百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

28 / 76
~前回までのあらすじ~

ダークエルフのアエルスドロは、夏と炎を司る神・朱雀が住む火山洞窟を探索した。
アエルスドロは魔物と戦い、熱気と冷気を制御するレバーを使いながら進む。
その後、朱雀との一騎打ちに勝利したアエルスドロは、朱雀から「盛夏の結晶」を授かる。
朱雀はアエルスドロに生死の重要性を語り、彼を洞窟の入り口まで送るのだった。


第26話 春のシレン

 フェーン王国で、茜は神が住まう青龍の風塔の入り口に立っていた。

 高くそびえる塔は、まるで空に届きそうなほどだ。

 塔の壁には、青龍の姿や文字が刻まれていて、茜はその文字を読んだ。

「えーっと……我は春と風の神・青龍なり。汝が自由と勇気を持つならば、我と対峙せよ。

 我は汝の力を試すべく、試練を与えん」

 アルカディアの言葉だったため読みにくかったが、

 幸い、共通語で書かれていたため何とか読めた。

 腐敗教団を止めるため、青龍の力を借りようとフェーン王国のこの塔に挑んだのだ。

「ここに……青龍様がいるのですね……」

「そうだ」

「わっ、妖精!?」

 突然、茜の前に羽が生えた小さな妖精が現れた。

 妖精は宙に浮くと、茜に塔の内容を説明した。

「ここには春と風を司る青龍がいる。見つけたかったら、塔の最上階まで進むがいい。

 では、さらばだ!」

 そう言って妖精は茜の前から姿を消した。

 

「……何だか自由奔放な妖精でした。ここに、本当に青龍様はいるのでしょうか……。

 いいえ、止まるわけにはいきません!」

 茜はそう言って、青龍の風塔の扉を開けた。

 

「流石は風の塔……音が鳴ってますね……」

 塔の中は、風車や扇風機が回る音で満ちていた。

 茜は精神を集中し、音に耳を傾けながら、階段を上っていった。

 道中では塔を守る魔物と遭遇したが、茜は神聖魔法と武器で戦った。

 毒を持つ蜂・ソルジャービーや蝙蝠に変身するワーバット、

 猫又や鈴蘭、風の精霊シルフもいた。

 傷ついたら回復魔法で傷を癒し、攻撃力を上げて鞭で打ち倒し、

 自分の体力を上げて毒に耐えた。

 茜は一つ一つの試練を乗り越えていき、ついに青龍の風塔の頂上に到達した。

 塔の最上階には、先程の小さな妖精が待っていた。

 

「本当に……ここに青龍がいるんですか?」

 茜は首を傾げながら、青龍の居場所を妖精に聞こうとする。

 すると、妖精は「ふっふっふ」と言いながら、全身が眩い光で包まれる。

 光が消えると、そこには青く長い身体を持つ風を纏った龍の姿があった。

「えっ、あ、あなたが……」

「そうだ! あたしが春と風の神・青龍だ! よくここまで来たな、勇敢で自由な冒険者よ」

「あ、はい……」

 茜は緊張した様子で青龍に話した。

 男勝りな性格の人物は、茜の周りにはいなかったので新鮮だ。

「あの……あなたが神様なら、他の神様から力を借りるのは良くないんですか?

 私、クレリックなんですけど……」

「心配はいらない。あたしから力を借りても、クレリックの力に影響はないぞ」

「あ、そうだったんですか。では青龍様、私に力を貸してください」

 安心する茜は、青龍から力を借りようとするが、当然ながら青龍は首を横に振った。

「残念だがタダで力を貸すわけにはいかない。あたしの力を得るに相応しいか試させてもらう」

「……やっぱり、最後はこうなるんですね」

 そう言って茜は、青龍に相応しい力を青龍に見せるべく、鞭と盾を構えた。

「よろしい! では、お前の力を見せてみろ!」

「私は……負けませんよ!」

 茜と青龍の一騎打ちが始まった。

 

「せいっ!」

 茜は青龍に向かって鞭を振り下ろすが、青龍はそれを爪で受け止めた。

「よし、来い!」

 青龍は爪を三回振り下ろし、茜を攻撃した。

 アカネは盾で青龍の攻撃を防いだが、爪の威力は強く、盾に僅かに罅が入った。

「強いですね……青龍様。ですが、私の攻撃はこれだけではありません! cadre sacre!」

 茜は呪文を唱えて光の柱を放つが、青龍は身体をくねらせて攻撃をかわした。

 そして反撃として、口から毒のブレスを吐いた。

「きゃぁっ!」

 茜はそれを避けようとしたが間に合わず、毒のブレスを浴びて毒に侵された。

「うぐっ……苦しい……」

 毒を浴びた茜は青龍から距離を取り、解毒呪文を唱えて毒を治した。

 青龍は呪文を唱えると、花粉を飛ばす魔法を使う。

 茜はそれに気づかず花粉を吸い込むと、茜の頭がぼんやりとした。

 

「あれ? どこにいるんですか?」

「これで決まりだな」

 混乱した茜に、青龍は体力を吸収する魔法を使う。

 茜はそれに抵抗しようとしたが体が動かず、体力は青龍に吸収されてしまった。

 

