百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

武闘大会の表彰式で、優勝者ヒルダが悪魔を召喚する。
観客はパニックになり、茜達はヒルダが召喚した悪魔、ナイト・ハグと戦う。
激戦の末、ナイト・ハグを倒すが、ヒルダは逃走する。
茜達はヒルダの野望を阻止するため、冒険者ギルドへ向かうのだった。


第3話 冒険フタタビ

「ここに来るのは……いつぶりでしょうか」

 茜達はフェーン王国の冒険者ギルドにやってきた。

 ここに来るのは久しぶりなので、茜は少々緊張していた。

 

「お久しぶりです、冒険者の方々」

「あ、お久しぶりです」

 茜は赤面しながら受付に話しかけ、人数分の冒険者カードを差し出す。

 受付はこれまで茜達が行ってきた冒険の記録が

 冒険者カードに刻まれているのを丁寧に確認し、5分後に返却した。

 冒険者ランクは、いつの間にか全員、第四位のフラルグに上がっていた。

フラルグランク!?

「まさかこんなにランクが上がるとはな……」

 一気にランクが上昇して驚く茜とアエルスドロ。

 といっても、行くのが久しぶりなので、更新が遅れただけであるため、

 レイとデリサルは冷静な態度で見ていた。

「……こんなに強くなったんですね」

「冒険者ランクは強さを表すものじゃないんだが、世界を救ったんだ。

 これくらい上がるのは当然だろう」

「そっか、私達は世界を救ったんですね」

 茜達は世界を救った事が冒険者ギルドに認められ、ランクが大きく上がった。

 これは茜達にとって素晴らしい功績である。

 最初は身の回りの事を解決するだけだったのに世界を救うなんてと茜は感動する。

 これは、生前では全く体験できなかった事だった。

 

「さて、ここまでランクが上がったんだ。依頼も相当難しくなるだろう」

「でも、あたいらはヒルダを追いかけなきゃいけない。彼女は悪魔使いだからね」

 武闘大会で優勝したヒルダは悪魔使いであり、ナイト・ハグを呼び出して会場を混乱に陥れた。

 しかも、彼女は人々の絶望を求めているという。

 このまま野放しにして人々が絶望するのは、茜達にとっては不本意である。

 そのため、何が何でもヒルダの野望を阻止しなければならない。

 一度冒険者ギルドを出て、酒場に向かおうとすると、

 アエルスドロが冒険者の話し声を聞いていた。

 

「なあ、知ってるか? 四大天使の力が世界各地に散らばっているらしい」

「確か、ウリエル、ミカエル、ガブリエル、ラファエルの四人だったわよね?

 その力を使えば、悪魔を倒せるかもしれないわ」

 

 アルカディアには四大天使がいる。

 彼らの力を借りれば、ヒルダが召喚した悪魔を倒せるかもしれないという情報を、

 アエルスドロは聞き逃さなかった。

 

「聞いたか、みんな。四大天使の力を借りれば、悪魔を倒せるかもしれない。

 ヒルダの野望を阻止する事ができるはずだ」

「えっ、そうですか? じゃあ、早速それに関する依頼を受けますか」

「……そうだな。とりあえず、依頼を調べてみよう」

 

 皆の了承を貰い、茜が受付に行って張り紙を調べると、気になる依頼を見つけた。

 

 ~森の祠の魔物退治~

 フェーン王国の森の祠に魔物が住み着いてしまっています。

 退治してくれたら一人500Z差し上げます。

 

「ふーん、魔物退治ですか。よくある依頼ですね」

「だが、詳細な情報が書かれていないぞ。これは警戒する必要があるな」

 確かに、どんな魔物を退治すべきなのかは依頼書にはない。

 明らかに罠だと睨むアエルスドロだが、

 一人500Zという高めの報酬に、デリサルは依頼書を食いつくように見やる。

「おい、魔物退治だけで一人500Zだなんてお得だぜ! 受ける、受ける!!」

「あっ、おい、デリサル! 慎重にならなきゃ……!」

「……はい、森の祠の魔物退治ですね」

 レイが止めるのも空しく、茜達は報酬に釣られたデリサルにより、

 森の祠の魔物退治を引き受けてしまった。

 茜は「やれやれ」と呆れながら、森の祠に向かうのだった。

 もちろん、冒険前の準備を怠らずに。

 

