百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

四神から力を借りた茜達は、腐敗教団の本拠地である城に突入する。
罠や魔物に襲われながらも、茜たちはゴードンという四神官の一人と戦う。
激闘の末、ゴードンを倒した茜たちは、城の奥へと進んでいくが、宝は見つからず、落胆する。
それでも、腐敗教団を止めるという目的のため、茜たちは前に進む事を決意するのだった。


第28話 魔女とのタイケツ

 ゴードンを倒した茜達は、城の奥へ進んでいった。

 道中には多種多様な魔物がいて、茜達はそれを、武器と魔法と知恵で倒していった。

 

「やりますね、レイさん」

「魔法はただ使うだけじゃあもったいないのさ」

 茜とレイは魔法を使う者同士、気が合うようだ。

「それにしても、腐敗教団はどうしてそこまでして、生死にこだわっているのだろうか」

「分かりません……。その、あの、どうして、アエルスドロさんはそんな質問をしたんですか?」

「朱雀に死すべき運命(さだめ)を教えてもらった。

 もしかしたら腐敗教団は、それに逆らおうとしているかもしれない」

 アエルスドロは朱雀の火山洞窟で出会った朱雀から生死について教えてもらった。

 不死を無理に得れば破滅が訪れるという。

 だとすれば、腐敗教団の目的は、もしかしたら不死かもしれない……と思った。

 

「何にしろ、不死のためにみんなを巻き込むのは、絶対に許すわけにはいきませんね」

「ああ、私達で絶対に阻止しよう!」

「「おーっ!!」」

 

 決意を胸に四人がさらに先に進むと、

 そこには妖艶だが邪悪な雰囲気を持った魔女、蠱惑のエクレアが立ち塞がっていた。

 腐敗教団の幹部、四神官の一人であり、山賊と偽貴族を操っていた人物である。

「あははははは、よく来たわね!」

「エクレア……あなたを倒して、私達は先に進む!」

 茜はすぐさま、杖をエクレアに向ける。

 それと正反対に、エクレアは茜達に嘲笑を浮かべていた。

「はん、ここを通すわけにはいかないわよ。吹雪様は今、世界を改革しようとしているのよ」

「世界を改革……?」

 聞こえは良さそうだが、腐敗教団の長であるため、きっと碌な事ではないのだろう。

 アエルスドロは身構えて、警戒する。

「そうまでして世界を腐らせたいのですか!?」

「腐敗教団なんだから、世界が腐るのは当たり前よ。さあ、分かったらアンタ達も腐りなさい!」

 そう言ってエクレアは杖を構え、臨戦態勢を取る。

 最早、彼女に交渉の意志は全くないようだ。

「みんな、絶対にこいつを倒すよ!」

「おう、許すわけにはいかないな!」

 レイとデリサルも武器を構え、エクレアとの戦闘が始まった。

 

「ふふふ……悪魔よ、我がもとに来い!」

「そうはさせない!」

 エクレアは狂気が宿った目で悪魔を呼び出そうとしたが、

 その呪文はデリサルが銀のレイピアで妨害した。

 レイピアはエクレアの肩に深く刺さる。

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 エクレアは悲鳴を上げながら自分の精神力を振り絞ったが、

 悪魔は現れず、代わりにエクレアの頭に激痛が走った。

「よし、いくぞ!」

「おっと、そうはいかないわよ!」

 アエルスドロはエクレアに突っ込んで剣を振り下ろした。

 しかし、エクレアは辛うじて身をかわし、アエルスドロの剣は空を切った。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

「炎よ……」

 レイと茜もエクレアに向かって氷の矢と炎の矢を放ったがどちらもエクレアが攻撃をかわした。

「あははははは! みんな馬鹿ねぇ!!」

 エクレアは笑いながら距離を取り、杖を構え直す。

「果たしてどちらが馬鹿か、教えてあげますよ」

 茜もまた杖を構え直し、エクレアと距離を取った。

 

