百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

茜達は冒険者ギルドで第四位のフラルグランクに上がり、
ヒルダの野望を阻止するため四大天使の力を求める。
森の祠の魔物退治の依頼を受け、ゴブリンを退けながら進むが、マンティコアに襲われる。
激戦の末、マンティコアを倒し、森の祠へと向かうのだった。


第4話 森のホコラ

 魔物退治をするべく、茜達はマンティコアを倒し、森の祠に入った。

 

「暗いですね」

 森の祠の中は暗く、落ち着いて見渡さないと襲撃を受けそうだった。

 茜以外は全員が暗視を持っているが茜は光がないと周りが見えないので、

 店で買ったランプに油を入れて明かりをつけた。

「うぅ、やっぱり皆さんが羨ましいです……」

 茜がランプを持ちながら先に進むと、何かの音が壁から聞こえてくる。

 周りは水で覆われており、普通に進むには泳ぐしかなかった。

「あ、皆さん、待ってください」

「何したんだい」

 突然、先頭を歩いていた茜が立ち止まる。

 気配を感じたのか、茜は左右を見渡し、レイは何が起こったのか困惑していた。

「地中に魔物がいます……!」

 茜がそう言った瞬間、地中からモグラのような魔物、バレッテが姿を現した。

 水辺があって狭く、バレッテから逃げる事はできなさそうだ。

 バレッテは大きく口を開けると、一番前にいた茜に襲い掛かってきた。

 

「せやっ!」

 デリサルはバレッテに飛びかかろうとしたが、力負けしてしまった。

 改めてレイピアで刺そうとしたが、かわされてしまう。

「狭い場所で戦うのは不利だ。登るぞ」

 そう言ってアエルスドロは高く飛び上がり、

 バレッテに馬乗りになってキーンブレードで2回斬りつけた。

 バレッテは怒ってアエルスドロを振り落とそうとしたが、

 アエルスドロはしっかりと掴まっていた。

「cadre sacre!」

「ド・ゲイト・ド・イス!」

 茜は神聖な炎、レイは冷気の光線をバレッテに放った。

 デリサルはもう一度レイピアで刺そうとしたが、またかわされてしまう。

 バレッテに馬乗りになっているアエルスドロはキーンブレードでバレッテの急所を突いた。

「ぐぬぅぅぅぅっ!?」

 バレッテは大きく暴れ回り、アエルスドロを水中に落としてしまった。

「あぁっ、アエルスドロさんが溺れてます! 何とか助けないと……」

「でも、こいつを倒さないとまた暴れるよ!」

 茜、レイ、デリサルは一斉にバレッテを攻撃する。

 アエルスドロは何とか死なないように暴れている。

「cadre sacre!」

 茜はバレッテの噛みつき攻撃をかわし、魔法で反撃し、バレッテを倒した。

「ほら、俺の手に掴まれ!」

「……む、むぐぅぅぅぅ」

 デリサルは溺れたアエルスドロを何とか引き上げ、

 口から水を吐き出して呼吸ができるようにする。

「はぁ、はぁ、はぁ……。金属鎧を着なくてよかった……」

「あれを着たら、確実に溺れちゃいますからね。……ちょっと、安全な場所で休みましょう」

 

 茜達が休憩した後、様々な仕掛けを解いて森の祠を攻略する。

 レバーを倒したりスイッチを押したりして橋を架け、水辺を歩けるようにする。

 また、キノコがたくさん生えていたが、

 ほとんどが魔物の影響で毒キノコなので、茜達は決してキノコを食べなかった。

「ここはじめじめしてますけど、過ごしやすいですね。……魔物以外は」

「とりあえず、魔物の親玉を倒して、報酬をもらうぞ」

 

 そして仕掛けをある程度解いて森の祠の奥に進むと、

 黒いローブを纏った魔導師と、黒い馬に跨った獅子の姿をした悪魔――ヴィネがいた。

「あなたが、魔物を呼び出した張本人ですか?」

「そうだ……ヒルダ様のご命令で、森の祠を破壊せよと言われたからな。

 ヒルダ様はこのヴィネを貸し与えたのだ」

 ヒルダは人々に絶望を与えるのが目的だと言っていた。

 だとすれば、この魔導師も、森の祠を破壊して絶望させようとするのだろう。

 そんな事はさせまいと、アエルスドロは武器を構える。

「ふふ、しかし、お前達の希望を破壊するのも俺の役目だ。ヒルダ様のためだ、死んでもらう!」

ゴガアアアアアアアアアアアア!!