 森の祠は冒険者ギルドから20km離れた場所にあり、茜達は馬車で向かっていた。

 荷物を積み込み、馬車は順調に進み森へと差し掛かる。

 この辺りは道も凸凹しており、馬車の速度を落とさざるを得ない。

 襲撃する側にとっては好都合である。

「……待て。進行方向にゴブリンが3匹ほどうろついている」

 デリサルに止められて周りを見ると、アルカディアの雑魚モンスター、ゴブリンの姿があった。

 幸い、こちらにはまだ気づいていないようだ。

 茜は音を立てずにそっとライト・クロスボウを構えると、

 一体のゴブリン目掛けてボルトを放った。

 ボルトは見事にゴブリンの一匹に命中して倒れ、

 それに慌てふためいた他のゴブリン達は逃げて行った。

 

「よかった……こういうのは、先制攻撃が有効ですからね」

 今の実力ではゴブリンは楽勝だが、それでも無駄な戦闘は避けたい。

 ゴブリンを退け、茜達を乗せた馬車は、森の祠への道を急いだ。

 

 鬱蒼とした森を、一行を乗せた馬車が歩む。

 太陽はギルドを出た時から変わらぬまま……つまり、既に一日が経過している事になる。

 茜達は荷物にあった保存食を食べて、飢えを凌いでいた。

「美味しくはないですが保存食ですからね。食べないと命に関わります」

「ま、文句を言う暇があるなら食うしかないしな」

「でも、魔物を退治すれば500Z手に入るんだぜ。これは絶対にやらなくちゃな!」

「デリサルは相変わらずお金が好きだねぇ」

 仲間のお金好きにレイが呆れていると、馬車は無事森の祠の入り口に辿り着いた。

 だが、そこは凄惨な現場だった。

 数台分の襲撃された馬車の残骸があり、傍には逃げ遅れた者の死体が晒されている。

 犠牲者や馬車は様々な場所に棘が刺さっているのと、肉食獣の爪跡が生々しい。

 

「森の祠に、こんな魔物はいましたっけ……!?」

「とりあえず、犯人を探してみるよ」

 茜がショックを受けて気絶しそうになるが、レイは落ち着いて現場を調べる。

 彼女によれば、襲撃の犯人はライオンの身体と蠍の尻尾、

 老人の顔を持つマンティコアという幻獣らしい。

 知能は高く、時に守護者となる事もあるが、

 こんな事を起こしたとなれば情けをかけずに倒すに尽きる。

 

「ほう、そこにおるのは四つの餌か……」

「いいのう……食いたくなるのう……」

 そんな調査をしていると、しわがれた声が二つ、響き渡る。

 マンティコアが2体、現れたのだ。

「来たな、マンティコア。皆を殺したなら、許さん」

 アエルスドロは剣と盾を構え、戦闘態勢を取る。

 マンティコアはニヤニヤと嘲笑しながら、アエルスドロを無視して茜の方を見る。

「この娘は特に美味そうじゃのう」

「十分にいたぶって、苦しめてから食おうかのう」

「……!」

 茜はマンティコアを見て恐怖に震えるが、デリサルがぎゅっと手を握り締める。

「大丈夫だ、絶対に俺達が倒す。だから、茜も一緒に戦ってくれ」

「……はいっ!」

 少々涙目になりながらも、茜は鞭と盾を構えた。

 