「そこだ!」

「はんっ、当たらないわね!」

「そうかな?」

 エクレアはデリサルの狡猾な一撃をかわしたが、すぐにアエルスドロの剣が襲ってきた。

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 鋭い刃がエクレアの肩と腹に深く切り込む。

 エクレアは悲鳴を上げながらデリサルに毒の霧を吹きかけたが、

 デリサルは素早く身をかわして無傷だった。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは呪文を詠唱して杖を振り、エクレアに冷気の光線を放った。

 エクレアは光線に当たり、身体が凍りつくような痛みを感じ、動きが遅くなった。

「炎よ……」

 茜は神の力を呼び起こしエクレアに火の玉を投げつけたが、エクレアは辛うじて避けた。

「あははははははは!」

 エクレアの笑い声が城の壁に響き渡り、彼女の杖から鋭い闇の棘が放たれる。

 デリサルは素早く身をかわし、

 レイピアでエクレアの胸を突き刺そうとしたが、エクレアはぎりぎりでかわした。

 エクレアは手にした杖を振りかざし呪文を唱えた。

「サモン・ジャイアント・スパイダー!」

 呪文と共に空気が歪むと、次の瞬間、巨大な蜘蛛が二匹現れた。

 アエルスドロは恐れずに剣を振り下ろしたが、エクレアは再び攻撃をかわした。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは蜘蛛の一匹に氷の矢を放ったが、蜘蛛は素早く動いてレイの攻撃をかわした。

「炎よ……」

 茜は杖を掲げ、もう一匹の蜘蛛に炎の矢を放った。

 蜘蛛は炎に弱いので、効果的なダメージを与えた。

 

「ふん……そこまでして、アンタ達は先に進みたいのねぇ」

「当たり前です。腐敗教団の野望は絶対に、私達が阻止しますから」

 

 デリサルはエクレアの目を見つめながら、レイピアを振り下ろした。

 鋭い刃がエクレアの肩に深く食い込む。

「……お前の急所は、そこか!」

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 デリサルはさらに追い打ちをかけるように、急所攻撃の技を繰り出した。

 エクレアは悲鳴を上げて、後ずさった。

「よくもやったわね……ポイズン・スプレー!」

 エクレアは杖から毒の霧を吹きかけた。

 しかし、デリサルは素早く身をかわし、毒の霧は空中に消えた。

「くぅぅっ……!」

 エクレアは怒りと恐怖で顔を歪める。

 アエルスドロはを見逃さず、剣を振るってエクレアを斬りつけた。

 剣がエクレアの腹部に突き刺さり致命傷を与える。

 不思議と、彼女の身体からは血が出なかった。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは蜘蛛に向かって冷気の光線を放った。

 冷気の光線が巨大な蜘蛛の背中に当たり、氷の結晶が張り付いて蜘蛛は痛みで暴れた。

 その勢いで蜘蛛は茜に蜘蛛の糸を吐き出すが、茜は盾で糸を弾き飛ばした。

「ひゃっ!?」

 もう一匹の蜘蛛はレイに蜘蛛の糸を吐き出し、レイは反応が遅れて糸に絡まってしまった。

「今、私が助けます! 炎よ……」

 茜はレイを助けるために、杖を振り呪文を唱えた。

 炎の矢が糸に当たり、燃え上がった。

「ありがとよ、茜」

「どういたしまして」

 レイは糸から解放してくれた茜に感謝した。

 