「く……伊達に神様ではありませんね……」

 倒れそうになった茜を見て、青龍は満足そうな態度を取る。

「よく頑張ったな、人間の娘。だが、お前の力ではあたしには敵わない。さあ、覚悟するんだな」

 青龍が茜にとどめを刺そうとしたその時、茜の心に一つの声が響いた。

 

―諦めるな、百夜茜。お前は何のためにここに来た。

 

「私は……青龍様の力を借りるために……ここに、来ました……」

 

―ならば倒れるべきではないだろう。立ち上がれ。

 

「神様……ありがとうございます……」

 茜はその声に従って、何とか立ち上がった。

「青龍様……私はまだ、負けません……」

「まだ動けるみたいだ。不思議だな……」

 青龍はそれを見て驚き、もう一度茜に麻痺光線を放ったが、茜はそれを避けた。

「今度こそ! cadre sacre!」

 茜は呪文を唱え、青龍に光の柱を放った。

 青龍はそれを受けたが、傷は浅かった。

「くっ……やるな……」

 青龍は茜に爪で3回攻撃をしたが、茜は盾でそれを防いだ。

 次に青龍はポイズンブレスを吐いたが茜は避けた。

 花粉を飛ばす魔法も体力を吸収する魔法も抵抗し、麻痺光線も茜は全て避け切った。

 

「まさか……」

 青龍の攻撃を全て回避した青龍は驚いた。

 そして、茜は魔法で攻撃力を上げて、青龍を思いっきり鞭でひっぱたいた。

「うわあああ!」

「いきます!」

 攻撃を受けた青龍は大きく吹き飛び壁に激突した。

 茜と青龍は激しく戦い、風が吹き荒れ、空が轟く。

 青龍が爪を振り、茜が鞭を振り、肉弾戦が塔の中で繰り広げられていく。

 

「これでとどめです!!」

 そして数分後、戦いはついに決着がついた。

 アカネは青龍に光の柱を放ち、青龍を地に伏せた。

「よくやったぞ……お前の勝ちだ……」

 青龍はそう言うと茜の手の上に緑の結晶を落とす。

 結晶の中では、優しい風が吹いていた。

「これが春風の結晶だ。神々の結晶の一つであり、正しきものに力を与えるだろう」

「……ありがとうございます、青龍様……」

 茜は青龍にお礼を言い、春風の結晶を受け取る。

 

「……お前の魂はこの世界の存在ではないようだな」

「……はい」

 青龍は茜が異世界転生者だと見破ったようだ。

 本当は明かしたくなかったが、神の言葉であり、また周りにはばバレているため素直に答える。

「人は誰しも、死からは逃れられない。だが、お前の世界では理不尽な死が起きたそうだな」

「……吸血鬼に、私の家族を殺されました。殺そうとしましたが、できませんでした」

「それは残念だったな……」

 青龍は茜のフェリドの討伐失敗を嘆くが、茜は「もういいんです」と首を振った。

「今はこの世界でやるべき事をやるんです。そう、思いましたから」

「そうだな……。ならば、それに向かい邁進しろ。あたしが言える事は、それだけだ」

「……はい。必ず腐敗教団を止め……腐った世界を元に戻します」

 茜は真剣な表情で、青龍にそう誓った。

 そして、茜は春風の結晶を持ちながら、青龍の風塔を降りるのだった。

 

 こうして、茜達は再びガルバ帝国に戻ってきた。

「どうやら全員無事だったみたいですね」

「当たり前だ、私達はそのために鍛えたのだからな」

 茜が全員の無事を確認すると、四人はそれぞれ、四神に認められた証である結晶を見せた。

 結晶の中は、神が司る自然現象が起こっており、それが生きている事が見るだけで分かる。

「死すべき運命(さだめ)を恐れるヒトが不死を求めれば破滅すると朱雀は言っていた。

 運命には逆らうべきではないだろうな」

「そうですね」

 たとえ理不尽であってもヒトは死すべき運命(さだめ)

 それに逆らおうとするならば、必ず止めなければならない。

 茜達の決意はより一層固くなった。

 

「皆さん、結晶をください」

「ああ」

 茜は他の三人から結晶を受け取ると、ゆっくりと四つの結晶が宙に浮かび上がった。

「青龍、朱雀、白虎、玄武よ……悪しきものによって腐った世界を浄化する力を、

 ここに授けてください」

 茜が呪文を唱えると彼女の両手から光の玉が現れ、四つの結晶が光の玉に取り込まれていく。

 すると、光の玉は四つの結晶が柄に嵌った、一振りの真っ白な杖に変化した。

 

「これは……」

「スタッフ・オヴ・フォー・ゴッド……。

 癒しの力と四神の力が宿った杖だ。今の君にはピッタリな杖だろう」

「本当に……これであいつらを止められるのですね」

「ああ……その杖からは相当な魔力を感じるよ」

「へー、いい財宝だなぁ」

 茜達が杖を見つめていると、突然、空に黒雲が現れそこから禍々しい形状の城が現れる。

 どうやら、腐敗教団の本拠地が現れたようだ。

 

「いよいよ決戦は近い、というわけですか……」

 茜達は真剣な表情で身構えた。

 腐敗教団との最終決戦は近い。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。