「ほれほれ、この棘を受けてみぃ」

「うぐぁっ!」

「きゃぁっ!」

 マンティコアは蠍の尻尾から棘を放ち、耐久力が低い茜とレイを傷つける。

「cadre sacre!」

 茜は傷つきながらも呪文を唱え、光の柱でマンティコアを攻撃する。

 マンティコアは速かったがギリギリで命中し、マンティコアは光に包まれる。

 嫌な笑みを浮かべたマンティコアは尻尾から棘を放ってレイの身体に突き刺す。

 魔導師であるレイには致命傷だ。

 デリサルは銀のレイピアでマンティコアを攻撃するが、なかなか急所を突けない。

「ダブルスラスト!」

 アエルスドロは剣でマンティコアの急所を突き、怯んだマンティコアを剣で斬りつける。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは杖を振って、マンティコアを一体、氷で動きを鈍らせる。

 マンティコアはデリサルに噛みつき、爪で鎧の隙間から身体を切り裂く。

「やるじゃないか」

「よくもデリサルさんを、cadre sacre!」

「ぐおぉぉぉぉぉっ」

 茜はデリサルが傷ついた怒りから、光の柱をマンティコアに放つ。

 マンティコアは光の柱に包まれ、苦しみながら身体が傷つく。

 もう一体のマンティコアは爪でアエルスドロの防御を貫き、身体を切り裂いた。

「ふぇっふぇっふぇ……その苦しむ顔は素晴らしいのう……ぐえぇぇっ!?」

 嘲笑するマンティコアの隙を突いて、デリサルがレイピアをマンティコアの急所に突き刺した。

 瀕死のマンティコアは耐えられず、そのまま息絶えた。

 アエルスドロの攻撃は当たらなかったが、レイの氷魔法は命中してマンティコアは凍り付く。

「cadre sacre!」

 茜は呪文を唱えて神聖な炎を二体目のマンティコアに放って攻撃する。

 マンティコアは攻撃を食らったが、素早い動きで茜に尻尾で猛攻撃を仕掛けた。

 茜は辛うじて2回は避けたが、3回目は深い傷を負った。

 二体目のマンティコアは炎の痛みにもめげず、素早く動き回った。

「痛い……」

「ぐふふふ、苦しんだかのう?」

「どこまでも相容れないな。食らえ!」

 デリサルはマンティコアの隙を見て、銀のレイピアで一突きした。

 銀のレイピアはマンティコアの皮膚を切り裂き、

 デリサルはさらに急所攻撃で追い打ちをかけ、マンティコアは血を吹いた。

「ダブルスラッシュ!」

「ギャアアアアア!」

 アエルスドロはキーンブレードを振り回し、マンティコアに2回斬りつけた。

 キーンブレードの刃はマンティコアの骨をも切断しマンティコアは悲鳴を上げた。

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイは杖から冷気の光線をマンティコアに放ったが、マンティコアは素早く攻撃をかわした。

「cadre sacre!」

「ぐううっ! せっかく、いたぶりたかったのに……」

 茜は再び神聖な炎をマンティコアに放ち、炎がマンティコアの身体を燃やした。

 マンティコアは怒りと苦しみに満ちた目で茜を睨みつける。

 続けてマンティコアは飛び上がり、デリサルに向かって噛みつきと爪で攻撃した。

 しかし、デリサルは機敏に動きながら、アエルスドロが攻撃するのを待つ。

「これで、とどめだ!」

 アエルスドロが振るったキーンブレードが、マンティコアの心臓を貫いた。

 その瞬間、デリサルも銀のレイピアで一突きし、急所攻撃が発動し、

 マンティコアの頭蓋骨を砕くとマンティコアは倒れて動かなくなった。

 

「まさかマンティコアが襲ってくるとは……。皆さん、大丈夫でしたか?

 いえ、私も攻撃を何度か食らってますけどね……」

 マンティコアの襲撃で負傷した一行は、茜が回復魔法で何とか傷を癒した。

 やはり、この辺には凶暴な魔物が生息しているようだ。

「その魔物がどこにいるか、だが……」

 アエルスドロが注意深く周りを調べると、足跡が点々と森の祠まで続いている。

「まあ、当然だよな」

 そう言って、デリサル、茜、アエルスドロ、レイは、森の祠に向かった。

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