百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

茜、アエルスドロ、レイ、デリサルはフェーン王国の武闘大会を観戦する。
準決勝ではゼルトルとアージェス、ヒルダとファリデスが激闘を繰り広げ、
決勝戦はヒルダとアージェスの対決になった。
そしてヒルダが勝利し、観衆の歓声が響く中、彼女は静かに立ち去るのだった。


第2話 悪魔のシュウゲキ

 こうして武闘大会は無事に終了し、表彰式が行われる。

 会場近くには茜達や観客が、優勝者のヒルダを待っていた。

 

「優勝者ヒルダ、入りなさい」

 ヒルダは主催者の声を聴くと静かに姿を現す。

「では、今から表彰式を……」

 その時、ヒルダは隠し持っていた本を開き、呪文を唱えた。

「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、悪しき神よ、我が前に姿を現したまえ」

 ヒルダの呪文と共に、醜い人間の女性に似た魔物が姿を現す。

 酷い痣ができた時のような青紫色の肌に、乱れた黒髪と黄色く尖った歯。

 石炭のように真っ赤に燃え、深紅の輝きを放つ眼。

 角や黒い翼こそ生えていないものの、その容姿はとても悪魔らしかった。

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 ヒルダが会場に悪魔を召喚するや否や、観客達はパニック状態になっていく。

 そんな観客に悪魔は容赦なく襲い掛かり、自らの生命力にしようとするが、

 アエルスドロは何とか観客の前に立ち、悪魔から守っていく。

「皆さん、避難してください! こいつらは私達が倒します!」

 パニックの観客を茜は落ち着かせ、観客達は急いで避難場所から逃げ出した。

「こいつはナイト・ハグ……厄介だな、呪文からしてこいつは悪魔使いか」

 悪魔使いといえば、以前の冒険で遭遇したスカーレットがいた。

 もしかしてヒルダも悪魔使いなのか、と茜は身震いする。

「とにかく、この悪魔を倒さなきゃ!」

「当然だ!」

 四人は身構えて、ナイト・ハグを迎え撃った。

 

「ぎゃぁぁっ!」

 ナイト・ハグは手から光の矢を3本放ち、レイに向けて全て放つ。

 アエルスドロはナイト・ハグに接近してキーンブレードで2回切りつける。

 1回目はギリギリ命中し、2回目は急所をギリギリ外したものの効果的なダメージを与えた。

「cadre sacre!」

 茜は光の柱でナイト・ハグを打ち据える。

 デリサルは間合いを詰め、

 アエルスドロが打ち合っている最中にレイピアでナイト・ハグを突き刺した。

「凍れ!」

 レイは詠唱せずに氷の初級魔法を放つが、ナイト・ハグにかわされる。

 ナイト・ハグはデリサルに襲いかかるがデリサルは素早くかわす。

「はぁっ!」

ギアアァァァァァッ!

 アエルスドロは剣を振り下ろし、ナイト・ハグの頭に深い傷をつけた。

 ナイト・ハグは悪魔らしい悲鳴を上げたが、アエルスドロの次の一撃はかわされた。

「cadre sacre!」

 茜はナイト・ハグに聖なる炎を放ってダメージを与えた。

 聖なる炎がナイト・ハグの体に食い込み、焦げ臭いにおいがした。

 デリサルはレイピアでナイト・ハグの背中を突き刺した。

 アエルスドロの近くにいたので急所攻撃ができ、ナイト・ハグの身体から血が出る。

「凍れ!」

 レイはナイト・ハグに冷気の光線を放ち、

 デリサルに攻撃しようとしたナイト・ハグを足止めする。

 直後にアエルスドロは剣を振り下ろしてナイト・ハグを攻撃する。

 一撃目はナイト・ハグの頭部に深く刺さり、

 二撃目はナイト・ハグがかわしたがその隙に茜が呪文を唱えた。

ギアアァァァァァッ!

 神聖な炎がナイト・ハグの体を包み、ナイト・ハグは悲鳴を上げながら燃える。

 デリサルはその様子を見て、レイピアでナイト・ハグに追撃する。

 レイピアはナイト・ハグの心臓に突き刺さり、

 アエルスドロの助けもあって急所攻撃のダメージを与えた。

 

「ダブルスラッシュ!」

 さらにアエルスドロがナイト・ハグに猛攻を仕掛ける。

 ナイト・ハグは耐えられず、剣が鋭く肉を裂き、血が飛び散る。

 アエルスドロはさらにもう一振りしようとするが、ナイト・ハグは辛うじて攻撃をかわした。

「cadre sacre!」

 茜は神の怒りをナイト・ハグに向ける。

 彼女が鞭を振りかざすと、ナイト・ハグの体に聖なる炎がまとわりつく。

 デリサルはチャンスを見逃さず、

 アエルスドロに目配せしてレイピアでナイト・ハグの心臓を突き刺す。

「凍れ!」

 レイは冷静にナイト・ハグに氷の光線を放ち、

 デリサルを攻撃しようとしたナイト・ハグを凍らせる。

「とどめだ、クロススラッシュ!!」

ギャアアアアアアアアアアアアアア!!

 そして、アエルスドロが十字にナイト・ハグを切り裂くとナイト・ハグは爆発四散して消えた。

 だが、爆発が収まった時、ヒルダの姿はどこにもなかった。

 

「どうやら、私達が戦っている時にヒルダさんは逃げたようですね」

「そうだな……あいつは絶望を人々に見せたがっているそうだ」

 ヒルダが何を考えているのかは、茜達にはまだ分からなかった。

 だが、人々の絶望を欲しがっているという事は、碌な事ではないと茜は確信した。

 何しろヒルダはスカーレットと同じ悪魔使いで、先程召喚したナイト・ハグも、

 ヒルダにとっては尖兵に過ぎないだろう。

 彼女が何を企んでいるのか……そのためには、また冒険する必要があった。

 

「一度、ギルドに相談しましょう」

「たくさん冒険したのに、最近はあまり行ってなかったからな」

「ああ、あのヒルダって奴には、痛い目に遭わせなくちゃね!」

「ついでにカネもな」

 

 こうして、茜達はヒルダを追うため、フェーン王国の冒険者ギルドに向かった。

 果たして、ヒルダの野望を止める事ができるのだろうか。

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