百夜茜が理想郷に転生した件   作:アヤ・ノア

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茜が冒険者としてパーティーを組みました。
まずは駆け出し冒険者の基本中の基本、ゴブリン退治の始まりです。


第2話 小鬼タイジ

「さて、冒険者になったからには、何か依頼を受けなければ」

「といっても、ウッドだから簡単な依頼しか受けられませんけどね」

 茜は壁に張り出された依頼書を見る。

 その中で、ウッドランクの冒険者が受けられる依頼は、端の方にあった。

「ありました。えーっと……ゴブリン退治? その、ゴブリンって何ですか?」

「ゴブリンは繁殖力がとても強い悪鬼だ。

 食欲旺盛で何でも食べるから村を襲って食糧を盗む事がある。

 でも、力は弱いから駆け出し冒険者でも油断しなければ倒せるぞ」

 茜は元の世界で油断してフェリドに殺された苦い思い出があるため、強く頷いた。

「ゴブリンは狡賢いから罠を仕掛ける事がある。だから、俺のようなスカウトが必要なんだ」

「ありがとうございます、デリサルさん」

 初めての冒険に、茜はわくわくしているようだ。

 異世界に来てから分からない事だらけだが、この三人の冒険者は、頼りになるだろう。

 そして、元の世界に帰る時があったら、異世界で身に着けた力でフェリドを倒す。

 それが、茜の今の目的になった。

 

 そんなわけで依頼主の案内のもと、

 茜、アエルスドロ、レイ、デリサルはゴブリンが棲む洞窟に向かった。

 入り口ではゴブリンが見張りをしていて、茜達との距離はおよそ90m。

 遠距離攻撃が、ギリギリ届きそうな距離だった。

(どうにか気づかれずに仕留められますかね? しかも、見張りは二体もいますよ)

 一体仕留めたら、もう一体の見張りに気づかれる。

 何とか二体とも同時に仕留める方法はあるのだろうか。

(こういう時は、眠らせちゃえばいいんだよ)

 レイはポーチから細かい砂を取り出し、二体のゴブリンに眠りの呪文――スリープを唱えた。

 結果、意志の弱いゴブリンは、二体とも眠りに落ちた。

 アエルスドロはロングボウに矢を番えると、二体のゴブリンを難なく撃破した。

 

「よし、潜入しましょう」

「罠があるかもしれないから、まずは入り口から調べよう」

 デリサルは洞窟の入り口を調べた。

 特に変わったところはなさそうだ。

「本当にないんですか? あのゴブリンが、罠を仕掛けないんですか?」

 念のため、茜はもう一度洞窟の入り口を調べた。

 やはり、特に変わったところはない。

「しょうがないねぇ……」

 そう言ってレイは、デリサルや茜よりも丁寧にゴブリンの洞窟の入り口を調べた。

 やはり何も見つからない。

 アエルスドロも入り口をしっかりと調べてみたが、特にこれといったものはなさそうだ。

「罠はなかったのか?」

 そう言ってアエルスドロが一歩歩くと、突然、アエルスドロが乗っていた床が抜けた。

 入り口に落とし穴の罠が仕掛けられていたのだ。

「うおっ!」

 アエルスドロは間一髪、落とし穴をかわした。

「やっぱり、こんな事だとは思いましたよ。

 あのゴブリンがこんな事をしないわけがありませんから。さあ、行きましょう」

「ああ」

 

 四人は慎重に洞窟の中を進んでいく。

 洞窟の中は暗く、何も見えなかったので、人間には何か明かりが必要だった。

「ええっと、確か、明かりをつけるには、火打ち石と打ち金で松明に火をつけるんですよね」

「明かり? 私には必要ないが」

「あたいにもだよ」

「俺もだ」

「あ、人間は暗いところだと物が見えないんです!」

 自分以外の全員が暗視を持っている事に、茜は少し恥ずかしくなった。

 それでも茜は火打ち石と打ち金、松明を取り出し、それらを使って松明に火をつけた。

「明かりがついた……! 熱い……!」

 茜は松明の熱気で少し汗をかいた。

 こんなに熱い炎を見たのは、初めてだからだ。

 茜は周りを見渡しながら、ゴブリンがどこにいるかを探していく。

「……あっちです!」

「そうか」

 四人は辺りを見渡しながらゴブリンの仕掛けた罠にかからないように慎重に洞窟を進んでいく。

 ゴブリンは力は弱いが、その分、狡猾で、フェリドの教訓で茜は油断しなかった。

「皆さん、罠には気を付けてくださいね」

「それは俺に言ってほしいんだが」

 本業の盗賊であるデリサルは少し落胆した。

 

