百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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というわけで、早いですが「百夜茜が理想郷に転生した件」の第二部、スタートです!
まずはプロローグ、茜達が集まるまでの物語です。


第二部 続・百夜茜が理想郷に転生した件
第0話 集まったタビビト


 未知のウイルスの蔓延で人類のほとんどは死に絶え、

 地下から現れた吸血鬼が支配する地獄のような地球に、かつて百夜茜という少女は生きていた。

 生き残っている人間は子供ばかりで、人間社会は成り立たなくなっていた。

 茜も優一郎やミカエラと共に、地下都市サングィネムに捕らえられ、

 吸血鬼達に栄養源の血を提供する家畜として生かされていた。

 そんな時、ミカエラが地下都市を脱出する計画を練り、

 子供達はミカエラに従って脱出しようとした。

 しかし、計画はフェリドにばれてしまい、

 優一郎とミカエラ以外の全ての子供はフェリドに殺されてしまった。

 もちろん、茜も例外ではなかった。

 

 ――だが、百夜茜は生きていた。

 肉体は真っ二つになったが、残っていた魂がホムンクルスの身体に宿って、

 この世の神秘が集う理想郷、アルカディアに転生したのである。

 クレリックとして新たな生を受けた茜は、アルカディアで出会った剣士アエルスドロ、

 魔導師レイ、盗賊デリサルと出会い、数々の冒険をこなしていった。

 その道中、腐敗教団という世界を腐らせようとする組織との戦いに身を投じる事となり、

 茜達は苦戦しながらも何とか幹部達を退けた。

 そして、人類を抹殺しようとした黒幕にして茜を転生させた冬城吹雪を倒し、

 アルカディアに平和を取り戻したのである。

 

 腐敗教団が壊滅してから、半年が経過した。

 茜はアルカディアで、平和に暮らしていた。

 

「ふぅ~。ポトフは美味しいですね~」

 茜はフェーン王国の宿屋『疲れたミツバチ亭』で、朝食のポトフを食べていた。

 今、アエルスドロ達とは別れており、一人でフェーン王国の宿屋で休んでいた。

「……でも、私の身体って、もうこのままなんですよね」

 茜の身体はホムンクルスなので成長しない。

 成長しないのは吸血鬼になったミカエラもそうなので、茜はミカエラの気持ちを理解していた。

 いつまでも大人にならない茜を見たら、優一郎はどう思うのだろうか。

「何だか、ミカの気分になったみたい。ミカ、あの時の事、もう忘れちゃったのかなぁ……」

 吸血鬼になると、最後に強く思っていた記憶以外は全て忘れてしまうらしい。

 ミカエラが茜に書いた手紙がそれを証明していた。

 ちなみに手紙は今でも鞄にしまっており、

 まだ人間性が残っていたミカエラを思い出して泣いてしまうため今日は一度も見ていない。

 今頃、優一郎とミカエラは何をしているのか……茜はそれが気になっていたが、

 今はそれを気にする余裕はなかった。

「どうしたんだ? 何だか憂鬱そうだが」

「いえ、何でもありません。おじさん、このポトフ、美味しいですよ」

「おっ、気に入ってくれたか。ありがとう」

 宿の亭主に悟られないように、茜はポトフを食べるのだった。

 

「ごちそうさまでした」

 茜は朝食を食べ終わり、手を合わせて挨拶をして、皿をテーブルに置く。

 宿を出ようとすると、宿の亭主が声をかける。

「お嬢ちゃん、暇かい?」

「あ、はい」

「今日は、フェーン王国で武闘大会が開催されるみたいだ。暇なら一度、観戦するのはどうだ?」

 どうやら、この国で武闘大会が行われるらしい。

 様々な戦士が集い、優勝という栄誉をかけて熱い戦いをするという。

「そうですね……みんなで一緒に見ますね」

 茜もちょうど暇だったので、武闘大会を観戦する事を決めた。

「みんな? 他に仲間がいるのかい?」

「これから一緒に、会いに行きますから。では、どうもありがとうございました」

 そう言って、茜は宿の亭主に別れを告げ、『疲れたミツバチ亭』を後にした。

 

 一方、こちらはアエルスドロ。

 旅をしている彼は船に乗ってガルバ帝国からフェーン王国に来ており、

 日光に当たらないようにフードを被っていた。

 腐敗教団が壊滅して以降、それに関する噂は全く流れなくなっていた。

 