「きぃぃ、よくもやったわねぇ……! アンタ達、許さないわよ!」

 攻撃が何度も打ち破られたため、エクレアが歯を食いしばって悔しがる。

「はっ、こいつはチャンスだな!」

 デリサルは素早く銀のレイピアを抜き、エクレアに突進した。

 しかし、デリサルの足元には蜘蛛の糸が張られていた。

 レイピアは空を切り、デリサルはバランスを崩して転倒した。

「いててて……」

「あらあら、不運ね」

 エクレアは嘲笑し、彼女は自分の傷を癒すために呪文を唱えた。

 緑色の光が彼女の体を包み、傷口が塞がった。

「すまないな、アエルスドロ」

「そこは私がカバーしよう」

 アエルスドロはデリサルの失敗に動じず、エクレアに突っ込んで剣を振り下ろした。

 鋭い刃がエクレアの肩に深く食い込む。

「これでどうだ!」

「く……まだまだよ」

 エクレアは苦痛に顔を歪めながらも、アエルスドロの目を睨んだ。

 レイは蜘蛛の動きに注意しながら、呪文を唱える。

 青白い光が蜘蛛に向かって飛んだが、蜘蛛は素早く避けた。

「やるねぇ」

 蜘蛛はレイに近づき牙を剥いて噛みつこうとした。

 レイは辛うじて杖で防いだが、衝撃で腕が痺れた。

 もう一匹の蜘蛛は茜に襲いかかり、茜は素早く鞭で応戦した。

 茜の鞭が蜘蛛の足に絡みつき、蜘蛛は転倒する。

「vie force!」

 茜が呪文を唱えると、白い光がレイの体を包み、傷が癒えた。

 

「せいやっ!」

 デリサルはレイピアでエクレアの胸を突き刺そうとしたが、

 エクレアはぎりぎりで攻撃をかわした。

 エクレアは怒りに顔を歪めアエルスドロに向かって手を伸ばし、呪文を唱えた。

「レイ・オヴ・シックネ……」

「させるか!」

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 その瞬間、アエルスドロの剣が、エクレアの手首を切り裂いた。

 エクレアは悲鳴を上げ、呪文は失敗した。

「いくぞ!」

 アエルスドロは追い討ちをかけようとしたが、エクレアは身をかわした。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 一方で、レイは蜘蛛に呪文を詠唱した。

 青白い光が蜘蛛の体に当たり、氷の結晶が張り付いた。

 蜘蛛は痛みによって暴れたが、そのせいでレイに噛みつこうとした時に転倒した。

「きゃぁっ!」

 茜は襲い掛かった蜘蛛に対し盾で身を守ろうとしたが、

 蜘蛛の牙は盾を貫き、茜の肩に食い込んだ。

「く、苦しい……vie force……」

 茜は血と毒に苦しみながら、杖を掲げて呪文を唱えると、白い光が傷口から溢れ出た。

 血と毒が止まって茜は少し安堵した。

 

「どこまでもしぶといわね。いい加減にここで倒れたらどうなの?」

「それはこっちのセリフだ」

 デリサルは素早くレイピアでエクレアの胸を突く。

 そしてさらにレイピアをねじ込み、急所を貫いた。

「ぐぅぅぅぅぅっ……!」

 エクレアは苦しそうに呻いたが、まだ生きていた。

 彼女はデリサルに憎しみの眼差しを向け、杖を振りかざして呪文を唱えた。

「ポイズン・スプレー!」

 緑色の毒霧がデリサルの顔に吹きかけられた。

 デリサルは毒霧を避けようとしたが時既に遅く、

 毒霧が喉と肺に侵入し、デリサルは咳き込み、毒の痛みが全身に広がった。

「ゴホッ、ゴホッ……」

「よくもデリサルを、許さんぞ!」

 アエルスドロはエクレアに怒りを燃やし、剣を振り下ろした。

 しかし、エクレアは素早く身をかわし、アエルスドロの攻撃をかわした。

「くそっ、もう一発!」

 アエルスドロは再び振りかぶったが、エクレアは冷ややかに笑った。

「そんなものでアタシに勝てると思っているの?」

「ああ……勝てるさ」

 レイは蜘蛛に向かって呪文を唱えた。

 青白い光がレイの杖から放たれ、氷の矢が蜘蛛に命中した。

 蜘蛛はレイに蜘蛛の糸を吐き出すが、レイは素早く動いて攻撃をかわした。

「きゃっ!」

 蜘蛛は茜に目をつけ、蜘蛛の糸を吐き出した。

 茜は反応が遅く、蜘蛛の糸に絡まってしまった。

「く……この糸は、ちぎってやる!!」

 茜は力を振り絞り蜘蛛の糸を引きちぎろうとした。

 幸運にも対して絡まっていなかったので、一発で蜘蛛の糸から解放された。

 