 デリサルのおかげで罠を回避しながら進むと、四人は洞窟の最も奥に辿り着いた。

 そこには、二体のゴブリンと、一体のゴブリンのならず者が待ち構えていた。

 彼らを倒しても、繁殖力が高いゴブリンにとっては痛くも痒くもないかもしれない。

 それでも、茜はゴブリンを倒すために、三人の仲間と共に武器を構えた。

「ゴブリンは絶対に反省しない。徹底的に叩き潰すしかないんだ」

「そうですよね……。情けはかけませんから」

「肩慣らしにはちょうどいいね」

「油断大敵だ。アカネ、お前は明かりを消すなよ」

「はい!」

 洞窟の中は暗いので、常に松明をつけていなければ襲撃を受けてしまう。

 茜は頷くと、松明を消されないようにした。

 ゴブリンは高らかに鳴くと、茜達に襲い掛かった。

 

「いくぞっ!」

 デリサルは弓に矢を番えてゴブリンに矢を放つが、矢は明後日の方向に飛んでいった。

 ゴブリンは飛んできた矢を掴むと、レイに向かって乱暴に投げつけた。

「うわぁっ!」

 レイは何とか矢を避けるが、矢が掠って浅くない傷を負った。

「油断大敵、だね。ド・ゲイト・ド・イス!」

 レイが呪文を唱えて杖を振ると、杖の先から氷の矢が放たれ、ゴブリンのならず者に刺さった。

 すると、ゴブリンのならず者は弓で反撃し、レイの身体に矢を突き刺して倒した。

「ぐっ……油断したね……」

「レイさん!」

 何とか踏みとどまったレイだが、このままでは彼女は命を落としてしまう。

 そんな事をするわけにはいかないと、茜はレイに駆け寄り救命措置を行う。

 その間にアエルスドロはゴブリンのならず者に剣を振り、

 ゴブリンはアエルスドロに剣を振るが、アエルスドロはギリギリで攻撃をかわす。

「ぐおっ!」

 デリサルの鎧で覆われていない部分をゴブリンが装備した剣で切り裂く。

 ゴブリンのならず者はアエルスドロを殴り、アエルスドロは剣を振ってゴブリンを倒す。

「vie force!」

 茜は手を掲げて瀕死のレイを癒す。

「……助かったよ、小娘」

「無理はしないでくださいね、レイさん」

 茜は前に立ってメイスを構える。

 クレリックとはいえ、ただ後ろにいるだけでは戦闘が成り立たないからだ。

「そこだっ」

 デリサルのレイピアがゴブリンを突いて倒す。

「ド・ゲイト・デ・テラ・マ・ギ!」

 レイが呪文を唱えて杖を振ると、

 光り輝く魔法の矢が3本現れてゴブリンのならず者を打ち据える。

 目標に必ず命中するマジックミサイルは、初級ながらなかなか効果的なのだ。

 アエルスドロと茜はゴブリンと取っ組み合いをし、何とかゴブリンを無力化していく。

「レイさん、とどめをお願いします!」

「あいよ! ド・ゲイト・デ・テラ・マ・ギ!」

 レイが呪文を唱え、杖を振り下ろし光の矢を放ち、残ったゴブリンをあっさり一掃した。

 こうして、茜達のゴブリン退治は終わった。

 

「ふう……終わりましたね」

 茜達の周りにゴブリンはもういない。

 ゴブリンは繁殖力が高いが、ある程度撃破すればもう悪さはしないだろう。

 だが、四人はボロボロだったため、ゴブリンと言えど油断大敵な事が分かった。

 そのため、このままの状態で吸血鬼に挑むのは無謀と言っていいだろう。

「皆様、協力してくれてありがとうございました」

「冒険者は人助けをするのが当たり前だからね!」

 

「はい、これが今回の報酬です」

「わぁ……金貨ですね」

 ギルドに戻った四人は受付嬢から報酬となる金貨を受け取る。

 ゴブリン退治なので報酬は安かったが、それでも初めての金貨なので茜は喜んだ。

「冒険者では金貨は当たり前だが、何故、喜……いや、何でもない」

「何を買っていきましょうかね」

「ちゃんと大事にするんだぞ。使いすぎは良くない」

「……そうでしたね」

 盗賊のデリサルに言われたからには、茜はちゃんと金銭感覚を身に着けようと思った。

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