 アエルスドロはエルフの鋭い聴覚を生かして、遠くの人々の話を聞いていた。

「ねえねえ、今日、武闘大会が開催されるみたいだよ」

「色んな戦士が参加してるみたいだって、見に行こうかな~」

 武闘大会の開催を知ったアエルスドロは、自分も見てみようかなと思った。

「ふむ、武闘大会か? 興味深いな、行ってみるか」

 アエルスドロは武闘大会がどこで開催されるのか、壁に貼られている紙を見る。

 開催場所を確認すると、アエルスドロは早速行こうとしたが、立ち止まる。

「いや、一人で行くよりは、みんなで行った方がよさそうだ」

 アエルスドロは仲間と一緒に武闘大会を見たいと思い待ち合わせをする事にした。

 

 その頃、レイはフェーン王国の図書館で一冊の本を読んでいた。

「……この世界の神々は三種類に分類されている。六大神、小神、従神。

 そのうち、六大神と小神は滅多に姿を現さず……」

 魔導師でありながら神に関する本を読んでいるが、

 モントゥ族は精霊の声こそ聞こえないものの、神の声を聴く事はできる。

 なので、神に関する知識を知るのも、魔導師の勉強の一つである。

「へぇ、神様にも色んなのがあるんだね」

 興味深そうに、レイは本を読み続けた。

 

 最後まで本を読んだ後、レイは本を閉じて図書館に返却する。

「さてと……どうせ暇だし、外にでも出ようかね」

 今日、これといった用事はレイにはない。

 そのため、試しに外に出て、暇潰しをしようと思った。

 

「これで四杯目だぜ。一体どこまで飲むんだ?」

「う~……ああ、暇だ、暇だ、暇だっ」

 デリサルは、疲れたミツバチ亭の隣の宿で、安いエールを飲みまくっていた。

 冒険がほとんどないため、暇で暇でたまらないらしい。

「いくら安いとはいえ、飲みすぎは身体に毒だぞ。少しは冒険でもしろよ、冒険者なんだから」

「でも、こんなに暇じゃあ飲むしかないんだぜ」

 午前中から飲んでいるデリサルに亭主は呆れ、渋々ながらもこう言った。

「んじゃあ、俺がいい情報を教えてやる。今日、フェーン王国で武闘大会が開催されるんだ。

 エントリーは終わっちゃったけど、観戦するのはどうだ?」

「おー、武闘大会か。それは楽しみだな。おじさん、サンキュ、それじゃまた」

 そう言ってデリサルが立ち去ろうとすると、

 亭主が「お代を払い忘れるなよ」と言ったので、エール代を出して去っていった。

 

「というわけで、また集まっちゃいましたけど……」

 こうして、茜、アエルスドロ、レイ、デリサルの四人は再び冒険者パーティーとして集まった。

 茜は、かつて違う地球に住んでいたが、吸血鬼に殺されてこの世界に転生した。

 アエルスドロは、善の心を持つダークエルフで、現在は各地を放浪している。

 レイは、茜がギルドで出会った冒険者で、モントゥの魔導師である。

 デリサルは、レイのパートナーで、お金が好きな半悪魔の盗賊だ。

「こうしてみんなでパーティーを組むのは久しぶりだな」

「そうですね、ここ半年間はフェーン王国では事件がありませんでしたからね」

「いやぁ~、冒険もお宝もなくって暇で暇でぇ~」

「デリサル、その様子だと飲みすぎたみたいだね」

「げっ」

 デリサルはレイに安いエールを飲みすぎた事を指摘された。

「まぁ、あたいも暇だったから本を読んだんだけどさ……。

 このところ、なーんにも情報がないんでね」

「情報だったら持ってるぞ」

「えっ、それはホントかい!?」

 アエルスドロが情報を持っていると知るや否や、レイは食いつくように彼に食い下がった。

 その必死さを見たアエルスドロは、こほん、と一息ついて情報を皆に伝えた。

「どうやらフェーン王国で武闘大会があるようだ。みんなで観戦するのはどうだ?」

「おお、それは楽しみだな。色んな戦士が出るんだから、その剣技も見てみたいなぁ」

 デリサルは剣士ではないが、剣技に興味を示したようだ。

「皆、異論はないな」

「もちろんです。みんなで武闘大会に行きましょう」

 茜もどうせ暇だったので、皆でフェーン王国主催の武闘大会を観戦する事にした。

 しかしそれが再び冒険の始まりとなるとは、四人はまだ知る由もなかった。




次回は、茜達が武闘大会を観戦しに行きます。
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