「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! 許さないわよ!!」

 エクレアは憎悪のあまり叫び出し、強力な呪文を唱えようとする。

「隙あり、ピアシングフルーレ!」

 デリサルはその隙を見逃さず、レイピアを突き刺した。

 エクレアの肩に深い傷を刻み、さらにレイピアをねじり込んで急所を突いた。

「よくもやったわね……マイナーヒール!」

 エクレアは自分の傷口に手を当て、癒しの力を呼び出した。

 傷が塞がり、痛みが和らぐと、エクレアは再び冷たい笑みを浮かべた。

「二段打ち!」

 アエルスドロはエクレアに突っ込んでいったが、エクレアは素早く身をかわし剣が空を切った。

「ド・ゲイト・デ・テラ・マ・ギ!」

 レイは呪文を唱えて杖から光の矢を放った。

 三本の魔法の矢が飛んでいき、二本はエクレアが召喚した蜘蛛に命中し、

 一本はエクレアに向かったが弾かれた。

 蜘蛛は大きな身体に似合わず素早く動くと、レイに向かって蜘蛛の糸を吐き出した。

「わっ!」

 レイはそれに気づいて避けようとしたが、蜘蛛の糸がレイの体に巻きつき、動けなくなった。

「だ、誰か助けてくれ!!」

 レイはパニックに陥り、助けを求めた。

 もう一体の蜘蛛は茜に同じ事をしようとしたが、茜は神の加護を感じて素早く身をかわした。

「cadre sacre!」

 茜は呪文を唱えて、蜘蛛に神聖な炎を放った。

 蜘蛛はそれに抵抗できず、炎に包まれて焼かれ、消滅した。

 

「よくもアタシのペットを倒したわね……! ポイズン・スプレー!」

 蜘蛛が一体倒された事により、エクレアの目には憎しみと狂気が燃えていた。

 エクレアはデリサルに向かって毒の霧を放った。

 しかし、デリサルは素早く身をかわし、エクレアの横腹に銀のレイピアを突き刺した。

 デリサルはさらにエクレアにレイピアをねじ込む。

 エクレアは倒れそうになったが、魔力によって何とか立ち上がった。

「これで、とどめだ!」

 アエルスドロはエクレアにとどめを刺そうと、剣を振り下ろした。

「そうは……いかないわよ……!」

 しかし、エクレアは最後の力を振り絞って、アエルスドロの攻撃をかわした。

 アエルスドロはバランスを崩し、一瞬隙ができた。

「さあ、消えなさい! ド・ゲイト・ド・イス!」

「そうはいかないよ、ド・ゲイト・ド・イス!」

 エクレアはその隙にレイに向かって呪文を唱えた。

 冷気の光線がレイに飛んでいったが、レイもまた同じ呪文を唱えて対抗した。

 お互いの冷気の光線がぶつかり合ったが、

 レイの光線が勝ってエクレアに当たり、彼女の体温を奪った。

「cadre sacre!」

 蜘蛛は茜に襲いかかろうとしたが、茜は蜘蛛の糸をかわし、神聖な炎を放った。

「そうはいかないわよ……シールド!」

 しかし、エクレアは蜘蛛を守るために、呪文で盾を作った。

 神聖な炎は盾に跳ね返り、茜に戻ってきた。

「くっ、もう少しだというのに……!」

「だったら俺がやってやる!」

「はぁぁぁぁっ……レイ・オヴ・エンフィーブルメント!」

 デリサルはレイピアを構えてエクレアを刺そうとしたが、攻撃はかわされる。

 彼女は激しく息を吐き出し、アエルスドロに向かって杖を伸ばした。

 黒い光がエクレアの杖から飛び出し、アエルスドロの胸に当たろうとしたが、

 彼は素早く盾でそれを弾く。

「もう許さんぞ! ヴォーパルブレード!!」

 アエルスドロは怒りに燃え、闇の力を剣に纏わせ一気に振り下ろした。

 鋭い刃がエクレアの肩に深く刺さる。

「ぎゃあああああああああ!!」

 エクレアが倒れると共に、彼女が召喚していたもう一匹の蜘蛛も消滅した。

 

「これ以上、私達の邪魔はしないでくれ」

「ぐえっ」

 そう言ってアエルスドロは倒れたエクレアに剣を突き刺し、彼女は消滅した。

 周りにお宝はなさそうだったので、デリサルはつまらなさそうな顔をした。

「お宝もないし、先に進むぞ」

「そうですね」

 茜達は、さらに城の奥へと進むのだった。

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