 ヴィネと魔導師は、茜達に襲い掛かってきた。

 

「ぎゃっ!」

 デリサルは短弓を引き絞り、魔導師に矢を放った。

 矢は魔導師の胸に突き刺さり、血が飛び散って魔導師は悲鳴を上げた。

 ヴィネは口を大きく開け、火のブレスを吐き出す。

 デリサルはヴィネの背後に隠れていたが、他の三人は直接炎の中にいた。

「きゃぁぁぁぁっ!」

 茜は炎に包まれて大ダメージを受け、アエルスドロとレイは素早く身をかわして、

 炎をかすめるだけで済んだが、それでもかなりのダメージだ。

「ダブルスラッシュ!」

 アエルスドロはヴィネに近づき、キーンブレードを振り下ろした。

 剣はヴィネの毛皮を切り裂き、さらに力を溜めてキーンブレードをもう一度振り回し、

 攻撃はヴィネの首と腹に深く刺さってダメージを与えた。

「vie force!」

 茜は自分の傷を癒すために呪文を唱え、白い光が茜の身体を包む。

「燃えろ、ファイアーボルト!」

 魔導師は杖を振り、赤い火花をアエルスドロに向かって飛ばすが、

 アエルスドロは盾で火花を弾き、攻撃を防いだ。

「ド・イグニ・マ・ギ・ド・ヴェン!」

 レイは炎の呪文を唱え、三本の赤い光線をヴィネに向けて飛ばす。

 だが、ヴィネは素早く動いて光線を二発避け、

 最後の光線は手元が狂って自分の足に当て、レイは火傷を負ってしまう。

 デリサルはヴィネに近づき、銀のレイピアを突き刺そうとしたが、

 ヴィネはデリサルの動きを見抜いてレイピアをかわした。

ゴガアアアアア!

「うわぁぁぁっ、熱ぃ!」

 ヴィネはデリサルに向かって火のブレスを吐いた。

 デリサルは火のブレスを避けようとしたが間に合わず、直撃して身体が燃える。

「ダブルスラッシュ!」

 アエルスドロはヴィネにキーンブレードを振り下ろした。

 剣はヴィネの肩に深く刺さり、アエルスドロはさらにダメージを与えるため、

 もう一度、キーンブレードを振り回したがヴィネは攻撃をかわした。

「なるべく傷つけたくありません。personne legere en grosse pierre!」

「……っ!」

 茜が魔導師をじっと睨みつけると、魔導師は麻痺して身動きが取れなくなった。

 人間を麻痺させ、動きを止める魔法、パラライズパースンだ。

「ぐ……だが、お前の魔法では、私は止められない……!」

「そんなっ!」

 だが、魔導師はいとも簡単にパラライズパースンを解除した。

 魔導師は何事もなかったかのように、杖を構え直す。

「ド・イグニ・マ・ギ・ド・ヴェン!」

 レイが呪文を唱えると、三本の赤い光線がヴィネに向かって飛び、着弾する。

 デリサルはヴィネにとどめを刺すために、銀のレイピアをヴィネの心臓に突き刺した。

ガガァァァァァッ!

「デリサルは私が守る!」

 ヴィネはデリサルに襲い掛かろうとしたが、アエルスドロがデリサルを守る。

 アエルスドロはヴィネの噛みつきと爪と角に耐え切れず、仁王立ちして倒れた。

 

「アエルスドロさん、しっかりしてください。vie force!」

 茜は倒れたアエルスドロに駆け寄り、

 回復魔法を唱えると緑の光がアエルスドロを包み、意識を取り戻させる。

「た、助かった……」

「くぅ、よくもやったな。デ・ゲイト・ラ・ロタ・ド・イス!」

 魔導師は杖を構えると、吹雪を起こす呪文を唱えた。

「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」

 青い冷気が茜とレイに向かって吹き付けた。

 茜とレイは耐え切れず、冷気に凍えて戦闘不能になってしまった。

 

