を本筋としていた。

 頭脳派のレイらしい戦術である。

 このまま一気に倒そうとレイが呪文を詠唱すると、突然レイの周りにあった水が襲い掛かった。

 水を叩きつけられたレイは、流されてしまった。

 

「どうやら油断しちまったみたいだね……」

 レイは水を払った後、玄武とさらに距離を取って呪文を詠唱する。

「どうした? 降参するかの?」

「するわけないだろ! マ・ギ・ラ・ステラ・デ・イグニ!」

 雷を矢と化して攻撃する魔法、サンダーアロー。

 水を司る玄武に、雷属性の攻撃は効果的であり、玄武の身体には焼け焦げた跡がついている。

「その意気じゃ」

「速めに仕留めなくちゃね、ド・フェル・ド・トニト・ド・ヴェン!」

 眩い電撃を発生させる呪文を唱え、レイは玄武にとどめを刺そうとした。

 その時、どこからともなく音が聞こえてきた。

「なんだい、この音は?」

 レイが戸惑っていると、音はさらに大きくなった。

 そして、レイを流そうと、四方八方から大量の水が吹き出てきた。

 もしまともに食らえば戦闘不能になる事は確実だ。

 レイは一か八か、とある呪文を詠唱した。

 

「頭脳戦では、儂が一歩上手だったようじゃな」

 勝機を確信した玄武が唸った、その時。

 

「のあっ!?」

 突然、玄武の迷宮で大爆発が起こった。

 それはただの大爆発ではなく、雷を纏っており、雷の攻撃を受けた玄武は大ダメージを受けた。

 

「冥土の土産……とやらに言っておくよ。

 あの大量の水であたいを流す時に、地面目掛けてプラズマランスを放ったのさ。

 それで広範囲の水に影響を与えて、大爆発を起こしたのさ。

 あたいも巻き込むからできればやりたくなかったけどね……。

 でも、あんたを倒すにはこれしかなかったのさ」

 レイは瀕死になりながらも玄武をしっかり見る。

 その真っ直ぐな目を見た玄武は、

 これ以上戦っても無駄だと判断したのか、溜息をついてこう言った。

「よくぞ儂の知を上回った。お主の勝ちじゃ。厳冬の結晶をやろう」

 玄武の身体から青い水晶が現れると、それがレイの小さな掌の上に乗る。

 水晶の中では、玄武が起こした吹雪があった。

「玄武様……」

「知識と知恵は同じものにあらず。

 たとえ博識であっても、それを抑制できる賢明さがなければ『賢い』とは言えぬぞ」

「はい、分かっています」

 たとえ知識が豊富であっても、暴走しては元も子もない。

 知識というエンジンを生かすためには、知恵というハンドルが必要なのだと玄武は言った。

 レイは玄武の言葉を理解して、大きく頷いた。

 

「小さき賢者よ、悪しき者を永遠に止めるのじゃ」

「……はい! ありがとうございました!」

 

 レイと玄武はお互いに別れを告げて、玄武の迷宮の攻略が終わったのだった。

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