未知のウイルスが蔓延し、吸血鬼が支配する地球に、少女・百夜茜は生きていた。
地下都市で家畜として生かされるが、脱出計画がフェリドにばれ、仲間は殺されてしまった。
しかし、茜の魂はホムンクルスの身体に宿り、アルカディアに転生。
新たな仲間と共に冒険し、世界を腐らせる腐敗教団と戦い、平和を取り戻す。
半年後、茜は平和な日々を送るが、武闘大会の開催で再び冒険が始まるのだった。
茜、アエルスドロ、レイ、デリサルは、フェーン王国が開催する武闘大会を見に来ていた。
参加者はいずれも屈強な人物ばかりであり、まさに武闘大会に参加するに相応しい姿だった。
四人は一番安い値段の一番後ろに立っていたが、そこからでも観客の熱い声が響き渡っている。
一回戦、二回戦と順調に試合は終わり、武闘大会は準決勝に突入した。
「それでは、準決勝を始めたいと思います。西、ゼルトル・ヒュース!」
解説者がそう言うと、西側から革の鎧を着て槍と盾で武装した戦士が現れた。
「ヒューヒュー!」
「わーわー!」
ゼルトルは観衆からの歓声を浴びていた。
彼は今日の対戦相手が誰かを知らなかったが、自信に満ちていた。
ゼルトルは自分の槍を高く掲げ、さらに熱い歓声を煽った。
「東、アージェス・ハイゼン!」
解説者がそう言うと、アリーナの反対側にある扉が開き、一人の老人が現れた。
アージェスは白い髪と髭をたくわえており、背中には大きな斧を背負っていた。
彼はゆっくりと歩いてきて、ゼルトルの前に立つと冷ややかな笑みを浮かべた。
「それでは、試合開始です!」
解説者の声と共にアージェスが槍を構えると同時に、
ゼルトルは剣を構えて、アージェスに向かって突進した。
二人の戦いは激しく、アリーナは火花と血飛沫で満ちた。
「やっぱり見てるだけで燃えるな!」
「いっけー、どっちも頑張れー!」
茜とデリサルがゼルトルとアージェスを応援する。
ゼルトルは速さと技巧でアージェスを翻弄しようとしたが、
アージェスは経験と力でそれを防いだ。
アージェスは槍特有のリーチを生かしてゼルトルの攻撃をかわし反撃を繰り出す。
ゼルトルは何度も槍の一撃をかわしたが、次第に傷つき、疲れていった。
やがて、アージェスの槍がゼルトルの剣を叩き落とす。
武闘大会は武器を失うか戦闘不能になると試合が終了するため、今、ここで決着がついた。
「そこまで! 勝者、アージェス・ハイゼン!」
観衆から拍手と歓声が沸き起こった。
アージェスは勝利を享受し、アリーナから去っていった。
「それでは準決勝第二試合を始めます。西、ヒルダ・ラングレー!」
解説者がそう言うと、西側から白い十字が描かれた赤いコートを身に纏い、
レイピアを携えた女剣士が現れた。
「東、ファリデス・オープナー!」
すると、東側から鉄製の鎧と兜を纏い、斧を携えた戦士が現れた。
いかにも騎士と言える屈強な姿で、魔物と見間違えるほどだ。
「強そうだねぇ……こりゃ、あいつの勝ちだろうね」
レイが全身鎧で顔が見えないファリデスの姿を見て呟く。
ヒルダは華奢なので、一瞬で決着がつきそうだと思っていたが、茜は首を振る。
「見た目だけで侮ってはいけませんよ。……フェリドだってそうでしたし」
茜はフェリドを思い出した結果、外見だけで相手を判断しなくなった。
何が起こるか分からない、それが試合というものである。
「それでは、試合開始です!」
試合開始の合図と共に、ヒルダとファリデスがぶつかり合う。
ヒルダは素早くレイピアを振るって相手の隙を突く。
ファリデスは力強く斧を振り下ろすが、ヒルダは素早くかわして反撃する。
両者は互いに傷つけ合いながらも、決着をつけるために必死に戦った。
「そこです」
やがて、ファリデスはヒルダのレイピアに腕を切られてしまう。
「大丈夫ですか? ごめんなさいね」
血が流れるのを見てヒルダは心配そうに言った。
「くそっ、まだ終わらんぞ」
「これ以上はやめましょう」
ファリデスは斧を持ち直すが、ヒルダは優雅にレイピアを構える。
「なんだと? お前は勝負に真剣じゃないのか?」
「真剣ですよ。これは武闘大会ですから」
ヒルダはレイピアを構えながら微笑んでいた。
それがファリデスの気に障ったのか、ファリデスは勢いよく斧を振り上げた。
「隙あり」
その瞬間、ヒルダはレイピアで素早く斧の柄を突く。
ファリデスの斧が地面に落ちると、レイピアの先をファリデスの喉元に向ける。
「……降参しますか?」
「くそっ、斧が使えない以上……俺は勝てない! 降参だ!」
ファリデスは死にたくないため、降参を宣言した。
「そこまで! 勝者、ヒルダ・ラングレー!」
意外な試合結果に、観衆から戸惑いと拍手が沸き起こった。
ヒルダは観客席に向けて丁寧にお辞儀をして、去っていった。
「ね? 人は見かけによらないでしょう?」
「本当だね……あの女は油断ならないな」
レイはヒルダの意外な強さに、警戒をするのだった。
そして、武闘大会はいよいよ決勝戦を迎える。
決勝戦のカードはヒルダ・ラングレーとアージェス・ハイゼンとなった。
意外な強さを見せたヒルダと、ベテランの実力を持っているアージェス。
どちらが勝つかは、誰も予想できない。
「優勝はどっちでしょうか……楽しみですね!」
「ああ、ここは確実に熱狂の渦に包まれるだろう」
「決勝戦というだけあって盛り上がってるな」
「魔導師のあたいも、熱くなってきたよ!」
茜達が盛り上がり、観客の声が一層大きくなる中、いよいよ武闘大会の決勝戦が始まった。
ヒルダとアージェスは互いに距離を詰め、激しい戦闘が始まった。
アージェスは斧を両手に持ち、ヒルダに向かって一撃を放った。
しかし、ヒルダは素早く身をかわし、レイピアでアージェスの腕を突き刺した。
「うぐっ! やるの……女」
「女だからと舐めては困りますね」
アージェスは痛みに顔を歪めたが、ヒルダに煽られてすぐに怒りに火がついた。
「お前に傷つけられるとでも思ったか。この斧で、お前を真っ二つにしてやる!」
アージェスは叫びながら、再び斧を振り下ろした。
しかし、ヒルダは華麗にかわし、今度はアージェスの足をレイピアで突き刺した。
「ベテランといえど、私にとっては単純すぎますね」
アージェスは年齢からか次第に動きが鈍くなっていき、
ヒルダの攻撃から逃れられなくなっていった。
彼は自分の鎧だけでなく身体にも次々と傷が増えていくのを感じたが、それでも諦めなかった。
「これで、とどめです」
しかし、ヒルダはアージェスの防御を崩し、彼の脇腹を突き刺した。
アージェスはこれにより、戦う気力を失った。
「……参った」
アージェスの降参と同時に、決着がついた。
「ゆ、優勝は……ヒルダ・ラングレーです!」
解説者がそう言うと、盛大な歓声が会場全体を包み込んだ。
だが、そんな歓声とは裏腹にヒルダは静かに佇んでいた。
「ここに用はありません。私が欲しいのは……人々の絶望だけです」