「くっそぉ、やるしかない!」

 デリサルは歯を食いしばり、ヴィネの胴体に銀のレイピアを突き刺した。

 今の一撃が効果的だったのか、ヴィネはデリサルのレイピアに貫かれて倒れた。

 

「う、うぅ……」

「私の絶望は……ここで終わってしまったか……」

 何とか戦闘不能から立ち上がった茜は、震えながら魔導師を見る。

 ヴィネを失った魔導師に戦う意欲はなく、降伏するのも時間の問題だ。

「降伏するか」

「……ああ。煮るなり焼くなり、好きにしろ」

「……とどめは刺しません。警察に突き出します」

「いや、冒険者ギルドだろ?」

 今、ここで魔導師にとどめを刺しても、何も手に入らない。

 デリサルはロープを取り出し、魔導師を拘束した。

 

「さあ、報酬を得るために帰るぞ」

「待て……」

「え?」

 森の祠を後にしようとした時、男性の声がデリサルの背後から聞こえる。

 デリサルが振り返ると、そこには長い金髪の女性的な風貌の天使が浮かんでいた。

「お、お前は……」

「私はウリエル。大地を司る天使だ。この森の祠を、悪魔より解放して感謝する」

「え、あ、ああ、そうだな……」

 ウリエルの姿はデリサルにしか見えず、

 アエルスドロ達は何もない場所で独り言を言っているようにしか思っていなかった。

 デリサルすら、仲間の行動に戸惑っていて、何をすればいいか分からなかった。

「戸惑っているようだな。良き魔の子よ、その手を差し出せ」

 ウリエルは威厳のある目でデリサルを見ると、彼の手に黄色い何かを差し出す。

「これは?」

「恵みをもたらす土のエレメントだ。『希望』の心を持つ者にのみ力をもたらす。

 そなたには、このような形が似合うだろう」

 すると、土のエレメントはみるみるうちに、デリサルの手に合う手袋になった。

 デリサルがそれを身に着けると、手袋は手に溶けるように消えてしまった。

「消えた……」

「その手袋は、必ずやそなたに希望をもたらすだろう。

 他の三人の天使も、各地で眠りについている。炎の天使ミカエルは炎の洞窟。

 風の天使ラファエルは風の砦。水の天使ガブリエルは海の神殿。では、さらばだ……」

 次の瞬間、ウリエルの姿は、デリサルの前から消えた。

 

「一体どうしたんだ、デリサル」

 アエルスドロは慌ててデリサルに駆け寄り、固まっているデリサルに話しかける。

「あ、ああ、え、えっと、俺の前に天使が現れて、グローブを授けたんだ。

 見えなくなったけど、何だか俺の力になってる気がする。その天使、ウリエルって名乗ってた」

「ウリエル!? 四大天使の!?」

 森の祠に四大天使の一人がいたなんて、信じられないという顔をする茜。

 だが、他にも四大天使は各地で眠りについているという。

「……どうやら、冒険は始まったばかりのようですね」

 茜はやっと安らげると思ったのに、また冒険をする事になるなんて、と落胆する。

 だが、このまま何もしないで寝ているだけだと、

 ヒルダが呼んだ悪魔により、世界は絶望してしまうだろう。

「皆さん、残りの天使も探して、ヒルダさんを止めましょう。

 大丈夫ですよ、私達なら必ず、できます!」

 そう言う茜の表情は、活気に満ち溢れていた。

 昔の茜は立ち直りが遅かったが、今はすぐに立ち直っている。

 これも、仲間達が支えてくれたおかげだろう。

 

「……ぉーーーい、冒険者ギルドに突き出すんじゃなかったのかぁーーー……」

「あ、すっかり忘れてました」

 魔導師の事をすっかり忘れた茜は、仲間と共に魔導師を連れて行き、

 フェーン王国の冒険者ギルドに突き出した。

 報酬もしっかり貰い、事件は幕を下ろすのだった。

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